チートっぽいな
サバトに戻ると、
ニルキキキキさんの葬式をしていた。
学術の寄る辺に石碑が設けられ、
沢山のろうそくが灯っている。
え?
魔女って死ぬの?
すごく悲しい。
友達になれそうだったのに。
「…ほんとは…グスッ…私の番だったのに…」
石碑の前で泣いてる魔女が、
気になる事を言う。
「ねえ君、少し良いかな。」
真っ白い髪。
真っ白い肌。
真っ白いゴスロリ。
赤い目。
童顔?子供?
小柄。
すごくかわいい。お人形さんみたい。
「…こんな時にナンパですか…?」
「違うよ。
君の番だったって、どう言う事?」
「今年の当たりくじを引いたのは私だったんです。
そしたらニルキキキさんが、
君はまだ若いから、
って代わってくれて…」
知らん情報が多い。
「ニルキキキキさんは、何かの生贄になったの?」
「生贄…そうですよね、
やっぱりその言葉が相応しいですね。
はい。ニルキキキさんは、
外の敵が一年間、サバトの事を見逃してくれるための生贄になったんです…
きっと今頃は、脳みそだけにされて…
あの小さな展示室の中で…う…うう…」
「それは大変ね。
すぐに行かなきゃ。」
「え…?何言って…」
「彼女に家を紹介してもらう約束をしているの。
ボク、今ホームレスで、すぐに彼女の助けが必要なんだ。」
「だ…ダメですよ!
博物館は全ての聖国と繋がっています!
相手は全部の聖国、この世界そのものですよ!
返り討ちになって、脳みそだけにされちゃいますよ!
脳みそだけって、死にたくなっちゃうほど辛いらしいですよ!」
「そう。
ならなおさら、ボクの友達をそんな状態にはしておけないね。」
全ての聖国と繋がっているなら、
まずは聖タルチスタンを当たってみよう。
封鎖されてるかもだけど、
あそこには次元の魔女さんもいる。
「じゃあ、そう言うことで。」
「待ちな。若いの。」
「?」
ホワイトちゃんの声じゃない。
ボクは振り返る。
長い黒髪。
青い瞳。
しっかりとした筋肉に裏打ちされた美ボディ。
たわわな胸には申し訳程度に包帯。
黒いパンツは小さめ。
とうとう現れたな、
異世界恒例!セクスィー女戦士枠!
「ラグビト様!?」
「部外者にベラベラ話しやがって。
後で事務所な。」
「ふえええ…」
ホワイトロリータちゃん(仮称)が動揺してる。
偉い魔女さんかな。
挨拶しておこう。
「初めまして。
ラグビトサマ、で良いですか?」
「あたしを前にしても平静とはな。
ただの身の程知らずって訳じゃあ無さそうだ。」
「そんな事はございません。
あなたさまの美しさに、
今にも目が眩んでしまいそうです。」
「かっ///!?
と、とにかく!お前を博物館には行かせられない!
博物館は、サバトを外敵から守っている後ろ盾だ。
勝ち負け以前に、挑んだ時点でその関係がぶっ壊れちまうんだ!」
「つまりあなたは、
そんな家畜のような関係を望んでおられるのですか?」
「家畜でも良い。
それでサバトの平和が守られるならな。」
ボクは杖を構える。
「残念ですが、ボクはそうは思いません。
本で読みました、本来、魔女は10年に一度現れるかどうかなのでしょう。
1年に1人ずつ奪われては、いつかサバトは消えてしまう。
それは平和では無く、緩やかな滅びです。」
「そんな事はみんな分かってる!
だったらどうしろってんだ?
出来る事ならとっくにあたしが殴り込みに行ってるよ。
だけど無理なんだ。
あの場所は、あまりに危険すぎる。」
「ボクならできます。」
「信じられないね。
慢心は不死身の魔女すら殺す。古くからの言葉だ。」
「慢心では無く事実です。」
「自信家なのは良い事だ。
だが、お前のその自信が今、
アタシらを滅ぼそうとしている。」
魔力を感じる。
ディメンション男が恐竜を召喚した時と同じ。
然属性か。
召喚獣は見当たらないから、
自己強化方面かな。
「だからよ。
その自信、いっぺんへし折ってやる!」
速い。
一瞬でボクの目の前まで来た。
接近戦に弱いって言う、
魔法職の弱点もよく理解している。
でも、
それじゃボクは倒せない。
【セレスティアの盾】
"カコキンッ!"
まず拳をジャスガ。
相変わらず気持ちい。
「いっで!?何だこれ!?
岩属性か!?」
そんなこと言ってる暇無いよ。
【アルガ=ゼベドの破壊】
空間が固型化し、破壊される。
ラグビトサマは吹っ飛び、
ニルキキキキさんの石碑に衝突した。
石碑が壊れる。
でも、ニルキキキキさんが生きているなら、
あんなの必要ない。
「はが…がはっごほっ…
何だ…内臓に直接、ダメージが…
その力は…一体…」
数多のハイエンドコンテンツの先に待つ、ボーナス役職。
超高難度クエストとかをソロでタイムパフォーマンス良く周回する為の、
公式公認の便利チート。
それが無属性魔法使いだ。
ランキング対戦では使用不可。
ギルドバトルでも、出したい時は事前に相手に相談する、暗黙のマナーがある。
敗北?
周回用チートツールに、
弱点になる仕様があるとでも?
無属性魔法使いは、
周回するステージごとに、
装備や編成を考えるのすら面倒くさくなった人のためのジョブ。
早い話、最強無敵。
だから思ったんだ。
異世界転生ガチャ、大成功だって。
「属性を感じない…何なんだお前の魔法は!」
「敵を倒すのに、炎も雷も召喚獣も要らない。ただ破壊すれば良い。
そんな魔法だって言ったら、信じてくれるかしら。」
「あり得ない…そんな魔法が、あっていい筈が無い!」
ラグビトサマは大きくなり、
更に素早く移動し、
今度はボクの背後に回り込む。
後頭部に殴りかかって来たのでひらりとかわし、
杖先に【バルガットの発動】を焚きながら振るう。
ラグビトサマはぎりぎり躱して心臓を護ったけど、
肩が消し飛んで右腕が落ちた。
「防御もできねえのか!?」
物理貫通、魔法貫通共に100%
無敵やダメージ軽減も貫通するので、
敵の防御を突破するのに、無駄に頭を使う必要も無い。
さて、〆はやっぱり無属性魔法の代名詞。
超発生速度、超射程、超貫通、高火力。
四拍子そろった、ボク史上最強の魔法。
グヌマトゥスの…
やば。
これじゃあ"あの"包帯が取れてしまう。
仕方無い。
【アルガ=ゼベドの破壊】で一旦空間固定。
破壊と同時に、錫杖を胸に突き刺す!
「がっは!?」
完☆璧☆
空間破壊でラグビトサマの骨と内蔵が全部砕けた音がしたけど、
心臓を潰せば再生はできまい。
「ボクはただ、持ち家と美味しい食べ物、
それから色んな服と、
素敵な旦那さんが欲しいだけ。
世界がそれを邪魔するなら、まずはそこを変えるよ。」
「…お前さては…鯖読んでるだけの大魔女だな…」
「心はいつも、若くありたいの。」
あれ?
この流れ、なんとなく異世界チートものっぽいぞ?




