プロローグ
僕が憧れていた人魚姫。
上半身は美しい少女の姿で、下半身は魚のようなヒレをもつ空想上の生き物。
それはこの世界に入るはずのない生物。
……のはずだったけど。
「ナナちゃん、調子はどうかな?」
「はい! とても気待ちがいいです!」
木漏れ日の差し込む清々しい空気の漂う森の中で、僕は一人の女の子を車いすに乗せて散歩する。
僕の問いかけに、明るい笑顔で答えてくれる美少女は、ナナちゃんという女の子。
その子の下半身は……
人の足ではなく、
光り輝く鱗が並んだ魚のヒレが伸びているのだった。
「おい! 真一! ナナっち、どこに連れてく気だー!!」
そして僕に罵声を浴びせながら、あと追ってきた女の子はエルさん。
綺麗な顔立ちで眉間にしわを寄せながら僕を睨みつける。
美しい金髪の持ち主だけど、
それ以上に目を引くのが……
背中に大きな白い鳥のような翼をそなえているのだった。
まるで天使のような出で立ちだけど、なぜか本名はエルフというエルさん。
そしてそのエルさんの後ろをついてくるのが白い馬のワンちゃん。
馬なのにワンちゃん。
変わっているのは名前だけじゃない。
そのワンちゃんの額には、天に向かって一直線に伸びる立派な角が生えているのだった。
それはまるでユニコーンのように……