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第3話 ある夜のこと……


今日は退魔師の仕事でとある屋敷に来ている。私が拠点にしているこの街の有力な大商人の家なのだとか。

大商人の名はズルカ。彼に使い潰された従業員達の怨念が生霊になったらしい。

まあ、ブラックな職場は滅ぶべきね。



「パンプス。そっちに行ったわ!」

「ああ。任せろ」


「また行っちゃった!」

「問題無い」


「くっ!抑えきれない!パンプス、お願い!」

「……おい。ちょっと待て」



私が仕留め損ねた最後の霊を、パンプスは右手を払っただけで消滅させた。


「どうしたの?もしかして負傷しちゃった?」

「私がこんな低級霊どもから傷を負う事はない」

「ふ〜ん。じゃあ、もう全滅させたみたいだし、依頼達成の報告に行きましょうか」

「だから、ちょっと待てと言っている」


先程からパンプスは何か言いたい様子だ。

だが、部下の不満を受け止めて改善するのもホワイトな職場への第一歩だろうと思い直す。


「何かしら?言いたい事があるなら話して頂戴」

「では言わせて貰うが、貴女は弱いのだから余り背伸びした依頼は受けない方が良いと思うぞ。今回も霊の一体すら倒せていないだろう?」

「……ごめんなさい。次からは気をつけるわ」

「……………」



正論を言われ落ち込んだまま帰宅した私は、冷却効果のある箱の蓋を開けて封印していた中身を取り出すと一気に煽った。

……嫌な事は飲んで忘れるに限るわ♪


「私、どうやってあんなに強い奴を使役出来たんだろ?」


その重要だった筈の疑問は、お酒と一緒に肝臓に流れて行った……




◇◆◇◆◇◆◇◆◇



《side:時割(ときわり)の悪魔》



「流石に相手が悪かったか……」


私は立っている事が出来ずに道端に倒れ込んだ。

霊力は全く残っておらず、今なら低級の悪魔にすら負けてしまうだろう。


そんな時に彼女に出会った。


「うっひょっひょっ♪こんな所にでっかいカボチャが落ちてるんだけど!?今夜はカボチャスープパーティーよ〜♪」


どうやら私が悪魔だと気付いていないようだな。


「寄るな、人間!」

「カボチャが喋った〜♪自称カボチャによるカボチャスープ実況クッキングが出来そう♪」


どうやらこの人間はアンコールを大量に摂取しているらしい。人間の習性にそれ程詳しくない私でもこの人間の支離滅裂な言動は飲み過ぎが原因だと分かる。

そして、その勢いは止まらず、人間は私の頭に抱き着いて持ち上げようとしてきた。


「私は悪魔だ。今すぐこの場から去れば見逃してやる」

「なんらと〜!それは私が超絶美少女凄腕退魔師ララァちゃんと知っての狼藉きかにゃ〜!」

「!!?」


私は凄腕と聞いて警戒を強めるが、その退魔師は手を猫のように丸めて「シュッ!シュッ!」と口で言いながら、その場で猫パンチを繰り出していた。その姿には全く脅威も迫力も感じない。


「…………」

「どうやら私に恐れをなして声も出ないようにぇ〜♪」


その猫なで声が癪に障ったので、この人間を殺す事にした。低級悪魔程度の霊力も残っていないが、酔っ払い相手なら十分だろう。


……………

………………

……………………



「痛あああ〜〜〜くない!……ふふ♪私に血を流させたことを後悔させてあげる♪……血流結界!!!」


人間が血を辺りに振り撒きながら叫ぶが特に何も起きなかった。

だが、その酔っ払いは最早無敵だった。

涎を垂らし笑いながらじわじわと近付いて来る異形の姿に、私は初めて恐怖という感情を経験した。


不味い……

私はこんな所で滅される訳にはいかない。

しかも、こんなフザケた人間なんかに!


その時、私は閃いた。

この人間に従う振りをして力を蓄える時間を稼ぐ事にした。


「……わ、私の負けだ。これからは貴女に従おう。今後とも宜しく頼む」


私は人間の前に跪いて悪魔が使役される際の台詞を口にする。


「……へっ?も、もしかして私悪魔を使役しちゃった?えへへ♪えへへへへ……………。オロロロロロ!」


その後、道端に吐き始めた人間を介抱し、背負ったまま霊力を辿り部屋まで運んだ。



背中に盛大に吐かれた恨みは未だに消えてはいない……






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