テルミドールSS〜放課後のラブレター〜
夕焼けが広がる頃。
放課後の体育館裏。
「アクバル先輩っ」
僕の前には一人の女の子がいた。金色の長い髪は胸元にまでかかっている。パッチリとした目。
ちょっと俯き顔の彼女。
「先輩……、わたし」
後輩のリリだった。セーラー服を身に纏った彼女は部活の姿とはまた違った趣を呈している。
「わたし……」
「どうしたんだい?」
できるだけ優しく声をかける。
今の僕は優しくて頼りがいがあるイケメンで頭がいい、しかも運動神経抜群のモテモテ先輩モードだ。
「その……」
校内美少女ランキングで堂々の1位の彼女がもじもじしているのは何だかとてもかわいいな。
ちなみに僕アクバルは校内イケメンランキング、堂々のランク外だ。
数字ではきっと評価できないんだ。たぶん。イケメンすぎて、投票するのが躊躇われたんだ、きっと。
そして、
「これっ、」
と言って彼女が手渡してきたのは可愛らしいピンクの封筒。
ま、まさか……。
彼女いない歴=産声から今この瞬間までの僕に、ブレイクスルーが訪れようとしているのか……っ。
神様は僕にお恵みをくださるというのかっ?
「リリちゃん、これは……」一応確認してみる。
しかしもうわかりきっていたことだった。
リリは僕にホの字だ。
間違いない。
すると、恥ずかしそうに彼女がうつむいた。顔が真っ赤だ。
……間違いない。
コーラを飲むとゲップが出るくらい間違いない。
これから、僕の青春がはじまるのだっ。
「それ、」
彼女が口を開く。
よし、良いぞ。
どんな告白でも受け止めよう、マイハニー。
僕たちはきっと前世から結ばれていたんだ。そう。運命なのだ。
そして、リリは僕アクバルに言った。
「それ、ルカ先輩に渡してくださいっ!」