ワルプルギスの昼
荷馬車を引き、
ボクは林道を行く。
「止まれ。この先は立ち入り禁止だ。」
「待て。
貴様、さては魔女か!?」
途中で二人の兵士に止められたので、
【テヘロの礫】
"小石"を投げて追っ払った。
森を抜け広場に出る。
地面に石畳の円盤が埋めてあり、
円盤には魔方陣が刻まれている。
転移魔方陣。
各地と聖都を繋いでいる。
この魔方陣も、魔女の犠牲によるものだろうか。
ボクは荷物ごと魔方陣に乗る。
円盤が光を放つ。
光が晴れると、
ボクは聖タルチスタン王国に着いていた。
脇には壁の様に立ち並ぶ、中世風の建物。
ボクは一直線に城へと続く道の始点に立っている。
人々はボクを見るなり一瞬だけ見とれて、
直ぐに恐れおののき始める。
「きゃあああああ!魔女よ!魔女が出たわあああ!」
「魔女が出たぞおおおお!」
「今すぐ聖騎士団を呼べ!」
騒ぐ民衆そっちのけで、
荷車を引き、進み始める。
元炎の巨人のスクラップ、重い。
「待て!」
「悪しき魔女め!よくもぬけぬけと現れてきたな!」
「木に吊るして晒してくれる!」
「………」
ボクは荷車の紐を離し、
踵を返す。
「あなたたちのでしょ。
返しに来たわ。」
「待て!逃がすと思うか!」
騎士の一人が走ってきて、剣を振る。
当然シールドで防ぐ。
かかった。
大義名分のご提供、
誠にありがとうございます。
「ボクはただ君たちの置いてった武器を、わざわざ、親切に、返しに来ただけなのに、
お礼の一つも無いどころか刃を向けるとは。」
杖を振る。
壊滅の息吹が吹き荒れる。
「ぎゃああああああ!」
「ぐあああああああ!」
息吹とは名ばかり。
実際はトラックが衝突してくるようなもの。
ボクの魔法は、物理現象を魔力で引き起こすだけだ。
「このボクに刃を向けた事、後悔すると良いわ。」
杖を掲げ、
巨大無属性魔弾を天に撃ち放つ。
【テペトの流星】
魔力の9割持ってかれた。
でも相応の効果はある。
特に、敵陣で放つとね。
青空の向こうから沢山の魔弾が降ってくる。
大気圏に突入する時に熱を持ち、まるで本物の隕石みたい。
ボクの目の前の地面に、炎の渦が現れる。
炎は形を成し、二足歩行の牛みたいな、巨大な魔獣になる
フレイちゃんの眷属だ。
良いなー。
ボクもこう言うの欲しいなー。
都を隕石と魔獣が蹂躙する。
「獣は隕石とは別種の魔力だ!術者を探せ!」
「クソ!あの褐色女はどこ行った!」
王都は大混乱。
みんな獣と星に夢中。
誰もボクには構えない。
「わ。二度と開かないように溶接してある。」
縦横無尽に国を行き、
魔道具を壊して回る。
「うあ…?」
「もう大丈夫だよ。」
ノードレンズで魔女の場所はすぐ分かる。
「おかしいです。わたくしの見た未来では、もう二度と誰も解放されない筈です。」
「ボクはね、運命よりずっと自由なの。」
解放された魔女はわりかし元気だった。
意外。
「あの野郎ども…遠慮も無しにズカズカ電気使いまくりやがってえええええ!」
フレイちゃんはレアケースだったみたい。
みんな、国外で捕まって魔道具にされたらしい。
「うええ~?何で出ないといけないの~?
永遠に寝てるだけで良いって言われたのに~」
「よもや東国の将軍家たる妾に、このような仕打ちとは、
随分度胸のある国ですね。」
どうやら、魔女嫌いでない国もあるらしい。
「あんな姑息な手に引っかかったばっかりに…人生棒に振るところだったわ…
ありがとう…綺麗な魔女さん…」
「許せない…人の事を4000年も閉じ込めるなんて…!」
魔女達はケーブルを吐きながら、
その辺から服を物色し、
続々と暴れ出す。
かつての聖タルチスタン王国は、
沢山の美少女が跋扈する極楽浄土ゲフンゲフン総勢107体の怒れる魔女が暴れ回る地獄になった。
〜〜〜
聖騎士ビルが緊急招集に応じて帰国する頃には、
祖国は変わり果てた姿となっていた。
「節電しろやカス共がおるああああああああ!」
教会の屋根の上では業雷の魔女バルが、
そこら中に落雷を降り注がせている。
彼女は先代の騎士団長が討った筈だ。
「冷蔵庫…?
そんなに寒いのが好きなら、
いくらでも冷やしてあげる!」
大通りは、氷雪の魔女セーシートによって雪と氷に閉ざされている。
彼女は400年前に討たれた魔女の筈だ。
そして、
「ラクトムラクトム!?何故!?」
箒にまたがり遥か高空を飛翔する、亜空の魔女ラクトムラクトム。
かつてビル自身が討った魔女だ。
「ビル?」
ラクトムラクトムは、
かつてのライバルを見つけ降下してくる。
「久し振りね。ビル。
随分と男らしくなじゃない。」
紺色の長い髪。
深い藍色の瞳。
抜群のプロポーションを備えた体躯。
服装は、ビルの記憶にある様な壮麗なローブではなく、
裸の上からオーバーサイズの男物シャツ1枚。
「君は出会った時から変わらないな。ラクトム。」
ビルは懐かしさを感じつつも、静かに剣を抜く。
「済まない。
この世界に、君達魔女の居場所は無いんだ。
どうか天国に帰ってくれないか。」
「そんな場所には行けなかったよ。ワタシも、誰も、ね。」
ラクトムラクトムの周囲に、四枚の魔法陣が展開される。
「さ、せっかく復活できたんだ。また昔みたいに戦おうじゃないか。」
魔道具の正体は魔女だった。
この真実は、一握りの上層部しか知らない。




