第五話(担当:ニトニクチスチ)
「―はっ」
気付くと俺はどこか暗い所にいた。
「ここは何処だ?俺は―」
セレナに引っ張られて空に飛んで行ったと言おうとしたが、その言葉が紡がれることはなかった。
「ちょっと静かにしてて」
黙っていろと言われれば、黙っているしかない。
別に俺は天邪鬼でも偏屈爺でもないのだから、黙っていろと言われれば黙っているくらいはする。
「ふ~。大丈夫よ」
彼女のその言葉が聞こえたのはそれから少ししてからだった。
「とりあえず、説明は安全なところについてからするとして...あなた飛べるようにしないとまずいわね」
そういえば、俺はエンジェル族かなんかで、目の前にいる彼女―セレナは空が飛べた。
おそらくエンジェル族は空が飛べるのだろう。
「えと、どうしたらいいんだ?」
「まずは、こんな風に風のマナを体の周りに集めて」
すると彼女の周りには緑色のオーラみたいなものが漂っていた。
おそらくこれが彼女の言う風のマナという物なのだろう。色はエメラルドのような透き通った緑で美人の彼女のまわりにある事でお互いを高め合いより一層神秘的な気配が漂っていた。
「あなたもやってみて」
やってみてと言われましても、マナを集めるというのがよくわからないわけで。
「どうやってやるんだ?」
「え? 今やって見せたじゃない。あんなふうにマナを集めるだけよ」
だけって...マナがなんなのかすらよくわかってないのに。
「えーっと、なんて言ったらいいかな。じゃあ、まずマナってなに?」
「...」
目の前の彼女は固まっていた。
おそらく、マナ云々はこの世界では常識なのだろう。
あれ?おれはエンジェル族だったかでこの世界の住人のはず、なんでどこか別の世界とこの世界を比較しようとしているんだ?
「そういえば、記憶がないって言ってたわね。じゃあ、まず簡単なステップから行きましょう、と言いたいところなのだけれど―」
ダダダダッ
「何の音ですか?」
「は~、もう来たか。敵よ、でも詳しい説明はあと。とりあえず、ここを急いで脱出しないと」
「どうやってですか?」
「簡単よ―」
そう言うと彼女の周りにはさっきよりも多い量の緑のオーラのようなものが漂い始めた。
「―強行突破よ!」
「え...」
「あなたは、私につかまっていればいいから」
「は、はい」
「「...」」
「何をやっているの?早く捕まってくれないと、飛び立てないんだけど」
...は! 完全に状況を見失っていた。というか、彼女のどこにつかまればいいんだろう?腰のあたりか? それとも足? それとも...
「えっと、何処につかまれば?」
「どこでもいいわよ。何でもいいから早くして! 敵が来てしまう」
「は、はい」
もう何もわからず、彼女の体にしがみついた。
「じゃあ、行くわよ。離したら死ぬから、踏ん張りなさい」
「はい!」
あれ? なんか柔らかい。手の先が軟らかいものをつかんでいる。
こ、これって...
いや、気づいてしまったら手を離してしまう気しか起こらない。ここは何も考えずにスルーするのがよい...
「着いたわよ」
どうやら、気を失っていたみたいだ。
「ようこそ、天界へ」
ここが天界か...見た目が地獄にしか見えないのは気のせいだろうか?
まず、周りの状況を簡単に説明しておこう。
周りは洞窟みたいなところで、おそらく花崗岩だ。
お決まりのように天井に蝙蝠がいるかと言えば、そんなことはない。と言うより、我々意外になにもいないのだ。
そもそもここは生物が生育できる場所ではない。
周りには溶岩が溜まって池の様になってるところや、まさに溶岩が吹き出ようとしているところ、一番いいところが黄色っぽい温泉がブクブクと湧いているところだ。
「なぁ。本当にここが天界なのか?」
「ええ、でも正確にはここを含めてさっきまでいたところは天界領の土地。簡単に行けば天界への道って行ったところ」
「じゃあ、なんで敵がいたんだ?」
「敵って言っても天界にだって敵はいるのよ。天界にはデビル族がいるって言ったでしょ?彼らは我々エンジェル族とは犬猿の仲で今回の作戦があちらに漏れていたみたい」
「じゃあ、さっさとその天界に入ろう」
「そうなんだけど...あなた、マナが感じられないのでしょ?」
「そのマナってのがわからないんだけど」
「それが、マナを感じられないという状況よ。で、本題に戻るけど。じつは、天界に入るための鍵はそのマナなの」
「一応、あなたのマナは登録されているから入れるはずなんだけど。他の人のマナが混ざってると結界が誤作動を起こして壊れてしまうことがあるの。とりあえず、この石にマナを触れさせれば大丈夫のはずよ」
その石はこんな地獄の中でもより一層不気味に赤黒く輝いていた。
「とりあえず、マナを感じるための手助けになるかもしれないし軽くマナの説明をするわね」
そのまま、書くと長すぎてしまうのでまとめて書くことにしよう。
マナ自体は各個体ごとに別々に持っているものでこの結界の様に固体の識別に使用されることもある。
しかし、生き物は自らのマナを使い切ることで死んでしまうので他のところからマナを持ってくることがあるという。
ケモノ族は多種からマナを取り出すことで有名な種族であるという。俺が殺されかけた時のあの状況もそういうことだったらしい。
ただし、ケモノ族も含めてそういうマナの手に入れ方は手に入れる相手が簡単に手に入ればよいがそううまくいかないことが多い。
そこで、世界中に飛び交っている精霊や微精霊の力を借りる。
精霊たちは自らが使うよりも多くのマナを作り出すことができる。さらに、精霊や微精霊のマナは属性がわかれていて、同じ属性なら同じ種類のマナなのだという。
そのためには彼らと取引する必要がある。マナの変換という作業をするのだ。
精霊たちはその身でたくさんのマナを作り出すが、出来たマナはそんなに純度の高いものではなく濃縮する必要があるがそれが精霊にはできずいつも純度の低いマナで燃費の悪い方法をとっている。
そこで、精霊たちからマナをもらい使うために濃縮したマナを少し返す。そうすることで、次の取引が成り立つのだという。
「ということで、マナの説明したけど大体わかってもらえた?」
「大体。ようするに精霊からマナをもらって、圧縮して、返して、残った分をあの石に触れさせればいいんですね」
「いえ、今回はマナは消費しないので。あなた自身のマナを直接触れさせればいいの」
「要するに、そのマナを感じて、操ればとりあえずいいんですね」
「そっ」
とりあえず、少し考えてみることにする。
俺の体内にそのマナと言うのがあるらしい。
全く想像できない。
「う~ん」
「じゃあ、やり方を考えてみましょう。体の表面にマナがある感じを思い浮かべて」
さっきのセレナみたいな感じか。
体中からオーラが出てる感じ...
オーラ、オーラ、オーラ...
「あら、できてるじゃない」
え!
「あ、消えた」
ガーン
「集中してないとダメな様ね。で、さっきみたいな感じになったら石の近くまで体のどこかの部位をギリギリ触らないところまで近づけて」
さっきの感じ、さっきの感じ、さっきの感じ...
「大丈夫よ、できてる」
そしたら、あの石に触れるくらいまで近づける。
「そ、触れちゃあだめよ」
触れちゃダメ...
「後、もうちょっとよ」
突然後ろから蹴られたような打撃が加わった
「あ!」
間違って触れてしまった。
一気に体を石に吸われていくような感覚に抗おうとするも俺の抗いなど内容に俺の体は飲み込まれていくようだった。
気づくと、俺はさっきの場所の目の前にいた。
さっきよりも小さくなって、目の前には赤っぽいガラスのような輝きを持った透明な壁があり俺の行動を制限していた。
「ふふ、作戦成功ね。なかなか、美味くマナを扱ってくれないから手間取ってしまったわ」
目の前にはセレナと同じ顔をした、悪魔のような恰好をした人がいた...
「セ、セレナどういうことだ?俺を出してくれ!」
「それはできないわよ、私は別にあなたをあの愚かなエンジェル族どものところに連れていく気はないんだからな」
もう嫌な予感しかしない...
誰か、助けてください。
俺は今、死にそうです。
第五話投稿を担当しましたニトニクチスチです。
前話投稿できなくて辛かった...でも!なんと!五話書けました~!
主催ながら五話まで書かなかった俺を許してもらえるはず。
http://mypage.syosetu.com/469111/
↑ニトニクチスチ氏のマイペ