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黒淵会

クラシックを奏でるレコード。

淡い照明。


ワイングラスを片手に、

サバトの摩天楼を見下ろす。


優雅な夜のひと時の中、ふとボクは思った。


「こんな事してる場合じゃない!」


新居が手に入って浮かれてたけど、

肝心の婚活がまだ始まってすらいない!

これじゃあタイトル詐欺の容疑で逮捕されちゃう!


もう女の子で良いかな…

いや、対象としては全く問題無いんだけど、

それだとボクの未練が晴れない!


美少女も良いけど、

ボクはやっぱりイケメンが好きなんだー!


ワイングラスのブドウジュースを飲み干す。


不死身の魔女に食事の必要はなし。

無国籍だから納税の義務もなし。

なので働く必要なし。


ここまでは良い。

でも、問題はここから。


ボクのせいで今世界中がめちゃくちゃらしい。

奔流で解放された魔女が暴れまわり、聖国は順次壊滅。

イケメンはおろか、このままじゃ人類滅亡の危機!

モタモタしてたら永遠に嫁げないよ!


こうしちゃいられない。

すぐに暴走ウィッチをとっちめに行こう!


杖を手に、ボクは家を飛び出し、


「へぶし!?」


何か硬い物に衝突した。


「ひゃう!?

何すんのよヘンタイ!」


「なんだ、ルイカーちゃんか。

もしかして引越し祝いに来てくれたの?」


「なんだとは何よ!

はぁ…ルイカーちゃんは親切だから、手間を惜しんでおねーさんにお届け物を届けに来てあげたのよ。」


ルイカーちゃんは白い手紙を差し出す。


「ラブレター?」


「招待状。おねーさん充てよ。」


「ボクに?」


「"向こう"がまだおねーさんの所在を特定できてなかったからね。

ししょー経由でルイカーちゃんに届いたのよ。

悔しいけど、妥当だと思うわ。おめでとう。」


「おめでとう?」


招待状を開いてみる。


黒淵(こくえん)会。

サバトとはまた別なのかな。


「何これ。」


「最古の魔女の一人、ラクトムラクトリが主催するお茶会みたいなものよ。

強い魔女を集めて、色々話し合うんだって。

この会に呼ばれる事は、魔女としてはこれ以上ないステータスよ。」


つまりはエリートの仲間入りって訳か。

素晴らしい。

地位と名声があれば、多少のダメ男くんがやってきても許容できるようになる。


「君は招待されなかったの?」


「それイヤミ?

オトコにうつつ抜かして、気付いたら爆砕機にされてるようなお間抜けちゃんには無理よ。」


「へぇ。」


ルイカーちゃんに謙遜の心があったとは。


「とにかく、ルイカーちゃんは確かに渡したからね。

じゃーね。」


そういって、ルイカーちゃんは去っていった。


黒淵会ねぇ。

随分と厨二くさい名前だけど、まあ異世界なんてそんなもんか。


エリート仲間とコネを作るために、早速出発する事にした。

(いか)れるクレイジーウィッチ達は…人類の底力を信じて、もう少しだけ放置しよう。


黒淵会の会場は、南の果て。

博物館アイランドという最強の中継地点を手に入れた今、

世界中のどこだろうとボクの徒歩圏内さ。




そう思ってたのも束の間。


「まだ着かんのかー…」


山道を登り続けてやや三日。

肉体的疲労は皆無だけど、メンタルがやばい。

人は外部からの刺激が無いと発狂するっていうけど、今ならその理屈も解る気がする。

もうすぐ頂上。

ほんとにこんな場所にあるの?


突然、霧が濃くなる。

めのまえが真っ白になった。


音楽が聞こえる。

魂を揺さぶる重低音。

天地を揺るがす歓声。

存在そのものが飲み込まれてしまいそうになる、魔性の音色。

ボクの本能が、かの者の降臨を告げる。


霧が晴れる。


「なみゅの可愛い信徒達☆

今日も来てくれてありがとー☆

ラストは新曲、『ヨトゥンスター☆』行ってみよー☆」


"うおおおおおおお!"


アイドルキャラだああああああ!


山頂に建てられたステージ。

熱狂を編む観客達。見た感じみんな人間っぽい。

歌い踊り舞うのは小柄な魔女。


白くて長い髪。

白いふりふり衣装。

童顔か、ほんとに幼い身体。

狐耳。

狐尻尾。

超かわいい。

超々かわいい。


そのままボクは一曲聞いた。

歌もポップでキュート。最高だ。

物販どこかな?


「みんなー⭐︎今日はありがとー⭐︎」


かくしてライブは終了。

舞台は幕を下ろし、

観客達はみんな、あちこちに設置されている魔法陣に消えていった。

物販は無さそう。


「…場所間違えたかな?」


踵を返そうとした、その時だった。


「ごめんごめん。待った?」


ボクの目の前に霧が集まり、

小さな濃霧の中からアイドルちゃん(仮称)が出てきた。


「素敵なライブだったわ。ファンクラブとかある?」


「ふぁん…何?

あなた、黒淵会の新入りちゃんでしょ☆

初めまして☆

なみゅの名前は、ナミュレート=デジュエール☆☆☆

なみゅって呼んでね☆」


なみゅちゃんはボクの手を引く。


「初めての後輩ちゃんができて、なみゅすっごく嬉しいの☆

ささ、こっちだよ☆

みんなもう待ってるよ☆」


連れられたのはステージの裏。


ぼろぼろの木のドアだけが建っている。

緑のペンキははがれかけ。

ドアを構成している木材は節くれまくり、ちょっと触るだけで、崩れて木の繊維になってしまいそう。

ドアノブもサビにサビている。風が吹くと、パラパラとサビが落ちる。

ドア自体も今にも倒れてしまいそうで、どうして建ってるが不思議。


「こっちだよ☆」


なみゅちゃんがドアを開ける。

その向こうに広がるのは、漆黒の闇。


「だいじょーブイ☆怖くないよ☆」


ボクはなみゅちゃんと一緒に、闇の中へと歩んでいった。




黒塗りの闇の中に、長机が一つ。

席は10、魔女は8人。

お誕生日席(仮称)には、小さいラクトムラクトムさんみたいな人がいる。

なみゅちゃんとミニラクトムラクトムさん以外、黒いノイズで姿が隠されて見えない。


「遠路はるばるよくぞお越し頂きました。

ようこそ黒淵会へ。

ワタシの名前はラクトムラクトリ。

本会の議長を務めさせて頂いております。

新入り様、どうぞそちらのお席へ。」


ラクトムラクトリさんに促され、ボクは彼女の向かいの席に座る。

なみゅちゃんの席はボクの左隣。


「全員揃いましたね。」


この会合をきっかけに、ボクは”魔女”を敵に回す事になる。

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