死刑宣告 sideホーエスト①
今回も二話投稿になります!
二回続けて長くなってしまってすみませんっ!(>人<;)
リィスに出会ったその日から、ずっと彼女だけを想って大切にしてきたのに。
最近ようやく、リィスの気持ちが僕にちゃんと向いてるんじゃないかって、思い始めてたのに。
「私たちの婚約解消の発表は、いつのご予定でしょうか?」
まさか今更になって、リィスの口からそんな言葉を聞くことになるなんて。
そんなこと、考えてすらいなかった。
元々最近のリィスは、どこかよそよそしい感じはしてたけど。戻ってきた彼女は、今まで以上に様子がおかしかった。
それでも理由が分からないから何曲か踊って、少し疲れてきたように見えたから今までみたいに会場の隅のほうで、冷たい飲み物を口にしながら休憩、って思ってたんだけど……。
(面倒くさいなぁ)
次から次へと寄ってくる貴族たちは、仕事の内容を口実に僕にすり寄ろうとしてるのが見え見えで。正直相手にしてる暇なんてないのにと、何度口にしそうになったことか。
そもそもこんな時に仕事の話を持ち込むなんて、君たちどれだけ自分は無能ですアピールしてるのか分かってる? 本当に仕事ができる人間っていうのは、必要な時以外は仕事の話はしないんだよ?
(しかも婚約者を放っておかなきゃいけない状況にするとか)
マナーすら備わってないみたいだね。
むしろリィスのほうが、仕事の邪魔をしないようにって気を遣ってくれてるんだってこと、分かってるのかな?
(あ、ちょっとイライラしてきた)
どうしよう。このままだと無意識で魔力垂れ流しそう。
そんな風に思いながらリィスを横目で確認すると、持ってるグラスの中身は空になってた。そしてちょうどよく始まる、次のダンスの時間を知らせる音楽。
リィス以外の誰が倒れようと、正直僕は何の興味もないけど。そのせいで彼女と過ごす時間が減るのだけは、許せないから。
「ここだとゆっくりできないから、庭に出ようか」
僕とリィスの空になってるグラスを給仕に渡して、そのままエスコートしながら二人で会場を抜け出す。
今までだったらそんな必要もなかったんだけど、この状況下じゃ仕方がないからね。邪魔されるくらいなら、そこからいなくなっちゃえばいい。
(それに……)
明らかに様子がおかしくなったのは、戻ってきてからだから。今日このまま帰すよりも、色々と聞いておいたほうがいいと思ったんだ。
だから、ずっと聞くのをためらってた見た目の話とか、しておこうと決心したのに。
(どこの誰? 僕のリィスに、おかしなことを言ったのは)
確かに昔から時折、彼女が後ろ向きになることはあったけど。それは僕だって同じだったし、何より今までならここまでハッキリと自分を卑下するような言い方はしなかった。
なのに「私など」なんて、自分を下げるような口ぶり。どう考えても誰かに何かを言われたとしか思えない。
でもリィスは変なところ頑固だから、言わないと決めたら絶対教えてくれない。それに無理に聞きだしたいとも思わないから、そこは諦めるよ。
ただ嘘を言うつもりなら、本当にその口ふさいじゃうからね? もちろん、僕の唇で。
(って言ったら、どんな反応をしてくれる?)
今の僕にはそこまで言う勇気はないけど。
でもいつかリィスの柔らかそうな淡い唇に口づけできたら、きっとすごく幸せなんだろうな。
本当に、今はそれどころじゃないけどね。
(とにかく、何を言われたのかだけは教えてもらわないと)
それで、完全に否定しておかないと。
だってそうでしょ? 僕の可愛いリィスを悪く言うなんて、許せるわけがないんだから。
そう、思って。
リィスの口から出てくる言葉を待ってた僕を襲ったのは。
「私たちの婚約解消の発表は、いつのご予定でしょうか?」
予想もしていなかった、死刑宣告にも似た衝撃だった。




