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墓場と白。  作者: 劣
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22/40

?.意志


突然の質問に驚いた。

深くは聞いてこないけど、心配してるのは分かる。

黒埜コクヤ、不安そうな顔してるのかな。

こんな時目が見えていたら…と思う。

昔はこんな事、考えるのもなかった気がする。

この施設に来て、黒埜コクヤに出会ってから。

諦めきれない事が、増えてしまった。

どうしようもないと、分かっていても。


「心配?養子先の人は男性でね、若い人なんだけど。

すごく話し方が丁寧で、明るい人なんだよ。

本が好きみたいで、家にもたくさんあるって!」


これは嘘じゃない。本当にそう言ってたし。

ただ僕は養子先の、ヨウさんが苦手だ。

苦手、と言うより怖い。

なんて言えばいいか分からないけど。

纏っている雰囲気が少し、他の人たちとは違う気がする。

それに初対面で握手をした時。

手を握る力がとても強かった。

…あざが出来るほどに。

わざとなのかは、考えない事にした。


それに僕はわがままを言える立場じゃない。

神父になるって決めた。

手段は選んでいられない。

少しでも早く、神父に近付きたい。

今までこれと言った目標もなく生きていたから。

ようやく出来た将来の道を潰す訳にはいかない。

僕に出来る事は全部やりたい。


僕に才能はない。でも家族がいる。

施設のみんな。…黒埜コクヤのために。

そう思えば何だって怖くない。

我慢をしている、なんて思わない。

きつい…そう思う事はあるけど、苦ではない。

だってそれらは夢を追うために必要な行程だから。


心配をかけないために、あざの事も先生に言わなかった。

これが正しいやり方なのかは分からない。

だって僕は“普通”じゃないから。

人並みの努力で夢が叶うとは思っていない。

人より劣っているから、人並み以上が必要なんだ。

目が見えない事を、出来ない理由にしたくない。

可哀想だなんて、言われたくない。


大好きなこの施設を守りたい。

大好きな黒埜コクヤに見合う人になりたい。


黒埜コクヤはよく自分の事を悪く言うけど。

僕には誰よりも輝いて見える。

…“初めて出会ったあの日”から。

僕の“憧れ”で、生きる希望だから。


「…もう少し、頑張らせて。」


みんなの中で笑っている黒埜コクヤ

聞こえない程小さな声で、手を伸ばした。


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