?.意志
突然の質問に驚いた。
深くは聞いてこないけど、心配してるのは分かる。
黒埜、不安そうな顔してるのかな。
こんな時目が見えていたら…と思う。
昔はこんな事、考えるのもなかった気がする。
この施設に来て、黒埜に出会ってから。
諦めきれない事が、増えてしまった。
どうしようもないと、分かっていても。
「心配?養子先の人は男性でね、若い人なんだけど。
すごく話し方が丁寧で、明るい人なんだよ。
本が好きみたいで、家にもたくさんあるって!」
これは嘘じゃない。本当にそう言ってたし。
ただ僕は養子先の、燿さんが苦手だ。
苦手、と言うより怖い。
なんて言えばいいか分からないけど。
纏っている雰囲気が少し、他の人たちとは違う気がする。
それに初対面で握手をした時。
手を握る力がとても強かった。
…あざが出来るほどに。
わざとなのかは、考えない事にした。
それに僕はわがままを言える立場じゃない。
神父になるって決めた。
手段は選んでいられない。
少しでも早く、神父に近付きたい。
今までこれと言った目標もなく生きていたから。
ようやく出来た将来の道を潰す訳にはいかない。
僕に出来る事は全部やりたい。
僕に才能はない。でも家族がいる。
施設のみんな。…黒埜のために。
そう思えば何だって怖くない。
我慢をしている、なんて思わない。
きつい…そう思う事はあるけど、苦ではない。
だってそれらは夢を追うために必要な行程だから。
心配をかけないために、あざの事も先生に言わなかった。
これが正しいやり方なのかは分からない。
だって僕は“普通”じゃないから。
人並みの努力で夢が叶うとは思っていない。
人より劣っているから、人並み以上が必要なんだ。
目が見えない事を、出来ない理由にしたくない。
可哀想だなんて、言われたくない。
大好きなこの施設を守りたい。
大好きな黒埜に見合う人になりたい。
黒埜はよく自分の事を悪く言うけど。
僕には誰よりも輝いて見える。
…“初めて出会ったあの日”から。
僕の“憧れ”で、生きる希望だから。
「…もう少し、頑張らせて。」
みんなの中で笑っている黒埜に
聞こえない程小さな声で、手を伸ばした。




