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このままじゃハーレム路線かも

ボクは今、森の中の石の円盤のところに来てる。

聖国に繋がる魔法陣は、今は起動していない。


「ラクトムラクトムさん。

聞こえるかしら。

ボクだよ。みんな大好き褐色ちゃんだよ。

通してもらえるかしら。」


魔法陣に光が灯る。


やっぱり、持つべきものはキャリアーの知り合いだね。

そんじゃ、れっつトラベル。




聖国に着いた。

聖国じゃなくなってた。


「あ!褐色ちゃんだ!」

「みんな大好き褐色ちゃんだー!」

「おーい!褐色ちゃーん!」


美少女達からモテモテ。

幸せだぁ。


「魔女さん!」


この声は。


「おや、フレイちゃんじゃないか。久しぶりだね。」


「お久しぶりです。大魔女様。

急にいなくなってしまったから、

もう会えないかと思いました。」


先帰るって言ったんだけど…

まあ、あのときのフレイちゃんはまだ錯乱が残ってたし、仕方ないか。


「ごめんなさいね。急に用事ができてしまって。」


「いえいえ。

むしろ、あなたみたいな大魔女様が、

また会いに来てくれて嬉しいです。

お帰りなさいませ。私たちの救世主様。」


「ふふ。ボクはそんな大層な物じゃ無いわ。

ただ当然の事をしたまでよ。」


ボクはいつだって、

イケメンと美少女の味方だからさ。


「そうだ。この国で魔法陣を見なかった?」


「え?はい。ありますけど。

あそこは魔女にとって、ものすごく危険な場所だって…」


「そこにも魔女が囚われているんだ。

沢山ね。」


「…!

はい!案内します!」


西の先。

屋根が消し飛んだ大きな建物、

入ってすぐのエントランスの床に、

大きな魔法陣が光っている。


「ここです。」


「ありがとう。フレイちゃん。

そうだ、今度一緒にデートしようよ。

素敵な場所を知ってるんだ。」


「で…デート!?その、でも私たち、女の子同士じゃ…」


「素敵なものに、性別なんて関係無いのよ。」


ふとヤバい気配を感じる。


「ふ〜ん♡

おねーさん、オンナタラシだね♡」


上から野生のメスガキちゃんが降ってきた。


金色のツインテ。

青い瞳。

おでこには薄オリーブ色の丸グラサン。

へそがでるタンクトップみたいな服。

ふくらんだ形の付け袖。

ぶかぶか大きな黒いズボン。

かわいい。

クラスの男子の(へき)歪めまくってそう。


「こんにちわ。可愛いメスガキちゃん。

ボクに何か御用かしら。」


「あんた、博物館に行くつもりでしょ。」


「そうだけど。」


「ルイカーちゃんも〜連れてってほしいな〜♡」


「良いよ。」


「へ!?そんなあっさり!?」


「拒む理由が無いもの。」


「普通はもっとこう…勘ぐったりしないの!?

博物館は魔女にとっての死地なのよ!?」


「美少女を疑うなんて、

そんな非人道的なことボクにはできないわ。」


「あんた…オンナタラシすぎて頭おかしくなっちゃったの?」


「良いね…もっと(ののし)ってよ…

できれば“〜”と“♡”多めで。」


「うわ〜〜〜〜!!!

キモイキモイキモイキモイヘンタイ〜!!!

年食った魔女ってどうしてヘンタイしかいないの〜!!??」


天然物のメスガキちゃんを堪能した所で、

そろそろ本題に入ろう。


「来ても良いけど、一つだけ聞かせて。

どうしてボクと一緒が良いのかしら。

一人じゃだめなの?」


「はぁ…良いわ。答えてあげる。

一人で行かない理由は、

単純にルイカーちゃんだけじゃ危険だから。

キミが良い理由は、

今接触できる魔女の中で、

唯一ルイカーちゃんより強そうだから、かな。」


「そこまでして見たいものが?」


「ルイカーちゃんにも、

助けたい魔女がいるの。」


「決まりね。ついてきて。

命に変えても、君はボクが守るよ。」


「な///!?

もう!ほんと調子狂うわねアンタ!」


ボクの背後でドアが開く。


「ねえ。

今誰か、博物館に行くって言わなかった?」


紺色の長い髪。

藍色の瞳。

長身。

黒いナイトドレス。

ナイスバディ。

美人。


「ラクトムラクトムさん。

いつもお世話になってます。」


「良いのよ。

転移魔法って、あなたたちが思っているほど難しいものでも無いから。」


ラクトムラクトムさんは、

魔法陣に視線を向ける。


「でも、もしワタシに恩義を感じているのなら。

分かってるわよね?」


「ええ、あなたもどうぞ。お姉さん。」


死地の割にはノリが軽い。

歴の長い魔女は、どこか特有のお気楽感がある。


「なんだよテレポートババアも一緒かよ。」


「あなたの方が年上ではないですか?

ルイカーおばさま。」


「な!?言わせておけば〜!」


君達が年で張り合う意味よ。




~~~




森に囲まれた湿地の中。

鋼の牢獄がある。


10歳から20歳までの処女の死刑囚を、

魔女化しなくなる21歳まで収監しておくための施設だ。


死刑囚ミーナは今日、21歳の誕生日を迎える。




朝日が刺し込む独房。

壁を背に、

ミーナは膝の上のワンプレートランチを見つめている。


濃厚ソースのビーフストロガノフ。

とうもろこし粉のパン。

そして彼女の好物の、アスパラのバター焼き。


普段より少し豪華な食事が、

薄汚れた冷たいプレートにそっけなく並べられている。

最期の食事には相応しい。


「とっとと食え。」


看守がせかすので、

ミーナは食事を始めた。


普段出される雑穀よりはおいしかったが、

いつか食べた母の手料理には遥かに劣る。


異教を崇拝したばっかりに、

村は皆殺しにされてしまった。

魔女化の条件に合致していたミーナだけが、

10年間の生存を許された。


「来い。異端者の娘。貴様を神の御許に送り届けてやる。」


食事が済んだので、

ミーナは檻から出される。


手錠と足枷を付けられ、

ミーナは最期の部屋へと進む。


「座れ。」


ミーナは金属製の椅子に拘束され、(くつわ)をはめられる。

係員がやってきて、一凛の白い花をミーナに近付ける。


「魔力反応無し。人間です。」


「よし。執行人を呼べ。」


2人は部屋から出て行く。

代わりに、別の人物が入室する。


白衣姿。

器具の乗った台を引いている。


ミーナは緊張と恐怖で手足が冷たくなるのを感じる。

冷や汗も出て、

鼓動も早まる。


「動かないで下さい。」


白衣の男はそう言うと、

台からカテーテルをとる。


(ああ…終わる…死ぬ…私…死ぬ…)


痙攣し、呼吸が荒くなる。

白衣の男が、ミーナの手首にカテーテルを刺す。

痛点を避けたので、痛みは無い。


「安心してください。

少し息苦しくなるだけですから。」


白衣の男は台に手を伸ばす。

パチッと、何かが外れる音がする。


「では、さようなら。」


白衣の男は退出する。


(死ぬ…死ぬ…死ぬ…死ぬ…私…)


ミーナは少し錯乱する。


(大丈夫…痛くない…苦しくない…楽しい事…そうだ…楽しい事を考えよう…)


母はよく、ミーナが生まれた日の事を話していた。


父の働いていた鉱山が、

ある朝、落盤した。

すぐさま救助隊が入鉱したが、捜索は困難を極めた。

状況が変わったのは三日目の夕暮れ。

とある赤子が産声をあげたと同時に、

鉱夫が全員、生きて帰って来たのだ。

落盤跡に眠っていた金銀宝石と共に。


生まれた女の子には、

宝の山を意味する古い言葉、

"ミーナ"と言う名前がつけられた。


(は…はは…鉱山の安全を守ってくれるカタカタさまを信じてただけで異端なんて…

まったく心の狭い神様だよね…はは…あはは…)


気疲れしたのか、

はたまた薬が効き始めたのか、

ミーナは若干眠気を覚え始める。


その時だった。


(…痛い…何!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!)


(くつわ)からも苦悶の声が漏れる。

白衣の男が駆け寄ってきたが、


「ッチ…薬が粗悪品だったか…まあ良い。

少しうるさくて長引くだけだ。」


執行に異常が無い事を確認すると、

再び退出した。


(痛い!痛いよ!助けてええええ!熱い!あああ熱い!取ってえええええこれ取ってえええええ!)


濃度が高まるにつれて、

苦痛も倍増していく。


(殺してええええええ!早くごろじでえええええええ!ああああああああ!)


不意に、全ての苦痛がぴたりと収まる。


(…死んだ?私。死んだ?)


目を開ける。

景色は変わってない。


(お化け?私。お化けになった?)


手は透けてるかな?

持ち上げようとしたら、

拘束がはじけ飛んだ。


「ふ?」


轡を引きちぎる。


「私、魔」


壁や天中から無数のショットガンがせり出し、一斉掃射を始める。

ニーナはぐちゃぐちゃになった。


この施設が建てられたのは、およそ160年前。

まだ、魔女の急所が頭か胸らしいと言う事しか分かっていなかった頃のものだった。




魔女とは何か。

なぜ脳を破壊すると奔流が発生するのか。

なぜわざわざ、頭蓋に守られた脳を破壊しないと奔流が発生しないのか。

詳しい事は判っていない。

そもそも、人が魔女とまともに渡り合えるようになったのも、

ごく最近のことなのだ。




次にニーナが目を覚ますと、外に居た。

湿地だった場所は、

隆起した岩が支配する荒れ地と化している。


岩に人が埋まっている。

白衣の男。

看守。

それから幾人もの職員。


ニーナの背後の、山のように大きな岩が二つ砕ける。

巨大な岩のライオンと、

岩石の鎧を纏った巨人が現れる。

ニーナの眷属だ。


「私。魔女?何で?」


薬が効いてから死ぬまでのいくばくかの時間で、

ミーナは魔女になった。


ニーナが21歳になるのは、

今日の夕暮れのことだ。




奔流は一度きりの現象と言う説がある。

なぜなら、同じ魔女から二度目の奔流を引き出せたことが、まだ無いからだ。


奔流を経験したか否かで、

魔女の能力には天地ほどの差が出る。

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