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異世界物語  作者: 成成成
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英雄転生編 04


 いや~、前回は中途半端で終わってしまったので、今回は切りのいい所まで頑張って書こうと思っています!(←多分無理だろうが!)


「おぉ~、いってぇー……」

「大丈夫かよ、ネイツ?」

「あぁ、なんとかな。何せ久しぶりにあんだけボコボコにされたからな。ミーヤの奴、少しは手加減しろよなぁ」

「いや、そこは自業自得だろ」



 今現在、俺とネイツは夕方になってギルドから出て、中央広場に向いながら北通り、商業区画に向っている。

 何故そんな時間になるまでギルドに居たのかって? それは隣にいる俺をおっさんに売りやがった薄情者が原因なのだ。マジであの後が大変だった……






ギルドであった急なギルドマスター、ウォルフとの模擬戦の後、受付嬢でそのウォルフの娘のミーヤさんによって連れて何処かに連れていかれた。その後に残されてた俺は、何かがあって気を失ってしまているネイツをどうするか悩んだ。だって、こいつ体格通りでかなり重そうだし、むさい男を担ぐとか、どんな罰ゲームだよ?

 そんなことを考え、俺は一旦ネイツをそのまま放置して、ここに来た際に通った通路の入り口に向かう。


 通路を抜け、またカウンターのあるホールに戻ってくる。周囲から視線を感じるが、今はどうでもいい。まずは目的のカウンターに近付くが、端に居たはずのミーヤさんはそこには居らず、仕方なくその隣で受付をしていた女性職員(ミーヤさんとは違い、金髪碧眼の綺麗系のお姉さん)の前に行く。相手もこっちに気付くと、営業スマイルで笑いかけてくる。


「先程ギルドマスターと訓練場に行かれた方ですね? どかされましたか?」

「はい、少し問題があって。実は、さっきその訓練場にミーヤさんが来たんですが、その際にネイツ、俺の連れが気を失った状態で引きずられてきまして……その、出来ればあいつを運ぶのを手伝ってもらえませんか?」

「あぁー、彼ですか。……ミーヤもいい加減、意固地にならなくてもいいのに……」


 どうやらこっちの要件は伝わったようだ。うん、これで安心だ!

 けど、正面の受付嬢さんが何か呟いているが、まぁ俺には関係ないかな。


「それで、手伝ってもらえるんでしょうか?」

「あ、はい、問題いりません。そちらは我々の方で治療室にお運びいたしますのでご安心ください」

「そうですか、よかった……」

「よろしければ、右手に見えます酒場がございますので、あちらでお食事でもいかがですか? お連れの方が目を覚ましましたら、そちらに居られるとこちらでお伝えしますので」

「え、いいんですか?」

「はい。先程ミーヤからもそうしてもらうように言われておりますので、問題ございません」

「そうですか?……そですね。では、ご厚意に甘えさせてまらいます」

「はい、お任せください。今後とも、ギルドアーバイル支部をよろしくお願いいたします」


 受付のお姉さんが綺麗なお辞儀をしてくれたから、こっちもそれに合わせてお辞儀すると、先程から騒いでいる飲んだくれが居る酒場に向って足を進める。

 視線の先では、街中で見たような多種多様な人々がテーブルを囲って昼間っから酒盛りに興じている。騒がしいけど、これはこれで雰囲気がいいな、うん。

 俺は視線を彷徨わせ、まだ空いているテーブルを探す。その間も周囲からは俺に向けて探るような、もしくは値踏みするような視線が無遠慮に向けられてくるが、もうそんなに気にならなくなっていた。これも【完全適応】の効果かな? そんなこんなで少しすると、まだ空いている場所があり、俺は直ぐにそこにあった椅子に座り一息つくことができた。


 それにしても、あのおっさんがこのギルドのトップとか、部下の人達は大変だろうなぁ~……

 さて、このまま座ってるのもなんだし、何か頼もうと考えて定員さんを探して声を掛けようと顔を上げると


「いらっしゃい。ご注文は決まってる?」


 その声に正面を向くと、盆を持ってこちらを見下ろしている一人の女性がいた。

 言葉遣いや態度はぶっきら棒だが、その見た目は大学生くらいに見える気の良さそうなスタイルのいいお姉さんで、茶髪に紺の瞳が似合っている。そんな彼女が来ているのはウエイトレスの服なのだろうか? 普通の服に短いスカート、肩掛けエプロンといったいでたちだ。

 だが、俺はそんな事より気になることがある。それは……



「ウサ、ミミ……?」



 そう、このお姉さんの頭からウサミミが生えているのだ!

 街中でもちらほら見てはいたが、こんな間近で見ると感慨深いものがある。流石はファンタジー!

 そんな俺の反応が面白かったのか、お姉さんは可笑しそうに笑いだす。


「あははは! なにあんた、兎人族は初めてかい?」

「え? あ、あぁ、ごめんなさい! 俺、あなたみたいな頭から動物の耳が生えている人を初めて見たもので……」

「へぇ~、そんなとこから来たのか? 随分と辺鄙なところなんだね」

「あ、あははは……」


 さ、流石にこんなところで、「異世界から来ました!」なんて馬鹿なことは言うつまりはない!

 そんな俺の内心なんてどこ吹く風で、ウエイトレスのお姉さんはどこかまだ可笑しそうに微笑んでいる。その眼からは好奇心がハッキリ見て取れる。


「いやはや、あんたみたいな奴は初めてだよ」

「そ、そうなんですか?」

「あぁ。だいたいあたしを見た奴は、あたしの胸か尻ばっかりに目を向るから、ねぇ~?」


 そう言うと、お姉さんは周囲に視線を向けて同意を求める。俺も釣られて周囲を見ると、あからさまに視線を逸らす者もいれば、「そうだな!」とか言って同意しながら酒をあおる者など様々だ。てか、よく女の人相手にそう素直に言えるもんだな? やっぱり酒が入ってるせいか?


「まぁ、こんなのが毎度のことさ。それで? 何を注文するんだい? 家はそんなメニューは多くないよ?」


 そうだった。ここは食事したり酒を飲むところだ。何も頼まない訳にはいかないよなぁー……

 でも俺、この世界の金なんて持ってないんだが……仕方ない、さっきミーヤさんや受付嬢のお姉さんの言う通りに言おう。


「それなんですが……先程このギルドの職員で、ミーヤさんって人に__」

「あぁ、ミーヤの奴の紹介かい? どうせ、ウォルフのおっさんに迷惑被って、そのお詫びとか言われたんだろ?」

「え? な、なんで分かったんですか?」


 俺の説明に被せるように、ウエイトレスのお姉さんが先に真実を言い当てたのだ。その言い当てた本人はというと、何が可笑しいのか、含み笑いをしながらこちらを見ている。


「ククク……あんたも面倒なのに絡まれたね?」

「……はぁ~。本当ですよ、もう」

「アッハッハッハ! そいつは災難だったね! よし、なら直ぐに料理を持ってきてやるよ。なに、気にすんな。代金はあのおっさんが立て替えるから、遠慮なく食っていきな」


 お姉さんはそこまで言い切ると、俺に背を向けて厨房が見えるカウンターに向って歩き出す。

 そんなお姉さんの後ろから、お尻に手を回そうとしていた冒険者に対して、お姉さんは後ろに目でもあるのか的確にその狼藉者の後頭部に盆を当てて昏倒させると、そのまま何事もないかったかのように歩いて行ってしまった。しょ、性根たくましいな……


その後は料理が運ばれてくるまで、他のカウンターに視線を巡らせていた。だって、こんな場所に来たことが無かったし、異世界の、そこに生きる人々を見ているのはサブカルチャーが充実していた日本人としては、見逃せないよな!

 それで周囲を見てみると、ある者は仲間同士で酒盛りをし、またある者は女性の冒険者を食事に誘おうとして失敗して離れて行ったりと、そんな光景を見ているだけでも待っていて退屈にはならなかった。たまにこっちに手を振ってくれる人たちに手を振り返していると、先程のウエイトレスのお姉さんが両手に木製の大皿を持ってこっちに笑顔で向って来た。


「待たせちまったね! ほら、これが家の一番人気の料理だよ!」

「おぉ~……」


 お姉さんが持ってきた大皿を俺の前にドンッ!と置くと、そこには大きな骨付き肉が鎮座している。

 皿の上にはメインの肉が中央に置かれ、端の方にマッシュポテトみたいの物と、色鮮やかな野菜を炒めた物が添えられている。うん、これは食べ応えがありそうだな。

 でも、この肉、鶏のもも肉に見えるけど、何処かで見たことがあるような……?


「フフフ……驚いてるみたいだね? こいつは『コカトリス』って言われる鳥形の魔物の肉だよ。そいつのもも肉に、料理人が岩塩と複数のハーブを刷り込んで、じっくりと焼き上げた逸品だ!ゆっくり味わっておくれよ?」


 彼女は料理の説明が終えると、こちらにウインクをしてからまた厨房に向って背を向けて行ってしまう。その際にまたしてもお姉さんにちょっかいを掛けようとする輩が居たが、彼女は振り向きざまに相手の顎に向って下から打ち上げる様に拳を打ち抜く!殴られた相手は、そのまま重力に引かれるように地面に落ちて動かなくなったが、周囲やお姉さんは気にした様子もなく騒ぎ始めていた。……あのお姉さんは怒らせないようにしよう。あれはミーヤさんと同等の強さだ。


 さて、俺も気にせず(うん、自分でも慣れたと思う)に、目の前の調理に意識を向けることにしよう!

 それにしても、まさかこの肉が、あのコカトリス(・・・)の肉だとは思わなかった。俺も森の中でかなりの数に襲われ、たまにその肉を焼いて食ってはいたけど、こんなに美味そうな匂いにはならなかったからなぁ……


少し前にあったことを思い出しながら、大皿と共に持ってきていたフォークとナイフを取ろうとしたが、それを止めてそのまま肉を皿から骨を掴んで持ち上げる。うん、これは旨そうだ。

 俺はその肉に鼻を近づけ、香りを楽しいむ。肉からはじっくり焼かれたと言っていた通り、ローストされた皮目の表面から匂いは、幾つもの香草に肉の脂が混ざり合っていて、否応なく俺の胃を刺激してくる。朝にネイツから貰ったサンドイッチも美味かったし、こっちも期待できそうだ。

 知らぬ間に口の中に溜まっていた唾を飲み込み、その美味そうな肉に大口で齧り付く!

 噛んだ瞬間からあふれ出す肉汁と、焼く前に刷り込まれている香草と塩が肉の味を引き上げている。これは俺が山で焼いて食った肉とは、まるで別物だ。俺は食欲の赴くままに、手を止めずに食べ続けた。

 肉の合間に食べるマッシュポテトは脂っこくなった口の中をサッパリさせてくれ、炒められた野菜は食感を損なわないように炒められていてシャキシャキとした歯ごたえが楽しい。

 そんな食事を夢中でし、大皿に乗っていた料理はあっという間に無くなってしまった。だが、その後の満腹感と満足感は心地よかった。これ、持ち帰りとかできるかな? 是非とも、これは【無限収納】に入れておきたい!


 俺がそんなことを真面目に考えていると


「おう、随分といい食いっぷりだったな!」

「ん?」


 こっちに向って話しかけてくる、皮で出来てる胸当てと小手を付け、腰には剣を持った見た感じ正に冒険者というような感じの男が話しかけてきた。その後ろからも、何人もの男達がこっちに好意的な視線を向けてくる。え?なに、こいつら?

 そんな奴らに訝しんだ視線を向けると、正面の男が笑顔で話し出した。


「なあなあ!お前、さっきまで訓練場で、ウォルフさんと一戦した奴だろ?」

「あー……ま、まぁ、そうだけど__」

「「「「おぉー!!」」」」


 曖昧に俺が返答すると、話していた男だけではなく、後ろにいた者達や、こっちの会話を盗み聞きしていたらしい奴らまでこっちに信じられないと言いたげな視線を向け、感嘆の声を上げる。

 いや、マジで何なのあんたら?

 こっちをガン無視してはしゃぎだす男達に、ますます顔を顰めていると



「なぁ! 俺らと模擬戦してくれねぇか!?」



 俺に話しかけて来た男のすぐ隣に来た別の男(こいつ、頭に犬耳が生えている)が、いきなり戦えなんて言いだしやがった!その声を聞いた酒を飲んでない連中までも、俺との模擬戦に乗り気になってやがる。おい!俺は一言もやるとは言ってないぞ!?


「ま、待て待て待て! なんで、お前らと模擬戦しなくちゃならないんだよ?!」

「そんなの、こんな機会を逃す手はねぇからだよ!あのウォルフさんと同等にやり合える相手が居て、そいつと一戦しないとか勿体ねぇぜ!」

「そうそう。こんな機会じゃないと、ウォルフさん並みの相手と訓練なんて出来ないからな」

「今後の冒険者活動の糧にしないとな! よし!んじゃ、訓練場に行くぞテメェら!」

「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」


 犬耳男の掛け声に、他の冒険者たちが男女関係なくぞろぞろとさっきの訓練場に向って移動し始める。そんな奴らの行動を唖然と見ていると、俺の両脇を最初に話しかけて来た男と犬耳男がガッチリと腕を拘束し、そのまま俺を引きずって訓練場の方に向って連れていかれる。

 お、おい!俺はお前らと訓練するなんて言ってないぞ?!


「は、放せ!俺はそんなことせずに、のんびり寛ぐんだぁー!!」

「ははは!そう恥ずかしがるなよ?」

「そうだぜ? 冒険者同士、仲良くやろうぜ!」

「俺はまだ、冒険者じゃなーーーーい!!」


 俺の抗議の声を無視し、そいつらは俺を訓練場引きずっていった。



 その後、訓練所に来ていたざっと100人くらいの冒険者(男女関係なく)と強制的に模擬戦をやらされることになった。流石の俺も、ここまで理不尽なことは無いと思って軽くボコってやったさ。

 訓練場について、服を破かないように上を脱いでから「全員で掛かって来いや、戦闘バカ共!」と苛立ちで挑発し、俺に武器(中には実戦用の武器で斬りかかってきやがった!)で攻撃してくる奴らをタコ殴りにして地面に沈めてやったぜ。あ、でも女の人達はデコピンで昏倒させるだけで抑えたぞ? 流石に女の人を殴る気になれなかったよ。うん。

 因みに、俺を引きずって来た二人は、ネイツみたいに顔面が腫れるまで殴ってやった。それぐらいは報いを受けて当然だろう。


 戦闘中からは、周囲で見ていた冒険者達が賭けを始めたり、俺の体に熱い視線を向けてくる女性冒険者や、あっち系の人達の声援があった。俺はノーマルだ!投げキッスなんてするな!


 そんな無駄な訓練場での模擬戦も終わり、俺以外が全員昏倒したのを確認していると、やっとネイツの奴が目覚めて訓練場に現れたのだ。お前、どんだけ寝てんだよ……もう夕方なんだが?

 そのネイツは、訓練場に入ると同時に、周囲の現状を目にすると「な、なんじゃこりゃ?!」っと言って俺の両肩を掴んで揺さぶって来たので、とりあえず脳天に一発チョップを軽く喰らわせて黙らせる。威力は調整していたが、かなり痛がってその場でのたうち回っていた。うん、これであのギルマスのおっさんに売ったことはチャラにしてやろう。


 それからネイツが回復するのを待つ間、近くに居た冒険者の少女に頼んでギルドの職員の人を呼んでもらうように頼んでおく。この現状をそのままにしとくと、後々で何か言われかねないからな。

 頼む際に、頼んだ少女から「あ、握手し、して貰えましゅか?!」とか言われ、素直に握手した後、その娘は恥ずかしそうにしてホールに向て走って行ってしまった。何だったんだ、あれ?


 それから数分で男性職員さんが来て、ネイツと同じ反応をした後、理由を説明する。説明の最中、職員さんは終始顔が引き攣っていた。すまん、これは仕方なかったんだよ……

 説明が終わると、職員さんからこの後は任せてほしいと言われた。


「またしても災難でしたね。彼らは我々が責任を持ちますのでご安心を。それに、今回のようなことであれば、本来かなりの人数の負傷者や、間違えると死者すら出かねませんでしたから、こちらが感謝したいくらいですよ」


 そう感謝の言葉までもらってしまったのだ。

 そういうことで、俺はこの後の処理を職員さんに任せ、チョップの痛みから回復したネイツと共に、ギルドから出ることが出来た。いやー、朝から夕方まで捕まるとは思わなかった……








 そして現在、俺はネイツの案内で今晩の夕飯を食いに行くために夕方の街の通りを歩いているのだ。

 昼は俺はミーヤさんのお陰で食うことが出来たが、ネイツは気を失っていたから食い損ねてしまっている。その為、ネイツの奴は腹をさすりながら「あー、腹減ったなぁ…」なんて言いながらトボトボと目的地に向って歩いて行く。

 その街中を通ると、あちこちで夕飯の買い物をする奥様方や、仕事会わりで店に入っていく男達、何処かに行っていたのか、疲れた顔で飲食店に入って行く冒険者達など、夕方になってもかなりの活気がある。今度はもっと心の余裕と、お金を持って彼方此方観に行こうかな。


「おい、着いたぞ?」


 朝方と同じように彼方此方見ていると、どうやら目的地に着いたらしい。

 ネイツが見ている店先に吊るされている看板に目を向ると


「『子豚の尻尾亭』、か。うん、いい店だな」


 看板は子豚をイメージして形をした板に、店の名前を書かれたシンプルなもの。店の外観も、これといった変な処もない、言ってしまえば普通の食事処のそれだった。けど、どこか温かみを感じるいい店だと思う。

 その店先を見ていると、ネイツは勝手知ったると言う感じで店の入り口の取手に手を掛け、扉を引いて店内に入っていく。俺は慌ててネイツの後について店の中に入ると


「いらっしゃいませ! 空いてる席へどうぞ!」

「よう、頑張ってんな」

「あ、ネイツじゃん! どうしたの、今日は休日だったんでしょ?」


 入ったと同時に、店の中で忙しそうに動き回っている女の子がこちらに向って声を掛けてくる。

 癖毛なのか、あちこち跳ねている焦げ茶色の髪を後ろで括っているエプロン姿の女の子に、ネイツが気楽な様子で返す。その女の子の方もネイツを目にすると、気安い感じで話しかけている。どうやら二人は知り合いらしいな。……もしこれでこっちの女の子方が彼女とか言ったら、ネイツの奴に天誅が必要だな。


「ねえねえ、今日の休日って、ミーヤちゃんとのデートの為に取ったの?」

「だから、なんで皆そんなに俺とあいつをくっ付けようとするんだよ? 別に、あいつと俺は単なる幼馴染だぞ?」

「えぇ~? 周囲から見たら、十分付き合ってる様に見えるよ?」

「ははは、まっさかー!」

「……はぁ~」


 ネイツは女の子の言ったことを完全に否定し、その反応を見た女の子は呆れたような、どこか憐れんでいる様な表情で大きく溜息を吐いてしまっている始末だ。マジでこいつとミーヤさんの関係が気になるな。

 そんな溜息を吐いていた女の子は、ふと視線をこちらに向け、ネイツの後ろに居た俺に気付くと、背筋を伸ばし、若干頬を赤らめながら笑いかけてくれた。うん、あんなところを知らない奴に見られたら、普通に恥ずかしいよな。


「い、いらっしゃいませ。えっと……」

「あぁ、こいつは俺のダチで、名前はタイキってんだ。今日はこいつにこの街を案内しててな、最後にここに夕飯を食いに来たんだよ」

「あ、そうなの? それなら、女将さんに伝えてとくよ。それと、初めまして、私はこの店の看板娘をやらせてもらってるモミって言うの。よろしくね」

「はい、よろしくお願いいたします、モミさん」

「モミでいいよー。それに、ネイツの友達なら、私にとっても友達だよ!堅苦しいのは苦手だしね」

「了解。じゃ、改めてよろしくな、モミ」

「うん、よろしく!ほら、二人とも早く座りなよ。奥の席が空いてるからさ」

「おう、そうだな。んじゃ、座ろうぜタイキ。昼食い損ねて腹減った!」

「だな。かなり動かされたせいで腹ペコだ」


 看板娘のモミと直ぐに仲良くなると、彼女に勧められた店の奥にある席に向かう。後ろを見ると、モミが他の客の対応に追われていた。どうやらここはかなりの繁盛店の様だ。これは期待大だな。

 俺達はモミの言っていた席を見つけ、お互いに向かい合うように座ると同時に、そのテーブルの上に水の入った木製のジョッキが置かれる。俺とネイツはそのジョッキを置いた人物に視線を向けると、そこには恰幅がいいおばちゃんが居た。

 肩まで伸ばした茶髪を三角巾のような布で髪を纏め、勝気な表情で俺とネイツに向って笑顔を向けていた。


「なんだいネイツ。あんた、ミーヤちゃんをデートに誘うんじょなくて、そこの坊やとデートしてたのかい?」

「おいおい、お袋までモミと同じこと言うのかよ? あぁ、こいつはタイキ。俺のダチで、今日はここに飯を食わせに来たんだ。とびっきり美味いのを食わせてやってくれよ」

「旦那の料理はどれも絶品だよ、このバカ息子! 初めましてだね、あたしはこの店『子豚の尻尾亭』の女将でネーアってもんさ。今日はうちのバカが迷惑を掛けなかったかい?」


 店の女将さんで、ネイツの実の母親らしき女性ネーアさんは、俺に話しかけてきた。よく見ると、目元とかネイツに似ているかも。


「初めまして、タイキって言います。はい、今日はネイツに街の案内と、仕事先を教えて貰えて助かりました。まぁ、少しばかり迷惑は被りましたが……」

「ほ~~ぉ? それは一体、どんなことをして迷惑を掛けたんだい、ネイツ?」

「ま、待ってくれお袋!そ、そそ、それには深い理由が__!」

「男が言い訳するんじゃないよ!」

「グベッ!」


 俺の話を聞いたネーアさんにネイツが言い訳しようとすると、雷が落ちると同時にネイツの脳天に拳骨が落ちる。かなりいいのが入ったのか、テーブルの上でピクピクと痙攣している。うわぁー、痛そう……

 そんな騒動があったのだ、周りも気になるだろうと思ったのだが、声の出所がネーアさんど判ると「なんだ、またネーアか」と言って、中断した食事や談笑を再開している。これ、日常的にあるのか?


「すまなかったね、タイキ。うちのバカが迷惑を掛けちまったみたいだね。でも、こんなバカでもいい奴なんだ、これからも仲良くしてやっておくれ」

「いやいや、俺はこの街に来てからネイツには良くしてもらってますし、これ以上ない友人ですよ」

「あははは! そうかいそうかい!そんな風に言ってもらえると、母親としても嬉しいね。よし!今日はうちの奢りだ、腹いっぱい食っていきな!」


 ネーアさんは俺の肩を叩きながら、笑顔でそんなことを言ってくれる。

 そのやり取りの途中、テーブルで突っ伏していたネイツが復活したようだ。


「お、お袋……」

「なんだい、バカ息子? あたしは今から、旦那にこの子とあんたの飯を作るように伝えに行くんだけどね?」

「じ、実はこいつ、まだ泊まる場所が決まってねえんだよ。それで、兄貴の空いたベッドを使わせてやりたいんだよ」

「ん? まあいいんじゃないかい? でも、なんでそんなことになってるんだい?」

「……それは店が終わった後で教えるよ。それで、大丈夫なんだよな?」

「あぁ、タイキがうちみたいな料理屋の部屋でいいなら構わないさ」

「だ、そうだぞ? どうするよ?」


 ネイツとネーアさんが話していたが、何故か俺がネイツの家に厄介になるような流れになっているぞ?

 確かに、この世界の常識も無いし、金もコネもない中ではどうやっても野垂れ死にする……こともないか? 二ヶ月の間も森の中でサバイバル、それも魔物との生存競争を四六時中していたからな。最悪、また森で狩りをしながら生活すればいけるか?

 でも、流石にもうあんな殺伐とした環境で生活していくとかもうこりごりだ。ここは、素直にネイツの提案に乗ろう。宿代は……【無限収納】の中から支払えるかな?


「その……もしご迷惑でなければ、よろしくお願いします」

「あぁ、こっちこそよろしくね。それじゃ、直ぐに料理を持ってくから寛いで待っておくれ」

「はい、ありがとうございます、ネーアさん」

「ありがとよ、お袋」

「ネイツ、あんたは食ったら店を手伝いな」

「わ、わかってるよ……」


 そんなやり取りをし終えると、ネーアさんは厨房のある方に向って歩き出した。

 うん、流石はネイツの母親だな。知らない奴にここまで良くしてくれるんだ、この店の人達にも恩返し出来るように頑張らないとな!


「よかったな、タイキ。生活の基盤が整うまで、一時はうちに居るといいさ」

「本当にお前やジードさん、ギルドで会ったミーヤさんや他の職員さん、モミやネーアさんには多大な恩があるからな。この恩は必ず返す」

「ダチなんだ、気にすんなよ。それより、何かこの国について聞いておきたいことはあるか? この大陸で生きていくにも、何も知らないと少しでも知っているのとじゃ、全然違うからな」

「……ホント、お前はいい奴だよな、ネイツ」

「おう!頼ってくれよ、タイキ?」


 まったく、こいつには助けられっぱなしだな……

 何時かこいつが俺を必要とした時は、必ず手を貸してやろう。そして、俺を迎え入れてくれたこの街に何か還元できるように色々と動いてみようかな? 前の世界でもあまりバイトはしていなかったが、こっちでは冒険者以外でも仕事があるのかな?


「あ、ならまずこの大陸の通貨を教えてくれないか? 俺、まだ通貨について説明してもらってなかったのを思い出した」

「あぁ~、確かにまだ教えてなかったな。それじゃ、まずは……」


 ネイツがそう言うと、ズボンのポケットから小さな袋を取り出し、その中から十円玉ぐらいの大きさの二種類の硬貨を取り出してテーブルの上に並べる。一枚は十円玉と同じ銅製の『銅貨』、もう一枚は銀色の銀製で『銀貨』だろうか?


「それじゃ、まずはこの大陸での共通通貨、『ゴルド)』についてだが、一般で出回ってる通貨は三枚。今テーブルに乗せた銅製が銅貨で一枚1G、銀製が銀貨で一枚100Gだ。ここには無いが、この上に金で出来た金貨がある。

 その価値は銅貨100枚で銀貨一枚、銀貨100枚で金貨一枚となってる。これは学のない奴らでも解るようになってるんだわ。まぁ、物の価値が判ってないと意味が無いがな」


 ふむ、これは分かりやすい。ここもゲームのような設定で、俺にとっては問題ないな。

 ただ、やっぱり物の相場も知っておかないとダメだろうな……


「あ、因みに今日の朝に食ったのは一つ銅貨20枚だ。もし宿暮らしを考えるなら、安宿で素泊まりだと一拍銅貨30~80枚。普通の宿で朝飯付きだと銀貨8枚と銅貨が数枚。高級宿になると、一部屋取るだけで金貨が跳ぶらしいから、そこんところは考えて選べよ?」


 なるほど……もし硬貨の価値を数字で表すと



・銅貨一枚=1G(百円)

・銀貨一枚=100G(一万円)

・金貨一枚=10.000G(百万円)



 になるようだな。でも金貨一枚で百万円とか、どんだけ高価なんだよ。


「それと、この上には『白金貨』ってのがあるが、こいつは国同士の交渉事や、大商会や豪商なんかが取引の時に極稀に使うもんだな。まぁ、俺らには関係のない代物だがな」


 おいおい、そんなとんでもな硬貨があんのかよ!それもあれだろ? さっきの流れから、金貨100枚の価値が白金貨一枚にあるってことだろ? 確かにそんな硬貨には今後も関わらないだろうな……


 そんな風に、この大陸の貨幣のことや、一般的な物の価値について相談していると


「はい、お待ちどうさん!うちの旦那自慢のオーク肉のステーキとシチューだよ!」

「おぉー!待ってました!」


 後ろから聴こえたネーアさんは声に振り替えると、その手に持った盆に載せられた料理を俺達の前に並べていく。

 ここでも食器は基本木製で、その食器の上には骨付きのロース肉を焼いてソースを絡めたような料理……俺が知ってる料理だとポークチョップに似ている料理と、深さのある器に注がれた大ぶりの具材がゴロゴロ入ったシチューの匂いに、俺の腹から空腹を訴える腹の虫が鳴り出す。それはネイツも同じで、待ちきれないといった表情だ。


「はい、サラダとエール。それとパンもね」


 料理に釘付けになっている俺達に、女将さんの後ろからモミが木製のボールに盛ったサラダと網籠に入れられたパン、先程貰った水とは違う、中身が琥珀色の液体が入ったジョッキをテーブルに置いていく。

 エールって確か、ビールの一種だったかな? 前に漫画とかでよく飲んでるシーンがあったから調べてみたけど、ホップの代わりに香料や果汁を混ぜた物だったかな? 父さんに違いを聞いた時に「ビールは苦味と喉越しを、エールは香りと風味を楽しむ」とか言ってたな。

 まぁ、その前に俺は未成年だから、そもそも飲酒したらダメなんだけど……


「あぁ、ごめんモミ。俺の国では20歳を超えないと酒を飲んではいけない決まりがあるんだよ」

「え? そんな決まりがあるの?」

「そうなんだ、だから__」

「「そんなの、気にしなくていいだろ?」」


 モミに酒じゃない物に変えてもらおうとすると、ネイツとネーアさんの親子二人が俺の言葉を遮り、「何でそんなこと気にするんだ?」と首を傾げている。


「い、いや、だから……」

「そんなの、タイキの国の話だろ? ここはお前の元いた国じゃないんだから、いちいち気にする必要もないんじゃないか?」

「そうだよ。だいたい、一端の男が、酒も飲めないなんて軽く見られちまうよ? 今後は冒険者として働いて行くなら、ぶっ倒れるくらい飲むことも経験さ!」

「え、えぇ~……?」


 ま、まさか、ここで飲酒を肯定する意見が出るとは思わなかったぞ。

 一度死んでこの異世界に転生はしてるけど、根が日本人気質な俺からすれば違和感しかないんだよな。

 そんな俺が悩んでいると、誰かが俺の肩を叩いていて、そちらを見ると、モミが不思議そうに首を傾げながらこっちの顔を覗き込んでいた。


「ねぇ、タイキ。タイキが何を悩んでるか知らないけど、別に歳とか関係なく飲める子は飲んでるんだし、気にせず飲んだら?」

「お、おう……」


 うん……どうやらこの世界では俺の常識は通用しないみたいだ。仕方ない、こういう時は郷に入っては郷に従え、ってことかな?


「……なら、有難くいただきますか」

「おう、そうこなきゃな!」

「うちの料理を味わてお食べ。ネイツ!あんたは後でしっかり働くんだよ!」

「じゃ、また後でねぇ~、二人とも」


 エールが入ったジョッキを持って上機嫌になるネイツに、この後のことを言い聞かせるように言うネーアさん、その後ろについてこちらに手を振りながらモミが離れて行く。

 それからはあっという間だった。


 ネーアさんが持ってきた料理はどれも美味く、文句なく絶品ばかりだ。料理が無くなるのにそれ程時間はかからなかった。初めて飲んだエールも、独特の味に最初は違和感があったが、これはこれで美味いと感じれた。ネイツなんて、一杯目を呑み終えると、調子こいてモミにお代わりを二回もしてネーアにまた拳骨を落とされていたよ。こいつ、学習能力はないのか?


 そんなどこか和んだ雰囲気で食事をしている間に店の中に居た客は半分くらいに減っていて、残っているは酒盛りをしているおっさんや爺さんたちが大概になっていた。

 食後の満足感に浸りながら周囲を見ていると、ネイツが渋々といった感じで椅子から立ち上がる。俺もそれにつられて立ち上がろうとすると


「あぁ、タイキは寛いでろよ。俺は店の手伝いに行くが、気にせずに座ってくれ」

「いいのか? 何だったら俺も手伝うぞ?」

「もうそろそろ閉店の時間だからな、そんなに人はいらねえよ。んじゃ、また後でな。その時に今日の寝床に案内するわ」

「本当にありがとうな、ネイツ」

「おう。じゃ、後でな」


 そう言いながらテーブルの上にあった空になった食器を重ねて持ち上げ、そのまま厨房に繋がる通路に入って見えなくなる。さて、これから暇になるな、と考えながら天上に視線を向る。だが、そんなことも直ぐに無くなった。


「ちょいと失礼するよ」

「え……?」


 声のした方を向くと、手にジョッキを二つ持ったネーアが居て、さっきまでネイツが座っていた場所に腰を下ろす。その際に二つ持っていたジョッキの一つを俺の方に渡してくる。俺はそれを受け取り、その中身を見ると、どうやらエールが注ぎ込まれているようだ。

 視線を上げると、既にネーアさんはジョッキに口を付けており、かなりの勢いで飲んでいる。俺もそれにならう様にジョッキを傾け、胃にエールを流し込む。そのまま中身が空になるのと、ジョッキから口を離すのはほぼ同時だった。


「おや? 随分飲めるみたいじゃないか?」

「いやいや、そんなことないですよ」


 俺とネーアさんは何が可笑しかったのか、お互いに顔を見合わせて笑い出していた。あぁ、この何でもないのに笑い合えるっての……俺は好きだな。

 それから先に笑いが治まったネーアさんが「あー、笑った笑った」っと言いながらこちらに向き直る。俺もそれに倣い、彼女の方に真っ直ぐ視線を向ける。


「あんた、随分と大変な目にあったみたいだね。あの子があそこまで気に掛けるなんて、相当だったんだろう?」

「いえ、そんなに大変でもなかったですよ。俺はこの大陸で、あいつや皆さんに出会えて、本当に恵まれてると思います。もし会っていなかったらと思うと、ゾッとしますね」


 ネーアさんの質問に、少しおどけた様にして返答するが、彼女は「そうかい……」とだけ言うと、真剣な表情で俺を見てくる。


「それで? あんたは、これからどうするつもりだい?」

「そう、ですね……」


 そうだ、俺はこの世界で生きて行かなくていけない。それも、魔物なんてこっちの命を容赦なく奪おうとする生き物がうじゃうじゃ存在する世界で、だ。


「……一応、今日行ったギルドで冒険者として登録を済ませてきました。明日にもう一度行くことになっています。一時の間は、そこで地道に経験を積みながら生活資金を稼ぐつもりです。もちろん、ここに泊めてもらっている間の代金もお支払いしていきますので、安心してください」

「別に、うちのボロ部屋に住むことはどうでもいいさ。でもねぇ……その後、あんたはいったいどうしたいんだい?」


 その問いに、俺は答えられなかった。

 この世界に生まれ直し、これまで生き抜くためだけに森の中で死にもの狂いで戦い、命を奪い、その屍を糧にして生きてきたのだ。ただただ、生きることしか考えていなかった俺に、今後のことなんて考えている余裕なんてなかったんだ。けど……

 そんな思考の渦にのまれていると、頭の上に手が置かれる。どうやら、知らないうちに視線も下に向いて、俯いていたようだった。

 俺が顔を上げると、柔らかな表情でこちらを見ながら頭を撫でているネーアさんの姿があった。


「そんなに難しく考えることじゃないさ。あんたは、あんたがやりたいように生きて行けばいいのさ。だってそうだろ? タイキ、あんたはこの街に来るまでどんなことがあったかはあたし程度じゃどうやっても分かりやしないだろう。けどね……こうやって出会ったんだ、一人で悩むくらいなら、あたしや旦那、モミにバカ息子のネイツでもいい、悩む前に相談しな。それだけでも、心に余裕が持てるってもんさ」


 最後まで言い切ると、頭から手を離してネーアさんは座っていた椅子から立ち上がる。


「よし、それじゃ、今日泊まる部屋に案内してあげるよ。付いて来な」

「え? あ、は、はい!」


 ネーアさんはそう言って、さっきネイツが消えて行った通路に向って歩いて行く。俺は慌てて後をついて行く。

 まだ賑やかな店内を抜け、通路を通ると、そこには厨房に向かう道と、上の建物へと繋がっている階段とに分かれていた。ネーアさんはその上に向かう階段に向い、階段を上がっていく。俺も遅れないように階段を上がっていく。

 階段を上がりきると、左手側に三つの扉が並んでいる。ネーアさんはそのまま廊下を歩き、一番奥にある扉の前に止まる。


「ここはネイツともう一人の息子、ネイツの兄の部屋だよ。さぁ、入りな」


 そう言うと、ネーアさんは部屋の扉を開く。中を覗くと、部屋の中はあまり物はなく、服を入れる為のクローゼットと二段ベッド以外、机や椅子すら置いてない。


「この部屋は基本寝る時以外は使わないからね、こんなもんだよ。あぁ、寝る時は上の方を使いな」


 ネーアさんは俺の背を押し、部屋の中へと入れる。俺は周囲を一瞥してから、二段ベッドの脇につけられている梯子に足を掛けて上を確認する。既にシーツが敷かれており、これと言ってカビ臭さを感じない。うん、これはぐっすり眠れそうだ。

 俺がベットの具合を確認していると、扉の方からネーアさんが声を掛けてくる。


「もう遅いし、今日はとりあえず寝ちまいな。明日、起きたら店の裏手に井戸がある。顔を洗いたかったらそこのクローゼットに入ってる布を使うといいさ。ネイツもそれくらい何も言いやしないよ。それじゃ、ゆっくり休みな」

「あ、あの!」

「ん? なんだい?」


 部屋を去ろうとしていたネーアさんに向って、俺はベッドの上から降りてその背に声をかける。そんな俺の方に振り返りながら首を傾げている彼女に言わなくてはいけないことがあるのだ。


「今日は何から何まで、本当にありがとうございます。夕食で食べた料理、どれも凄く美味かったです!この御恩は、必ずお返しします!」

「……ふふふ。そうかい、そんなに美味かったかい。なら、朝飯も楽しみにしていな。それじゃ、また明日ね」

「はい、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


 俺のお礼の言葉と、この恩は必ず返すと伝えると、ネーアさんは一瞬驚いて目を大きく見開いていたが、こちらに笑顔を向け、手をひらひらと振りながら下に向っていく。その背に俺は頭を深く下げる。これだけのことをして貰ったのだ、頭ぐらいならいくらでも下げるさ。

 それからネーアさんが階段を下りていく音が遠ざかるのを聞いてから、部屋の中に戻って扉を閉める。それと同時に口から大欠伸が零れる。俺が思っているよりも今日は疲れていたようだ。

 俺は履いていた靴を脱いで【無限収納】にしまい、上段のベッドに登り、直ぐに横になる。


 そうすると、俺の瞼が徐々に落ちてくる。こりゃ、相当疲れてやがるな……

 明日はギルドに行くことになってるし、このまま寝てしまおう。俺はそう決めると、あっという間に意識を手放し、心地良い眠りに就くのだった。



  △   ▼   △



「んじゃ、また来るぜぇ~!」

「ありがとうございましたー!」

「おう、真っ直ぐ家に帰れよ?」


 店に残っていた最後の客がようやく帰って行った。あぁ~、しんどいな……


 俺はタイキと飯を食い終えた後、お袋に言われた通りに店の手伝いをしていた。流石にうちの看板料理に酒まで飲んじまったからな、これは仕方なかった。

 んで、現在客の居なくなった店内のテーブルを拭いて行ってる。

 まだ残ってるモミは店の床をモップで水拭きしている。こいつ、前までスラムで住んでいたが、お袋がこいつを拾って住み込みで働かせるようにして、大分ましになったな。

 最初は全く話さねぇし、何時も周囲を警戒しっぱなしだったからな。今じゃ、こいつは俺や兄貴にとって妹で、家族みたいなもんになってた。


 おっと、今は昔に浸ってる場合じゃねえな。


 俺は意識を切り替えて、まだ待ってるだろうタイキの座っているテーブルに視線を向けると……


「あれ? 居ないぞ?」

「なにぼさっと突っ立ってんだい、このバカ息子!」

「イデッ!?」


 視線の先にタイキが居ないことに首を傾げていると、俺の尻に蹴り上げられる。

 俺は痛む尻を摩りながら後ろを振り向くと、そこには腕を組んで呆れた目で見てくるお袋の姿があった。いや、なんで尻を蹴るんだよ?!


「いてーよ、お袋……」

「ふん!あんたが馬鹿みたいに突っ立ってんのが悪いのさ!」

「り、理不尽な……」


 実の親からの、あまりのことに何も言えないでいると、厨房の奥から熊みたいな大男……俺のオヤジが店の方に現れた。


「おや、あんた。もう厨房の方は片付けたのかい?」

「……あぁ」


 お袋の言葉に、オヤジは素っ気なく返す。うちのオヤジは職人気質で、あまり口数が少ない……と、周囲の連中は言ってるが、実は単なる口下手なだけなんだよな、あれ。

 そのままオヤジとお袋が(一方的に)今日の売り上げと、明日の仕込みについて色々言っていると、掃除が終わったモミが二人のもとに近付いて行く。


「女将さん!親父さん!店内の掃除、終わりました!」

「あぁ、お疲れさん。今日もよく頑張ったね、モミ!ねぇ、あんた?」

「……ん」

「え、えへへ~」


 二人はモミのいい働きと頑張りをねぎらう様に頭を撫でてやる。あれがあったから、モミはあそこまで明るくなったんだろうな。

 そんなやり取りが一通り終わると、お袋が俺の方を向き、その顔からは何を言いたいのかが分かる。

 まぁ、そんなの、あいつの事しかないような……


「……モミ、すまないけど、先に夕飯を食べていてくれないかい?」

「え? どうしてですか、女将さん?」

「これからあたしと旦那は、ネイツから聞かなきゃならないことがあるのさ。だから……」

「なら、私もそのお話を聞いててもいいですか?」

「いいのかい、本当に?」

「はい!だって、親父さんの料理は、皆で食べたほうが美味しいですから!」

「……そうだね。確かに、その通りだよ」


 お袋はモミに席を外す様に諭したが、モミはそれが判らなかったようで、皆と飯が食いたいから、一緒に話を聞くと言い出した。お袋もこれを無理に突き放せなかってから、折れるしかなかった。


 まさかのモミの誘導に失敗したお袋は、近くにあったテーブルに着くと、それにならう様にオヤジとモミも残っている椅子に座り、最後に残った椅子に俺も腰を下ろす。

 それを見計らって、お袋が今回聞きだしたいことについて切り出す。


「タイキなら、もうあんたの部屋で寝てるよ。……ネイツ、説明しな。あの子はいったい、どんな経緯で、この街に来たんだい? あんな律義に礼をしっかり面と向かって言うような子、あたしは見たことないよ」

「……話せ」

「え? 話って、タイキのことなの?」


 三人がそれぞれの反応をし、俺の方に視線を向けてくる。


「……分かった、話すよ。だが、これから話すのは、あくまで俺と隊長、ジードさんの憶測だ。そこを踏まえて聞いてくれ。それと、このことは他言無用だ。いいな?」


 俺が念入りに確認を取ると、三人は真剣な表情で頷き返す。


「よし、それじゃ、順序立てて話していくぞ? まず、俺とあいつが会ったのは……」



 それから、俺はタイキが昨日の日暮れに門に来たこと、それからあいつを休憩室に連れて行き、その後でジードさんのところでタイキのことを頼まれたこと。そして、憶測でタイキが他国から奴隷として攫われ、既に家族が居ない天涯孤独であることを話した。

 最後まで俺の説明を聞き終えた三人は……


「そんなことが……あの子は、何で……」

「……」

「うっ、えぐっ……」


 お袋はあまりのことで考えが纏まらないのか、店の天上……多分、今寝てるタイキのことを考えてるんだろ。

 オヤジは黙ったまま、腕を組んで目を閉じている。

 モミなんて、自分のことに重なるてしまったせいか、顔を手で覆って嗚咽を漏らしている始末だ。


 そんな重苦しい空気の中、お袋がいち早く持ち直し、俺のことを鋭い目で睨みだす。


「ネイツ。ジードの奴は、死んじまった息子とタイキを重ねて、あんたにあの子のことを託した……これに間違いはないね?」

「あぁ、そうだ」

「じゃあ聞くよ? あんた、まさかあの子に親友を__」

「お袋。俺は別に、タイキとあいつを重ねてなんかいない。これはハッキリ言える」

「そうかい……変な勘ぐりをして悪かったね」

「いや、気にしてねぇよ、お袋」


 お袋が確認するように聞いてきたが、俺はそれに被せるようにその問いを否定する。



 数年前、俺には親友と言える、幼馴染が居た……

 そいつは、御伽噺なんなに出てくる英雄に憧れ、親の説得を押し切って、その勢いのまま冒険者になっちまうくらいに真っ直ぐな男だった。そいつと俺、それにミーヤを入れた俺達は、小さな頃から何時もつるんでいた。


 そんな親友に、ミーヤは惹かれ、あいつの為にウォルフさんに頼み込んでギルドの職員になっちまうくらいに、心底惚れてたんだろう……

 だが、そんなある日、俺達の日常は唐突に終わりを告げる。



 親友が、森の中で遺体になって見つかったんだ……



 俺とその親友の親父さん……ジードさんは、その姿を見て、自分の不甲斐無さと、あいつの事をもっと気に掛けられなかったことを後悔した。

 そして、最も悲しんていたのが、あいつに思いも伝えられず、死に別れになってしまったミーヤだ。


 それからは、ミーヤが心を閉ざすようになってしまった。そんな娘を不憫に思ったウォルフさんは、頻繁に多くの仕事をミーヤに押し付ける様にして、あいつが悲しむ暇を与えないようにしていた。それから数年、最近の俺達は完全に昔の様にはなれなかったが、どうにかまともな会話が出来るようになったんだ。


 それからまた、あいつが居ない日常が始まって一年が経った時……タイキの奴が現れたんだ。


 最初はボロボロで、それでも何だか元気なあいつの様子に、違和感を感じて槍を向けた。

 だがその後、さっき俺が三人に説明したように、ジードさんから聞かされて「俺も同じだ」っと、心の中で叫んでいたんだと、今なら解る。勿論、俺が親友とタイキを重ねてはいないが、ジードさんがいったようなあいつにしてやれなかったことを、俺もタイキに縋るようにしているんだと思う。


 でも、俺は絶対に、親友とタイキを重ねたりはしない。それは、俺自身だけじゃない……それは、親友とミーヤの奴を裏切ることだからだ。


 ……止めよう。これ以上考えると、明日からタイキと真っ直ぐ向き合えなくなっちまう。

 俺は落ち込みそうになる思考を無理矢理中断し、座っていた椅子から立ち上がる。


「お袋、俺そろそろ寝るわ。明日は仕事だからな。あぁ、それと悪いんだが、タイキのことなんだ__」

「安心しな。あんたが心配なのも分かるが、こっちで何とかしておくよ」

「……ありがとな、お袋」

「ふん、さっさと寝ちまいな」


 流石、俺のお袋だ。こっちが何を言いたいのか、言う前に理解してくれてるんだからな。

 そんなお袋のぶっきら棒な言葉に頷いて、二階の自室に向おうとしたが……唐突に、俺の腰辺りに衝撃が来た。俺は視線を腰の方に向けると、モミが俺の腰にしがみ付いていた。


「おい、モミ__」

「……ネイ兄」

「……はぁ~」


 たくっ、こいつは変わらないな。

 俺達兄弟に慣れ始めた時に、俺に縋る時に今みたいに「ネイ兄」って呼んでたな。

 そんな腰にしがみ付いているモミの頭に手を乗せて、少し乱暴に撫でてやる。そうすると、かなり力を入れていた腕が緩んでいく。


「大丈夫だ。俺やタイキのことを考えてくれて、ありがとな、モミ」

「……うん」


 そう頷くと、顔は伏せたままだが、どうにか腰から腕を離してくれた。

 俺は再度、両親とモミに休むことを告げ、二階に行くために階段に向っていく。



 大丈夫。俺は、親友とタイキを重ねたりなんかしない……



  △  ▼  △



 ……んん~……んぁ? もう、朝か?

 どうやら、昨日の夜、この部屋に来てベッドに横になってからしっかり熟睡できたらしいな。

 外からは少なくない人々の営みが聴こえ、部屋の下から人の動く気配と、腹を刺激する美味しそうな匂いが部屋の中に漂って来る。


 俺は二段ベッドの上から下に音を立てないように飛び降り、凝り固まった体を解すように伸びをする。うん、やっぱり森の中と比べれば、正に天国だなこの街は!

 それから一通り体を解し、ハッキリとした思考で部屋から出て、一階の店舗に降りていく。直ぐ近くに厨房の入り口があったが、勝手に入るのもアレなので、まずは昨日の店内の方に顔を出すことにした。


 そうと決めて、昨日通った通路を抜け、店内の方に出ると、そこにはテーブルを拭いているネーアさんの姿を直ぐに見つけることができた。


「おはようございます、ネーアさん」

「おや? おはよう、もう起きたのかい? 随分と早起きなんだね」

「えぇ、ここ最近で週勘づきましたから」


 うん、嘘は言ってない。森の中からの脱出の間、何時何処から魔物が襲ってくるか分からないから、寝る時は陽が昇り切る前の少しの時間だけ休憩してたからな。だいたいの時間感覚なら余裕で判る。

 さて、そんな朝の挨拶を交わすネーアさんは、昨日と同じで、ネイツによく似た気の良さそうな笑顔で返事を返してくれた。


「そうだ、朝飯は厨房の方であたしらと摂ることになるけど、大丈夫だったかい?」

「はい、大丈夫です。それに、旦那さんに昨日直接お礼と料理の感想を言えてませんから」

「あぁ、そうだったねぇ。ふふ、最近は直接感想なんて言われてないから、旦那も喜ぶだろうね」


 ネーアさんは悪戯っぽく笑う。うん、朝から笑顔で挨拶を交わせるのはいいことだ。


「タイキ。すまないけど、まだ店の準備の途中でね。先に店の裏手にある井戸で顔でも洗って来たらどうだい?」

「えぇ、そうします」

「あぁ、来る時はそのまま厨房に行っておくれ!」

「わかりました。ところで。ネイツの奴は……?」

「あの子なら、今日は仕事でもう出ちまったよ」

「そうですか。では、また後で」


 俺が背向けて、二階にあるネイツの部屋からタオルを拝借するめに向うと、後ろからネーアさんにそう言われ、それに後ろを放り返って頷くと、再び二階に行くために歩き出した。



 二階に上がり、クローゼットの中から一枚布を拝借し、そのまま店の裏手にあると言う井戸に向っていた。どうやら、そこはこの店で引いた井戸らしく、周囲に気を遣う必要が無いよ言う。

 店を出て、裏手に回ると、そこには確かに井戸があったが、どうやら先客が居たようだ。


「よう、モミ。おはよう」

「えっ、た、タイキ!? お、おはよう……」


 ん? なんだかモミの様子が変だな?

 昨日始めて会った時は、もっと元気溌溂げんきはつらつな女の子だったはずなのに、今はちょっと元気がない。それによく見ると、目の周りが腫れてるし、目も若干充血してる。


「モミ、朝から何かあったの? 目が赤いよ?」

「うぇっ?! そ、それは……そ、そう!これは、店内の掃除中に、埃が目に入っちゃったの!」

「埃が?」

「そうっ!」


 どうやら、泣いている所を見られたのが恥かしかったようだ。確かに目にゴミが入ると痛いよなぁ……


「そうだった。なら、あまり目を擦り過ぎないように気をつけなよ?」

「う、うん!そうするよ!そ、それじゃ、私先にお店の中に戻ってるね?」


 そう言うと、モミはそそくさとその場から離れ、店の方に走り去ってしまった。

 そんなに泣いてるところを見られるのが嫌だったのかな? ま、今は顔と、昨日体も拭かずに寝たから、そっちもしないとな。

 俺は上着を脱ぎ、先程のモミのことは一旦忘れ、井戸から水を汲むことにした。



 井戸で顔を洗い、身体を拭い終え、俺はもう一度店に入って厨房へと向かう。

 本来、厨房は従業員の人しか入れないのが普通なのだが、今回はネーアさんの許可が下りているので問題ないだろう。あの人がこの店で一番偉いだろうし。


 店内のから厨房に向う通路を通り、右手にある扉のない厨房へと入っていく。

 最初に入って目にしたのは、綺麗に掃除された厨房。次に目に付いたのは、中央にある作業台の上に並べられた朝食の数々だ。

 まず一人用に盛られたサラダに、昨日と同じで具だくさんのスープにパン。それに、厚切りのベーコンに卵を乗せて焼かれたベーコンエッグといった献立だ。うん、朝からかなりのボリュームだ。


 そんな美味しそうな料理が乗せられた台のすぐ傍では、起きて直ぐに挨拶を交わしたネーアさんと、先程会った時よりも落ち着いたモミが隣同士で椅子に座っていた。


「すいません、遅くなりました」

「大丈夫、あたし達も今来たところさ。ねぇ、モミ?」

「う、うぅ~……」


 俺への対応もそこそこに、ネーアさんは隣に座っているモミのほっぺを突いてちょっかいを掛けている。うん、朝から微笑ましい光景だなぁ~。


 二人のやり取りを見ていると、先程から厨房の調理台でベーコンを焼いていた男性(この人がネイツの父親か)が、手に焼けたばかりの料理を持ってこっちに近づいてくる。

 見た目はネイツに似ているが、ガタイがネイツよりもガッチリしていて、俺の腕なんか簡単にへし折ってしまえそうに見える。顔も若干強面だ。けどま、俺のおじさんと比べたら、まだましだな……


「初めまして、タイキと言います。昨日は、美味しい夕食をご馳走して下さり、ありがとうございました。あんなに美味しい物を食べたのは久しぶりでした」

「……そうか」


 この店の亭主さんに挨拶と、昨日のお礼を言ったのだが、相手は一言言うと、そのまま空いている席についてしまった。俺はどうすべきか助けを求めるべく、ネーアさん達の方に視線を向けるが、二人は亭主さんの方を呆れたような視線を向けるていた。いや、どうした二人とも?


「あぁ~、タイキ。うちの旦那が悪いね。こいつ、昔っから口下手でね。でも、あんたのお礼の言葉は嬉しかったようだから、安心しな」


 俺の考えに気付いたネーアさんが、そんなことを言ってくれる。よ、良かったー。これで機嫌悪かったら、どうしようかと思ったぞ。


「ほら、あんたも早く座りな。旦那の料理が冷めちまうよ」

「あ、すいません」


 ボーと突っ立ていた俺に、ネーアさんから言われて亭主さんの隣の椅子に腰を下ろす。すると、俺の目の前に、先程作られていた料理の乗った皿が置かれる。俺は直ぐに隣を見ると、こちらの顔をジッと見ている亭主さんの顔があった。


「えっと……この料理、俺が食べてもいいんですか?」

「……ん」

「あ、ありがとうございます。えっと……」

「……グレイツ」

「グレイツさん……では、有難くいただきます」

「……あぁ」


 この人、グレイさんは基本無口で無愛想だが、周囲の人に気を配れる繊細な人なんだな。

 その後、俺やグレイツさん達と共に、朝から大満足な朝食を満喫した。



 それから食後、食べ終えた食器を下げ終えると同時に、俺はある物を提供することにした。


「グレイツさん、ネーアさん。実は家賃って訳じゃないんですが、渡したい物があるんですが、受け取ってもらえませんか?」

「ん? 別に、そんなの気にする必要はないんだけど……まぁ、貰えるってんなら、貰っとこうかね。ねぇ、あんた?」

「……ん」


 二人の返事を貰えたし、直ぐにでも渡すとするか!

 了解を得た俺は、三人に少し作業台から離れるように指示を出す。三人は俺の言ったことに不思議がっていたが、現物を見てもらった方が早いだろ。


 俺はすぐさま頭の中にリストを開き、【無限収納】から取り出す物を選んでいく。そして……


「よし、こんなもんか。ほいっと」

「「「っ?!!」」」


 俺の軽い掛け声とともに、何処からともなく作業台の上に現れた肉の山に、三人は目を見開いている。

 うん、どうやらネイツはこのことは言ってなったのかな? 確か、昨日あいつがネーアさん達に説明するって言ってたと思うんだが……ま、多分説明し忘れたんだろう。

 

 因みに、今取り出した肉の内容だが



・オークの肉各種 30㎏

・熊猪(正式名称:ビッグボア)の肉 5㎏

・コカトリスの肉 8㎏

・ブレイドホースの肉 3㎏

・アーマータートルの肉 20㎏



 以上が俺が取り出した品だ。

 『ブレードホース』は額から剣をみたいな角を生やした馬の魔物で、『アーマータートル』は甲羅が鉱物で覆われていれクソ堅い亀の魔物だ。こいつらも森の中で出くわして倒した魔物で、前者には服を斬られながらなんとか仕留め、後者に関しては、口から出す高圧の水鉄砲を撃たれながらも首を刎ねて難を逃れたのを今でも覚えている。もうこいつらとは戦いたくないなぁ……


 と、いけないいけない、あの頃を思い出すよりもネーアさん達に説明しようと後ろに振り向くと


「「「……」」」


 三人ともその場に硬直し、それぞれの反応をしていた。

 グレイツさんは驚いてはいるが、それ以上に目の前の肉に興味を惹かれいている。うん、どうやら喜んでもらえてようだ。

 ネーアさんは目の前の出来事に理解が追い付いていないのか、俺と作業台の上にある肉を交互に見比べている。すみません、そんなに驚くとは思いませんでした……

 モミは唯一一人、俺に視線を固定し、好奇心が上がっているのがハッキリわかる。


 そんな中、もっとも早く硬直から回復したグレイツさんが作業台の上に置かれた肉を一つ一つ手に取って確認を始める。その眼は正に職人といった感じで、肉を持ちながらブツブツと何か口ずさんでいる。

 俺がグレイツさんのそんな様子を見ていると、急に両肩を誰かに捕まれ、直ぐに正面を確認すると、ネーアさんが真剣な表情で俺の顔をジッと見据えていた。じ、若干怖いです、ネーアさん……


「タイキ。あんた、この肉の山……いったい、何処から取り出したんだい? それ以前に、この肉をどこで手に入れたのさ?」

「こ、これらは俺のSkillで取り出したんですよ。俺のSkillは、物を収納しておくことが出来るもので……あ、肉は森に居た時に採ったんですよ」

「そ、そうかい……」


 俺が答えると、ネーアさんは引き攣った顔で頷くと、俺の肩から手を離して椅子に腰を下ろす。あれ?なんで頭抱えてるんだ?

 そんな俺達のやり取りを見ていたモミは「すご~い……」とか言いながら、キラキラとした眼差しでずっと俺を見ている。


 二人がそんな反応をしている間も、グレイツさんは一心不乱に肉を食い入るように見つめいる。それを見ていると、急に頭を上げると、こっちらに向って近づくと、先程のネーアさんと同じように俺の肩に両手を勢い良く置いて来る。か、顔が近い!


「……いいのか?」

「えっ? ……あ、はい。どうぞ、もらってください。このお店の料理美味しかったので、そのお礼です」

「……ん」


 グレイツさんはそれだけ言うと、俺の肩から手を離し、作業台から肉を持って調理スペースに行ってしまった。


「あぁ~、旦那がああなると長いんだよ……」


 俺の後ろから先程まであたまを抱えていたネーアさんが、グレイツさんの方を苦笑いしながら教えてくれる。なんでも、グレイツさんは珍しい食材や大量の肉なんかを見ると、色々と試行錯誤してみたりすることがしばしばあるらしいのだ。完全に職人気質のようだ。


「こりゃ、一時は話しかけても無駄だろうね。ところでタイキ、あんた今日はギルドに行くんじゃないのかい?」

「あ、はい。その予定です」

「なら、早く行った方がいいよ? 冒険者なるなら、いい仕事を早く取るのも大事なことだよ。あの手の仕事は早いもん勝ちだからね」

「げっ、本当ですか?」

「あぁ、だから早く行って冒険者になってきな」

「は、はい!」


 俺はその言葉に背を押され、厨房から出て行こうとすると


「今日の夕飯は期待しときな!」

「いってらっしゃい、タイキ!」

「っ!行ってきま!」


 ネーアさんとモミの二人からの言葉に、俺は振り返りながら返事を返す。

 久しぶりの「いってらっしゃい」と言葉に、なんだか言いしれない感覚を覚えながら、俺は子豚の尻尾亭を出て、ギルドに登録の為に走って向った。










 店から出て30分で到着し、現在俺はギルドの中にいる。

 朝早いというのに、多くの冒険者らしき集団が建物の中で動き回っていた。

 昨日と同じように昼食を食べた酒場では、仕事終わりの冒険者が酒を飲み、酒場の直ぐ近くに置かれた掲示板のような所があり、そこにも多くの冒険者が居て、そこに貼られている紙を剥がしてカウンターに向っている人たちもいる。

 ネーアさんが言っていた通り、早く来て割のいい仕事を取るために朝早くから来ているようだな。ま、俺はまず冒険者登録を済ませないとな。


 直ぐに気持ちを切り替えた俺は、昨日と会ったミーヤさんが居たカウンター端に向って行く。

 向う途中で、昨日無理矢理やらされた模擬戦で相手をした奴らから声を掛けられ。それに軽く手を振って返しながら目的の場所に到着する。

 カウンターを見ると、そこには昨日と同じように手元にある資料に目を通しているミーヤさんの姿があった。あの訓練所での出来事のあと、ギルマスのおっさんがどうなったかも気になるが、まずは自分の事からだな。


「おはようございます、ミーヤさん」

「あら、タイキさん。おはようございます。随分とお早いですね」

「はい、今日登録が終わり次第に何か依頼を受けようと思って、早めにこちらに来たんですよ」

「ふふ、そうだったんですね。それでしたら、もう手続きは済んでおりますからご安心ください。後はタイキさんのギルドカード、あなたの身分を証明するための物をお渡しするだけです」

「それは助かります。何せ俺、今現在無一文で本当に困ってましたから……」

「そ、そうでしたか。では、直ぐにお渡ししますね」


 若干言葉に詰まっていたが、ミーヤさんは手元からトレーを取り出し、カウンターの上にそれを置く。トレーの上には小さな名刺くらいの大きさの金属のカードが乗せられていた。それを覗き込んで見ると、カードには俺の名前とLevel、それに何処の所属なのかを証明するための欄にアーバイル支部と書かれている。そして右端上に菱形をした金色の金属が填め込まれている。これは何だろ?


「それではギルドカードについて説明させていただきます。先程も言いましたが、それは持主の身分を証明する物です。更に、それはギルドが管理している金銭管理の登録がされておりますので、紛失には十分に気を付けてください。それには魔法的処置を施してあり、紛失した場合は再発行に金貨一枚をお支払いしていただきます」

「は、はい。気を付けます!」

「お願いしますね。では、次にギルドの規定とランクについてご説明しますが、よろしかったでしょうか?」

「あ、規定とかなら、最初にここに来る間にネイツから聞いてます」

「あら、あの脳筋でもそれくらいの説明は出来たのですね。それでしたら、ランクについてご説明します」


 うん、この人は一々ネイツに毒を吐かないとおさまらない質なんだろうか?

 まぁ、そこはいいか。それからミーヤさんの説明を数分程聞いて行くと、ランクについては分かった。


 どうやらギルドのランクは鉱物の貴重性の順になっていて、ランクを上げることで、一つ上のランクの鉱物になるらしい。

 以前は数字でやっていたらしいのだが、それだと印象が弱いと数十年程前に今のような標記にしたという。

 そのランクの順番だが、それは以下の順だ。



 鉄級アイアン銅級ブロンズ銀級シルバー金級ゴールド白金級プラチナ聖銀級ミスリル魔鋼級ヒヒイロカネ神鋼級オリハルコン



 鉄級は初心者達で、やっと一端の冒険者になるのが銅級。銀級はその中でも一番多くいて、中堅どころ。金級からは実力者が増えていき、魔鋼と神鋼に至っては、遥か昔に居たとされる『勇者』と呼ばれた者達が到達したランクになるらしい。当時は数字じゃ測れなかったという記録も存在するとか。だが、それよりも気になることがある。それは……



「ところで、なんで俺のランクがいきなり金級ゴールドなんですか?」



 俺、昨日登録したばっかのはずなんだけど? どうしていきなりそんなところからスタートすることになってるんだよ。これ、どう考えても目立つよな? 隣で依頼を受けてる冒険者のお兄さんなんて、「ご、ゴールド、だと……?」とか言って、俺の顔とカードに嵌められてる金を何度も見比べている。因みに、お兄さんの方は銅級だった……なんか、すまん。

 そんな俺の質問に、彼女は平然とした表情で返してくる。


「それについては、昨日の戦闘で十分にその資格があると判断されましたので問題ありません。むしろ、これでも低いのではないかとアホ……ギルマスの考えです」


 おい、まだ上げるつもりだったのかよ?! 見ろよ、お兄さんとそのお仲間の人達がそれ聞いて引き攣ってるじゃないか!徐々に俺から距離取り出してるし!

 サラッと実の父親を「アホ」呼ばわりだし、おっさん普段何をやらかしたらこんなに嫌われるんだよ?


「それでは、これでランクの説明を終わらせていただきます。タイキさん、もしよろしければこちらでご依頼をお調べいたしますが、どういたしますか?」


 ランクの説明を終えると、ミーヤさんからそんな提案を持ちかけられた。う~ん、そのことなんだが……


「ありがとうございます、ミーヤさん。でも、一度はあっちに張り出されている方の依頼を受けようと思います」

「そうですか……分かりました。では、依頼がお決まりの際、常時依頼をしているものに関してだけお伝えいたします」

「了解です。じゃ、ちょっと依頼を見てきます!」

「はい。……あ、その前に、こちらをお受け取り下さい」

「ん?」


 俺はトレーに乗ったカードを手に取ってポケットに入れるふりをし、【無限収納】に入れてから掲示板に依頼を見に行こうする。

 だが、いきなりミーヤさんに呼び止めらえれると、彼女はカウンターの上に大きな麻の袋を取り出した。それを置く時にジャラっという金属が擦れたような音が聴こえる。俺がそれが何なのか視線で訴えてみるも、ミーヤさんは袋をこちらに差し出すだけだ。

 仕方なく、俺はその袋の口を開けてみると、その中身はどうやらお金だったようだ。軽く見てもかなりの量が入っている。


「そちらの金銭ですが、それは昨日の昼過ぎに行われた模擬戦での『指導』に対する報酬です。お受け取り下さい」

「いや、指導って、なんのことですか?」


 うん、俺はそんなことした覚えはないぞ?


「それにつきましては、今回の一部の冒険者の処罰を免除する代わり、『タイキさんに指導料を支払う』といった形で処罰をすることになりました。今回の件に関与した冒険者たちから一人当たり銀貨10枚を基準として支払ってもらい、合計216名から徴収致しました。よって、報酬は金貨18枚、銀貨94枚、銅貨58枚となっております。まだ未払いの方々もおりますが、そちらは順次取り立てて行きますのでご安心ください」


 え、えぇ~……し、知らないうちに俺、仕事してたってことか? しかも、地味にかなりいい金額なってるし。

 それより驚いたのが、あの時に闘った連中の数だ。俺が数えた時の倍居るじゃねぇかよ!?

 と、とりあえず、こんなに今持ってても意味無いし、ここはギルドで預かってもらおう。


「ミーヤさん。すみませんが、このお金預かってもらえませんか? こんなお金持って出歩きたくないので……」

「はい、賢明な判断かと思われます。良からぬ考えを持つ者達がいらぬちょっかいを掛けてこないとも限りませんので、ね?」


 そう言って俺の横、隣のカウンターに居たお兄さん達がいっせいに視線を背けた。おい……


「では、こちらはギルドが責任を持って管理させていただきます。長い時間御停めして申し訳ございませんでした」

「い、いえ、大丈夫ですから。それじゃ、今度こそ依頼を確認してきます」

「はい、いってらっしゃいませ」


 こっちに頭を下げるミーヤさんに声を掛け、俺は改めて掲示板の方に向て歩き出す。後ろから視線を感じるが、それはガン無視だ。面倒くさい。


 俺は酒場の近くにある掲示板の前に立ち、貼られている依頼に目を通していく。

 既に依頼は半分が無くなっていて、残りは右側に固まっている。その内容を見てみると、どうやらこっちは金級以上が受ける依頼らしく、かなり難易度が高めになっているらしい。

 この難易度もランクに合わせており、それにあった金額で出されている。

 とりあえず、俺は今現在持っている魔物の素材を売り捌くために、素材納品系の依頼を選んで剥がしていく。そんな俺の行動を不審な目で見てくる連中もいたが、それを無視して合計20枚くらいの依頼書をミーヤさんのところに持って行った。


「ミーヤさん、これらの依頼をお願いします」

「……タイキさん? これらを本当に、お受けになるおつもりですか?」


 あれ?依頼書渡したら、いきなりミーヤさんの雰囲気が険しくなったぞ?


「はい、一応全部手持ちにあるので、それを売ってしまおうかと」

「手持ちに? それは……あぁ、なるほど。そういうことですか」


 一瞬訝しむ視線で見られたが、直ぐにないか思い出したようで納得してくれる。

 その後、依頼書を持ったミーヤさんが立ち上がり、「付いて来て下さい」と言われ、その背を追ってついて行く。


 ミーヤさんの後についてギルドの裏手、そこにある倉庫のような建物に入ると


「では、こちらに依頼内容の素材や品を出してください。もしあるのであれば、オークの肉やゴブリンの右耳、それと魔石などもお願いします」


 俺はミーヤさんの指示に従って【無限収納】から様々な魔物の素材を取り出していく。そんな最中、知らないうちに倉庫に現れていた他の職員さん達が素材の品質なんかを確認している。

 みんな確認している間、ずっと驚きっぱなしだったのが印象的だったな。


 そんなこんんなで、色々と依頼書以外にも多くの素材を持ってないか聞かれ、持っている物についてはできうる限り出しておいた。その際の周囲の視線がかなり気になったが……


 朝からギルドに来てからもう昼に差し掛かりかけた頃、ようやく依頼の素材を出し終えることができた。ん~、地味に疲れた。


「お疲れ様でした、タイキさん。報酬に関してですが、提供して頂いた素材がどれも高品質だった為、買取に色を付けさせていただくことになりました。本日は、誠にありがとうございました」


 ミーヤさんがそんなことを言って深くお辞儀すると、周囲で作業していた他の職員さん達までこっちに頭を下げくる。な、なんか恥かしいな、これ……


「そ、それは、ありがとうございます。その、報酬についてなんですが……」

「はい。金額が金額ですので、こちらでお預かりさせていただきますのでご安心ください」

「よ、良かった~」


 ふぅー、これで少しは肩の荷が下りたってかんじかな?

 さて、これで依頼は終了っと。まだ陽が高いし、この後どうしようかなぁ~……

 そんな午後のことについて考えていると、横からミーヤさんがある提案をしてくれた。


「タイキさん。あなたは今現在武装していませんが、武器はお持ちですか?」

「え? 武器は森で拾った物ならありますよ?」

「……タイキさん。午後にご予定が無いのでしたら、武具屋に行かれたはいかがでしょうか? 流石に、今後冒険者として活動するのであれば、ご自身の身を守る道具は揃えるべきかと具申いたします」

「は、はぁ……」

「では、こちらでお勧めの店舗をご紹介致します。誰か!彼に武器屋と服飾店の資料をお持ちして、大至急よ!」


 ミーヤさんが周囲に声を掛けると、何人かのギルド職員さんが慌てて本部の建物に走っていく。

 その間、俺は戻って行った職員さん達が戻ってくるまでミーヤさんからの質問攻めに遭うことになり、それからこの後の予定があっという間に決まってしまうのだった。


 お、女の人って、こんなにパワフルだったかな?


冒険者ギルドの酒場


「いやー、仕事終わりの一杯は最高だな!」

「おう!今日はじゃんじゃん飲もうぜ!」

「……」


「おい、一人だけ辛気臭い顔すんなよ。酒が不味くなんだろう」

「お前の昨日は休みだったんだろ? それなのに、なんで顔がそんなに腫れあがってんだよ?」

「……お前ら、昨日の騒動があった噂は知ってるか?」

「あ? あぁ、あれだろ。『新人ルーキーがギルマスと一戦交えて引き分けた』って、あのデマのこと言ってんのか?」

「おいおい、流石にあのウォルフさんと引き分けるとか、ありえ__」


「その話な……事実だぜ」

「「はぁ~?」」


「お前らが疑うのは分かる。だがな、そいつはウォルフさんと渡り合ただけじゃねぇ。ウォルフさんの使ったアーツと打ち合って無傷だったんだぞ」

「お、おいおい、そりゃ流石に嘘だろ?」

「そ、そうだぜ。そんなこと、あるわけねぇよ。あの人、昔は聖銀級ミスリル冒険者だったんだぜ?」


「……その日、俺が目の前で、その光景を目の当たりにしていたとしても、か?」

「「……」」


「もう一つ噂が流れてるのも。お前らは知ってるだろう」

「あ、あぁ……まさか?!」

「……おいおい、流石に嘘だよな?」


「残念だが、そっちもやったのは例の新人だ。噂では『ギルマスと同等のランクの冒険者が、今後の展望を鑑みて、ギルドに居た冒険者達に稽古を付けてやった』ってことになってるが、それはギルドが流した情報だ。真実はな、その新人が銅級から金級の奴らを素手で叩きのめしてたのさ。それも、女には外傷らしい外傷は無し。男も俺みたいに顔や体に痣ができる程度に手を抜いて、汗一つ掻いた様子すらみせずにだぜ? しかも数が200を超えていたにもかかわらず、だ……」

「「……」」(ゴクッ)


「いいか? そいつには絶対に手を出すな。命が惜しくなければ、だがな…」

「わ、わかった…」

「わざわざ俺らに伝えてくれてありがとよ」

「なに、気にすんな。この仕事は信用と繋がりありき、だからな」


「そう、だな………よし!今日は俺らの奢りだ、飲んでくれ!」

「いいのか?」

「あぁ、そんなデカい情報を貰ったんだ。これくらいの礼はさせてくれ」

「……なら、ありがたく奢られるとするか。それなら、酒の肴に、俺の痣の話でも話してやろうか?」

「お、いいね!是非とも頼むぜ!」

「今日はいい酒が飲めそうだぜ!」


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