表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/75

要石② sideホーエスト

 原理は分からないけど別段知ろうとも思わないし、そこは別にどうだっていい。

 大事なのは扉そのものなんかじゃなく、その中。


「え、っと。二重結界の強化方法は、っと」


 さっきまでの場所が薄暗かったことを考えると、ここは少し明るすぎる。毎回思うけど、目が慣れるまでの間しばらくは眩しくて仕方がない。

 何十人も入れそうな広い空間の中、あるのは石碑のような白い物体と。さらにその先、部屋の中心部に浮いている巨大な青く丸い半透明な石。

 僕らが要石(かなめいし)と呼ぶそれこそが、この国を長い間守り支え続けてきた存在。結界のおおもと。


「"要石に両手で触れて二重結界の文様が浮かび上がってから、二重結界の強化を選択後、床のリングに両手で触れて魔力を流し込む" と。案外簡単なんだね」


 入り口の一番手前にある白い石碑。これが全てのマニュアルであり、操作盤になっている。

 それに手を置けば王家の魔力に反応して浮かび上がる青い文字は、自分が調べたいことを思い浮かべるだけで即座に切り替わるから物凄く便利なんだけど。この技術がどうして今なお普及してないのか、不思議でならない。


「ま、実際にはこれを維持するのに大量の魔力が必要になるからなんだろうけどね」


 王家の一番大切な役割は、この要石に定期的に魔力を注ぎ込むこと。だからこそ、おじい様は魔力の衰えを感じ取ってすぐに退位なされたわけだし。

 とはいえ、あの方は今もおばあ様と一緒に離宮で穏やかに暮らしながら、そこに設置された魔力を送り込む装置を使って毎日要石に魔力を補給していらっしゃるらしいけど。

 王位を退いた後も公務ではないけれど、それだけは王家の役目として続けていくのが慣例らしい。


「直接こちらに赴くにも、体力が必要だからね」


 装置から要石に注げる魔力は限られているらしいけど、まったくないよりはマシだろうから。おじい様とおばあ様はきっと今も、そうやって要石に魔力を送り込んでいるんだろうな。

 普段は穏やかだけれどとっても明るいお二人のことを思い出しながら、そっと両手で要石に触れる。石というだけあって、表面はなめらかだけどとても冷たくて硬い感触。


「おぉ!」


 そして同時に浮かび上がる、美しい花のようにも見える円形の魔法陣が二つ。これが、二重結界。


「王都を覆うようにあるのが一つと、国全体を覆うようにあるのが一つ、だっけ?」


 僕は第三王子だから帝王学は学んでないけど、王族として必要だからと要石や二重結界とかについての知識だけは持ってる。ただ二重結界の本物を見たのは初めてだけど。

 要石の中に一つと、要石を覆うように一つ。きっとこれが、それぞれ王都の結界と国の結界なんだろう。


「おっと。感動して見惚(みと)れてる場合じゃなかった」


 急いで操作盤に戻って二重結界の強化を選択してから、床に埋め込まれている大きな金のリングに触れて魔力を流し込む。

 要石よりもさらに大きな円は、部屋の中の床のほぼ外側に埋め込まれていて。これだけ大きいのはきっと、こういう時に必要な人数を想定してのことなんだろうなと、ようやく理解した。


「こんなに大きくても仕方ないのにと思ってて、ごめんなさい」


 何せ普段は一人しかいない部屋の中。今もそうだけど、きっとこの後この部屋には現存する王族のほとんどが集まることになるだろうから。

 それまでに僕は、一人でどのくらい二重結界を強化できるのか。

 こんな時だと分かっていても、薄い花の文様を眺めながら少しだけワクワクしていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ