オモチャ
それは、12月のある土曜日の事です。
いつものように、お父さんは身支度を済ませて去って行きました。
「クラスメイトの山田君なんて、クリスマスになったら家族でディズニーランドに行くんだぜ?
お金持ちの堀山君は、クリスマスになると毎年豪華なクリスマスパーティーを家で開くんだ。みんな、それぞれにプレゼントを買って交換会をするんだ。
僕は、堀山君に「クリスマスパーティー来たい?あ、でも無理か。おまえんち、貧乏だからプレゼントも買えないもんな。」って鼻で笑われたよ。
みんな、どこの家族でもクリスマスになったら家族団欒したりするのにさ!
僕の家は、どうしてこうもバラバラなんだよ!全ては、お父さんがニートだからじゃないか!
お父さんは、いつも何処に行ってんだよ!
会社をリストラされてからというもの、ろくに仕事もしないで、時々パチンコであぶく銭稼いで。お母さんには逃げられて。あんな奴、人間の底辺だよ!
どうせ、またパチンコ行ってんじゃねーのかよ!」
と、お兄ちゃんは、興奮気味に言いました。
でも、お父さんは蒸発から帰ってきた頃には必ず僕らにオモチャをプレゼントしてくれます。
お兄ちゃんは「どうせ、パチンコの景品だろ!」と言っていますが。
僕は、お父さんの手がガサガサに荒れていたのを見てから「本当に、お父さんはパチンコに行っているのか?」と不審に思うようになったのです。