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醜い王子様①

 この世界は、見た目が全て。なぜならば見た目の美しさと魔力量の多さは、完璧に比例しているから。

 それは人も魔族も同じこと。

 だからこそ、この世界に住む人々にとってそれは至極当たり前のことで。貴族も平民も関係なく、誰もがそのことを事実として受け入れ当然として生きている。


 そう、それはつまり。美しい者は美しい者と婚姻を結び、より魔力量の多い子供を産む事で家を繁栄させてきたということ。

 平民の間では魔力量にそう差がないからなのか、見た目以外の部分で婚姻を結ぶことも多いという。恋愛結婚が多いと言われているのはそのせいだろう。


 だが、貴族は違う。



 美しさは、力だ。



 それをモットーに、多くの国が身分の高い家ほど美しい女性を(めと)る。

 当然だろう。それが家を繁栄させるのに、最も手っ取り早い方法なのだから。


 けれど、何事にも例外というものがある。


 そう、例えば……。






『ほら、あれ』

『まぁっ。本当ですこと』

『いくら王族とはいえ……ねぇ?』

『本当に。どなたかがお止めするべきじゃないのかしら?』


 ひそひそとあちらこちらから聞こえてくる声は、女性のものだけではなく。


『どうして今日はいらっしゃってるんだ』

『知るわけないだろう』

『知っていれば欠席したものを……』

『全くだな。せっかくの華やかな場が台無しだ』


 まるでその場の総意のように、男性からもそんな声が上がるのです。

 当然全員の顔は(しか)められていますけれど、女性は華やかな扇で口元を隠し、男性はあからさまに顔を背けて。


(そんなことをされても、目元は見えているのですから隠しようがないのですよ?)


 そうは思いますけれど、決して口には出しません。もちろん、顔にも。

 ただ視線だけで辺りを見回せば、ほんの少しの視界の中でもほとんどの方の眉根が寄っていることが分かります。

 分かってしまいます、けれど……。


『はぁ……』


 彼らに聞こえないよう小さくため息をついて、形にできなかった言葉たちと感情を吐き出します。


 (わたくし)は決して、彼らの言動に反応することはありません。

 なぜならばそれは、私に向けられる当然の反応だから――――



 ――――ではなく。



『どうしたの? リィス』


 心配そうに私を覗き込んでくださる、優しいパートナー。

 この国の第三王子であらせられる、ホーエスト・フゥバ・ベスキュードゥルゼ様に向けられているものだからです。


『体調が悪いようなら、侍医を呼ぼうか?』


 私の小さな小さなため息まで拾い上げて、そんな風に心配してくださる優しいお方。


『いいえ、大丈夫です』

『けど……』

『私よりも、ホーエスト様のお体のほうが心配です。またお痩せになったのではありませんか?』

『あー……うん。そう、だね』


 少々言いにくそうに、けれど最終的には正直に認めてしまわれるホーエスト様は、男性どころか女性よりもずっと細く。


 そして、なによりも。


『本当に。どうしてあんなに醜いんだろうな、第三王子殿下は』

『仕方がないだろう? 我が国始まって以来の、醜い王子様なのだから』


 そんな風に、貴族たちから呼ばれてしまっているのです。



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