第2話 神の啓示
「神の御告げを聴いただと?」
「そうなの。『汝と共に在る者に優しくすれば、幸運が訪れるであろう』だったかな?」
「……あの俗物が為す事とはいえ、個の存在に対する啓示など聞いた事が無いのだが?」
「俗物じゃないわ、神様よ!……まあ良いわ。要するに私は選ばれた存在って事よ!」
人にとっては崇める存在も、悪魔からしたらやっぱり敵なのかしら?
「だが、その啓示通りなら、貴女は私に優しくしないといけないな」
「……えっ?」
「何を不思議がっているんだ?共に在る者の括りなら今の所私しか該当しないだろう?」
「えっ?ちょ、ちょっと待ちなさいよ」
「日頃から貴女には酷い扱いを受けているからな。神の言う通り改心して私に接するがいい」
「…………」
ぐぬぬ……
でも……、でも!これはきっと神様から与えられた試練。
今を堪えれば後に溢れる程の幸運が手に入る筈よ!
「……分かったわ。準備してくるから待ってなさい。……じゃなかった。少々お待ち下さい。パンプキンシザース様♪」
「…………」
私は形から入るタイプなので、専用の服に着替えて部屋に戻った。
酔った勢いで買ったと思われる服なので物置きに眠っていたのだが、こんな所で役に立つとは……
「……何故、侍女が着るような服を?」
「主人にご奉仕する事こそ至上の喜び♪メイドのララァに何でもお任せ下さいませ♪」
「取り敢えず、その猫なで声を止めろ!全身に虫唾が走る!」
「…………」
どうやら我が主人はメイド服がお気に召さないようだ。
私は無言でコスプレ用の猫耳カチューシャと猫の尻尾を取り出し装着した。
これも酔った勢いで……(以下略)
「分かりましたにゃん♪我儘な主人にも柔軟に対応しますにゃん♪」
「……酒でも飲んだのか?」
イラッ!
折角、私が可愛い子ぶって優しく接してあげようと思ってるのに、何て言い草なの!
この前判明してしまった酔った時の私の醜態。あれと一緒ですって!?
頭に来たので思い知らせてやるわ!
「ご主人様?ララァは寂しいにゃん♪」
徐ろにパンプスの腕に抱き着いた。
「一体、何の真似だ?」
「構って欲しいにゃん♪ララァと遊んで欲しいにゃん♪」
「……や、止めろ!……不快過ぎて殺したくなる」
「使役してるから殺せないにゃん♪パンプキンシザース様は冗談がお上手にゃん♪」
「……ぐっ、うおおお!!!」
必死に何かの衝動を抑えるパンプス。
彼の全身からは私でも分かる程の殺意が溢れ出ていた。だが残念ながら使役された悪魔は主を害する事は出来ないのだ。
その後も私はパンプスに四六時中くっついて猫なで声を出し続けた。
「……こ、この私が……これ程の精神的苦痛を受けるとは……」
パンプスは息も絶え絶えの様子だ。
私を馬鹿にした罰よ。
さあ、仕上げと行きましょうか!
「それでは、今から寝る前のお風呂に入るにゃん♪前も後ろもしっかりと洗って差し上げますにゃん♪」
「や、やめろおおおお!!!!!」
叫び声を上げたバンプスは、黒い球体を出現させたかと思うと中に逃げ込んだ。
何度呼んでも出て来る気配がない。
どうやら引きこもってしまったようだ。
勿論、幸運は訪れなかった……