第5話 仲直り
唯一の友達を失ったと思って絶望した翌日。
マリアは再度私を訪ねて来てくれた。
余りにも嬉し過ぎてついつい抱き着いて泣いてしまったが、マリアは私の頭を撫でてあやしてくれた。
私はマリアにママの面影を見た。
だが、マリアがパンプスと2人だけで話がしたいと言うので、今は別室に居る。
私は手持ち無沙汰で九百九十九手観音阿修羅像を弄っていると、また腕が取れた。
九百九十八手観音阿修羅像になっちゃった……
《side:時割の悪魔》
「先日は驚かせて済まなかった。私はどうも猫が苦手なようだ」
「……ララァをどうするつもりですか?」
目の前の相手の手足は震えているが、瞳の奥には強い意志が宿っていた。
ララァは良い友を得たようだな。
「別にどうもしない。使役されている身だからな」
「う、嘘です!あなたは使役されてなんかいない!」
「……だとしたらどうする?私を滅するか?今なら実力がある退魔師が10人もいれば多分可能だぞ」
「い、今なら?」
「訳あって力を失っているのでな」
「……ララァを害する気は無いと?」
「害するも何も、私があの者を見守っている状況だぞ?特に酔った時の世話が……地獄だ」
思い出しただけで頭部に痛みが走る。
霊力で出来た体の筈だが不思議なものだ。
「……分かりました。ララァを害する気が無いのであれば、私も教会に報告するのは止めておきます」
「ほう?その意図は何だ?」
「ララァは私の恩人です。面倒事には巻き込ませたくありません。それに、あなたの事はララァのボディーガードだと思うことにします」
「では、今まで通りだな」
「ええ。時々は様子を見に来ると思いますが」
「それならララァも喜ぶだろうな」
「…………」
マリアと言う娘からして見れば、使役もしていない悪魔が何の強制力も無しに友の側に居るのだ。気が気ではないだろう。
だが、私が早く力を取り戻してララァの元を去れば良いだけの話だ。それまでは精々ボディーガードとして護らせて頂くとしようか。
話し合いも終わり2人で部屋を出ると、ララァがすぐに寄ってきた。
「大丈夫?こいつに何もされなかった?」
「だ、大丈夫です。ただ話をしただけですから」
「マリアは綺麗だから油断したらダメよ!カボチャ頭の中身は何を考えているか分からないんだから!」
「おい、言い過ぎだぞ!」
ララァを窘めてからマリアにそっと耳打ちする。
「今ではこれが忍耐力を養う訓練になっている」
「あはは……」
「そこ!仲良くなり過ぎよ!離れなさい!」
ララァはマリアが帰るまで終始笑顔だった……