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「……ここにリルが」


「そうなの、あなた……嘘が下手ね」


「え?」


「少しだけ自分の愚かしさを思い知ったわ」


 私は今まで少し感傷に浸りすぎていた、それをひしひしと感じていた。

 だって彼が指さした薄汚い小屋には女性の気配がない。

 さすがに私も魔法使い、気配を探る魔法くらいは使える。


 私がここにはあなたの娘さんはいないわと笑うと、やはりわかりましたかとがくりと項垂れるカイン。

 ああ、どうしたって大切な人をとらえられていたら従うしかない。


「すまない」


「ほら出てきたら?」


 小屋の扉が開いて、魔法使いと剣士が数人出てきた。

 しかし私を無理やり力づくで従わせようとは片腹痛い。

 さすがに闇の精霊がいなくても老魔法使いにある程度の魔法は習った。

 それに前世、私は悪役令嬢とは呼ばれていたが魔法学園の生徒だったんだ。


「すべてをつかさどる美しき光、精霊ミカエラよ。わが願いを聞け、集え光よ!」


「闇属性ではなかったのか!」


 光に対抗できるのは光、実は光属性同士は相性がよくない。

 これを私は前世の知識で知っていた授業で聞いた記憶が蘇る。


 光魔法とは相性が悪いが、前世の私は光の属性もある程度は使えた。

 皮肉なことに今は前世の魂の蓄積かある程度は使える。


 闇の魔法使いがいないせいか、私が放った光にみな目を焼かれ、のたうち回っていた。

 私はカインに手を差し出し、どこにリルさんがいるの? と尋ねるとわからないと彼は首を振る。


「わからない?」


「ここに連れてきたら娘を返すと」


「本当に短絡的ね」


 これは最初に戻るってやつ? でも私は闇の精霊を求めるという王の性格上、たぶんまだリルさんは殺されてはいないと検討をつける。

 交渉のカードは最後までおいておくべきだ。


「……ねえ、リルさんが囚われているならどこが可能性が高いの?」


「王宮かもしれないが」


「行ってみましょう、仕方ないわ」


「しかし、あなたは」


「私もシャルルとリルという名前を聞いた以上引けないの」


 魂が呼ぶのは愛しいあの人、悪役令嬢と私のことを呼んだ人の身内。

 断罪すると叫んだシャルル王太子にやめてくれと叫び、不貞化と言われた瞬間、私はあの人にかばわないでと願ったのだ。

 愛しいあなた、優しいあなた。


 私のせいでいつも悲しんでいたあなた。


 あなたが好き。どうしたってあなたを忘れられるはずない。


「……闇の精霊の力がない状態で、陛下にあなたが」


「四の五の言わないで、どうしたってあの力は私には頼れない事情があるの」


 私は早くいくわよと馬に乗せてと声をかける。カインは項垂れ、あなたに頼るしかないと馬にまた乗ったけど、だけどね、私だってあなたに力を貸すのは自分の都合もあるの。


 心があの人を呼ぶ。

 悪役令嬢、リリアーナと皆が呼ぶ中、リル、一緒に逃げるんだと手を差し伸べてくれた私の魔法使い。


 私の愛しい人。

 永遠の恋人。

 名前すら思い出せないの、不貞、不義ではない。あの時になって初めてあなたを愛していると知った。


 でもシャルル王太子を前世裏切ったのは間違いない。

 ああ、神様、どこまでが私の罪なのですか?


 でも前世、私は悪役令嬢と呼ばれるほどのことをしていた。

 その罪のあがないというのならあの人と出会えない今はとても辛い。


 名前を呼んでほしい、リルと。

 いえ私はリリシア、前世と今の私は同じ?

 わからないでもただ一つだけ言えること、夢の中で呼びかけるあなたの声に私は耳を傾けるしかできない。

 愛しいと呼びかける闇の精霊の言葉よりもあなたが愛しい。


 馬に揺られながら、私は前世の運命のことを考えていた。

 呪いのせいか、私を断罪し処刑した人々は悲惨な末路をあとで調べたら送っていたのだ。


 だがそうこうしているうちに王宮につき、私は見上げたとたん、胸が痛むのを感じたのだった。

 私が前世でで見た、見慣れたものがそこには存在したのだった。


 


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