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マイネームイズ

原獣(げんじゅう)の魔女グレイア。

虚構の魔女エシェンテ。

渦の魔女アンダルシア・レヒューテン。

灼炎の魔女ガリカリウス。まじか。

可能性の魔女ゴア。

糸と樹脂の魔女カナレリ。

原空(げんくう)の魔女メリエダ。

永劫錯視の魔女ナミュレート=デジュエール。肩書きが一番仰々しい。


「このような簡単な自己紹介になってしまい、申し訳ございません。

魔女はあまり己が素性を明かしたがりませんので。」


それなら仕方ない。

君が謝ることじゃ無いよ、ラクトムラクトリちゃん。


「では、あなたのお名前も。」


よしきた。


「ボクに名前は…」


…?


ボクの名前は…


名前…


あれ?


ボクって…誰?




ボクの…名前…







「オマエのコトは知っているぞ…」


発言したのはメリエダさん。

黒いノイズが一番濃くて、人型なのかすら怪しい。


「ボクを?」


「ある日突然現れた…未来も過去も観測できぬ魔女…

オマエの名…無いなら付けてやろう…

オマエの名は…唯我(ゆいが)の魔女ヤコエ…」


ヤコエ?

ボクの体の名前、アルトリエル・ウォム・ヤコーエからとったのかな?


「どこでその言葉を?」


「何となく…思いついただけさ…」


ヤコエ。

ボクの名前。



「いい名前ね。ありがとう。

では改めまして。

ボクの名前は唯我(ゆいが)の魔女ヤコエ。

よろしく。」


「これからよろしくお願いします。

ヤコエさん。

では早速、今回の議題を発表致します。

いかなる方法を用いれば人類を殲滅できるか、です。」


…ん???


「やっぱ大災害っしょ!大自然の前には、人なんてゴミ同然よ!」

「それだと人間以外に対する影響が大き過ぎます。ここはやはり疫病かと。」

「逐次処理が一番だと思う。時間はかかるけど、魔女の命は永遠よ。」


こいつらは一体何を話しているの?


「ヤコエさん、あなたも何か意見はありませんか?」


意見?ありまくり。

でも判断を下すのはまだ早い。

もしかしたら悪質な新人いびりかもしれない。


「一つお聞きしても宜しいでしょうか。

…本気ですか?」


「ええ。

人類の根絶は、全ての魔女の悲願です。

魔女と言う完全生命体を創り出した今、プロトタイプである人間はこの世に不要な存在。

人類もその事を認知し、受け入れる事が出来ないから、我々を迫害するのです。」


「でも魔女は人から生まれる。

人がいなくなってしまうと、魔女も生まれなくなってしまうわ。」


「面白い事をおっしゃるのですね。

不滅で完全なる存在の魔女がもう増える必要ありません。

人と魔女の無益な争いに終止符を打つためにも、奴らの撲滅は最優先事項です。」


「そう…ですか。」


そうか。

これが、“魔女”か。


「…ボクには、夢があります。

イケメンな旦那様を見つけて結婚がしたいのです。

人類の絶滅は同時に、この世の宝たるイケメンの喪失も意味します。

そうなってしまえば、ボクの願望は永遠に叶わなくなってしまいます。」


ゴアさんも発言する。


「そうだよ。

やっぱり根絶やしはダメ。

少しは奴隷として飼育しておかないと。」


さすが可能性の魔女…と言いたいところだけど、

それじゃダメだ。


「夫婦って言うのはお互いが対等な関係で、

お互いの同意の上に成り立つ関係。

例外は存在しません。断じて、絶対に。」


魔女たちは無口。

でも、空気が張り詰めていくのがよく分かる。

構うもんか。


「ボクは人類の撲滅にも、奴隷化にも反対する。

ボクは共存の道を探したい。」


暫しの沈黙。


「ふ…ふふ…はははははは…ひひひははははははは…!」


笑いだしたのはメリエダさん。


「良いね!オマエこそ真の魔女だ!

知っているぞ…オマエは…こんなところで群れる必要の無いくらい強い!」


ラクトムラクトリさんのため息。


「分かりました。どうやらあなたの思想は、我々とは全く異なるようです。」


ボクは席を立つ。


「ねえ…ヤコエちゃん。」


引き止めるのはなみゅちゃん。


「ごめんね。せっかく仲良くしてくれたのに。」


「良いの。魔女は魔女らしく自由に生きるべき。

でも、できればだけど、もう二度と顔は見たくないかな☆☆☆」


鼻で笑う音。

ガリカリウスさんだ。


「お前の人間嫌いはよく知っている。

だがそやつは余の恩人。

あまり言い過ぎないでくれないか?」


割って入るのは原獣の魔女。


「ほぅ。お前らがそこまで評価するなんて珍しい。

少し、興味が湧いちまったよ。」


グレイアさんは、案の定の戦闘狂か。

なんとなくそうだろうなとは思った。


「素敵な名前をくれてありがとうございます。

大切にしますね。それでは。」


「さようなら。ヤコエさん。あなたの旅路に、幸あらん事を。」


「ばぁい。」


さて、ここで問題です。

ボクと彼女たちは、たった今(たもと)をわかちました。

そしてここは、誰が作ったとも知れない異世界です。

この後に起こる事は?

そう、バトルですね。


魔法陣がボクを取り囲む。

放たれたのは、空間をねじって作った棘。


【セレスティアの盾】


あっさり貫通。


あっさり貫通!?

やばい!


バク転で回避する。

かなり危なかった。


「盾を貫通すれば良いと聞いたのですが。」


ラクトムラクトリさんの声。

この棘も空間もあの子の魔法か。


「情報通なんだね。

誰に聞いたのかしら。」


ノイズ魔女が挙手する。

あの位置はガリカリウスさんだ。


「ふふ。素直だなぁ。」


もう一回盾を焚く。


“カコキンッ!”


気持ちいい音をたてて、なみゅちゃんのナイフがジャスガされた。


「ふええ!?何でわかったぽよ!?」


「勘。」


なみゅちゃんを蹴り、遠くまで吹っ飛ばす。

いくら大魔女といえど、基本的には接近戦が弱い。


もう一度棘が伸びてきたので、

ボクは小走りで移動する。


相手は二人。

なみゅちゃんとラクトムラクトリさん。

本当の意味でこの場にいるのは、この二人だけなのか。


いて。

何かに当たった。壁?

後退してみても、壁。

いつのまにか天井もできてる。

机のある場所以外黒塗りでよくわからないけど、

ボクこれ閉じ込められてない?


「ブロック状に圧縮して差し上げます。

あなたの活動は今後、我々の障害になること間違い無いので。」


「流石はこの空間の支配者。

チートじみてますね。」


「ちいと?それは一体…」


「実演してあげる。」


魔女の作る亜空間は、部屋というより小さな宇宙。

右に進み続ければいずれ左から戻ってくる。

状況に惑わされず、冷静に分析すると解る。

この壁と天井は亜空間の機能じゃない。

棘と同じ、ただ召喚されただけのものだ。


【ドミネウスの咆哮】


障害はあっさり破壊される。

やったね。


「現実離れした判断能力、デタラメな魔法、どちらも話に聞いた通りです。

やはりあなた、只者では無いようですね。」


ひゅう。

褒められちゃった。

嬉しいねぇ。


「ボクのことを評価してくれるのは嬉しいけど、言ってる場合かな。」


恐らくなみゅちゃんの魔法は、自分という存在を一時的に認知できなくするもの。

姿を隠している間は、なみゅちゃんと言う魔女がいた事すら思い出せなくなる。


“カコキンッ!”


つまり、なみゅちゃんって単語が頭の中に復活した瞬間がガードタイミング。

1回目は変な気持ちになったけど、慣れてみるとタイミングがはっきりしてて楽チンかも。


「ふにえええ!?またぁ!?」


目立ちまくるアイドルキャラとは真逆の、王道アサシンスタイル。

そういうギャップ、ボク好きよ。


「永劫錯視って、もしかしてそういう事?」


「さ…さ〜ど〜だろ〜ね〜☆」


棘が伸びる。

(ひらめ)いた。

なみゅちゃんが霧に消える前に掴み、棘に放り込む。


「はい!?」


霧に隠れるだけなら、認識できなくなるだけなら、

実体が消える訳ではない。


「ふぎぇ!」


魔法陣から伸びたいくつものトゲに体を貫かれ、

なみゅちゃんはその場で串刺しになった。


「自身に対する認識を意のままに操る魔法。

確かにアイドル向き、永劫錯視だね。」


「ほ…ほげほげほががが!」


後頭部から喉を貫通して口から出る棘のせいでうまく喋れてないみたい。

咄嗟の配慮か、脳みそはぎりぎり無事みたいだ。

にしても痛そー


「冷徹で最高効率。

悪魔の様な戦いぶりですね。

一体どんな場所で鍛錬したら、その様な戦闘方法が身に付くのでしょうか。」


「やばい存在と戦い続けていれば、

自然とタイムパフォーマンスは良くなるものさ。」


ボクは、錫杖でなみゅちゃんの心臓を貫いた。

フレンドリーファイアを狙うのも多数戦の醍醐味ね。

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