09 二日目、朝 2
不肖秘崎萌乃果、今とてもへこんでおります。
長年の修練で鍛えられた鋼の精神力で、旅先でのみんなの空気を悪くしないようにと必死に普段通りの振る舞いをいたしているわけなのですが。
いかんせん、乙女としては、どん底マインドなのですよ。
略して、どんマイ……
あの後、ダッシュでテントに行って、全力でお着替えしまして、何食わぬ顔で朝食の場へ。
皆さん、気にしていらっしゃいましたが、極力いつもの私を演じてみたのです。
朝食後、こっそり謝りに来てくれたシスカさんに、気にしないでと笑ってみせました。
そして今は、いつものように何食わぬ顔で御者席に。
おずおずと、隣に座ってくれたカミス、
気を使わせちゃって、本当にごめんなさい。
「今朝は本当にごめんなさいです」
カミスが謝ることではないのです、悪いのは、いつもの女同士のノリで油断していた私なのです。
「モノカには普段通りの楽しい旅をしてもらいたいのに、男の僕が混ざっちゃったせいでいろいろと気を使わせちゃって……」
どうしよう、カミスは悪くないのに、このままだとせっかくの旅行が台無しになっちゃうよ。
カミスに普通に旅を楽しんでもらうには、どうしたら良いんだろう。
問題そのイチ
私の貧相ボディでも、カミスみたいな純情さんにはそこそこ衝撃的でそれなりに気を使わせちゃったわけで、つまりはそこそこ以上に衝撃的な何かがあればそっちに気を取られて朝のアレはノーカンになっちゃうってことかも。
問題そのニ
カミスが気を使っちゃうのは私との距離感がまだまだ遠いってことだから、もっと距離を縮めてあんなハプニングくらい笑って過ごせるくらいになっちゃえば良いってことかも。
つまりは、
もっと距離を縮められるような衝撃的な何かをカミスにぶつけちゃえ、みたいな?
って、そんなの私みたいな経験値ゼロっ娘にどうにか出来るわけないじゃんっ。
そうだよね、私に出来ることなんて、背伸びとか高望みじゃなくて、今の私を見てもらうことくらいだよね。
「ごめんね、カミス。 チームリーダーとして今までいろいろやらかしてきたけど、今朝のアレはあんまりだったよね」
「でも、あんなことくらいでカミスの初めての長旅がつまらなくなっちゃったら、私、二度とカミスと旅が出来なくなっちゃうよ」
「だから、忘れて欲しいとは言わないけど、ちょっとだけ我慢して、今まで通りにしてくれるとうれしいな」
「ごめんね、モノカ。 僕もやっぱり男だから、これからもいろいろやらかしちゃったりすると思う」
「でも、みんなとの旅を楽しいものにしたいって気持ちだけは、ずっと変わらないと思うんだ」
「だから、今回の旅だけじゃなくて、これからもいろんなことを一緒に出来たらすごく嬉しいし、きっと楽しいと思う」
「我慢の方はあんまり自信無いけど、ハプニングなんかには負けたくないよね」
「「ありがとう」」