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『願いは何か?』


「クロスを封じて!」


『願いを叶えるには対価が必要』


 長い金の髪をした青年が空中に浮かんでいる。

 苦々し気にクロスが彼をにらみつけると、何も映さぬ金の瞳がただまっすぐにクロスを見た。

 しかしそこには感情の揺らぎはない。


「私の生命で!」


「やめてくれ、私は君の生命を奪うために契約したのではないリル!」


「リルと呼ぶな! そう呼んでいいのはあの人だけだ!」


 クロスは私を庇護する。しかしそれは私が望んだものではない。

 人を憎むたびに私を悲しませるものは消すといって人を殺し、ちょっとしたことでも私が負の感情を向けた相手を消そうとする。

 そんな守護、だれがいるか!


 私を哀れんだ老魔法使いが使いすぎてはいけないよとくれたアイテム。

 光の精霊を呼び出し、願いをかなえることができるものだった。


「あの忌々しい光の魔法使い、やっかいなものを!」


『契約は成立しました。あなたの生命の一端を変換して闇精霊クロスを封じます。今は新月、3日の猶予があります』


 そんなにも短いか、私はちっと舌打ちする。

 しかし背に腹は代えられず、お願いとうなずくしかない。

 白い翼をはためかせ、光の精霊はではと頷いた。


「いやだ、やめろ、リル。君は!」


『クロス、しばらく闇の深淵に……還りなさい』


 闇へと封じられるクロス、私の生命すべてを使っても完全に封じられないけど一時なら封じられると、光の老魔法使いは私に言ったが、もうだいぶ寿命は消耗していた。


「さあ早くいかないと」


 銀のペンダントをしまい、私は気まぐれな光の精霊の降臨に少し感謝した。

 現れないことだって過去あったからだ。

「三日、三日、でもなんとかしないと……」


 私は扉を慌てて開ける。するとやはり土下座をしている男の姿が見えた。

 男の紋章はたぶんこの国のものだ。だとするとぎりぎり間に合う。


「精霊は消えたわ、でも私は闇の術を使えるの、だからあなたの娘さんを助けるのに力を貸すわ」


「闇の魔法使い……」


 どうしたって私は人の心を捨てられぬ、どうしても私は人が死ぬのは見たくない。


 前世の私は使用人をいたぶった。そして同級生の持っている装身具を無理やり奪い取ったこともあった。

 父におねだりをして、数々のドレスを作らせ、お願いだから施しをと願う庶民を足蹴にして、目の前でパンを一口食べて、川に投げ捨てたことすらあった。


 今の私は人殺し、願うだけで人を殺す。

 前世の罪と今の罪はどちらが重いんだろうか?


「娘を……」


「すぐ行きましょう。あと数日したら闇の精霊は戻ってくるから」


 銀の髪をフードに入れて、手早く支度をして馬はどこ? と尋ねる私。転移の魔法はこの森では使えない。


「あちらに」


「どれくらいであなたの娘さんがとらえられている場所につく?」


「丸一日あれば」


「十分、すぐ向かいましょう。あなたの名前は?」


「宮廷魔法使い、名前はカイン、娘はリル」


「リル?」


「ええ」


 男の娘の名前を聞いて胸が痛んだ。前世の私の愛称、でも感傷に浸る暇はない。

 私は男の後ろに乗った。ありがとうと男、カインが感謝を述べるが、でも自分のために力を貸すだけだ。

 私は早くと彼に言葉を返す。


 ああ、今度はどんなことを私は願われるのだろうか?



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