いじめ。
あーー!
すみません。
誤字脱字は見逃して下さい。
今回の話は猫又書店関係無いです。
チムの紹介…的な?
いじめを感じさせる描写があります。
嫌な方は観覧を控えて下さい。
バァーーーという激しい音と共に左右にゆっくりと揺れ動きながら、車体は動き出した。
ホームにいた人は皆、列車に乗ってしまった。
たった1人を除いて。
女子高生だろうか。しかし最近の女子高生にしては長いスカート丈と三つ編みの髪の毛をした女学生。
黒猫のチムは不思議そうな顔をしながら女学生に近づき、女学生の脚に自分の顔を押し付けた。
びくんっと小さく驚く女学生。
チムの事をじっと見ている。
女学生はチムに言った
「お前はいいね。昼寝ばかりして、言葉も通じない仲間とにゃーにゃー鳴いて、喧嘩して、恐怖のないまま死ねる。」
チムは悲しそうに、にゃーと鳴いた。
女学生はそんなチムを眺めながら泣き出した。
「私だって、普通に生活して、普通に生きて、普通に死にたい。」
嗚咽交じりに吐き出す言葉
「でも、仕方ないじゃない。普通じゃないんだもの。みんなが見てるテレビだって雑誌だって…漫画や映画だって…!!どんなに…どんなに…頑張っても…私は、嫌われっ子のままなの!学校にだって…行きたくないし…将来だって…」
『なんだ、いじめか?』
チムは答えた
女学生は真っ赤な目を見開いた。
『ふん、ボクが気楽な猫だって?冗談じゃない。ボクは500年も生きてるんだ。そこいらの底辺と一緒にしないでほしいね。』
「だって、にゃーって鳴いてたじゃない。」
『当たり前だ、じゃないと人間に驚かれて何されるか…嗚呼やだやだ。おー、怖い』
「えっと……んっと…」
『お前、いじめにあってるんだな?辛いんだな?死にたいんだな??そういう事だろう?違うか?』
「そうよ!止めようっての?やめてよ!私は次の列車で死ぬんだから!」
『止めないさ、ただ、1人で死ぬのもなんだろうからボクが見ててやるさ。いいだろう?な?』
「…いいわよ。次の列車まで後20分ね。やだやだこれだから田舎は。」
『ふん、暇というやつだな。ならボクが冥土の土産になるような話をしてやろう。』
「ふふ、それも一興ね。」
『人間ってやつは白状な生き物さ。嫌な事があったら他人に押し付け、楽しい事があったら他人を見下す。』
「楽しい事があったら…見下す?」
『お前のいじめだってそうだろう?見下すのが楽しいからやってるのさ。』
「…違うわ、イライラのはけ口よ。」
『馬鹿だなお前は。イライラは楽しさで発散させるものだろうが。』
「…まぁ、そういう見方もあるわ。」
『ふん。インターネットとやらのやりすぎか?小説の主人公気取りか?まるで自分が悲劇の主人公って感じだな。
まぁ、いい、人間って生き物はとにかく都合の良さで動く。あー、滑稽だね。善意と悪、正義感…もしや、お前、誰かが手を差し伸べるのをまってたな?人間は白状で都合の良い生き物さ。考えてみろ。お前は都合の悪い人間だ、都合の悪い人間はどうすると思う?』
「…関わらない。」
『ひーーー!あっはは!最高に馬鹿だなお前は。
関わらない??だぁ?違うね。排除するんだよ。』
「え…?」
『ぐふふ…面白いなぁお前。排除しないと都合の悪い人間が消えないだろう?
じゃ、なんで排除しようと思う?』
「えっと…邪魔だから。」
『はぁ、呆れるね。それはお前が異質であるから、だよ。
人間はね、自分と同じ価値の人間を集めるんだ。そうする事で安心感を得ているんだよ。』
「やっぱり、私は…変な娘なのね。」
『悲劇の主人公気取りはやめろ。
価値が異なる人間を普通人間は攻撃しないさ。まぁ、よほどの馬鹿でない限り。』
「ん?」
『ふん。お前の場合は価値が近すぎたんだよ。人間には個性ってもんがある。個性が近すぎると自分の嫌な部分や隠していた部分がさらけ出されている気になるのさ。そうすると、それを始末しようとする。わかるか?』
「…」
『さぁて、電車がくるまで後5分さ。人生最後の5分を、楽しむんだな。
まぁ、綺麗な心のまま死んだほうが幸せだぞ?』
「なによ今に限って止めようっての?」
『ひひ、綺麗な心まま死なないと無念と怨念で死にきれないかもな。』
「なにそれ。」
『なぁに1人ごとさ。ただ、後悔するんならやめなよ。だいたい、普通じゃない異質な人間ならいじめた相手を殺すがな。
だから安心しな、お前はいたって普通で、普通の価値観だ。』
「うん…」
『辛かったんだな。お前は良く頑張ったよ。人間にしては良く出来てる。
まぁ、ボク程じゃないけどな。』
「…」
『心配してほしい、安心感がほしい…だろ?
死ぬ前に笑ったらどうだ?』
「…(にっこり)」
『けひひ!!安心したか?…もう、黒くないぞ、お前は綺麗だ。誰よりも、美しい。大丈夫、世界中は敵でも、お前自身はお前の味方なんだよ。どんなに自分が嫌いでも、どんなに卑屈でも。
言うだろう?他人から愛されたいなら、まず、自分を愛せってさ。
今更だが、お前を死なせるのがもったいなくなった!
おい、死ぬな!やめろやめろ!
ボクの友達を死なせたくない。』
女学生は、肩を震わせながら、チムを抱き上げた…
そんな女学生の前を電車が横切って来た。
「もう少し、死ぬのは後にする。本当は自分自身で自分を愛したかったんだ。自分の努力を他人に認めて欲しかったんだ、心配して欲しかったし……なんだろう。今までが馬鹿みたい。
学校行くのはきっと辛いし、いじめられるのも辛いけど…
自分自身が味方だもの!!
うんっっ!」
女学生は電車の中に吸い込まれる様に乗り込んだ。
チムの前で扉が閉まる。
『あ、これ渡すの忘れた。』
そう言って、チムは改札口へ歩き出した。
あの事から3日たった頃。
女学生の自宅に葉書が入っていた。
《猫又書店〜貴方の価値を変えます〜》
《またのご利用お待ちしてます。店主チム》
女学生は、不思議な顔をしながら、葉書をシュレッダーにかけた。
見て下さってありがとうございます。
少しでもいじめが減りますように。
少しでも自殺が減りますように。
え?自己満足だって?
仕方ない。人間は都合のいい生き物だから。