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ややロンリーな魔女

山頂。

ボクのすぐ後ろには、胸に物理的に穴が空いた魔女二人。


どこからかカラスが飛んできて変身する。

ニルキキキキさんだ。


「やあ。ヤコエ。」


「魔女の情報網は凄いのね。」


「聞いたよ、黒淵会を敵に回したそうだね。」


「うん。人間を撲滅とか言ってたから、ボクの方から願い下げたよ。」


「君らしい動機で安心した。

私は君が好きだ、だから警告しておく。

できれば。暫くは他の魔女と関わらないほうが良い。

サバトのも魔道具あがりのも博物館のもだ。

黒淵会に歯向かった時点で、君はもう魔女社会から追放されたも同義だからね。」


「それをわざわざ伝えに来てくれたの?」


「君は私の恩人だ。」


ニルキキキキさんはそれだけ言うと、

カラスになって飛び立った。


唯我の魔女には孤独がお似合いってか。

ふん。いいもーんだ。

ボクはイケメンと美少女の味方だから、ほっといたら死んじゃう方の味方をするもーん。


…はぁ。

もしかして、ボクまたホームレス?

完全に路頭に迷ってしまった。


ふと麓を見下ろすと、崩壊した国が見えた。

仕方ない。

暴走ウィッチとっちめ作業を始めるか。




〜〜〜




瓦礫と化した街。

男が一人、重傷の少女を抱きながら歩いている。

男自身も重傷で、立っているだけで奇跡に等しかった。


博物館の大奔流から一ヶ月。

暴れ狂う魔女達は次第に世界全土に拡散していき、地上は人の住める環境では無くなった。


「ここもダメか…」


男は、物理的に潰れた病院に忌々しく吐き捨てる。


「お兄ちゃん…寒い…」


「待ってろ、すぐに治してやるからな。もう少しの辛抱だ。」


男は根も葉もない鼓舞で少女を励ます。

少女の頭からの流血が、もう長いこと止まっていない。


「…なあ、神様。散々お前の事を信じてきたじゃねえか。

ちゃんとお前のいう通り、魔女を悪魔の化身と見なして排除してきたじゃねえか!

こんな時くらい助けてくれよな!なあ!?」


街は機能停止。

国を出たとしても、待っているのは未開の原野のみ。

もはや希望など無い。


不意に、男は背後から生暖かい風を感じた。

男は恐る恐る振り返る。

そこにいたのは魔女の獣、魔獣だった。


“グゴオオオオオオ!”


鹿の角が生えた紫色の熊。

とうてい人類の理解の及ばぬ存在。


「ここまでか…ごめんな…アンナ…」


男は、腕の中の妹に謝罪する。

一方アンナは意識を失い、ゆっくりと死出の道を辿っている最中だった。


「大っ嫌いだ…魔女も神も…みんな…」


男は目を閉じる。

生暖かさが男を取り囲んだ。


「…ん?」


男は目を開ける。

魔獣は倒れていて、男はそれの腹に空いた、大きな穴の中に立っていた。


「こんな時に外を出歩くなんて、危ないわよ。」


魔獣が遥か後方まで飛ばされる。

殺害した張本人によって蹴り飛ばされたのだ。


男の前に現れたのは、褐色肌が目を惹く小さな魔女だった。

見た目年齢は、腕の中の幼い妹と大差無い。

だがそれが放つ貫禄は、雄大な山々か、或いは人類より前から存在する巨木か、計何か大きな計り知れないものの様な気配を漂わせていた。


「魔女…なのか?」


「さあ。正直、最近はボク自身もそれを疑っているよ。」


魔女は、手にしていた錫杖を二人に向ける。


「何をするつもりだ。」


当然ながら、男は警戒する

白い稲光と共に、二人の傷はみるみるうちに癒えていった。


「…すぅ…すぅ…」


アンナは体温と寝息を取り戻す。


「…お前、人間を助けたのか?何故。」


「なぜ、ね。つい二ヶ月くらい前までは普通の人間だったからかもしれないし、或いは…」


上空からの声が、魔女の言葉を遮る。


「おい異端の魔女!よくもウチの可愛い召喚獣をぶっ殺してくれたな!覚悟しやが…」


銀色の光線が、空飛ぶ魔女の心臓を貫く。

魔女は墜落した。


「ボクが異端だからかもしれない。とりあえず、恩を売ってどうこうしようとか、君達を騙してやろうとか、そういう気は一切無いから安心して欲しい。」


魔女はそれだけ言い残すと、立ち去ろうとする。


「ま…待て!」


「?」


現在、世界全土が危険地帯だ。

このまま何も手を打たなければ生存は絶望的。

なので男は、賭けに出た。


「お前が異端だと言うのなら、人の味方をするのだと言うのなら、証明して見せろ。」


「証明?」


「お前が創るんだ。人の為の場所を。」


「それ、採用。」




〜〜〜




魔女を狩ってたら、道中で人間を保護できた。

お兄さんと妹さんかな。


お兄さんの方、ぶっちゃけすげータイプだ。

きれいな茶髪。

青い瞳。

ザ・主人公って感じがたまらん。


飢えすぎてボクの目の方がおかしくなった説も否定できないけど、

仮にダメだったとしても、ポイして次探せばいいだけだからね。


さーて、そんじゃ早速…


あれ?

男の人ってどうやって口説くんだっけ?


「どこまで行くつもりだ?」


お兄さん(仮称)の一声で我に帰る。

気付けば国を抜けて、ボクらは平野を歩いていた。

どうりで足の裏がくすぐったいわけだ。

夕日も沈みかけ、まもなく夜がやってきそう。


「もう遅いし、今日はここで野宿しよっか。」


ボクは伸びをして、草はらに寝転がる。


「あいにく、ボクはこの身この服この錫杖以外何も持ってないんだ。

布団がない代わりに、寒くなったらボクにくっついていいよ。温めてあげる。」


「はぁ?お前一体何言って…ッチ、話にならない。」


お兄さんは妹さんを連れて、どっか行こうとする。


「本当に大丈夫?

いくら国外とは言え、今は世界中に魔女が蔓延っている。

ボクと言う究極無敵の味方無しで、次の安全圏が見つかるまで、

あなたたちだけで生き延びられるのかしら?」


「………」


少し考えた後、お兄さん達は戻ってきて、ボクのすぐ横に寝転がった。


「お前は何なんだ?魔女達から追放されたのは、その人間好きが原因なのか?」


「まあね。でもボクからしてみれば、異常なのはこの世界の方だと思うよ。

魔法が使える不死身の美少女だからって、どうして人と敵対しなきゃいけないの?

本当にバカらしい。」


「何言ってる。それが当たり前の事じゃないのか?」


「どうして?」


「は?」


「どうして、それが当たり前だと思うの?」


「それは…」


沈黙。


虫の声が心地良い。

街明かりに邪魔されない星空も綺麗だ。


「…確かに。なんでだろうな。」


「当たり前を疑うのは大事な事よ。

もっとも、ボクはそれで異端者になっちゃったんだけどね。ふふ。」


お腹に重たくて暖かい物が乗る。

お兄さんが抱えていた妹さんだ。


「むにゃむにゃ…お兄ちゃん…」


そこで初めて、ボクが結構冷えてる事に気付いた。

まあ、ずっと下着同然かそれ以下の格好だし、当然っちゃ当然か。


「ボクを信用してくれたって事でいい?」


答えはない。

見ると、お兄さんはもう気持ち良さそうに寝息をたてていた。


「人間の居場所、ねぇ…」


そんな物、果たしているのだろうか。

国があって、人が居て、魔女が居る。

それで良いのでは無かろうか。

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