04 初日、お昼
良い感じの平原を見つけて、お昼の休憩の準備に。
幌馬車シブマはノンストップのまま幌の中の『空間』で調理も食事も出来ちゃうのですが、今回の旅はまったり見物旅行、急がずのんびりと、なのです。
お料理班は、マクラ、ハルシャちゃん、アイネ、シジミ、クリスさん。
クリスさんは、おじさんのライクァさんから野営料理のアレコレをがっつり教わったらしくて、今回の旅の途中で狩りが出来たらぜひ振る舞いたいと張り切っておられました。
ライクァさん仕込みのお手前、とても楽しみですね。
そういえば、ノルシェの姿が見えないけど。
「ノルシェさんは気になることがあると言って、あちらのほうへ」
そっちは幌馬車が今来た道、何かあったのかな。
カミスは何か聞いてる?
「広範囲探査魔導具の反応がうんぬんとかで、僕も一緒にと言ったのですが、すぐに戻りますからとおひとりで」
うーん、ちょっと気になるから、先に探査魔導具を確認してみようかな。
シブマから降ろしておいた荷物、周囲警戒用に設置されていた探査魔導具を見ると、
私たちを示す緑の光点が近場にいくつか、ノルシェの向かった先には緑の光点がひとつ。
他には特に怪しい表示は無し、だね。
「ちょっと行ってくるね」
「僕も行きます」
カミスとふたりで、ノルシェを追ってみますよ。
いましたよ、ノルシェ。
何やら辺りをきょろきょろ見回しておりますね。
「どうかしたの、ノルシェ」
「すみません、モノカ、カミスさん。 どうしても後ろが気になっちゃって、つい」
聞くと、王都出発以降、何かに見られている気配が感じられて気になって仕方なかったとのこと。
広範囲探査魔導具の感度調節をしても表示に怪しい異常反応は無いけど、念のため目視確認しに来たそうです。
「幌の中の『空間』内にいても感じられるほどの気配だったので、どうにも気になっちゃいまして」
探査魔導具が信用出来ないわけではないのですが、ノルシェの気配探索能力はかなりのもの。
特に乙女の敵を察知することにかけてはチーム随一、さすがは『乙女の守り神』にして敏感肌乙女。
「今も感じるの?」
「馬車の移動中は確かに感じられたのですが、ここまで見に来ても怪しいモノは何も無し、です」
なんだか分からないけど、ノルシェがそう言うなら、注意が必要だね。
「すごいですね、ノルシェさん。 さすがの守護騎士さんです」
カミスが、感心しております。
「大丈夫ですっ、ふたりの新婚約旅行の安心・安全は、このノルシェにお任せくださいっ」
変な造語を作らないでよっ。
「初々しいおふたりの初めての婚約婚前旅行なのです。 全力で楽しんでもらいますからねっ」
あかん、こうなったノルシェは誰にも止められない頑固乙女。
これ以上刺激しないようにせねば。
「それじゃ、早めに帰ってきてね」
「お任せあれ!」
カミスと退散しました。
「モノカとノルシェさんの信頼関係、すごく素敵ですね」
カミスのまなざしが、ちょっとまぶしすぎますよ。
旅行のこの先が思いやられる、恥ずかし乙女なのです。