VS灼炎の魔女?
爆煙が晴れる。
屋根が無い。赤い空が見える。
壁もない。天を望む円形の広間は、何かの舞台に見える。
咄嗟に出した【セレスティアの盾】は大きくえぐれていて、
あと数ミリでボクの身に到達していた。
盾を解き、
立ち上がり、
目の前の魔女と邂逅する。
白くて長いパサパサの髪。
赤い瞳。
背は高め。
抜群のプロポーションを備えた身体。
「余を呼び覚ましたのは其方か?若き魔女よ。」
「ええ。その通りです。
あなたが灼炎の魔女ガリカリウスさんですか?」
「その名が廃れぬほどは、時は経っておらぬようじゃ。
その名を知っておるのか?若き魔女よ。」
「噂程度には。」
「そうか…」
魔力の高まりを感じる。
肌が今にも灼け爛れそうだ。
もしかしてお姉さん、怒ってる?
「余を目覚めさせた褒美に、一つ良いことを教えてやろう。若き魔女よ。
噂程度にしか聞いていない魔女の名を、軽々しく口にしてはいけないよ。
もし誤っていたら、責任を取らなくてはないからのぉ。」
熱風が吹きすさぶ。
どうやらボクは、うっかり魔女の怒りを買ってしまったらしい。
「そう。教えてくれてありがとう。
以後気をつけるわ。」
「ふ…ふふ…以後か…
もう一つ教えてやろう。若き魔女よ。
上古の魔女の怒りを買った者に、明日はもう訪れない!」
随分と理不尽なお姉さんだなぁ。
これでもボクは恩人だぞ。
「もしかして名前を間違ってしまったかしら。
ごめんなさい。上古からやってきた素敵なお姉さん。」
「ふ…ふふ…ふふふはははは!
謝罪なら…貴様の骨で雄大な城を建ててから聞いてやろう!」
なるほど。
天文学的な回数殺してやると。
参ったねーどうも
この人、どう見ても脳死プレイで楽々勝利って訳にはいかなそう。
ガリカリウス(?)さんの頭上で、炎が渦を巻く。
炎はやがて、彼女の背後に人型の上半身を形作った。
「炎の精霊メファークリート
4000年来の付き合いさ。」
「何年来だろうと関係無い。
ボクの前に立つなら、全部敵だ。」
「ふふ…お前のような気骨のある魔女は久し振りだ。
来い。何度だって相手してやろう!」
さあさあ始まりました大魔女戦。
お相手は、クソデカ炎エレメンタル&ガリカリウスさん。
「余の炎は、少し熱いぞ。」
メファークリートの両手に魔法陣が展開され、
ボクは4つの炎の渦に囲われる、
「【カファ】」
ガリカリウスさんの手から炎が放たれる。
知らない呪文だけど、
見たところ属性攻撃。
なら、ボクの敵じゃない。
【セレスティアの盾】
熱を無視すれば、火炎なんて所詮ただのそよ風。
このシールドには傷一つ付けられやしない。
「ほぅ。良い魔法を持っているじゃないか。」
「好きなだけ炎を出せば良いよ。
幾ら大魔女でもいずれは魔力が尽きる。」
「確かに、その通りだ。」
周囲の炎がクソデカ精霊に集まり、
魔力となってガリカリウスさんに流入する。
「だが、その琥珀か飴玉みたいなシールドも無敵じゃあ無い。」
ガリカリウスさんの手に、周囲の炎全てが吸収される。
「そうだろう?
【カセン】」
炎属性のレーザー。
属性値もさることながら、威力と貫通能力が底上げされている。
シールドが削れ始める。
流石に一本槍じゃないか。
まずは精霊を何とかしなきゃだね。
実体のないエレメンタルは物理戦法の天敵だ。
普通に殴っていても、攻撃が全く通らない。
だが幸いにもボクは回答を持っていた。
光線が止み、ガリカリウスさんと精霊はリチャージフェーズに入る。
猶予は5秒。
充分。
ボクはガリカリウスさんに向けて走り出す。
「甘い。」
ガリカリウスさんのチャージしてない方の手から、
火球が三発。
二発はかわし、一発はジャスガ。
2人を射程圏内に入れたので、
ボクは杖を掲げ、魔法を放つ。
【アルガ=ゼペドの破壊】
精霊とガリカリウスさんは共に、空間ごと固着する。
「…!?」
固形化した空間を杖で叩き、
破壊する。
ガリカリウスさんには大ダメージ。
大精霊にはその3000倍くらいのダメージ。
大精霊は存在を維持できなくなり、消散した。
「空間を魔力で満たして固形させ、対象ごと破壊したのか…
これではいかなる防御も意味を成さぬし、
実体無き存在は、実体を与えられた後に破壊される…
素晴らしい…攻撃魔法の頂点と呼んでも差し支え無かろう…!」
「降参するなら今のうちだよ。お姉さん。」
「まさか。お前のような相手は初めてだ。
魔力が自然現象の模倣をせずに、お前の意思そのものを体現しているなんて。
余ですらまだ辿り着いておらぬ境地!
余の目に狂いは無かった!
さあ、もっとその力を見せておくれ!」
こいつ、さては難癖つけてふっかけてきただけだな。
もう怒った。
ボクも暇じゃ無いんだぞ。
「今にして思えば、その防御魔法は何だ?
魔法を以て魔法を拒絶するなど、あまりにも不条理じゃないか!」
知らんわ!
「【エンソー】」
ガリカリウスの周りに10本の炎の槍が現れる。
エンソーってもしかして、炎槍だったりする?
槍が爆煙を吹き出しながら発射される。
これもうミサイルじゃん。
かわそうとしたら追尾してくる。
盾で防いでも、炎をふかしてシールドに食い込んでくる。
定期的に爆発して、確実に盾を削ってくる。
…ん?
さっきのビームより、ボクの盾を攻撃すると言う点では効果的だ。
でも、使われてる魔力量が明らかに少ない。
そうか、そういう事か。
「随分と慌てているようだね。お姉さん。」
「何故そう思う?」
「シールドを破壊すれば、確かにボクへの攻撃は通る。」
槍が一斉に爆発し。
セレスティアの盾は鈍い音を立てて割れる。
「もっとも、」
ボクはガリカリウスの目の前まで歩いていく。
「ボクを攻撃できるだけの魔力が、
残っていればの話だけどね。」
「………」
ガリカリウスの拳が炎を纏い、ボクに迫ってくる。
【ガルサムの鎧】
無属性でできた小手が右手に装着され、
それで受け止めた。
拳の炎は、プスプスと音を立てながら消えていった。
「…どうして解ったんだい?」
「キミが最初に言ったことさ。
大精霊とは4000年来の付き合いだって。
つまりキミは、4000年間大精霊をメインウェポンにしていたと言うことだ。」
「それで…?」
「4000年と言う長い時間が、
キミの戦い方を、大精霊に依存した物へと変えてしまったんだろうね。
魔力の使い方が随分と荒かったよ。」
もしも無尽蔵の魔力を持っているなら、
ボクだったらレーザーを放ちつつ、チャージ時間中に炎の槍を放つ。
でも彼女はそうしなかった。
槍を放った時点で、魔力の限界が来ていたからだ。
「…ふ…ふふふふふ…」
ガリカリウスは座り込む。
「余とした事が、随分とつまらない負け方をしてしまった。
降参だ。煮るなり焼くなり好きにしておくれ。」
「煮ても焼いても、君は食べられない。」
奔流が止む。
空を覆っていた黒雲は散り、
美しい青空が戻ってくる。
「ふっふっふっふっふ…宴は終わり…新たなる時代は幕を上げる…
若き魔女よ…貴様はこの世界に何を望む?」
「まともな恋愛。」
「何て?」
「まともな恋愛。
ボクは今婚活中なのよ。」
「…何て?」




