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 エルフの里に着きました ~注目されていたので 花火を打ち上げてみたいと思います~

「お姉様に何をしたんですかっ!!」


 朝、セラ達が起きて一階の酒場兼食堂へ行くと、白百合旅団の団員レミーは物凄い剣幕で詰め寄って来た。

 行き成りの強襲で心の準備が整っていなかったセラは、一瞬何の事だかさっぱり分からなかったが、今にもナイフで刺そうとするかのような迫力に、何と無くだが理解した。

 恐らくは夕べ夜這いに来た団長の事であろうと推察。

 この様子だとマイアが恐怖に打ち克ち、返り討ちにして無事に難局を乗り越えたのだと判った。

 其れはマイアが一歩前に進む事が出来たのだと、セラは満足気に頷いていた。


「何、満足そうな顔をしているんですか!! 応えてください、お姉様に何をしたんですか!!」

「何って……多分ロカスの村で、何時もしてる事だと思う」

「…お、思う? 貴女がお姉様をあんな風にしたのでは無いの!?」

「恐怖に怯えていては冒険者は務まらないからね、おそらく昨夜に夜這いを掛けて来るだろうと思って、マイアちゃんに武器とあの薬を貸してあげた」

「あ……あの薬って……まさか………」

「サイケで、ヒップで、バッドなお薬だよ? 真面になってたんじゃないの?」


 レミーが崩れ落ちた。


「障害は自分の手で乗り越えてこそ強く為れると思うんだ。マイアちゃんは無事に乗り越えたんだね……」

「お姉様……何て御労しい……」

「そんな風に言える君も大概だねぇ~他人を襲う以上は、返り討ちに合うのも覚悟してるんじゃないの?」

「貴女は悪魔よ!! あんな……人の出来る事では無いわ!!」

「罪を犯す以上は、その罪を清算しなくちゃならないんだよ? 妻を自殺に追い込んだ旦那が、一生人殺しと言われ続けるのと同じ事」

「だからって、アレは酷過ぎる!! あんな変わり果てた姿は、お姉様じゃ無い!!」

「自業自得だと思うけど?」


 そんなやり取りをしている時に、マイアは宿の部屋から朝食の為に降りて来た。

 フィオはまだ眠そうに眼を擦りながら、其れでも何とか起きた様である。

 フィオは低血圧なのだ。


「姉さん、このハンマー…もう少しだけお借りしても良いですか?」

「ん? もしかして手に馴染んだかな? これだと思う何か感覚的な物を感じたとか?」

「はい、団長をアレで殴り飛ばした時に……何か爽快感の様な物を感じました」

「ハンマーを使えるまでに体力が付いたんだね? 今度は自分のハンマーを自分で作ると良いよ」

「頑張ります! 一撃必殺の重量武器にロマンを感じましたから」

「叩き潰して良し、薙ぎ払っても良し、何よりもダメージを均等に与えられるからね」

「はい、ハンマーは最高です♡」


 質量武器は扱いは難しいが、その分威力の恩恵が高いのである。

 剣で斬り付けるよりもダメージの通りが良く、何よりも戦いの場所を選ばない。

 剣は固い外殻に刃が通らなければその威力を発揮する事は無いが、ハンマーは外殻その物を打ち砕くだけに止まらず、場合によっては状態異常を引き起こす事が可能なのである。

 これは狩りに措いて魔獣に脳震盪を起こさせ、戦局を左右する好機の状況を生み出す。

 僅かなチャンスは、何が起こるか分からない狩りでは決して見逃せない生死を分ける重要な好機であり、その好機を生み出すハンマーを使う冒険者は意外に少ない。

 大概が威力優先の大剣か、安定性重視の片手剣と盾を選ぶのである。

 尤も、そこには見た目が悪いと言う格好良さ優先の心理も働いている事は否めない。

 だが、其れだけで狩りが巧く行く程この世界は甘くないのであった。


「マイアちゃんの戦い方は、支援からの行き成り強襲、一撃離脱型だからねぇ~

 ハンマーの打撃力が加わると、狩りの幅も大分広がるだろうねぇ~」

「砲剣はまだ無理ですが、ハンマーなら行けると思います」

「あのサイズなら扱えるのか……これはティルクパで試してみないといけないかな?」

「これからは、自分のスタイルを極める方向で良いんですか?」

「そうだね、その線で暫く様子を見よう」


 レミーを無視して会話が弾む師弟コンビ。

 しかし、それを遮る存在が白百合のレミーである。


「無視しないでください!! お姉様をあんな目に遭わせておいて、謝罪すら無しですか!!」

「何故謝罪しなければならないの? 私を襲ったのはあの人だし、返り討ちで無様に負けたのは自業自得でしょ?」

「喩えそうでも、一人の人格を破壊するなんて人のする事では無いわ!!」

「私の意思を無視して力尽くで襲うのには謝罪無しなの? 迷惑を被っているのだけど」

「お姉様を誑かす存在がいけないのよ!!」

「酷い理屈……」


 言っている事が殆ど無茶苦茶である。


「どうでも良いが、朝食はどうすんだよ。今日にでも里に向けて移動すんだろ?」


 そんな無駄な言い争いをしている所に、先に朝食を取っていたレイル達が口を挿む。  


「今、済ませますよ? 謝罪する気もないし、向かって来るなら誠心誠意を持って殲滅するだけです。

 どうせ変態だし、多少壊れても誰も困らないでしょ」

「なっ!?」

「だな、あの団長さんは何処から見ても異常者だ。消されても文句は言えない程の……」

「殺す気は無いですが、それ以外の事は諦めて貰います。其れだけの変態ですから」

「マイアも不憫ね、あんな変人に気に入られて……」

「返り討ちにした時、気分が凄く高揚しました。何故もっと早くに仕留めなかったのかと後悔しています」

「フレアローゼやエルカの時、あたしもそう思ったわ。馴染んで来たのね、きっと……」

「何か、大切な物を捨てている気がするのですが……気のせいでしょうか?」


 ミシェルの言う事は気の所為では無い。

 しかし、一般的な倫理観が通用しない人種も確かに存在するのである。

 エーデルワイスはその典型的な人種であった。

 そんな相手には、どうせ言葉は通じないのだから武力を持って応えるしかないのである。

 話せば分かり合えるなどと言うのは理想論でしか無い。


「すみません、レミーが此方にお邪魔してはいませんか?」


 場末の宿には不釣り合いな、静かで気品のある声が響く。

 一同が振り返ると、そこには白いワンピースタイプのドレスを着た女性の姿があった。

 ブロンドの髪を肩の辺りで切りそろえたその女性は、レイル達には見覚えがあった。

 しかし、彼女から醸し出される雰囲気は清涼で、貴族特有の気品に満ち溢れた物である。


「お……おい………」

「まさか……嘘でしょう………」

「こんな事って……」


 レイル達が呆然とするのも無理は無かろう。

 そこに居るのは間違いなくエーデルワイスその人なのだから。

 

「お……お姉様!?」

「やはり、此方に来ていたのですね。駄目ですよ? 私の仕出かした過ちの為に、他の方々に御迷惑を掛ける等有ってはならない事なのですよ?」

「い……いえ…ですが……」

「良いですか? 私が犯した罪は、私自身が償わなくてはならないモノです。

 それを被害者であるマイアさんに詰め寄り糾弾するなど、貴族として恥ずべき行為なのです」

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」


 見事なまでに淑女であった。

 自らの罪を受け止め、その罪を毅然とした態度で償おうとする姿勢は、最早かつての彼女とは思えない程の変貌ぶりである。

 畏るべし【サイケヒップバッド】。

 その効果は、個人の持つポテンシャルの可能性を何処まで広げて行くのだろうか。


「皆様にはご迷惑をお掛け致しました。謹んで謝罪させて貰います」

「……い、いや……迷惑って程の事でも無いんだが……」

「出来る事ならお許し下さるまでこの身で償いたい所ではありますが、残念ながらまだ為すべき事が残って居りますのでご了承ください」

「い、いえ…此方こそ何のお構いも出来ませんで……」

「まだ準備が有りますので、今はこの辺でお暇させて頂きます事をお許しください」

「これは…ご丁寧に……」

「それでは皆様、御機嫌よう…レミー、参りましょう」

「は……はい……」 


 二人は直ぐに宿を後にする。

 その二人を見送るセラ達は、ただ茫然としているだけであった。

 色んな意味で、開いた口が塞がらない。

 彼等に言える事はただ一言だけ……


「「「「「「 誰だぁ――――――――――――――――――――――っ!? 」」」」」」


 彼等は変わり果てた彼女を、エーデルワイスその人とは認める事が出来なかった……

 

 現実で信じられない現象が起きると、理性がそれを受け入れられず拒絶したのである。

 ある意味では、彼等の理性の方が危ういのかも知れない……







 エルフの里、【ユグドラシル】。

 この地まで赴くまでには街道から外れ、小さな村から徒歩で向かわなくてはならない。

 当然ながら其処に道らしき道など無く、魔獣の徘徊する森の中を数日掛けて進まなければ為らないのだ。

 商人達の多くが、長い時間を掛けて出来た獣道の様な道を慎重に進んで商談に向かうのだが、今迄大規模な冒険者達が通る事は無かった。


 白百合旅団、総勢二百名あまり。

 ロカス村冒険者チーム。総勢八名。

 其の他冒険者、約50名足らず。


 エルカの話から魔獣討伐に集められた白百合旅団は、其れなりの実力と経験を持つ精鋭である。

 対して、ロカス村と集められたその他の冒険者は、実力差は極端ではあるが其れなりに信頼を勝ち取っている者達であった。

 然しながら女性の数が多い事は、男性冒険者にとっては少し肩身が狭い事は確かであろう。

 先程から落ち着きのない態度を取っている。


「何やら挙動不審じゃのぉ~……」

「男性冒険者が少ないからよ。それに可成りの美人揃いみたいだしね……」

「其方は旦那が目移りしないか心配じゃのぅ~」

「大丈夫よ、クレイルは見た目が怖いから女性は寄って来ないわ」

「……旦那の目の前で言う言葉では無いぞ?」


 ルーチェは中々容赦がない。

 彼女の後ろでクレイルが落ち込んでいた。

 図体はデカいが意外に繊細なクレイル、寧ろ妻が浮気しないかどうかが心配でしょうがない。

 何せルーチェは美人である。

 しかも人当たりも良く、時折ナンパされる事もシバシバ。

 自分に自信が無い彼にはそれが一番怖いのだった。


「フンッ!! フゥオォウッ!!」


 ―――――ズバァアン!! ドォオオオォォン!!


「ロークス……エルフを捨ててしまったのね……」

「アレは最早エルフでは無いわ……別の生物よ……」

「なんで衝撃波が発生してるの!? ポーズしか取ってないのよね?」


 エルフの3人は嘗てエルフで在った者のなれの果てを、ただ呆然と見ているしか出来ない。

 歩きながらもポーズを取りながら進む彼は、嘗ての弱々しさなど捨て去っていた。

 今の彼は超エルフなのである。


「……まさか、筋肉を震わせ、一瞬その振動を外に放つ事で衝撃波として発生しているのでは?」

「セラ……生物にそんな事が可能なの?」

「似た様な能力を持つ魔獣も居ますから、決して不可能ではないかと……」

「……なぜあんなに汗を掻いているのかしら? ポーズを取っているだけですのに……」

「筋肉を震わせると相当のカロリーを消費する筈です。それが快感になっているのではないでしょうか?」

「……認めない……あんなの…同じエルフだなんて認めませんわ!!」

「フレちゃん……気持ちは分かるけど受入れなきゃ…現実なんて残酷なんだから……」


 ロークスはアドレナリン出まくりであった。

 彼はただ筋肉を鍛える事しか頭に無い。

 そんな彼は実に良い笑顔で、自分の筋肉に酔いしれている。  


「彼の知り合いの冒険者も同類ですね……一緒に筋肉に酔ってる…」

「何故あんな知り合いがいるのかしら……」

「マッスルメイトだからでしょう……筋肉の世界は未だに未知の領域です」

「知りたくも無い世界だけどね……」

「ロークス……遠い所に行ってしまったのね……」


 言い遅れたが、ロークスの周りには数人の冒険者達がおり、彼等も共通してガチムチであった。

 筋肉ワールドは何処まで広がっているのだろうか?

 何とかパニッシャーで叩き潰したい衝動に駆られるセラであった。



 一方で、白百合旅団も混乱の中に在った。


「違う……あんなのは私では無い……アレが私である訳が無い……」

「お姉様……元気出してください……」


 マイアにメンタルブレイクされたエーデルワイスは、数日間塞込んでいた。

 彼女がマイアを気に入った理由の一つが、半神族ゆえの体力の低さにある。

 か弱くも懸命に足掻く彼女に、エーデルワイスは余計なお世話とも言うべき保護欲が暴走したのである。

 其れは何時しか…もとい、直ぐに独占欲に変わり、マイアを自分の物にする行動を起こすのにさして…いや、速攻で変わったのであった。

 しかし、再会した彼女はか弱さなんて微塵も無く、重量武器を両手で持ちながらエーデルワイスを攻撃して来たのだった。

 更に言えば自分の人格すら否定し、無理やり去勢しようとする始末。

 そんな彼女が怖ろしくて仕方が無い。


「マイアさん…強く為ったのですわね」

「いや、オカシイからね!? アレは人権を完全に無視してるからっ!?」

「先に人権を無視したのはお姉様の方では?」

「うぐっ……」


 エーデルワイスにマイアをどうこう言う資格は無かった。

 本人の意思を無視して、自分の手籠めにしようとしたのだから無理も有るまい。

 同情する者は一人しか居ない。


「いや~残念やわぁ~あの団長さんだったら、うちも充分信頼出来るんやけどなぁ~」

「数時間で元に戻ったな…残念だ……やっと真面になったと思ったのに……」

「酷くない!? 酷いよね、ソレぇ!? 今の私を否定するのっ!?」

「当然やろ? ミラルカはんの苦労も考えや、後始末は大変なんやで?」

「今までの自分の行いを考えても見よ、何処に同情の余地がある?」

「うぅ……」


 こんな性格で良く白百合旅団の団長が務まる物だ。

 色恋沙汰(主に百合だが)が多い彼女は、団員からの信頼度は無茶苦茶低かった。

 其れは逆に言えば、其れだけ迷惑を掛けている事実を物語っている。

 助け船など在りはしないのだ。



「セラさん、見えてきました♡!!」

「……アレがエルフの里……そして敵地…ふふ……♡」

「マイア…お前、最近怖いぞ?」

「……まるでセラさんの様です……あそこまで行ってはいけません」

「敵は殲滅するのみです。このハンマーがそう言っています」


 マイアは既に第二のセラと化していた。

 それは兎も角、彼ら一行は漸くエルフの里へと辿り着いたのであった。




 エルフの里は巨木を中心に円形に家屋が建てられた不可思議な里である。

 だが、これは防衛も兼ねた理想的な構造であり、死角を無くすことにより魔獣の襲撃を防ぐ役割が有るのである。

 常に森の周りは警戒され、円形であるが故に魔獣が隠れられる場所が皆無である。

 その為、仮に襲撃が有れば直ぐに発見、迎撃態勢をとれるような構造をしているのだ。

 似た様な構造は中国の一民族が行っていたが、エルフの里は更に大規模なのである。

 言わば、各民家が連結して防衛の砦を構築している様な物だ。

 だが所詮は木造建築、魔獣の力の前には然程防衛力は期待できないのが現状である。



「周りは必要最低限の畑……さらに外壁を覆う事で隔絶しているのですね」

「閉鎖的とは言え……これは……」

「なんや、メッチャ睨まれ取るで? うちら援軍としてこの里に来てるんよな?」

「彼等にしてみれば敵を招き入れている事に為る。あまり近くに行くのは危険か……」

「良く言えば質素、悪く言えば引き籠りですね……これは利用されない様にしないと」

「まぁ、何とかなるんじゃないか? 幸い此方には最悪の切り札がいる事だし」


 彼等エルフの殆どは、外の世界に住む人種は敵として教育され続けている。

 その為、この村を訪れる商人達に対しても決して友好的では無い。

 時には嫌がらせなどをする様な悪質な者達も、決して少なくは無いのだ。

 そんな彼等は、冒険者達にも判る明確な敵意を露わにしていた。


「あんま、友好的には見えへんなぁ~本当に仕事を受けるんか?」

「今にも斬りかかって来そうな雰囲気ですわね」

「んじゃ、その出鼻を挫きましょう!!」

「「「「「 へっ!? 」」」」」」

「魔力解放!!」


 いつの間にか傍に来ていたセラが、突然何を思ったのか聖魔砲剣を天に向けてその魔力を解放した。

 尋常では無い破壊の魔力が吹き荒れ、敵意を向けていたエルフ達の顔が一瞬にして青褪める。

 

「発射ぁ――――――――――っ!!」


 ―――――シュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン


 莫大な魔力が天空へと打ち出された。

 そして……


 ―――――ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


 上空で爆発した強大な魔力が、衝撃波となって里を震撼させる。

 吹き荒れる爆風が里中を吹き荒び、発生した衝撃波が辺りの物を吹き飛ばして行く。

 場所によっては家屋の屋根が吹き飛び、中には倒壊する建物も存在した。

 完全に宣戦布告とも取れる痛烈な一撃である。


「ふぅ~~~~ぅ♡」

「「「「「 何してんだ、お前はぁ―――――――――――――――――っ!! 」」」」」」

「目には目を、歯には爆発物をですけど? これで敵対しよう何んて馬鹿な考えを起こす人はいなくなるでしょう」

「「「「「 逆に攻撃的になったらどうすんだっ!! 」」」」」」

「そん時は……デストロイ♡?」

「「「「「 鬼かお前はっ!! 」」」」」」

「真面目な話、エルフの里から得られる物なんて香辛料しかありませんからね、ここで身の程を知ってもらうのも良いかも知れませんよ?」

「まぁ、そうなんだが……其れはロカスの村内部の話だよな? 秘薬の製造は…」

「いずれ市販されますよ、近い内にね」

「……あいつら無駄に逞しいからなぁ~」


 溜息を吐くレイル。

 もうセラには何を言っても意味が無い気がして来た。

 行き成りディストラクションバーストをぶちかます様な非常識なのだ、再確認した処で今更の話である。

 どの道エルフの里は自分達にとっては敵地に等しい、警告を発するのは割かし常套手段に思えて来た。

 現に、エルフ達の目が敵意から恐怖へと変貌しているのだから……


 




 時間は少し戻る。

 エルカ・ロークス・ファイ・フレアローゼの四人は、逸早く最長老たちの場へと報告に来ていた。

 彼女達は外の世界に精通した里で唯一のエルフで在る。

 其れだけに彼女達は里にとって必要な人材でもあった。

 一部、期待を予想以上に超えてしまった非常識がいるが、いずれは里を背負って立つ若者であると期待されていた。


「良くぞ戻って来てくれたのぉ~。して、我らに協力してくれる者達は如何様にしておる?」

「中央広場で待機して貰っております。ですが、彼等を宿泊させる場所はあるのですか?」

「空いてる部屋は幾らでも有る。問題があるとすれば……」

「我等に根付いている敵対心ですわよね。ここに来るまでも、里の者達が敵意を剥き出しにして居りましたわ……」

「ふん、外の下賤な輩など使い潰せば良いだけの事、何を気を使う必要がある!」

「グラトー……まだその様な事を言っておるのか…」

「安全な場所でぬくぬくと暮らしておった弱者に、何故気を掛けねば為らぬのだ? 奴等は我等の命に従っておればいいのだ」

「下手に刺激して開戦の切っ掛けを与えるのは得策ではありませんぞ!?」


 グラトーはエルカの父親であり、強硬派の代表でもある。

 だが、凝り固まった選民志向が柔軟な思考を鈍らせ、傲慢とも言える態度を取らせていた。

 過酷な状況下では彼の様なリーダーは頼もしく映るであろう、しかし既に時代は動いているのである。

 時に措いてはその様な考えを捨てる必要もあるのだが、今の彼等にはそのような考えすら思い付かない。

 なまじ民族の危機的状況など初めての事であり、これまでは部族の事を考えているだけで良かったのだが、これからはそうは行かないのだ。

 しかし、頭では理解していようとも、これまで培ってきた人生の経験がそれを激しく否定している。

 有能と思われた指導者が陥り易い典型的で単純な思考の迷路である。


 彼等の話し合いは平行線で終わるかに思われた。

 其れがいつものパターンだからだが、今回に措いてはそうでは無かった。

 突如発生した膨大な魔力の奔流が、彼等を緊張状態に陥れたのである。


「「「「「 !? 」」」」」

「こ、この魔力はッ!?」

「ま、まさか……!?」


 ファイの記憶のはこの魔力波動に覚えがある。

 何故なら、生まれて初めて相対した災害指定級の魔獣との戦いを目撃していたからである。

 其の時は一人の冒険者と、巨大な魔獣との熾烈な一騎打ちであったのだ。

 忘れる方がどうかしているだろう。


 膨大な魔力は天高くに撃ち上がると、凄まじい衝撃波と為って里に襲い掛かる。

 エルフは危機察知能力が高い故に、理解できてしまうのだ。

 今のが攻撃であったのならば、この里は消し飛んでいた可能性が高い事を……


「……な、何だ……今の魔力は…尋常なモノでは無い……」

「……ディストラクションバースト……セラね……でも、何で……?」

「恐らく警告の心算なのでしょう。敵対したら容赦はしないと云う……」

「……多分それは後付けの理由ね……恐らく、注目されていたから芸を見せただけよ……セラならやりかねない」


 少しだけ付き合いが長いファイが正解。

 実の所、半神族であるセラには敵愾心と侮蔑の視線が鬱陶しかったのだ。

 そのこびり付いた汚れの様な視線が気に入らなかったセラは、彼等の目の前でディストラクションバーストをぶっ放す事で驚かせたのだ。

 それは結果として、彼等の古くからの因習に亀裂を入れる事となったのである。

 そんな事を知らないセラは言い訳を適当に並べただけであり、これと云って意味の無い行動だったのだ。

 早い話、〝ただ何となく?〟である。


「い、今のは何だっ!? 明らかに里を滅ぼせるだけの力が在ったぞっ!?」

「ディストラクションバースト……砲剣と呼ばれる超重武器の一撃必殺の攻撃です…里に撃ち込まれたらどうなるか、口にしなくても分かりますわよね?」

「攻撃だとっ!? 奴等は里に戦争を仕掛けに来たと云うのかっ!?」

「飽く迄警告の心算でしょう、利用しようとすれば直ぐにでも攻撃に移れるという…」

「……ここまで……此処まで差が出ていると云うのか………」


 閉鎖的な彼等と外に住む者達の間に開いた圧倒的な差。

 彼等は漸くその事を自覚したのであった。


「だが、一撃必殺と申しておったな? ならば次の攻撃は暫く出来ぬのではないか?」

「確かにその通りなんだけどねぇ~……」


 ファイの言葉に一同は安堵した。

 だが……


「あの娘…同じ武器を幾つも所有してるから意味ないわよ? 龍王と戦った時に、全ての砲剣を総動員して仕留めたらしいから……」

「龍王……まさか…アムナグアを単独で倒したとか言う半神族が来てるのか!?」

「そのまさかです。……敵対したら……どんな目に遭わされるか……」

「容赦ないからねぇ~あの娘……馬鹿な真似をしないで本当に良かった♡ あはははははは」


 彼女の一言で一同は騒然となる。

 そんな彼等の前で嬉しそうな彼女……ファイも中々に壊れて来ている様である。

 頭を抱える強硬派筆頭を見て満面の笑みであった。

 嘗ての使命感は何処へやら、今ではすっかり無責任であった。


 こうしてエルフ達は、最強の悪魔を招き入れる事と為ったのであった。


 結果的に言えば、ディストラクションバーストの効果は良い方向へと働いた。

 戦力が期待以上どころか、忌々しい魔獣を殲滅する事が出来る戦力を集める事が出来たのであるから。

 しかし、根強くエルフ達の心にこびり付いた因習はそう簡単に消す事は出来ない。

 半神族を頼らねばならない事が、彼等のプライドを痛く傷つけるのである。


 だが、そんな拘りが無意味な物になるのも間近な気がする。

 非常識な連中に、一部族の常識など通用しないのだから……


 こうしてセラ達はエルフの里で暫く生活する事と為ったのである。

 良くも悪くも多大な影響を与えながら……





 今回、笑が少なくね?


 あれ? ギャグ路線を目指してたんだっけ? 其れとも筋肉……

 最近方向性が曖昧になって来てます。


 話を進ませようとしても、必ず脱線……今更?

 そうですね……今更です。

 その場のノリと勢いだけで書いてるからでしょうね。

 ……反省。


 此処まで読んでくれた方感謝です。 楽しんでくれたのであれば幸いです。


 

 

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