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異世界転生ガチャ大成功

彼氏に刺されて死んだ。

最後まで愛の無い人生だった。




目が覚めると見知らぬ天井があった。

質素な木製なので大病院ではない。


ボクはベッドで仰向けに寝ていた。

掛布団は見当たらない。


窓から差し込む朝日がボクの褐色の肌を照らしている。


褐色?


ボクはベッドから飛び起きる。


部屋の広さは20畳。

壁も床も木製。

紙と羽ペンが置いてある机。

物が並んだ棚が三つ。

クローゼット。

姿見(すがたみ)


ボクは姿見に駆け込む。


15歳程度の美少女が写っている。

腰まで伸びた銀色の髪。

眉毛や睫毛(まつげ)も銀色。

銀色の瞳。

そそる褐色の肌。

体は華奢だけど、痩せ過ぎてはいない。


この容姿には覚えがあった。


アルトリエル・ウォム・ヤコーエ

無数の死にシナリオを乗り超え生まれた奇跡の化け物。

ボクはとあるゲームで使っていた自作アバターに転生した。


意識してみると、身体を流れる暖かいものを感じる。

ボクは手のひらを目の前に広げ、暖かいものをそこに集結させるイメージをする。

ぱちぱち、白い光が弾ける。

これが魔力か。


異世界転生ガチャ、大・成・功

きっと神様からの、辛い人生を耐え切ったご褒美だろう。


いつまでも裸ではしまらない。

ボクはクローゼットを開け放つ。


胸に巻きつける白い布製ブラジャー。

同じく白色のミニスカ。

黒くてでかい魔女帽子。

靴、の代わりに、土踏まずに巻く黒い布。

土色のローブ。


想像してた通りの姿。これも神様からの贈り物だろうか。


ローブには内にも外にも沢山のポケットがついていた。

道具が色々入りそうなので、今度は棚の前に行く。


魔力を可視化する片淵メガネ[ノードレンズ]

容量を喰わずサブウェポンとして優秀な[短杖]

何かと便利な[無限ノート]

幾らあっても困らない[マジックポーション]20個。

旅人の強い味方、[干し肉]10個。

大きな内ポケットが余ったので、もう一つのサブウェポン[魔道書]も詰める。


小道具は揃った。


玄関に行く。

ドアの横に杖が立てかけられていた。


[鋼の錫杖]

ボクの相棒。


準備は整った。

大冒険への期待を胸に、ボクは異世界に繰り出した。


この家は辺境の村にあった筈。

だが目の前に広がっているのは、青々と生い茂る森林。

三日も放っておけばこの家も緑に呑まれてしまいそうだ。


でも慌てることは無い。

まずは人のいる場所で情報を集めよう。

ここがボクの知っている世界かどうか確かめなきゃ。


「うわああああああああ!」


森から悲鳴がした。

ボクは声の元に向かう。


「来るな!来るなあああああ!」


男の子が木を背に座っている。

麻布の服。

ぼさぼさの黒髪頭。

ザ、村の子供って感じ。


対するは紫色の熊。

前世でもゲームでも見た事ない種類。

石を切り出したみたいな爪だ。

強そう。


男の子は小脇にバスケットを抱えている。

中には草が沢山。

でも足を怪我して動けないみたいだ。


偉大なる先人に習って、ボクはこの少年を助ける事にした。


杖を熊に向け、魔力を先端に集中する。


【グヌマトゥスの槍】


杖の先から、白銀のレーザーが放たれる。

ボクの魔法は熊の腹と、その向こうの木々や岩に綺麗な円形の穴を作った。

大きくて長い一本の槍を突き通したみたい。


熊は倒れる。

強くなかった。


「な…何だ…何が起こって…」


少年は戸惑う。

そこでボクが姿を現す。


「うわあああああ!…ま…魔女だああああ!」


感謝はされなかった。

この世界の魔女っ子は好感度最悪らしい。

こんなに可愛いのに、信用を得る為にはもうワンアクション要る。


ボクは杖の先を少年の足の怪我にかざす。


【ニニファヌの抱擁】


白い稲光と共に、少年の傷は瞬く間に完治した。


「1人で森に入っては駄目よ。悪い獣に食べられちゃうからね。」


さて、人助けも完了したし、帰ろう。

てかボクの声ちょー可愛いな。

静かで優しくて神秘的、まるで夜風みたいだ。


「ま、待って!魔…お姉さん!」


「?」


「妹が病気なんだ!お願いだ、助けてくれ!」


はい来たテンプレシナリオ。

でも困ったな。

状態異常の回復は専門外だ。

潔く(ことわ)


少年のバスケットに見覚えのある、と言うか前世でも大変お世話になった草を見つけた。

[天使草]

最上位の回復アイテムがほぼ必ず要求してくるレア素材。


ボクはバスケットから天使草を、懐からはマジックポーションを取り出す。

軽く握ると天使草は砕け、緑色の粒子となってポーションに吸い込まれた。

ポーションの瓶が光を放ちながら変形し、中の液体も紫から透明に変わる。


「これを一滴、妹さんに飲ませてあげて。どんな状態異常も治るわ。」


少年は瓶を受け取る。


「ありがとう!魔女のお姉さん!」


そう言って、少年は走り去った。

人助けに報酬を期待してはいけない。

それに、マジックポーションなんて調合の過程で掃いて捨てるほど手に入るから良い。


ん?


少年はバスケットを忘れて行ってしまった様だ。

中の草は恐らく薬草だろうけど、どれも見た事は無い。

ただ天使草はあったので、この世界にもボクの知ってるアイテムはあるようだ。

そして何より大事なのは、この世界でも魔法やアイテムが正常に動作し、調合も使えたこと。

この草も、研究すれば素材として使えるかもしれない。


ボクは今回の報酬を、このバスケットととる事にした。




〜〜〜




エリクセンはメニコー村で暮らす少年だ。

両親共に農業を営み、妹のイリィと共に、家族4人で幸せに暮らしていた。

ある日、村を流行病が襲った。

老人や子供を中心に村人達は次々と熱に倒れ、4日も持たずに亡くなっていった。

イリィが罹患して今日で3日目。

もはや打つ手も無く、村人は彼女を隔離する事しかできなかった。


「イリィ!」


3日振りに再会した妹は、エリクセンの記憶の中の姿とまるで違った。

痩せこけ、目は落ち窪み、呼吸は今にも消え入りそうなほど弱々しい。

森の薬草ごときで治る代物しろもので無いのは、一目瞭然だった。


「待ってろ!今治してやるからな!」


エリクセンは、持っていたガラス瓶の蓋を開けてひっくり返す。

瓶から小さな一滴が出てきて、イリィの口に落ちた。


「…ん…」


ものの数秒で、イリィは目を覚ました。


「お兄…ちゃん…?」


「イリィ!ああ…良かった…もう会えないかと…」


「…お腹空いた…ご飯はまだ…?」


イリィは完治した。

食欲も取り戻し、かつての姿を取り戻すのに2日も掛からなかった。

村人達は、奇跡が起こったと盛大に祝った。


なのでエリクセンは、森の少女と、彼女から貰ったポーションの事を大人に話した。

邪悪な魔女が人助けなどする筈が無いので、きっと森の女神の慈悲だろうと言う事になり、ポーションは患者全員に投与された。

ポーションの中身を半分ほど余し、村は病から救われた。

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