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醜い王子と地味令嬢  作者: 朝姫 夢
本編

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27/75

婚約解消?

「婚約解消? 誰と、誰の?」

「あ、の……」

「まさか、僕とリィスの、なんて……そんな馬鹿なこと、言わないよね?」


 え、笑顔がっ……この状況下でホーエスト様が笑顔でいらっしゃることが、とても怖いのですがっ……!!

 ほのかに照らし出されているせいで、陰影が中途半端に見えているからでしょうか? それとも、普段とは違う光の当たり方のせいでしょうか?

 いずれにしても、現状で(わたくしが)何かを言えるはずもなく。


「何も知らずにそんなことを言い出した愚か者たちがいることは知ってたけど、まさかリィスに直接そんなことを聞いてきた大馬鹿者がいたっていうの?」


 少し違いますが、要約してしまえば婚約の解消を迫られたと……言えなくもないような気はいたします。


「ついこの間まで醜いだの何だのと言ってたから、また戯言(たわごと)をと思って放置してたけど……。そっか、放置しちゃダメだったか」


 え、っと……ホーエスト様? 先ほどから言葉のあちらこちらに、かなり鋭い棘が含まれているように感じるのですが……。

 私の気のせい、ではありませんよね?


「先に言っておくけど、僕とリィスの婚約は解消する予定ないからね?」

「え? ですが……」

「なぁに? リィスは婚約解消肯定派?」

「い、いえっ! ですが、その……確かに私では魔力量の釣り合いが取れませんし……」


 急いで否定しておきながら、言い訳のようにそう付け足したのが良くなかったようです。


「そっかぁ、そう言われたんだぁ」


 一瞬普段通りに戻られたはずのホーエスト様が、再び笑顔になってしまわれたのです。目が笑っていない、恐ろしい笑顔に。


「それで婚約を解消しろって? もしくは僕の婚約者の座を譲れって言われた?」


 しかも何故でしょう。先ほどからホーエスト様が鋭すぎて、悪手だと分かっていても私はもはや視線を逸らすことしかできないのです。


「なるほど、そっかぁ。そーんな身勝手な愚者がまだいるんだねぇ」


 まだ、とは?

 気になる部分ではありますが、今はそんなことを口にできる状況ではありません。


(むしろ私は、どうすればよいのでしょうか……?)


 ホーエスト様の両腕の間に優しく囚われたまま、けれど身動きすることもできず。

 なにより婚約が解消されないということは、つまり私はまだホーエスト様のお隣にいてもよいのでしょうか?

 けれど、釣り合いが取れていないのはどなたの目から見ても明らかですし。


「王家から正式な発表も何もないのに、何を勝手なことを言い出してるんだろうね」


 それはそう、なのですが……。

 そういった声が日に日に大きくなっていることもまた事実なのです。


「けど僕としては、リィスがそんな言葉を真に受けたことが一番悲しいかなぁ」

「え……?」


 ついそのお言葉に反応してしまい、見上げた先。ホーエスト様は目尻も眉尻も下げて、本当に悲しそうなお顔で私を見下ろしておりました。


「婚約解消、なんて。君の口から聞きたくない言葉が、しかも確信を持って出てきたでしょ?」

「確信……」

「さっき。疑問だったのは日程であって、婚約解消の有無じゃなかったでしょ?」

「…………あ……」


 確かに、そうでした。私はてっきり婚約の解消は決定事項だと思い込んで、そのご予定をお聞きしたのですから。


「もしかして、本当は……僕との婚約を解消したかった?」

「まさかそんな!!」

「じゃあもしかして、僕のことが嫌になっちゃった?」

「違います!!」


 むしろ逆です! 私はいつホーエスト様や陛下から、この婚約の解消を言い渡されるのかと……!!

 本当に、胸が苦しくて張り裂けそうなほど、つらい日々を送っていたのですから。


「でもじゃあ、どうしてそんな発想に至ったんだろうね?」

「それ、は……」


 むしろ私のほうがお聞きしたいくらいです。本当に私でよろしいのですか、と。

 フラッザ家の特殊な体質をホーエスト様のためにお望みだったのだとすれば、既に私は用済みなのではないかと思っていたのです。


 けれど。


「あぁ、それとも……」

「……?」


 まるで覗き込んでくるかのように首を傾げたホーエスト様の、そのブルーグレーの瞳の奥に。


「僕じゃない、別の男のことを好きになっちゃった?」


 ほの暗い、嫉妬の炎のようなものを見つけてしまった瞬間。


「そっ、そんなことあり得ませんっ!!」


 否定の言葉を口にしながら、心の中は歓喜に震えておりました。

 もしかしたら本当に、私はホーエスト様に望まれているのではないかと。その上での婚約続行なのではないかと。そう思ってしまうほどの強さが、そこにはあったのですから。


「……へぇ、そっかぁ。あり得ない(・・・・・)んだ」


 そして、私の言葉を繰り返したホーエスト様の表情は。


「!!」


 見知った笑顔のように、私の目には映ったのです。



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