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第四話(担当:ataru)

こんにちは。リレー小説のアカウント管理メンバーの一人、ataruと申します。第四話を担当させていただきました。

色々設定をぶっこんでしまいましたが、大丈夫だったでしょうか?

とにかく、宜しくお願いいたします。

「――そこまでよ! デストロイ!」

 ふいに、どこからか女の子の声が聴こえた。エーテルのものでも、ラロックのものでもないようだ。近くで聴こえたような気がするが、目が見えないのでどこから聴こえてきたのか分からない。

 と、次の瞬間。

「ぐわっ!」

 ラロックの奇妙な悲鳴が聞こえた。続いて「ドスン!」という大きな衝撃音が聴こえ、ラロックがまたがっていた感覚がなくなった。それに何だか焦げ臭いにおいがする。

 え? 何だ?

 突然の出来事に、俺は何が起こったのかくみ取れなかった。

「大丈夫、あなた?」

 さっきと同じ声の人が、俺に声をかけてきた。俺は戸惑いながらも、「お、おう。何とか」と答える。

「痛てててて‥‥‥っ、くそ! おい、お前いきなり何すんだ!」

 遠くの方から、ラロックの荒々しい声が聴こえる。

「ああ、もう。いちいちうるさいわね、あの女。――デストロイ!」

「どぅあっ!!」

 女の人の発した「デストロイ」という言葉と共に、「ドーン!」という大きな衝撃音と、「どぅあっ!!」というラロックの悲鳴が聴こえた。

「さあ、あいつが気絶してるうちに逃げるわよ!」

「ええ!? に、逃げるって?」

「いいから、逃げるのよ!」

 そういって女の人は「リベラシオン!」と唱えた。すると、カチャリという音と共に、手首と足首を縛めていた枷が取れた感覚がして、手足が自由に動かせるようになった。俺はぎょっとした。

 何だ、一体何が起こってるんだ?

 俺の心内は、自由な身になった喜びよりも、何が起こっているのかわからない事への不安の方が大きかった。

「さあ、行くわよ!」

 しかし、俺にそんな事を考える暇も与えず、女の人は俺の手を取った。

 その瞬間。俺の足に地面の感覚がなくなった。何だか宙に浮いている感じがした。

「ふぁっ!?」

「気を付けて、今から飛ぶから!」

「ええっ!? 飛ぶって何の――うわあっ!」

 待って、待って! まだ心の準備が出来てない!

 そう思ったのも束の間。

 俺の体に激しくGがかかった。何かに引き寄せられるかのように引っ張られていく。

 何なんだよ、もう! 怖い!

「うわああっ! 止めろ、離してくれっ!!」

「離すわけにはいかないわ! 今空を飛んでるんだから、離したら地面に真っ逆さまよ!」

「なにいっ!?」

 マジかよ! 俺は今空を飛んでいるのか!? ちょっと待って、別の意味で死にそうなんだけど!

「お、降ろしてくれええええっ!!」

 俺の情けない叫び声は、轟轟(ごうごう)と吹く風に呆気(あっけ)なく流れ去っていった。


 あれからどれぐらい経ったか。ようやく地面に降り立った感覚がした。

「さあ、ここなら大丈夫。ケモノ族も追ってはこないわ」

「はあ、はあ、はあ‥‥‥死ぬかと思った」

 俺はぜえぜえと息を荒げる。

 俺の頭の中には、様々なものが渦巻いていてパンクしそうだった。まったく、目は潰されるわ、ラロックとかいう奴らに殺されかけるわ、空に飛ばされるわ‥‥‥。もう、こんな仕打ちにあって、今までよく生き延びられたもんだと、自分の生命力を誇らしく思う。

 俺にはまだ分からないことが多かった。エーテルやラロック、そして俺を助けてくれたこの女の人は、一体何者なのか。俺の周りで一体何が起きているのか。様々なヤバイ出来事が同時に起こっていて、もう何が何だか分からない。

「さて、これからどうしようかしらね。ここもじきにケモノ族が追ってくるだろうし、天界の近道になるところは無いかしら‥‥‥」

「その前にちょっと待て」

「何?」

「取りあえず、色々分からないことがあるから、俺に教えてくれないか? あいつらは一体何なんだ? 一体俺の知らないところで何が起きているんだ? 分かりやすく話してくれ」

「ああ、そうね。分かった。でもその前に、あなたの目を何とかしなきゃね」

「あ‥‥‥」

「まあ、任せといて。リカバリー」

 女の人がそう唱えると、それまで真っ暗だった視界がぱーっと開けた。

「おー! ありがとう!」

「ふふ、どういたしまして」

 そういって俺に微笑みかけたのは――。

「え?」

 光り輝く白い翼。眩いほどに明るい黄色の服。

 間違いない。俺が失明する直前に見た、あの妖精だ。

「どうしたの?」

「ああ、いや‥‥‥俺がエーテルたちに目を潰されかけた時に、視界の隅に一瞬お前に似たやつが見えたから‥‥‥」

「あらやだ、見られてたのね」

 妖精は恥ずかしそうに笑った。やはりあの妖精のようだ。

「自己紹介しておかなきゃね。私の名前はセレナ。エンジェル界に住むエンジェルよ」

「セレナ、か。その〝エンジェル〟とか〝ケモノ〟とかいうのは何なんだ?」

「あら、知らないの? 天界の事とか、地界の事とか」

「天界‥‥‥地界? う~ん、何だかよく覚えてないんだよな」

 天界とか地界とか言われても、俺の記憶の中にはあてはまるものは無かった。

「そう‥‥‥じゃあ、説明するね。この世界は〝天界〟と〝地界〟っていう二つの領域に分けられていて、天界にはエンジェル族やデビル族、地界にはケモノ族やヒト族が住んでいるの。それぞれの領域には決まった種族のものしか立ち入ってはいけないようになっていて、その(おきて)を破った者には厳しい罰が与えられることになっているのよ」

 ふ~ん‥‥‥。覚えているような、覚えていないような。セレナの説明を聞いても、俺には思い当たる節は無かった。

「私みたいなエンジェル族の者は、本来はこの地界に立ち入ってはいけないんだけど。でも、それでも私がここにいるのにはわけがあって。エルフ族によって不法に地界に連れ去られたエンジェル族の者たちを救出しに来てるの」

「え、エンジェル族の人の救出? 勝手にこの世界に連れ去られた?」

「そう。だからあの時も隠れて様子を見計らっていたってわけ。――ついでに言うと、あなたも不法に連れ去られたエンジェル族の者の一人なのよ」

「え!? 俺も!?」

「そうよ。――まさかそれも覚えてないの?」

「う~ん‥‥‥」

 俺は自分の頭の中をかき回してみる。だが‥‥‥。

「――分からない。自分が何族だったのか、覚えてないんだ」

「え!?」

 セレナは驚いた様子で言った。

「何言ってるのよ。じゃあ、自分の名前が〝ハル〟だってことも覚えてないの? 住んでいたところも?」

 ハル‥‥‥? それが俺の名前なのか?

 俺は必死になって考えてみる。

 ‥‥‥だめだ。何も思い出せない。

 俺が首を横に振ってみせると、セレナは重い表情になった。

「どういうことなのかしら。自分の名前も思い出せないなんて‥‥‥」

 そんなこと言われても、俺には何も分かんねぇよ。

 俺を置いてけぼりにして考え込むセレナの前で、俺の心の中はわだかまりでいっぱいだった。

 分からないことがさらに増えて、混乱が大きくなってしまった。自分の名前すら思い出せないことに、戸惑っているのはもちろんある。だがそれと同時に、未だに自分の周りで起こっている事態が呑み込めないことに大きな苛立ちを感じていた。

 だってそうだろ? 目が覚めたらいつの間にか変なウサ耳たちの奴隷になってて、添い寝だとかなんだかで殺されかけて、その上空に飛ばされて大変な目に遭って。何なんだよ、ほとんど普通の日常を大きく逸脱してるじゃねぇか。命からがらに助かっただけラッキーだよ。‥‥‥それに、この後も何だか大変なことが起こる予感がするし。

 正直、もうこれ以上大変な目には遭いたくないんだ。

「――あ、ごめん! 一人で考え込んじゃった!」

 俺がふと吐いたのため息に気付いたのか、さっきまで一人で考え込んでいたセレナが顔を上げた。

「とにかく、救出出来たからには、何とかして天界に帰りましょう。この辺りは民族間の衝突が激しいから、早いところ退散しないと」

「しょ、衝突!?」

 嫌な言葉だな。もうハプニングはこりごりなんだよ。

 俺は辺りを見回す。

 辺りは鬱蒼(うっそう)とした森林が続いていた。背丈の高い木々が立ち並び、空からの光はあまり入ってこない。それゆえ辺りは薄暗く、何だか怖い。

「こ、これからどうするんだ?」

「そうね。ここもじきにエルフ族が追って来たり、紛争に巻き込まれるかもしれないから、ひとまずは逃げないとね。確かこの辺りに天界へ繋がる入り口があったはずなん――」

 セレナがそう言いかけた時。

「うわあああああっ! うわああああああっ!」

「ひっ、何だ!?」

 どこからか男たちの雄叫びが聴こえてきた。俺は思わず情けない悲鳴を上げた。

「まずいわ、兵士たちが近づいてきてる。――さあ、逃げるわよ」

「逃げるって‥‥‥まさか、飛ぶの!?」

「当たり前でしょ! ほら、早くしないと!」

「えっ!? ああ、ちょっと!」

 俺の言い分も聞かず、セレナは俺の手を取って、上に舞い上がった。

 するとたちまち体が浮き、上空に向かって激しく浮上していく。

「うわ、うわあああああああっ!」

 あまりに激しい勢いに、俺は思わず目を瞑った。

 そして、次に目を開けると、そこには――。

「ふぁ、ふぁあっ!?」

 遥か下方に、小さな街並みが広がっていた。

 よく見ると、さっきまで俺たちがいたと思われる森林と街並みの境目のところで、小さな人たちが紛争を繰り広げていた。鉄砲玉や火玉のようなものが飛び交っているのが分かる。

 そして俺たちは――遥か上空を飛んでいた。

「うがあああああああっ! し、死ぬうううううううううっ!!」

 俺の悲鳴は、もう誰にも届くことは無かったのであった‥‥‥。


 ああ、助けてくれ。

 俺は今、死にそうです。

http://mypage.syosetu.com/527995/

↑ataru氏のマイペ

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