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醜い王子と地味令嬢  作者: 朝姫 夢
本編

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死刑宣告 sideホーエスト②

 頭が真っ白になって、何も考えられない。

 そもそも今言われた言葉が、ちゃんと理解できていない。



 今、僕、何て言われた?


 リィスは今、何て言った?



   「(わたくし)たちの」



 わたくしたち、って……僕たち? 僕とリィス?



   「婚約解消の」



 こんやく、かいしょう……?



   「発表は、いつのご予定でしょうか?」



 はっぴょう? よてい?



(それって、つまり……)



 僕とリィスの、婚約を解消するってこと?


 しかもリィスの中ではすでに決定事項で、発表することが決まってる上に、さらにその日取りを僕に確認してるの?




「…………は?」




 それ以外に言葉が出てこなかった。

 むしろ、何て言うのが正解だったの?

 そもそも意味が分からないし。何でいきなり婚約解消?

 そんな話、どこから出たの?


(……あぁ、なるほど)


 そう、言われたんだ。誰かに。

 へぇ? そう。

 じゃあ探し出して、訂正させなきゃねぇ?


(まぁ、でも)


 それよりも先に。



「ねぇ、今……なんて言ったの?」



 腕の間に閉じ込めて、逃げられないようにして。

 まずはほら、そんな愚か者の戯言(たわごと)を信じちゃったリィスに、ちゃぁんと教えてあげなきゃね。


「婚約解消? 誰と、誰の?」

「あ、の……」

「まさか、僕とリィスの、なんて……そんな馬鹿なこと、言わないよね?」


 そんなことはあり得ないんだよって。僕からは逃げられないんだよって。

 たとえリィスが、婚約を解消したいって思ってても。僕のことを、嫌いになっちゃってても。


 僕じゃない、他の男のことを好きになっちゃってても。


 逃がしてなんか、あげない。

 リィスは僕の婚約者。僕だけの天使なんだから。


(誰にも、渡さないよ)


 可愛い可愛いリィス。君は僕のことだけ見てて。

 だって僕以外の男のことを好きになるなんてあり得ないって、そう言ってくれた君は。きっと、その言葉の意味するところにすら気付いてない。


(あり得ないってことは、逆に言えば僕のことを好きだって)


 そう言ってるのと、同じなのにね。


 でもいいよ、気が付かなくて。僕だけが知ってればいいことだから。

 だってほら、これからはもう少し大胆になってもいいってことでしょ?


(本当は、唇にしたいけど)


 今はまだ、手の甲で我慢。

 とはいえ、この手の向こう側はちょうどリィスの唇があるあたりだけど。


「これは、誓いだよ」


 僕の名前をずっと呼んでくれなかった理由も、婚約を解消するって思い込んでたからなんだって分かったし。


 これからはそんな勘違いさせないから。

 不安にも、させない。


 これからもずっと、僕はリィスだけを見てるから。


 僕たちの婚約が王家の総意なのも、僕の隣に立っていいのがリィスだけなのも、本当。だって他に誰も、僕の隣に立ち続けることなんてできないから。

 それにリィスも僕の婚約者でいたいって思ってくれてるって、ちゃんと言質は取れたから。


(いっぱい、頷いてくれたもんね)


 だからやらなきゃいけない。

 リィスが僕の婚約者だってちゃんと自覚してくれたのなら、今度は愚か者たちの番。


(ちゃんと、思い知らせてあげなきゃ)


 僕の隣にリィス以外は立てないんだってこと。

 リィスだけが、特別なんだってこと。


 そのためには、今すぐにでも行動しなきゃ。明日の朝食の時間に、家族全員が必ず集まれるように。


「すぐ戻るから、帰っちゃダメだよ?」


 そう言って誰も近づけさせないように、リィスも帰れないように、ベンチの周りに目くらましも兼ねた結界を張って。

 急いで自室へと向かう道すがら、ふと思い出すのは真っ赤な顔で大きな目を潤ませながら見上げてくる、リィスの姿。

 あまりの可愛さと色っぽさに、思わずゾクゾクして本気で口づけしたくなっちゃったけど。それは自分へのご褒美にして、今は我慢。


 でも。


「はぁ……」


 衛兵とすらすれ違わない静かな場所で立ち止まって、もたれかかるように壁に頭を預けて。いつかと願うその淡い色を思い出して、そっと自分の唇に触れる。

 漏れ出た吐息は、妙に熱っぽさを含んでたような気がした。



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