聖国解体工事
“英雄ダルタンの物語”と言う御伽噺がある。
普通の騎士だったダルタンが、仲間達と共に破壊の魔女ルイカーを倒すまでのお話だ。
聖騎士ダルタンは子供たちのヒーローとして、また聖騎士の規範として、今でも脈々と語り継がれている。
聖騎士タルナはダルタンの子孫だ。
聖騎士学校で剣を学び、
卒業後は実動部隊で活躍し、
現在は祖国を守るために街を駆けている。
「クソッ!どこもかしこも魔女だらけだぜ!どうするタルナ!」
「まずは部隊と合流するぞ!単身じゃ魔女には勝てない!」
タルナは学生時代からの戦友、カシャンと共に、
騎士団本部を目指していた。
「よし、この角を曲がれば」
聖騎士団本部、聖サエートンナトリクス教会は、
「教会が…」
崩れていた。
「ざ〜こざ〜こ♡ざこ騎士団♡
よわよわアーマー♡
ほそくてちっさい剣♡
鉄くっさいだけの弱虫軍団♡みんな壊れちゃえ♡」
魔女が居る。
金色のツインテール。
青色の瞳。
汚れた白いワンピース。
12才の少女の容姿。
破壊の魔女ルイカー。
400年前、ダルタンが討った魔女だ。
「うん?
くんくん♡くんくん♡
あっれれ〜?ダルタンの匂いがする〜♡」
ルイカーはタルナに気付く。
「だーるたん♡また遊ぼ♡…ってあれ?ダルタンじゃ無い。
そりゃそっか。フツーの人間は130歳が限界らしいからね。」
次の瞬間、ルイカーを中心に爆発が起こる。
「危ない!」
カシャンはタルナを突き飛ばす。
「あーもうムカつく!
せっかく殺してくれると思ったのにぃ!
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくぅ!」
彼女の癇癪をトリガーに、
ルイカーの破壊魔法が発動した。
「カシャン!」
タルナは相棒に駆け寄る。
「へ…へへ…右半身に食らっちまった…」
「待ってろ。今手当を…」
「俺の事は…良い…お前は…奴を止めろ…」
「でも!」
「…お前は強い…タルナ…ダルタンを超えるんだ…タルナ…お前ならできる…」
カシャンは、タルナの胸に拳を当てる。
「気張っていこうぜ…相棒…」
それがカシャンの、最後の言葉だった。
「カシャン?カシャン!カシャああああああああああん!」
二人の立っている場所が赤熱していく。
「クソおおおおおおおおお!」
タルナはカシャンを置いて、
その場から退避するしかなかった。
地面が爆発する。
火属性を元にした、
ルイカーの破壊魔法だ。
「るっさいわね。何事?
てかキミ、よく見たらダルタン似じゃない。
兄弟?息子さん?孫?子孫?」
「許さない…」
タルナは剣を拾い、構える。
「お前を、絶対に倒してみせる!」
「よわよわナイトがなんか言ってる♡
かわいいね♡」
街のあちこちが赤熱し始める。
「うおおおおお!」
タルナは駆け出す。
「くっさ♡泥くっさ♡人間くっさ♡
なにそれ特攻?だいじょうぶ?おにーさん?脳みそある?」
ルイカーは指を振る。
二人の間に炎塊が現れ、
爆発する。
「きゃはは♡ルイカーちゃん、ダルタン以外にはきょーみないの♡しんじゃえ♡」
爆風を切る様に、銀の輝きがルイカーに迫ってくる。
全身にやけどを負い、なおも進むタルナがそこにはいた。
「やああああああああああ!」
タルナはルイカーを、
首から脇腹にかけて深々と切りつけられる。
「ごはぁ!?…はは…きゃはは♡」
ルイカーは、タルナにデコピンをする。
当たった部分が爆発し、タルナは吹き飛ばされる。
「こーんな攻撃で倒そうだなんてむりむり♡
こう見えても、ルイカーちゃんはこの国より年上なんだよ♡敬え♡」
「…誰が…!」
剣を杖に、タルナは立ち上がる。
「あれあれ♡まだ立つのぉ♡すっご〜い♡」
「お前なんかを敬うか…!」
「がんばれ♡がんばれ♡
ざこざこおにーさんがんばれ♡」
「お前なんかに…負けるかああああああ!」
タルナは、再びルイカーの元に走っていく。
「きゃは♡よわよわ知能♡おさるさん未満♡
何度来ても同じなのに♡」
再び、二人の間に火球が現れる。
「ざ〜こ♡」
火球が爆発する。
だがその向こうにタルナは居なかった。
「はれ?」
「そこだああああああああ!」
次の瞬間。
ルイカーのみぞおちから剣が突き出る。
背後から刺されたのだ。
「っか…きゃははははは♡いった〜い♡」
ルイカー自身が輝きだす。
危険を察したタルナは、剣をそのままにし後退する。
ルイカーが爆発する。
溶けた鉄片が飛び散る。かつて剣だったものだ。
共鳴する様に、周囲も次々と爆発する。
「んも〜♡
不意打ちなんて〜♡
おにーさんずる~い♡」
ルイカーの髪が白色に輝いている。
彼女はタルナ認め、舐めプをやめた。
「おにーさんはぁ、ルイカーちゃんをわからせられるかな?」
~~~
瓦礫の中。
静かな場所にうずくまり、
未来視の魔女ゼンサカンは考えていた。
彼女は何者か。
ゼンサカンは盲目だったが、
光の魔力によって常に未来を見る事ができたので、
視力は関係なかった。
しかし褐色の魔女に助けられてからと言うもの、
未来が不確定になってしまった。
数時間後の未来が見えたかと思えば、
数分もしない内に揺らぎ、別の未来へと変わる。
「!?」
そして、何も見えなくなった。
(…そう。分かったわ。)
元々、自分には過ぎた力だった。
ゼンサカンは白杖代わりの材木を持って立ち上がると、
先の見えない人生を楽しむことにした。
「いたぞ!魔女だ!」
「弱そうなやつだ。盲目か?
倒して手柄を立てるぞ!」
不意にゼンサカンの頭の中に、目の前の騎士がこれからとる動き全てが浮かび上がってきた。
弱体化されたが、ゼンサカンはまだ未来視の魔女だった。
「クソ!全然当たんねえぞ!」
「どうなってんだ!?
こいつ何一つ見えてねえ筈なのに!」
~~~
「あり…えねえ…このアタシが…」
また一人、魔女が切り伏せられる。
「国中魔女だらけだ。
だが、どれも魔導具だった者ばかり。
ならばもう一度倒せばいいだけだ。」
短い金髪。
青い瞳。
美青年。
聖騎士の鎧を纏い、
なびくは騎士長の証たる青いマント。
聖騎士団長フローレンス。
討った魔女は100を超える。
聖国最強の騎士だ。
「次か。」
フローレンスは振り返る。
魔女がいた。
艶のある長い黒髪。
赤い瞳の流し目。
10歳くらいの小さな体躯。
身体にはどこかの家のカーテンを巻いている。
妖火の魔女トコヒウ
魔女を排他しないと言う邪教蔓延る、
極東の国より現れた魔女だ。
「僕ともう一度戦うつもりか。トコヒウ。」
「久しぶりじゃなぁ。フローレンス。元気にしとったか?」
フローレンスは、静かに剣とボウガンを構える。
「おやおや。感動の再会じゃのに。
穏やかじゃ無いのぅ。」
トコヒウの左半分が桃色の炎に包まれる。
妖火を帯びた部分から、炎の耳と5本の尻尾が現れる。
その容姿は九尾の狐を連想させる。
「外交のためと呼びつけちょいて、
いざきてみりゃ突然襲われ、気付けば暗い機械ん中。
わしとて怒るぞ?
それに貴様らの愚行を知れば、極東も黙ってはおらぬ。」
「ふ…ふはははははははは!」
「なんじゃ。何がおかしい。」
「お前の言う通りだ。
大人しくしていれば良いものを…ジパニグは、
あろうことか我が聖国に宣戦布告した!
貴様を渡さなければ力づくで奪い返すとな!」
「まさか、お主ら…」
「今降伏すれば機械に閉じる前に、
もう一度だけ故郷に連れて行ってやってもいい。
もっとも、あるのは瓦礫の原野だけだろうがな!」
「貴様ああああああああ!」
トコヒウの体が完全に炎に包まれる。
顕現したのは桃色の炎の九尾。
「骨すら残さず焼き殺してくれよう!」
トコヒウはフローレンスに飛びかかる。
フローレンスは炎の中に手を入れ、
身を捕まえる。
「な!?貴様、何故焼けぬ!?」
「人は進歩するのさ。お前ら魔女とは違ってなぁ!」
剣をトコヒウの身に突き刺す。
「ごほっ…!?」
二度。
「がひっ!?」
三度。
「うぐぇあ!」
炎が剥れ、
腹や胴に刺突を受けたトコヒウが姿を晒す。
「ま…魔力の鎧だと…何故ただの人間が…」
「魔女を殺せるのは魔法だけ。
ならば貴様らの力に頼るのも、道理と言えよう。」
フローレンスはトコヒウの頭を掴み、
首と胴の間に剣を刺す。
「っか…」
血を吹き出しながら、
トコヒウは倒れた。
「もっとも、武器への付与はまだまだ手間だがな。」
魔力の無い剣で刺されたので、
トコヒウは死なない。
神経を断ち切られ動けなくなっても、死ねなかった。
「次は誰だ。」
「ボクで良い?」
「!?」
倒れたトコヒウの少し後ろに、魔女がいた。
銀の髪、銀の瞳、褐色の肌の小柄な魔女。
すぐ近くに居たのに、気配を全く感じなかった。
「貴様が主犯か。」
「うん。そうだよ。
じゃあ次はボクの番。
どうして魔女を嫌うの?何が憎い?
ボクが、彼女達が、何か悪い事をしたの?」
「貴様らの罪は存在そのものだ。
人の身でありながら魔法を使い、
定められた寿命すらも無視する。
貴様らは神の意志に相反する歪んだ存在だ。
駆逐する理由としては充分だろう!」
「そう。分かったわ。ありがとう。」
会話が終わる。
フローレンスは倒れるトコヒウを踏み潰しながら、
褐色の魔女に斬りかかる。
「だめ。」
魔女を囲むバリアが現れる。
剣は、バリアの石のような表面に当たる。
「ぐあ!?」
剣は飛び、
フローレンスは手首を捻る。
「だめじゃないか。人を踏みつけるなんて。」
魔女が手に持つ錫杖で、
フローレンスを殴打する。
でたらめなエネルギーがかかり、
フローレンスは高速で吹き飛んだ。
「がっは!?」
彼がぶつかった建物の壁に丸い跡ができる。
魔力の鎧は物理的に破壊された。
褐色の魔女は、
錫杖の先をトコヒウに当てる。
白色のエネルギーが流れ、
彼女の傷はみるみるうちに再生した。
「…わしだって故郷は大事じゃった。
祖国を奪われる悲しみ、お主にも分からせてやろうぞ。」
トコヒウは立ち上がる。
褐色の魔女はそれから、
付近に倒れている魔女を次々と復活させていく。
獣相の魔女グレプ
竜体の魔女ヨオ
熱の魔女ウェプタン
剛破の魔女ジェリ
皆、炎か然の属性を持っていた。
特定の属性の遮断。
それが、ローレンスの鎧の魔法の正体だった。
「そんなに魔女が憎いなら、嫌いなら、何度だって倒せる様にしてあげる。
ただ、彼女たちもあなたの事がすごく憎くなったでしょうけど。」
〜〜〜
ミンチにされる聖騎士を肴に、
ボクは魔力ポーションを嗜む。
強い聖騎士がいるのかと思ったら、
ただメタってはめ殺しにしてただけだった。
別に彼の戦法は否定しない。
前世のボクもガンメタ作戦は愛用してたし。
ただ、メタ戦法には二つくらい弱点がある。
想定外の事態に弱いのと、
今みたいなボスラッシュのステージだとぜんぜん役に立たない事。




