1日遅れのクリスマス
「剛ー。帰ろう」
「え、うん」
部室で、まだ皆がいる時、俺は普通に言うように努めた。
頭の中はパンク寸前だ。
みんなの目が思いっきり俺と剛を見ている。
池田は知らん振りで、一久は笑いをこらえているが仲村は、驚いてて、大久保は……どう表現すりゃいいんだこれ?
……まぁ、いいやこんな奴ら。
俺は早く帰りたかったからもたついている剛の腕を引っ張った。
これ、結構勇気いるんだよ。
皆の目の前でこんなにあからさまにしたのって初めてだと思う。
「将太、どうした?」
「早く帰りてえんだよ」
「落ち着いてって」
「嫌なのかよ」
「何が?」
何が、だろう。
俺は早く2人になりたいだけなのに……。
早くこいつと……それだけなのに、何か、おかしい。
「早く、帰りたい……」
部室から出てハンド部のコートで俺は剛の学ランの袖口を掴む。
12月の終わりだというのに気温は高い。
……俺が熱いからか?
「帰ろ」
「うん」
剛は静かに頷く。
そして袖を引張っている俺の手に、剛の手が重なった。
「え……?」
剛は部活の疲れも吹っ飛んだような笑顔で、何も言わない。
俺も釣られて笑い、そして、何も言わなかった。
しばしの間、ささやかな幸せ。
手を繋ぐという小さな幸せ。
「手、冷たいね」
「そうか?」
剛は繋いだままの手を上げ、自分の頬に当てた。
俺の手にほんのりと温もりが伝わってくる。
「うん、ちょっと冷たい。寒い?」
「ううん、平気」
そう、と剛は微笑んで手を下ろす。
さっき熱を伝えてくれたように俺も分けたくなって、剛の手をぎゅっとさっきよりも強く握った。
「ありがとう」
俺の行為が伝わった。
嬉しくなって、俺は笑った。
形に表せない、お金では買えないささやかなプレゼント。
1日遅れだけどお互いに出せたみたいだ。
もうすぐ、チャリ置き場。
本当のプレゼントはカバンの中。