異世界の異世界とか、もうわっかんね
魔法カーナビに従い、
平地に敷かれた一本道をマラソンしてる。
帽子とコートは置いてった。
あーあ
無属性なんかじゃ無ければ、
ボクも今頃は箒に乗ってお空を飛んだりしてるのになー
そうこうしているうちに、目的地っぽい場所に辿り着いた。
長方形の石碑。
表面に光るルーン文字。
草むらからぽつんと突き出ている。
「"ホムンクルスは愚者の夢"?」
石碑の言葉を読み上げる。
するとボクは瞬間移動した。
夜空。
明るい星々。
でかすぎる月。
立ち並ぶのはおしゃれな建物。
そして見渡す限りの魔女、魔女、魔女。
正に美少女天国だ。
「おや。来てくれたんだね。」
「ニルキキキキキさん。」
「キが一つ多いよ。
ようこそ、魔女による魔女の為の街、サバトへ。
魔法薬の材料から安全な住処まで、魔女に必要な物は何でも揃っているよ。
私が案内しよう。」
サバトの正体は、
異空間に築かれたでかい街だった。
「見て!ニルキが新人を連れて来たわ!」
「キがぜんぜん足りないよ。」
「ニルキキキキキキキキキキキキがまた女の子を攫ってきた!」
「キが多すぎるよ。」
「わ。新しい魔女だ。
あんたも相変わらず女たらしだねぇ。えっと…うーんと…確かカラスに変身する…誰だっけ?」
「普通に傷付くよ。」
来て早々、ボクは注目の的だった。
「この街は、住民の性質上どうしてもマンネリになりがちなんだよ。
みんな新しい事に飢えているんだ。」
「外には出ないの?」
「そこらの平魔女にとって、外は危険な場所んだよ。
どんな刺激も、命には代え難い。」
ニルキキキキさんは、色んな所を案内してくれた。
「ここは学術の寄る辺。
犬猿の仲の五つの学院が、この広場を挟んでにらみ合うように建っている。」
「こっちはアフル=トゥースを祀った建物。
教会とか寺院とか、みんなそれぞれの故郷の言葉で呼んでいる。」
「あっちにあるばかでかい建物は評議会。
昔はあそこで統治の為の会議とかしてたけど、
そんなことしなくても平和な事が発覚してからは、長い間使われてない。
もうすぐ別な事に使う為に改装するらしい。」
最初はただのコミュニティだと思っていたけど、
これもう小さな国家だね。
「石碑の言葉を覚えているかな?」
「ホムンクルスは愚者の夢?」
「一度この街に来た者は、
次からは石碑の前に立たずとも、
合言葉を思い浮かべるだけでいつでもどこからでもここに帰ってこれる。
本当に力があるのは、石碑じゃなくて言葉の方だからね。」
この後も、
ボクはニルキキキさんと100時間くらいデートした。
空が変わらないので、どれだけ経ったか解りにくいや。
~~~
聖カンダレス王国。
壮麗絢爛な謁見の間。
そこに一人の旅人が招かれていた。
黒いローブで身を隠した、
背の高くガタイも良い若い男。
明らかにその場にそぐわぬ出で立ち。
国王を前にしても、頭を下げるそぶりすら見せない。
だが彼を叱責する者はいなかい。
暴君と称される国王ですら、彼に向けるのは畏怖の目だ。
「よ…よくぞ、レデ鉱山を根城にしていた魔女を処刑してくれた。魔女狩人テレンスよ。
早速だが褒賞を…」
「居る。」
「何?」
「まだ居る。城の屋根の上。あそこにまだ居る。」
「な…違うぞ!あれはもはやただの魔力装置だ!
あれは国家を護る盾だぞ!」
「違う。生きて呼吸して魔法を使えば、全て魔女だ。
そして、魔女と交わい穢れた者も、全て魔女だ!」
「!者ども!こやつを殺せ!今すぐだ!」
衛兵は武器を構える。
【ライトニングディメンション】
テレンスは、ぐるりと自身を囲うように空間を引き裂く。
この世には決して存在できない電圧が、謁見の間を駆け巡る。
兵士も国王も、叫ぶ間も無く蒸発した。
「魔女…殺す…魔女…殺す!」
【エアディメンション】
亜空間より、ひとかけらの圧縮された大気が零れ落ちる。
大気はすぐに爆発し、謁見の間を破壊し、
テレンスを城の屋根の上まで運んだ。
城の頂点に取り付けられた、不自然な柱。
テレンスがその外装を引きはがすと、
ケーブルまみれの魔女が姿を現した。
【ハイドロディメンション】
空間の僅かな亀裂から、高圧の水が噴き出す。
それは刃の様に、魔女を切り刻んだ。
「魔女…!」
テレンスは、すぐに次の魔女の気配を察知する。
「あっちか!」
【エアディメンション】
召喚された圧縮大気が爆発し、テレンスはその揚力で天を翔けた。
~~~
「お姉ちゃん。」
「何?」
「お城があるね。」
「ね。」
「お姫様がいるのかな?」
「いたらいいね。」
「ね。」
双子が城を通り過ぎようとした時だった。
「魔女おおおおおおおおお!!!」
絶叫しながら、テレンスが降り掛かってきた。
「わぁ」
「ふしんしゃさんだぁ。」
2人は別々の方向に避ける。
「魔女…殺す!殺す殺す殺す殺す殺すうううううううう!」
「正義の味方かな?」
「さあ。」
【ダークディメンション】
切り裂かれた空間から、全てを分解する闇が噴き出す。
「【ポジティブシェル】」
妹、ピコの魔法。
光り輝く貝殻の壁がミリとナノを護る。
水、風、岩、光、然、
五つの複合属性からなる、防御魔法の頂点だ。
「【ネガティブブロークン】」
姉、ナノの魔法、
赤い稲光を纏った黒い魔弾。
火、雷、闇の三つの複合属性の、
破壊魔法の究極系だ。
「効かぬわああああ!」
【ロックディメンション】
引き裂かれた次元から、岩壁が覗く。
地下の壁をどれだけ攻撃しても突破できない様に、
亜空の岩壁が破られることはなかった。
「お姉ちゃん、あの人ずるいよ!」
「属性いっぱいでずるい!」
「お互い様だろうがああああ!」
【パイロディメンション】
「【ポジティブシェル】」
「【ネガティブレイン】」
亜空の極炎は防護の貝に遮られ、
空からは赤い稲光の魔弾が、雨の如く降り注ぐ。
平坦な草原は削れ、
でこぼこの地面に変わっていく。
魔弾を浴びた城は壊れて、
崩れ、
なおも魔弾を浴び、粉々になった。
~~~
「またいつでも来てくれ。
次までには、君のお城に負けないくらいの物件を用意すると約束しよう。」
ニルキキキキさんに見送られ、ボクはサバトを後にする。
"悪魔は魔女を助けない"
帰りの合言葉を思い浮かべると、
ボクは石碑の前に戻っていた。
石碑のルーン文字は消えてる。
いい所だった。
今度はフレイちゃんも連れて行ってあげよう。
さて、帰ろう。
愛しの我が家、幽霊ちゃんから相続した大切な我が家に。




