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五話 陰陽師と妖術師

どうぞご覧ください。

五話 陰陽師と妖術師


猫探偵ねこたんていが夜食を作り始めて十分程経過した。

猫探偵がカップラーメン以外を作った事を見た事が無いと

いう言葉に、十分もの間応接室に居る四人は緊張と沈黙が続いていた。

心来みくる!出来たから持って行ってくれ。」

「……分かりました。」

その声を聞いた心来が隣の部屋に向かう。

数十秒が経過した後、心来と猫探偵が夜食を持ってきた。

全員の不安とは裏腹に、出された夜食は意外にも豪華なものだった。

まおさん……いくら何でも黒毛和牛くろげわぎゅうとマグロを出すのはちょっと……」

「く……?!」

黒毛和牛と言う名の言葉に、小林こばやし先生が心底しんそこ驚く。

二つのソファーをはさんだテーブルに、

黒毛和牛のサイコロステーキとマグロの春巻きが置かれた。

「在庫処分だ。生鮮食品せいせんしょくひんをいつまでも冷蔵庫に入れていられるか。」

心来の言葉に猫探偵がけだるげに反論した。

出された夜食は、以前猫探偵の母親である妖霊千華ようれいせんかからの

仕送りを使っていた。

それらを置き終えた猫探偵と心来がソファーに座ると、猫探偵が一つの疑問を口にした。

「そう言えば、名前聞いてなかったな。」

「あっ……」

その言葉に、猫探偵を除いた全員が絶句ぜっくした。

そう言えば忘れたと、頭を抱えていた心来が口を開く。

「取り敢えず……一人ずつ自己紹介しますか。

知っていると思いますけど、私の名前は狐烙こらく心来みくるです。

この探偵事務所でアルバイトをしています。」

心来が簡単に自己紹介を終えると、隣に居る猫探偵に目配めくばせをした。

その目配せに猫探偵が気付き、自己紹介を始めた。

「私の名前は妖霊ようれいまおだ。この探偵事務所で探偵をしていて、

周りからは猫探偵と呼ばれている。」

「探偵事務所じゃなくて何でも屋に近いと思いますけど……」

「心来。」

猫探偵が心来に向けて少しにらんだが、

思い当たる節があるようで少し睨んだだけで終わった。

猫探偵と心来のやり取りを見ていた三人の内、小林先生が手を上げ自己紹介を始める。

「俺の名前は小林こばやし李沢りさわ狐烙こらく久瑠くるのクラスの担任と、

オカルト研究部の顧問こもんをしている。」

小林先生が自己紹介を終え、その隣に座っていた彼岸ひがん部長が自己紹介を始める。

「えっと……僕の名前は彼岸ひがん歩裕あゆた。オカルト研究部の部長をしています。」

猫探偵からの視線で緊張したせいか、彼岸部長の言葉が丁寧語になった。

順調に自己紹介が進み、最後である久瑠くる秋雷しゅうらの番になった。

「私の名前は久瑠くる秋雷しゅうらもうします……」

「……終わり?」

名前だけで終わった久瑠秋雷の自己紹介に対し、猫探偵の疑問が全員の耳に届く。

「はい……」

「自己紹介が苦手だったのか。」

クラス自己紹介の時、名前だけしか喋らなかった事に対して小林先生は納得した。

「あっ、思い出した。」

久留秋雷がそう言うと、反対側に居る猫探偵に対して顔を近付ける。

「妖霊猫さん、私を弟子にしてください!」

「……口下手って言われない?」

突拍子の無い言葉に、純粋な疑問が猫探偵の口かられた。

「妖霊猫さんの妖喰あやかしぐらいを倒した高い実力、

狐烙さんが持っていた高度な結界札けっかいふだ

天才と言われていた私よりも強い貴方あなた師事しじすれば、

私は更に強くなれるはずです。」

猫探偵に師事する理由を早口で言い終わると、落ち着くようにソファーに座り直す。

その言葉を聞き、猫探偵は軽く頭を抱える。

猫探偵が頭を抱えていると、猫探偵が何かを聞き忘れていることに気付いた。

「そう言えば、君はどっちだ?」

猫探偵が久瑠秋雷に質問をすると、その言葉に疑問を持った彼岸部長が小さく手を上げた。

「どっち……というのは?」

「ああ、そう言えば知らないのか。どっち、

と言うのは妖術師ようじゅつし陰陽師おんみょうじかと言うの質問だ。

妖術師は、さっき私が戦った様に妖気ようきというものを火や水、

風や岩などを生み出したり道具を強化したり何かを操ったりと、

多種たしゅ多様たように能力が分かれ、得意不得意でやれることが決まる。

要は人によって戦闘方法がバラバラと言う事だ。

私も煙草たばこ媒介ばいかいに戦闘を行っている。

で、次に陰陽師なんだが、さっき心来が使ってた様に結界を作る事ができ、

他には式神を召喚したり占いをしたりと、やれることの幅は妖術師より

少しばかり狭く、人口は妖術師よりも陰陽師は圧倒的に少ないが、

代々陰陽師の血を引く家系から基本的に輩出はいしゅつされているから、

力の使い方を参考にできるため個々の実力だと陰陽師が強い。

まあ概要はこんなところだ。で、君はどっちだ。」

小林先生の疑問に答えた後、話をさえぎられたため猫探偵が久瑠秋雷

にもう一度質問をする。

「私は陰陽師です。」

「陰陽師か……初めに言っておくが私は妖術師だ。

陰陽師の真似事まねごとしか出来ないし、結界札は特別に特注したものだ。

それでも私に師事しようとするか?」

猫探偵の目が久瑠秋雷に向けられる。

「はい。私の意思は変わりません。」

その言葉を聞いた猫探偵が今一度久留秋雷に向けられる。

「いいだろう、今から私の弟子だ。その内に結界札を作成した者にも会わせよう。」

「ありがとうございます!」

その言葉を聞いた久留秋雷が喜びのあまりソファーから飛び跳ねる。

「そう言えば……試練が終わったらどうするつもりだったんだ?」

久瑠秋雷がその言葉を聞きくと、体からあふれていた喜びが消え、

そのまま沈黙した。

「はぁ……その様子だと試練が終わったらそのまま転校か?」

「…………はい。」

その様子を見ていた猫探偵が立ち上がり、スマホを取り出し電話を掛ける。

「久瑠家に掛け合ってみるから、夜食でも食べてくれ。

このまま食べてくれないと生ごみになる。」

「電話番号知っているんですか?」

「一応、久瑠家の者と面識があるからな。」

猫探偵がそう言うと、相手が電話に出た様でそのまま会話を始めた。


猫探偵を除いた心来、小林先生、彼岸部長、久留秋雷が

夜食を食べ始めていた。

「大丈夫かな……」

久留秋雷の口から不安な声が漏れ、その声に心来が気付く。

「大丈夫だと思いますよ。猫さんなら。

それよりもその後の事を考えましょう。」

「……そうですね。」

「転校ということは、まだ部活には入っていないという事だよな。」

彼岸部長がサイコロステーキを一つ飲み込んだ後、心来と久瑠秋雷の

会話に入り、久瑠秋雷に至近距離まで近付き確認する。

「そう……ですね。」

久留秋雷がその近さに少々引きつつも、その質問に肯定する。

「ならオカルト研究部に来てくれ、あと一人来てくれれば廃部は回避できるんだ。

あと、狐烙さんが一緒にいるなら少なくとも無駄にはならないとおも――――」

春巻きを食べていた小林先生が、彼岸部長の頭にチョップを入れ暴走を止める。

「すまない。彼岸が暴走してしまって。」

「いえ、大丈夫です。」

彼岸部長が頭をさすっている横で久留秋雷が考え込んだ。

「……彼岸さん。オカルト研究部に入ります。」

その言葉を聞いた彼岸部長が痛みを忘れ、その顔が輝いた。

「良かった。先生、入部届の準備を―――」

『!”#$%&’?)(=~!!!』

突然、思わず耳をふさぎたくなるような爆音ばくおんが部屋に響き渡った。

心来、小林先生、彼岸部長、久留秋雷の四人は耳を塞ぎつつ、

爆音の発生源であろう猫探偵のスマホを見ていた。

爆音の原因であろう物を持っていた猫探偵は、

スマホを出来るだけ耳から離し、スマホを当てていた耳を手で塞いでいた。

猫探偵が顔をしかめつつ電話を切り、スマホをポケットに入れた。

「秋雷。」

「はい。」

猫探偵が久留秋雷の名前を呼ぶと、二人の間に緊張が走る。

数秒の沈黙が過ぎた後、猫探偵が口を開く。

「許可取ったぞ。」

「…………!」

久留秋雷が声にならないほどの喜びを体で表した。

その姿を見ていた小林先生が時計を見ると、すでに十二時を過ぎていた。

「狐烙、久留、彼岸、そろそろ家に帰って寝た方がいいぞ。

また明日も学校があるんだからな。」

名前を呼ばれた三人は、現在時間を見て驚き急いで身支度を始めた。

その身支度が終わると、小林先生と一緒に事務所の扉を開き、

彼岸部長と久瑠秋雷が出ていった。

一人残った心来が、扉の前で猫探偵と向き合う。

「猫さん、また明日。」

「ああ、また明日。」

ここで突然のざっくり人物設定

狐烙心来

性別 女性

身長 約155cm

体重 約40キロ

目の色 灰色

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