表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醜い王子と地味令嬢  作者: 朝姫 夢
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/75

危険と隣り合わせ

 お約束していた三日後、(わたくし)はブロムスツ伯爵令嬢にお会いした時と同じように、馬車に揺られておりました。

 向かいに座る侍女は、三日前も特に表情を変えてはおりませんでしたけれど。今回は明らかにホーエスト様とお会いする時とは、場の雰囲気が違うのです。


(私自身が、憂鬱な気分だからというのもありますが)


 前回実は予行練習として使わせていただいておりますが、ブロムスツ伯爵邸への行き帰りも彼らに同行をお願いしておりました。

 護衛として我がフラッザ家が誇る、最強の騎士たちを。

 そのため普段以上の緊張感が漂っておりますので、必然的に普段とはまったく違う雰囲気になってしまっているのです。


(杞憂に終われば、それが一番いいのですけれどね)


 何も起きないとは、言い切れませんから。そのための準備はしておくべきですもの。

 特にどなたかに狙われるとすれば、この行き帰り。馬車には堂々と我が家の紋章がありますので、狙おうと思えば簡単なことでしょう。

 そのお相手がセルシィーガ公爵家とは限らないからこそ、これだけの警戒網を敷く必要があるのです。


(むしろ、このお茶会をご存じの方全員が怪しくなってしまいますから)


 セルシィーガ公爵家に罪をなすりつけつつ、私の存在を亡き者にしたい方には、絶好の機会としか言いようがありません。

 特に今回のお茶会は公爵家が所有する庭園の一つを貸し切って行われるそうなので、場所が公爵邸でないことも含めて警戒するに越したことはないのです。

 とはいえセルシィーガ公爵家に限って言えば、お茶会が庭園で開かれることはよくあることのようですので、そこに対して疑問を抱くことはなかったのですが。 


(財力を示すには、最高の条件ですものね)


 ご自宅ではないからこそ、物や人の移動一つにも時間と財がかかるのですから。セルシィーガ公爵家でなければ、できないことでしょう。

 けれど同時に招待されている方と、私がこの日のことをお伝えした方以外は場所すら知らないはずとも言い換えることができますから。その場合、私に何かあれば犯人はかなり絞れるはずなのです。


(お茶会に出席するだけでこれだけ警戒しなければならないのは、さすがに初めてですけれど)


 今まではどなたからもお誘いをいただいたことがありませんでしたし、基本的に私が外に出る時はホーエスト様のパートナーとしてでした。

 今回のように我が家から私個人だけを名指しでなど、我が家としても経験がないことなのです。

 ホーエスト様とお会いする際には、必ず王家の馬車での送り迎えでしたし。


(ですが今後は、もっと増える可能性も考慮すべきですね)


 ホーエスト様の婚約者という立ち位置は、それだけで危険に(さら)されることもあるのだと認識しておかなければなりませんから。

 現に第一王子殿下と第二王子殿下の婚約者様は、何度か危険な目に遭っていらっしゃるとお聞きしておりましたし。


(今はすでに、ご成婚されていらっしゃいますが)


 第一王子殿下は、未来の国王陛下。王太子殿下ですもの。その婚約者時代は本当に大変だったと、ご本人から詳細をお聞きする機会もありました。

 本当に、色々と、恐ろしい現実に。当時の私は震えてしまいましたが。

 特に毒殺未遂の回数が多すぎて、最後のほうは皆様逆に慣れてしまわれていたのだとか。

 私、さすがにそんなことには慣れたくないのですけれど。大丈夫なのでしょうか?


(怯えていても、仕方ありませんからね)


 思いつく限りの対策はすべて取りましたし、これでダメならば我が家ではもう、どうすることもできませんから。

 諦める、というと聞こえが悪いですが。これ以上は他の方のお力を借りるしかないと、割り切るしかないのです。


(そんな状況にならなければ、一番いいのですけれど)


 まだ最低でも二年は警戒を続けなければいけませんので、今からそんなことは言っていられないのですが。

 王族の婚約者になるということは、本来そういう危険と隣り合わせのはずですから。むしろ私はかなり長い間、楽をさせていただいておりましたし。

 仕方がないことと諦めて、小さくため息をついた時でした。


「きゃあっ!」

「お嬢様!!」


 突然の強い揺れに、馬のいななき。

 そのまま傾いていく体と、襲ってきた強い衝撃に。

 私はそのまま、意識を手放してしまったのです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ