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 夏休み前の一時 ~似た様な話を聞いた事はありませんか?~

 二話 同時投稿です。

 期末テストも終わり、後は夏休みが来るのを待つそんな夏の日。

 優樹は他のクラスの合同授業中に、休みに入った時の予定を立てていた。


「ん~~…ここはやっぱりノルダ平原の新ダンジョンかな、攻略を目指すべきじゃない?」

「しかし、新種の魔獣を倒して装備を作るのも捨てがたいな」


 夏休みとは言え、優樹のやる事など決っている。

 当然オンラインゲーム【ミッドガルド・フロンティア】のアイテム回収である。

 最近になってアップデートし、新ダンジョンと数多くの狩猟対象キャラが加わり、更に難易度が上がっていたのだ。

 当然引き籠りゲーマーである優樹は、これに挑戦しない筈が無い。

 無論同じ引き籠りである幼馴染の俊之も、やる事など大して違いは無かった。


「瀬良は何処か行く予定は無いのかよ? 例えば海とか……」

「……僕が海に行くと…何故か補導されるから……ナンパもしつこく寄って来るし…」

「「「「「…クゥ………何て不憫な………」」」」」


 二クラスの男子が全員泣いた。

 見た目が美少女なだけに、海パンだけで浜辺を歩くのは些か問題が在った。

 海に行っても見た目の問題から海で泳ぐ事は出来ず、浜辺で静かにしていればしつこくナンパ目的の男が言い寄って来る。

 男だと言った所で誰も信じてくれないのだから、最早海に行く気すら起きないのだ。

 何より渋滞にハマったり、混雑した処が嫌いな優樹にはのんびりとお茶の間でゲーム三昧しているのが性に合うのである。


「皆は何か予定は立てているの? 僕はお盆には父さんの実家に戻って、狩りをするのが楽しみなんだけど」

「「「「「 待て、瀬良!! 今、なんか変な単語が混じっていたんだが? 」」」」」

「ん? 僕が狩りをするのがおかしい?」

「前に貰った鹿の肉は美味かった……今度は猪で頼む」

「獲物は其の時次第だから期待は持てないけど、探してみるよ」

「「「「「「 マジで!? 」」」」」」


 優樹は幼い頃から祖父に狩猟を叩き込まれていた。

 無論、一子相伝の格闘術もだが、当時は野山を駆け回り狩りをするような野生児なのだった。

 其れが成長するにしたがって、母親似の美少女に成長するのだから世の中判らない事だらけである。

 性別は男なのだが……


「俺は、夏と云えばコミケだな…そう言えば、うちの同好会連中が去年居た気がする……」

「お前は、オープンオタクだからな。俺は、彼女と海や某ファンタジーの国へ行こうかと思ってる」

「大阪と千葉のどっちだ?」

「千葉に決まってるだろ? 大阪まで行く金は高校生にはキツイ」

「「「「「 死ね、リア充!! 」」」」」


 一部モテない男達の反感を買った。

 こうした男女共同の場は、時として一種の階級社会が形成されるのだ。

 モテる者とモテない者である。

 彼女がいると云う事は、其れだけで一種のステータスと化すのである。


「……お前の彼女……前に他の年上の男と歩いていたぞ?」

「なに、馬鹿な事を……」

「何か大学生くらいの男だったんだが……ここから先は言えない……」

「何を見たんだよ!! 良いから話せ!!」

「俺の所為じゃないからな? その大学生風の男と……仁羽町のホテル街に消えて行った…」

「嘘だろっ!? お前、冗談を言っているんだよな!!」

「真川女子高の生徒だよな? 三つ編みの真面目風な……」

「あ? あぁ……」

「じゃあ、間違いないわ…あそこの某ホテルに入って行ったぞ?」

「嘘だぁ―――――――――――――っ!!」

「あの道は塾から自宅に帰る近道なんだよ。そん時、偶然見掛けてまさかとは思ったんだが……」


 崩れ落ちる男子生徒。

 そんな彼を嘲笑う男達がいた。

 当然モテない男達である。

 彼等にとって、リア充の不幸は蜜の味なのであった。


「因みに……次の日、朝のジョギングの最中に同じ場所を通った時に、お前の彼女と中本の姉貴が、数人の男共とホテルから出て来た…」

「「「「「 マジでっ!? 」」」」」

「男共は何故か疲れ果てた顔をしていたな……女二人はスゲェ艶々してたけど……」

「そう言えば姉貴……やけに俺と風呂に入りたがってたな…まさか俺も狙われてる!?」

「「「「「 お前の姉貴を紹介してくれっ!! 」」」」」


 中本君は背中に戦慄が走るのを感じた。


「その後……俺の存在に気付いた二人に、無理やり路地裏に連行されて……凄かった♡」

「人の彼女に何してんだっ、お前は!!」

「姉貴ぃ―――――――――――っ!! 何してんだよ!!」

「アレは餓えた獣だ……因みにメールアドレスも交換したぞ? 金は取られるが……その日から俺はバイトを始めた」

「「 嘘だろ――――――――――――――っ!? 」」

「「「「「 俺達にも二人を紹介してくれっ!! 」」」」」


 夏休みの予定から、何故か自体は斜め方向に向かって行く。

 彼らの間に何やら居た堪れない空気が流れ始めていた。


「人の彼女と言うが……俺には拒否権が無かったんだぞ? その事については、お前と彼女との問題だ」

「手を出しておきながら何を言ってんだ!!」

「路地裏に強制的に連れ込まれ、両手を縛られた挙句に、無理やりチャックを下ろされ……」

「「やめろぉ――――――――――っ!! それ以上は聞きたくも無いっ!!」」

「中本は気をつけろ……お前の姉…彼女はお前も標的にしている……食事には猶更注意が……」

「姉貴は俺に何をする気だっ!?」

「あの男達は全て獲物だったんだ……彼女達の欲望を満足させる為の……」

「だったら、何でメールなんか交換してんだっ!!」

「……あんな凄い事されたら……俺は普通には戻れない………さよなら平穏な日々……」

『『『『『『一体どんな事をされたんだ!?』』』』』』


 彼の目にはどこか哀愁のある、それでいて何かを捨てて来た悲哀が感じられた。

 彼はもう普通の生活では満足出来ない体験をしてしまった様である。

 何故か彼の目から一筋の涙が流れ落ちた……


「吉中はいいよな……この間、五木と合体できたんだろ? 幸せの絶頂だよな?」

「……あの日から五木の奴が姿を見せなくなった……最近、登校すらしていない……」

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」


 五木君はこの間、彼と下野教諭に美味しく食べられた少年である。

 その日受けた心の傷が元で不登校になったのだと誰もが思った。

 だが、それは教師が教室に入って来た瞬間に事態は一変する。


「五月蠅いぞお前ら、少しは静かに出来ないのか? 全く……五木、入りなさい……」

「はい……」


 教師が連れて来たのは大和撫子を地で行く様な清楚な美少女であった。

 だが、この教師は気になる事を口にしていた。


「先生……五木て…まさか、その子は……」

「お前らの知っている五木君だ……昨日、タイから戻って来たらしい……」

「「「「「 嘘だろ――――――――――――っ‼‼‼‼‼‼‼ 別人じゃん‼‼‼‼‼‼‼ 」」」」」」

「何でも心の傷が深すぎて、男でいる事に耐えられなくなったんだとか……何が在ったのかお前等は知らないか?」


 男子全員が嫌な汗が流れるのを感じた。

 彼等は全員、五木君が襲われるのを知りながら見捨てた後ろめたい記憶が在るのである。

 そんな訳で、彼等は本当の事など言える訳も無い。


「タイ? モロッコじゃないんだ…?」

「タイの方が近い上に、飛行機のチケットも格安だからな…後は手術代と宿泊料込みでもお手軽な値段だろう」

「物価が安いからねぇ~日本で性転換するよりも格安?」

「日本で性転換する位なら、海外の方が遥かに安価で出来るだろうな」

「「「「「 いや、そんな問題じゃねぇから‼‼‼‼‼‼ 」」」」」」


 優樹と俊之はいたってマイペースである。


「男が女に変身してんだぞ? お前らはおかしいと思わないのかよ!!」

「……それは見た目が女子の僕に対する挑戦かな? 僕も一応は男なんだけど……」

「「「「「…………アァッ! 」」」」」」


 別におかしくもなんともなかった。

 実際に美少女顔の男の娘が存在するのだから、別に騒ぎ立てるほどの問題でも無いのだ。

 だが、それを受け入れられない者も一人此処に居る。

 そう、五木君を襲った張本人である。


「う……嘘だろ……五木……女になったなんて………」

「気安く話掛けないでくれますか? 私は貴方のような人は知りません」

「そんな……声まで変わって………」

「野蛮で穢れた男でいるくらいなら、私は女になる道を選びます」

「そんな……嘘だ……嘘だぁ――――――――――――――っ!!」


 彼に五木君をどうこう言う資格は無い。

 五木君をここまで追いつめたのは他ならない、吉中君自身なのだから………

 彼は取り返しの付かない過ちを犯してしまったのである。


「頼む……嘘だと…これは冗談だと言ってくれ!!」

「私は本気です。貴方こそ現実を受け入れたらどうなんですか?」

「俺は、ありのままのお前が好きだったんだ!! そんな姿のお前じゃない!!」

「私の事が好きだと言うのなら、どうして今の私を受け入れられないんですか?

 結局あなたは体目当てだった事に為るではありませんか、恥を知りなさい」

「違う……違うんだ………」

「何が違うと云うんですか! 貴方の思い等、この程度で壊れる脆弱なモノだと自分で証明しているんですよ?」

「うぁあああああああああああああああああああああああああっ!!」


 吉中君は泣きながら教室を出て行った。

 妙室は静寂に包まれる。


「お前等……本当に何も知らないのか?」


 彼等は言う事など出来ない。

 出来る事なら『五木が穢れたドリルの餌食になるのを助けずに、寧ろ生贄に差し出しました』と言ってしまいたい。

 しかし、自分達が仕出かした過ちを受け入れられるほど、彼等は大人では無かった。

 彼等はこの秘密を一生話さず、墓の中まで持って行く事を決意したのであった……





「何で昼間から深夜ドラマのような場面を見なきゃならないんだろ……他所でやって欲しいよね」

「全くだ…ん? 小町先生だ……何してんだ?」


 廊下の先には古文担当の国語教諭、小町遥先生が大きなダンボール箱を抱えて悪戦苦闘していた。

 三段に積まれたダンボール箱をしきりに上げようとするも、その重量から持ち上がらずにいた。

 優樹と俊之は顔を見合わせ、仕方なく手伝う事にする。

 

「どうしたの? 遥ちゃん…このダンボールはなに?」

「あっ? 瀬良君に安藤君……良い所に、お願い手伝ってぇ~」

「何なんですか? このダンボールは……」

「今度入荷した図書室の本なんだけど……数が多くて……」

「文芸部の人達はどうしたんです? この手の事は文芸部の担当ですよね?」

「夏のコミケの為に追い込みをかけるらしくてぇ~全員が同好会の人達の所に……」

「「801本の作制かよっ!!」」


 漫画愛好会と文芸部、そしてコスプレ愛好会は気合が入っている様だ……

 部の作業よりも夏のイベントに全力を尽くしていた。

 いずれにしても腐った女子の情熱は止まる事を知らないようである。


「暇だし手伝う?」

「義を見てせざるは勇無きなり……小町先生だけではきついだろう。手伝おう」

「ありがとぉ~助かるわ」


 優樹達はダンボールをそれぞれ抱えると、図書室へと運んで行く。

 途中階段を上がらねばならないが、そこを何とか攻略して二階角の図書室に到着した。

 これを七回ほど繰り返し、漸く一息ついたのである。


「何か…入荷した本が多過ぎない?」

「だな、いったい何を注文したん……」


 ダンボール箱から取り出した本は、やけにイケメンの外国人男性がビキニパンツ一丁で逞しい筋肉を強調している写真集であった。

 二人の表情が固まる。


「……こんな本……何のために………」

「知らん……考えたくも無い……」

「でも注文書には記載されてるみたい……どこの部が発注したのかしら?」


 気を取り直してダンボールから取り出して行く本には、どれも問題のあるタイトルばかりであった。

 例えば『筋肉への道』『マッスル入門』『細マッチョへ行こう』など訳の分からないラインナップである。

 更には『ゲイの花道』『ホモ・アンド・レズ』『百合の花園』『死霊秘法』など、マニアックな物まで在ったのである。


「ちょっと待って、何でネクロノミコンが在るのさ!?」

「こっちはナコト写本……金枝篇……オカルト同好会か?」

「邪神と戦争でもする気なのかな?」

「まさか……そんな訳無いだろ」

「だよね、ははは……」


 笑って済ませるにはあやし過ぎた。


「こっちはラノベの様ね。ほら、絵柄が綺麗なイラスト」


 だが、優樹と俊之はそのタイトルを見て硬直した。

 因みにタイトルには『肉獣の檻』と書かれており、半裸のイケメン青年が鎖で繋がれたイラストであった。

 完全にそっち系統の本である。


「これは漫画愛好会かな?」

「いや、文芸部の線も考えられる。奴等も腐ってるからな」

「どんな内容なのかしら? ちょっと見てみましょう………ひっ//////////////」


 内部のイラストはヤバかった。

 明らかに十八歳未満はお断りの小説である。

 この手の話に免疫が無いのか、小町先生の頭から湯気が立ち上っている。


「読んじゃ駄目だっ、遥ちゃん!!」

「それを読んだら、腐女子街道まっしぐらだぞ!!」


 急いで書物を取り上げる優樹。

 小町先生は余程ショックだったのか、しばらく呆然としたまま虚空を眺めていた。

 どう考えても学び舎に置いて宜しい本では無い。


「こっちは普通にラノベだ……しかも全巻揃ってるし…羨ましい」

「お前もこれ買っていたのか?」

「途中の何巻かが未だに入荷しないんだよ。まさか、高校の伝手を利用しているなんて……」

「これは多分、ラノベ同好会だな。漫画同好会の連中とは距離を置いている」

「愛好会では無いの? なんか同じ響きなんだけど」

「愛好会の連中は、皆腐っている。対して同好会は正当なラノベファンの集まりらしい」

「派閥争いでもしてるの? 趣味の話なのに?」

「趣味の話だからこそ譲れないものがあるんだろう……俺には理解できないが……」

「僕にも出来ないけどね……あ? 某有名忍者漫画……」

「この箱は単行本か、漫画家同好会だろう」

「漫画愛好会とは違うの?」

「奴等は腐っているが、漫画家同好会は本気でデビューを狙っている」


 どうやらこの高校にも真面な部活がある様である。

 最近オカシナ人種が現れ始め、優樹は少しナーバスに為り掛けていたのだ。

 変人は異世界だけで充分だった。


「何でも、女子にデビューしてアニメ化したら結婚して欲しいと大声で告ったとか」

「どこの〇クマン!? 明らかに影響を受けてるよね!? 博打をするつもり!?」

「囲碁部の新藤は、名人になったら結婚して欲しいと告白したらしいぞ?」

「交じってる、混線してるよっ!?」

「工学部の奴は、サイボーグに為ったら結婚して欲しいと告白したとか……」

「それ無理だよね!? 明らかに結婚不可能だよね!?」

「二年の八神先輩は新世界の…」

「言わせねぇ―――――――よっ!? これ以上はヤバイから、色々と!!」


 意外にアホが多い様である。

 この高校はフリーダム過ぎる傾向が有る様だ。

 皆自由人であった。


「・・・・・・・・・俊…」

「どうした? 優樹」

「不味い本が出て来たよ……学生の本分としてはOUTなやつ……」

「どれ……確かに、小町先生が見たら気絶するだろうな」

「私がどうしたの?」

「「おぉおっ!?」」


 いつの間にか立ち直った小町先生が優樹達の傍で覗き込んでいた。

 童顔巨乳の美人教師に屈みながら覗き込まれると、何故かいけない気分になるのが不思議である。


「は、遥ちゃん……このダンボールの中身は見ない方が良い」

「うむ…先程の事でショックを受けるのだから、それ以上の物は止めておいた方が身のためだ」

「なぁ~に? 先生は大人なのよ、多少の事で動じたりなんかしないわよ?」

「「さっき、メッチャ動揺してたじゃん…」」

「大丈夫です、先生を信じな…さ……いぃ!?」

「「あぁ~~…見ちゃったよ……」」


 どう見ても青年誌関係の本であった。

 幼気な美少女たちが時には恋人に、ある時は無理やり暴漢にイケない事をされ、性の快楽に溺れて行く話の物であった。

 どう考えても教育上宜しくない関係の本ばかりである。

 初心な女性教師には刺激が核爆級であった。


「……これ……マジで棚に並べるの?」

「無理だろ、如何わしすぎる。絶対に小町先生が責任を取らされるぞ?」

「返却するべきだよね? どう考えてもさ」

「当然だろ……不思議の国のアリス初版本なんて置いたら、盗難に遭うに決まっている」

「あったの!? 初版本が!? メッチャ高価な本だよね? マニア垂涎の……」

「シャーロックホームズの初版本も何冊か在ったぞ?」

「マジでっ!? 高校の予算で買える代物じゃないよね!?」

「厳重に保管して置く代物だ……こっちの魔道書も……」

「何か……ヤバい気配を感じるんだけど……コレ、本物じゃないよね?」

「俺に聞かれても専門外だ……送り返した方が良いな、手遅れになる前に……」

 

 二人は危険そうな書籍をダンボールに詰め戻し、無難な書物だけを残すようにした。

 だが、その無難な書物の殆どが週刊誌連載の漫画とラノベであり、とてもでは無いが教育の場に置いておく様な本では無かった。

 其れでも吟味した結果、そんな形になったのだからしょうがない。

 十八禁よりは遥かにマシである。


「そんな……教師が男子生徒数人がかりで……凄い……」

「「何読んでんのっ!? 手伝ってほしいいんだけど!!」」

「ひゃあっ!?」


 小町教諭は好奇心旺盛だった。

 しかし、読んでいた本は青年誌の可成り際どい本である。

 二人はそれを見てドン引きしていた。


「遥ちゃん……仮にも教師なんだから生徒だけを働かせないでよ……」

「その手の本は、家で一人で読んでくれ。一人きりのアパートで、寂しく」

「どうせ恋人はいませんよ・……独り身の詰まらない女ですよ…引きこもりのゲーマーですよ……」

「「拗ねてねぇで、仕事しろや!!」」


 取り敢えず送り返す書籍はダンボール箱に詰め終わった。

 残りは文芸部が整理するのでそこで作業は終わりとなる。

 気が付けば日が暮れ始め、辺りが暗い帳に包まれかけている。


「やっと終わったね」

「こんな如何わしい本を何で入荷できたんだ?」

「ここは専用のパソコンで注文しているのよねぇ~けど、幾らなんでもおかしいわね?」

「そうですね……普通は教師に許可を求めないと注文なんて出来ない筈ですし?」

「教師の誰かが購入? 其れにしては数が多過ぎる……」

「露見したら懲戒免職になるし……うぅ~~ん」


 謎が残るばかりである。


「そう言えば、遥ちゃんもゲームするんだ」

「え? まぁ…オンラインゲームにハマって、結構長く続けてるけど?」

「どんなゲームか気になるな……もしかしたら俺達と何処かで会って居るかも知れんし」

「そうなんだぁ~『ミッドガルド・フロンティア』て言うゲームなんだけど、知ってる?」

「知ってるも何も……」

「俺達も其れをプレイしている」

「へぇ~……あれ? 俊と瀬良……ねえ、瀬良君。君、半神族の女の子のアバター使ってない?」

「なんで知ってるんです?」

「アイテム収集に命かけてるでしょ……ダンディーなおじ様アバターも使って……」

「……まさか……セトナか?」

「嘘っ!?」

「正解、花丸を上げましょう♡」


 意外な所にパーティーを組んでいた仲間がいた。


「大学生て聞いていたけど……あ、教員試験を受けてたんだ」

「その所為で暫くゲームから離れてたのよ……最近また始めたんだけど、連絡が付かなくて」

「俺と優樹はたまに組んで遊んでいたが…意外に近くに居たんだな」

「今度ダンジョン攻略に行きませんか?」

「夏休みの間ね? 良いわよ、しばらく遊んでないから鈍ってるかもしれないけど」

「メンバーが揃って来たな。他の奴等も居るといいんだが」

「皆何してるんだろうね?」


 こうして優樹達の夏の予定は決まった。

 かなり不健康だが、其れでも仲間と遊ぶのは楽しい事である。

 だが、仲間全員が揃う事が最早無いと云う事を、優樹はこの時は知る由も無かったのだ。





 後日談



「おかしいのよねぇ~」

「何がおかしいの? 遥ちゃん」

「購入した本の記録を調べたら、注文した時間が真夜中なのよ……」

「それは、教師や生徒が帰った後と云う事か?」

「うん……深夜だから、警備の人達も帰ったはずだし……誰が注文したのかが分からないのよ」

「マジで!?」

「電子ロックだから校内には入れないし、強化ガラスだから割るのには一苦労だけど……」

「ガラスが割れた形跡も無い……」

「不思議よねぇ~……」


 優樹達は小町先生の話に首を傾げていた。




 深夜、警備員も帰って三時間ほどが過ぎた校舎の一角で、その現象は起きていた。

 図書室の奥に在る教員用の部屋に置かれたパソコンが、独りでに起動する。

 キーボードが誰も居ない筈なのに勝手に押され、まるで其処に誰かが居る様であった。

 

 やがて入力し終えると、パソコンは再び眠りに着く。


 それから数日後、頼んでも居ないDVDが大量に送られて来た。

 全てがアニメ関係と、警察沙汰になりかねない如何わしい内容の物であった事は言うまでもない。


 怪奇現象だとは誰も分からないまま、謎だけが残るのであった。

 

 

 

 

 


 今回は何故か二話書きあがりました。


 何故他の作品の方が書けない……スランプの様です。

 

 悩ましい……


 読んでくれてありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです。


 マジで……少し休もうかなぁ~……

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