表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/77

 この高校 やっぱり何処かおかしいです ~薔薇の人は意外に多くいるのかも知れません~

 初夏の風が体育館の入り口からに爽やかに吹き抜けるその日、優樹達は週に一度の朝礼に参加していた。

 大概にこの朝礼での校長の話は長いもので、朝早くに登校してくる生徒は欠伸を噛み締めて耐えている。

 長い話は兎に角眠気を誘うに十分な効果を発揮し、誰もが睡魔と闘っているのだ。


「……あふ~…何時もながら校長の話は長いよねぇ~……」

「小中高問わず、校長の話は長いと相場が決まっているのかも知れんな……」

「もう、一時限目の中盤だぜ? いつまで話す気だよ……」


 長い話なんてモノでは無かった。

 バーコード頭の冴えない印象の校長は、話の区切りを着け一息入れる。


『『『『『ようやく終わったか……長ぇ~~んだよッ‼‼‼‼‼‼』』』』』』


 生徒たちは安堵するが……


『えぇ~~次に、生徒間の男女交際について……』

『『『『『まだあんのかよっ!? いつまで続くんだっ‼‼‼‼‼‼』』』』』』


 第二ラウンドに突入した。


『君たちは若い、だがその若さに勢い任せで責任すら持てない、愚かな過ちを犯す青少年は少なからずいます』

『『『『『『いいから、さっさと終わらせろっ‼‼‼‼‼‼‼』』』』』』


 生徒達のストレスは最早ピークに達していた。

 下手したら暴動すら起こしかねない程に、彼等の我慢は限界に近い。

 しかし校長は気にも留めずに話を続ける。


『責任はとると格好をつけて豪語したはいいが、計画性も無く見栄を張って自分の給料や生活費の事を念頭に入れる事をせず賃金の高いアパートに住んだり、剰え生活苦の実情を妻に押し付ける様な事をしたり、食事を作って待っていた妻の手料理を食べては母親の方が美味い等と言うマザコン気質を発揮したり、生まれて来た我が子を見て猿みたいだと呟いたり、適当な育児をして妻のストレスを更に吊上げたり、そのモロモロが重なりノイローゼにした妻を妊娠させて、それを知ったその日の内に産婦人科に置き去りにして子供を下ろさせ、さらに追い詰めて自殺に追い込むような非常識で最低な人間などになってはいけません』


『『『『『女性週刊誌に書かれている駄目な夫のオンパレードだな、そんな奴いねぇよ……それと俺達とどんな関係が?』』』』』』


 校長は何故かヒートアップしていた。


『男子生徒は事に及ぶ前に自分の現状を見つめなおしなさい。次に女子生徒は全てを男子に任せてはいけません、生活費すら捻出できず親の保護の下で生活している君達は、いざ子供が出来たと知ると大抵は下ろさせるか、子供を生んで直ぐに捨てる等と言う暴挙に出やすい。

 命の重さを軽んじているからこそ思いやりの精神を忘れ、自分勝手な行動を正しいと勘違いしてしまうのです。

 その結果、若さの勢いに任せて計画性を蔑ろにすれば、そこには悲劇しか生まれないのです』

『『『『『良いからもう、終わりにしてくれ‼‼‼‼‼‼‼』』』』』


 彼等の我慢は既に限界だった。

 彼等はこのまま話が進めば暴動すら起こす覚悟を決めている。

 それ程までに彼等のストレスは危険領域に達していたのである。


『つまり、私が何を言いたいかと云えば……昨日、再婚しました♡』

「「「「「「「 只の自慢話かよっ‼‼‼‼‼‼‼ 」」」」」」」

『因みにマイハニーは十代の美少女です。幼な妻ですよ? 羨ましいですか?』

「「「「「「あんた教育者だろっ、良いのかよっ‼‼‼‼‼‼」」」」」」

『先生は大人です。将来設計もちゃんと立てていますし、収入もある。将来を見据えて、充分に責任を取れる立場にあります。

 その場の勢いで過ちを犯して、その後は無責任な行動に出るような愚かな真似はしません。

 ついでにいえば既婚者でしたが妻に死に別れて以来、炊事洗濯も全て自分でやってきましたよ?

 結婚生活がどのようなモノなのかも知り尽くしてますし、その場の勢い任せのバカな若者達とは違います』

「「「「「十代の未成年に手を出している時点で、世間では其れを犯罪だと云うんだっ‼‼‼‼‼」」」」」

『何度も御両親と話をして説得しましたよ? こんなオッサンに告白しても良い事は無い、一時的な熱病と思って忘れてくださいとね。

 ですが頑なに拒否して自殺未遂までするものですから、更生を念頭に入れて親御さんの了承のもとに交際をしていたんですよ……

 いつの間にか私の方が本気で愛してしまい、現在に至るわけです。

 言葉で話すのは簡単ですが、実際に体験すると結構大変だったんですよ? 第三者は苦労を知らないから無責任に好き勝手に言えるのです』

「「「「「「「 うっ……… 」」」」」」」

『そんな訳で、人一人の人生すら互いに背負う事が出来ず、家庭すら守る事の出来ない者は結婚する資格は有りません。

 皆さんも若さゆえの過ちは起こさないようにしてください。取り返しの付かない事態に為ったら遅いですからね、話は以上です』


 今日の校長はいつも以上に輝いていた。

 壇上から降りる彼の姿はさえない中年オヤジの筈なのに、やけにカッコイイ漢の風格を身に纏っていた。

 バーコード頭の中年オヤジは、見た目以上に大人だった。

 この日、校長の生徒からの株は大いに上昇したのである。

 信頼できる大人として……いいのか?





 中間考査も終わり、生徒一同は通常の授業に時間割は戻った。

 優樹達のクラスは現在体育の授業、それも水泳である。

 だが、職員会議で満場一致で授業を免除された優樹は現在見学中。

 はっきり言えば暇でしょうがない。

 そんな優樹とは裏腹に、隣のクラスを含む男子生徒は顔色が悪かった。

 その原因は体育の教師でもある下野教諭に原因が在る。


 下野教諭は痩せ形ではあるが引き締まった肉体を持ち、おまけに美形で女子生徒からモテそうなイメージが在る。

 しかし実態はオネェであり、女性的な化粧の上にビキニパンツの水着を着用している姿に、男子生徒は恐怖を覚えていた。


「いいなぁ~…みんな涼しそうで……」

「優樹……涼しいどころか極寒だぞ? いつドリルで狙われるか分からんからな……」

「……それが在った……あの話マジなのかなぁ?」

「わからん、だが確かめたくもない……」

「ですよねぇ~~マジでモーホーだったら即座に喰われるし……」


 その下野教諭は現在生徒の指導に当たっている。


「ほぉ~ら、もっと体を水平にして……そう、いぃ♡ いいわぁ~~実にいい感じだわ♡」

『『『『『 ヤベェ……何か嫌な妄想が浮かぶんだが…… 』』』』』

「貴方たちぃ~何をさぼっているのかしら? 授業中なのよ!」

「「「「「 ヒッ!? す、すみませんっ‼‼‼‼‼ 」」」」」


 幸いにもあと数十分で授業が終わる。

 そうなればこの危険領域から脱出が可能になるのだ。

 男子達は授業が終わるる時を今か今かと待ちわびている。

 誰もドリルの餌食になりたくはないのだ。


「うぁあぁぁぁっ!! 足が……足が……」

「吉中っ!? 先生、吉中がっ!!」

「どうしたのっ!? あぁ……足を攣ったのね。仕方ないわ、私が保健室まで連れて行くから自習にして為さい」

「ほ、保健室っ!? だ、大丈夫です先生、プールに入らずベンチで休んでいれば……」

「駄目よ!! どの道保健室に行く事に為るんだから、今は大人しく言うこと聞きなさいっ!!」

「た、助けてくれぇ~~~~五木っ、倉本ぉ~~~~~~!!」

「いい歳して保健室を怖がるものではないわ。ほら、行くわよっ!!」


『『『『『 怖いのは保健室じゃ無くて、アンタだよっ‼‼‼‼‼‼‼ 』』』』』


 誰もがそう思ったが、怖くて口に出来なかった。

 下手に睨まれてターゲットにされてはたまった物では無い。

 誰もがわが身が可愛かった。

 哀れ、吉中君は下野教諭に保健室へ連行されていったのだった。


 そんな彼の姿をクラスメイト達は右腕を胸元に水平に構えて見送った。


『『『『『GOOD BY 吉中……お前の犠牲は無駄にはしない……』』』』』


 彼等は皆涙を流し、吉中君が姿を消すのを見守り続けた。

 友情て何だろう?


 その後自由となった彼等はプールを自由にに泳ぎ回っていた。

 僅かな時間だが、彼等は恐怖から解放されたのである。

 彼等は授業終了のチャイムがなるまで遊びまくったのだった。




 授業が終わり、男子達は更衣室で着替えていた時にそれは起きた。

 先程保健室に連れて行かれた吉中君は、何処か絶望した表情で更衣室に戻って来たのだ。

 だが、足をつったはずなのに応急処置をした気配が見当たらず、男子達は怪訝な表情で彼を見守る。

 表情を無くした吉中君が自分のロッカーの前に立つと、彼の目から一筋の涙が流れて行く。


「よ、吉中……お前、どうしたんだ?」

「ばか、よせっ!!」


 クラスは違うが同じ部に所属する男子が勇気を振り絞り彼に声を掛ける。


「……へ…へへ…俺………汚れちまった……」

「「「「「「 嘘だろっ!? 職場で授業中だぞっ‼‼‼‼ 」」」」」


 だが、その答えは予想以上に最悪な物だった。

 吉中君は何故か尻を押さえ崩れ落ち、後は無言のまま泣いていた。


「……優樹……俺達………ヤバくないか…?」

「……完全に狩場の中の獲物だよ、僕達……ハンターが目を光らせて狙っている……」

「何とか逃げる手立ては無いものか……」

「授業を全員でボイコットすれば良い筈だけど、プール以外の授業中に狙われる可能性も…」


 最悪の事態であった。

 隣のクラスとはいえ、まさか犠牲者が出る等とは思わなかったのだ。

 何より、教師である立場からこの様な暴挙をするとは夢にも思わなかったのである。


「とうとう……ドリルの犠牲者が……」

「い、いやだぁ!! 俺は穢れたドリルに刺されたくないっ!! 逃げなきゃ、逃げなきゃ駄目だぁ!!」

「佐々木が錯乱したぞっ!! 押さえろっ、こんな事がバレたら腐った女子が喜ぶだけだっ!!」

「落ちつけっ!! 取り敢えず着替えて教室に戻るんだっ!! そうすれば安全だっ!!」

「安心できるかっ!! この高校は、あのオネェのテリトリーだぞ!! 逃げ場がない」


 更衣室は混乱の渦にのまれて行く。

 そんな混乱を他所に、優樹はロッカーの奥から妙な物を発見した。


「煙草の箱? 何でこんなトコ……ゲッ!?……と、俊、コレ・……」

「どうした、優樹……隠しカメラと盗聴マイク?」

「「「「「 なんだとぉ―――――――――――――――――――――っ‼‼‼‼‼‼‼」」」」」」

「どうも動いてるみたいだね……他にもあるかも……」

「「「「「 さ、探せぇ――――――――――っ‼‼‼‼ 俺達が狙われている可能性が高くなった」」」」」


 彼等は一斉に動き出し、そこから無数の隠しカメラや盗聴器が発見された。

 まさか男子更衣室が覗の対象に為るとは思わないだろう。

 中には壁に埋め込まれた状態で見つかった物も在った。

 これを仕掛けた者はよほど男子に興味津々の様である。


「盗聴器が七つ……隠しカメラが十七個……多過ぎだろ…」

「結構金がかかると思うんだが…コレ、生徒が買うには無理じゃね?」

「恐らくは某電気街で仕入れたんだろう。しかしどうやってトイレの壁に埋め込んだんだ?」

「以前改修工事の人が来てたよな?」

「外部の犯行か? だが、プールは俺達以外にも使っている筈だ」

「あぁ、今まで見つからない方がおかしい」


 生徒個人の資金で盗聴器を買うのは比較的無理が在る。

 そもそもこの高校の殆どがごく普通の家庭であり、裕福な方は良くて精々中小企業の管理責任者程度なのだ。

 とてもでは無いが、これほど大量の盗聴器などを買う余裕はないと思われる。


「小遣いを貯めて少しづつ買ったとか?」

「学生は色々と金が要りようだぞ? 買う物が多過ぎてたまる事は無い」

「となるとやはり教師の誰か……下野先生か?」

「……いや……下野先生なら、そんな物は仕掛けない………直接狙って来るさ…俺の様に…」

「「「「 吉中っ!? 」」」」」


 下野教諭犯人説を否定したのは、まさかの被害者であった。


「まて、お前あのオネェに襲われたんだろ? これを利用してここから追い出す事が出来るんじゃないのか?」

「そんな事をしてどうするんだ? それよりも俺は大事なモノを手に入れたんだ……」

「「「「「 大事なモノ? 」」」」」


 彼は頬を染め、まるで乙女の様に恥ずかしがりながら怖ろしい一言を放った。


「……太くて…固くて逞しい……ド・リ・ル♡」

「「「「「 そっちの道の目覚めちゃったんですかっ!? モーホーは感染するのかっ‼‼‼‼」」」」」


 吉中君は覚醒しました。

 それも後戻りの出来ない道へと……

 事態は既に最悪を越えてカオスになっていた。


「……五木……お前のドリル……意外にデカかったよな……」

「「「「「 マジでっ!? 」」」」」」

「お前ら、何でそっちに食い付くんだよっ!? 普通は恋する乙女みたいな目で俺を見てるコイツからだろ!!」

「親友だろ? 一緒に薔薇の世界へ堕ちようぜ」

「ふざけろよっ!! 俺は彼女がいんだよ、モーホーの道に引きずり込むなぁ!!」

「あぁ、錦織さんな、彼女もボーイズラブの愛読者だぞ? この間、腐女子の巣窟【ライトノベル愛好会】の部室に入って行ったぞ?」

「マジでっ!?」

「ヒ〇ロ×ト〇ア最高とか、キ〇×ア〇〇ンは王道とか言ってた……」

「う、嘘だろ……俺にはハ〇ポタやトー〇〇ンの作品が好きだとか言ってたぞ!?」

「残念ながらそれは嘘だ。彼女はうら若き青少年達がくんずほぐれつするのが大好きな立派な腐女子なのさ」

「嘘だ、これは俺を陥れる孔明の罠だ!!」

「信じる、信じないはお前の自由さ。だがな、これだけは言っておく」

「な、何だよ……」

「錦織さんがあの同好会の会長だ。清純そうな顔をして、実はモーホーラブな腐女子共の総元締めだったのさ」

「嘘だぁ―――――――――――――――――――――っ!!」


 五木少年は崩れ落ちた。

 彼はつき合っていた彼女が本当に清純な少女だと信じて疑わなかったのだ。

 だが、まさかコミケで東館壁際に陣取るサークルのリーダーだとは信じたくない現実だった。

 

「最近忙しいと云う理由で会えないのは、まさか……」

「【漫画愛好会】と【コスプレ同好会】と組んでコミケに参加する準備をしているからだろ?」

「うぁあぁぁぁっ!!」

「因みに三つの同好会で作られたサークル名は【I Love boys】とか言うらしい。

 よかったな、彼女公認で俺達はつきあえるぞ? 文字通り、ドリルで……」

「ふざけんなぁ!! 何で俺なんだよ、倉本も居るだろっ!!」

「倉本は……」

「な、なに? なんだよ?」


 吉中君は倉本少年を一目見ると、物凄く残念な顔をしてため息を吐いた。


「何だよその態度はっ!!」

「……倉本は…………小さいから…………………ドリルが………」

「「「「「「 くぅ………… 」」」」」」

「お前等なんで泣いてんだよっ!? 失礼だろっ!! てか泣いても良いよな、俺!?」


 二クラスの男子生徒の同情の視線が倉本少年に突き刺さる。

 最悪なくらいに混沌としてきた。


「どうでも良いけど、早く着替えて教室に戻らないと次の授業に遅れるよ? 僕は行くからね」

「そうだった、別に五木がドリルで刺されてもどうでも良いか」

「だな、俺達に実害がないなら問題はねぇ。二人ともお幸せにぃ~~」

「流石、我が校の天使だ。うっかり次の授業の事を忘れてたぜ」

「早く着替えよう。吉中、襲うんじゃねぇぞ?」


 五木少年は見捨てられた。

 後に残されたのは五木少年と吉中君、二人きりである。

 彼にとって不幸だったのは、この後プールを使うクラスが無い事であった。

 そして……


「邪魔者は居なくなったな……五木……実は俺、最初からそっちの世界の人間だったんだ」

「な、何だと?」

「下野先生とは互いに協力し合う仲なんだよ、最初からね……」

「よ、よせ……来るな……」

「駄目よ? 五木君……男なら例え同性でも愛を受け止めてあげなくちゃ~♡」

「し、下野先生っ!? 何処から……」

「教員室からに決まってるじゃない。それよりも……いい体してるわねぇ~~♡」

「先生……五木の初めては俺の筈だろ?」

「ごめんなさいねぇ~でもぉ~何故かあたしもギンギン来ちゃってぇ~~♡」

「やめろ……やめてくれ…………」

「先生も少し手伝ってください、何か暴れそうなので」

「いいわよぉ~~♡」


 五木少年に逃げ場は無かった。

 前も後ろも塞がれ、そして前も後ろも塞がれる事になるのだろう。

 さよなら光ある世界。

 彼等は是から日陰の薔薇の花園を歩いて行く事に為る。


「「それじゃ~~いただきまぁ~~~~~す♡」」

「やめろぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」









 ア――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!♂









「ねぇ、俊。何か聞こえなかった?」

「気のせいだろ。其れより、この間アンノーンに会ったぞ?」

「え? どこで? 元気にプレイしてたんだぁ~」

「ルダリア平原の北東附近だな、まだ複数のアイテム調合で難儀してるらしい」

「いま何を作ってるんだろうね? 今度、僕も探してみるよ」



 この高校は何かがおかしい。

 一人の少年が二人の薔薇の餌食になったと云うのに、誰も気にも留めていなかった。

 いや、もしかしたら彼等は気付いているのかも知れない。

 イカレタ変質者には近づいてはいけないと云う事を……

 この高校の生徒は、もしかしたら日本国内で最も危機察知能力が高い高校生なのかも知れない。


 





「……いい絵が撮れたわ……五木君には悪いけど、私、二次元の男じゃないと駄目なのよね」

「会長、今度のコミケのネタは出来ましたか?」

「えぇ、一人の男子生徒が教師と親友に弄ばれる話よ」

「それはハードですね。ですが、漫画愛好会が今一乗り気じゃないんですけど……」

「彼女達、絵は巧いのだけどストーリーが今一なのよねぇ~~」


 彼女は五木少年の彼女の錦織さん…いや、彼を騙した悪女であった。

 盗聴器や隠しカメラを設置したのも彼女達である。

 そして、下野先生や吉中君と共謀した協力者でもあった。  

 

 最初は偶然、吉中少年が下野教諭に相談していた所を聞いてしまったのが始まりであった。

 彼は男の身でありながら、寄りによって同級生の親友に恋をしてしまったのだ。

 そんな彼を下野教諭は親身になって相談していたのだが、ここで錦織さんは有る事を思い付いたのである。

 最近彼女は五木少年に告白され返事を催促されていた。

 普段が清純のイメージを通している彼女にとっては、普段の真面目な態度の偽りの自分に囚われ、本当の自分を見てくれない男子には既に愛想が尽きていたのだ。 

 無論、五木少年に対しても同様であった。

 しかも最近になって演技し続けるのが面倒になり、もう良いからバラしてしまおうと考えていたのだ。


 そんな矢先に偶然知ってしまった薔薇の人達。

 しかも吉中少年の恋の相手は、幸運な事に自分に言い寄って来る五木少年であったのだ。

 彼女はこの好機を逃すつもりは無かった。

 三人は共謀して彼を此方に引きずり込む計画を立てたのだ。


 先ずは錦織さんが五木少年と付き合い、彼の性格や行動パターンを備に調べ上げ、下野教諭が吉中少年と一芝居打つ。

 後は混乱に乗じて自分の趣味や実は薔薇の人だった事をカミングアウトするだけであった。

 下野教諭は悪役になってしまうが、以前同僚を襲った前科があるから今更悪名が増えた所で痛くも無く、快く引き受けてくれたのである。


 因みに隠しカメラや盗聴器を仕掛けたのは彼女達であり、夏のコミケに向けての資料にするために五木少年を生贄にし記録するためだ。

 無論彼女も多少は心が痛んだ、しかしこの五木少年は腐女子を毛嫌いしており、その事を知った時に彼に対しての良心は消え去った。


 今や彼女にとって、五木少年はただのネタサンプルに過ぎないのだ。


「実際だと凄い絡みね……今年の夏は成功間違いなしだわ」

「じゃあ、いよいよシナリオを書き始めるのね?」

「時間が無いから忙しくなるわよ? 印刷所にも手配しなければいけないし……」

「間に合わせてみせます。さぁ、直ぐに準備にかかるわよ!」


 彼女達は来るべきイベントに向けて動き出したのだった。



 ………酷い話である。





 第三章の始まりがこんなのでいいのでしょうか?

 地球の方でも変態が動き出しています。

 しかも今回の犠牲者はモブ……優樹の影が薄い…

 校長はとんでもない事をカミングアウトしてるし、現実だったらクビになってますね。

 ある意味懐が深い……良いんだろうか?

 教育者としていいのだろうか?

 ぶっ飛んでます。

 五木君……君はもう出番はないのだよ。

 こんな高校…嫌すぎる。


 ここまで読んでくれた方ありがとうございます。

 次の回は少し時間が掛かると思いますのでご了承ください。 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ