11 二日目、お昼すぎ
「お疲れさまです、モノカさんっ」
お疲れさまです、リシェルさん。
ノルシェが怪しい人物を捕まえまして、魔導通信機マツカゼでアランさんからギルドに連絡してもらったところ、巡回司法官のリシェルさんがすぐに『転送』で来てくれました。
何やら結構な大物犯罪者だったようです。
「広域指名手配犯の捕縛、まことにお見事でありますっ」
そんなにすごいヤツなの?
「まずは、各ギルド間の連絡で使用されている遠隔連絡魔導具の通信傍受、いわゆる盗聴ですねっ」
うわっ、結構ヤバいヤツだったんですね。
「次に、女性冒険者を遠視魔導具で盗み見、いわゆるストーカーですねっ」
うひゃっ、相当アレなヤツだったんですね。
「それに、盗聴やストーキングで得た情報で本人の名を騙って裏でアレな出版物を乱売、いわゆる成りすましですねっ」
あれ、それって、
「最後に、何度も捕まったにも関わらず逃走経路不明での牢からの脱出、いわゆる脱獄ですねっ」
やっぱりアイツかよっ。
犯罪者のおっさんは魔導具を体に埋め込んでいたそうですが、かなりヤバいシロモノだったそうです。
本人の魔力と生体エネルギーを利用して通常よりも高い能力を発揮する魔導具。
盗聴や遠視だけじゃなく、パワーが蓄積されていれば転送すら出来ちゃうとか。
ただし、生体エネルギーの消費が半端じゃないらしくて、
要は脂肪をいっぱい溜め込んでおかなきゃ連続使用出来ないのだとか。
なるほど、捕まったおっさん、かなり丸々しておりました。
「今そこで司法官の技術班が調べているのですが、どうやら他の能力もあったみたいなのですっ」
ほう。
「『完璧な隠蔽』みたいな能力ですって」
ほほう。
「魔法的な探査も目視的な探索も全てあざむいちゃうような、すごい隠蔽能力だそうです」
ほうほう。
「そんなすごい隠蔽能力があるのにどうして捕まったのかって聞いたらですねっ」
……
「あまりにも美味しそうな匂いに我慢できなくなって、魔導具を使う集中力が乱れちゃったんですって」
ピザかよ。
「それでですね、うちの技術班がぜひノルシェさんにご協力いただきたいとっ」
何をでしょう。
「あの『完璧な隠蔽』を見破った方法を教えていただきたいそうですっ」
敏感肌ですね。
「はい?」
あと、誰よりも痴漢を憎む気持ち、かな。
「……」
王都の人混みの中で誰かひとりからいやらしい視線を向けられても、すぐにそいつを特定出来るくらいに人並外れた潔癖乙女心、ですね。
「教わっても誰も真似は出来ない、ですよね」
私にも、無理ですね。
「……了解しましたっ。 つまりはチームモノカのお手柄、でありますねっ」
そういうことで、よろしくです。
「ご協力、ありがとうございましたっ」
お疲れさまです。




