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 レイルさんが帰ってきました ~新しい人員が鍛冶場に来たようです~

 其処は氷で閉ざされた洞窟の一角だった。

 静寂な筈の洞窟内で甲高い音が響き渡る。

 薄暗い洞窟の岸壁にツルハシを叩き付け、炭坑夫の様に何かを掘り出している。

 何度も、何度も叩き付けられるツルハシの音が不意に止むと、その掘り返した穴に手を当てる。

 手にしたピッケルで少しづつ丁寧に岩を崩すと、そこから透き通る様な水晶を思わせる鉱物が姿を現した。

 

「…やった……ついに見つけたぞ……」

「長かったわ……これでようやく帰れる……うぅぅ…」

「泣かないでください…私も涙が……」


 彼等が掘り出したのは【高純度天然ヱリクシル結晶】と呼ばれるもので、普通なら十数年に一度御目に掛かれるか分からない程の貴重な物であった。

 更に其処から覗くモノに、リーダーらしき男は目を奪われる。


「何だ……コレ…」


 ピッケルで周りの岩を砕き、その正体を確かめるべく掘り進む。

 それはまるで粘土のように柔らかく、一見土の塊に見えるのだが不可思議な光沢を放っていた。

 程よい弾力が何とも言えず、そのままずっと触っていたい位の得も言えぬ適度な柔らかさであった。

 更に掘り進めると驚愕事実が判明する。


「オイ……まさか…コレは…」

「どうしたのよ、レイ? オリハルコンは既に見つけているでしょ?」

「そう…なんだが……大きさが半端ねぇ……」

「え? ちょっと待ってくださいレイル……大きさはどれ位なのですか?」

「そうだな……丁度、成人の男の頭と同じくらい……国でもこんな大きさ見た事ねぇぞ?」

「ちょっ!? それ売ったら一財産じゃないっ!!」

「一財産どころか……街が一つ買える値段だ……いらんけど…」


 オリハルコン。

 それは金属に混ぜ合わせる事でその強度を飛躍的に高める鉱物である。

 主に国の中枢にいるような将軍クラスの人物の鎧に用いられ、その金額も一欠けらだけでも馬鹿に出来ない物質である。

 自然界での生成過程が謎とされ、多くの学者達が首を捻るほどの神秘の鉱物。

 冒険者なら誰もが憧れる伝説級の武具の製造に欠かせない希少な物でもある。

 主に火山地帯で発見される事が多い中、永久凍土でもあるこの地で発見されるなど夢にも思わないだろう。

 また採掘量も数える程度しか見つからず、それ故に発見され次第国に買いとられる事が多いのだ。

 冒険者にはそう簡単に出回る事が無く、存在そのものが伝説とされていた。


「そんな物が出て来たとなると、大騒ぎになりますね……下手をすれば血腥い事に為るかもしれません」

「確実になるだろうな……セラ辺りが持っていそうな気もするが……」

「あ~~~…有り得るわね…そうなると珍しい物でも無いのかも」

「セラさんを基準にするのはどうかと…その、非常識の規格外ですし…」

「ミシェル…言う様になったわね…同感だけど」


 彼等の価値観は、セラの所為でだいぶ狂って来ているようだ。

 現在彼等が居る場所は【オルクニケ・エテルネム】。

 古き言葉で〝冷徹なる神の冷笑〟と呼ばれる永久凍土である。

 周りを標高の高い山々が連なり、降り積もった雪は其の儘氷河へと変わる様な場所だ。

 雪も溶ける事は無く、一年中氷点下の冷凍庫の様な土地でる。

 無論その過酷な環境に耐える様な魔獣も生息し、熾烈な生存競争が常に繰り広げられている。

 何故レイル達がこんな場所に来ているかと言えば……


「セラの言った通りだな、小さいがオリハルコンと高純度天然ヱリクシル結晶が出るわ、出るわ…」

「何であの子、こんな場所を知っているのよ……どう見ても未開の地じゃない」

「セラさんも来た事が在るのではないでしょうか? でなければ地図なんて書けませんよ」

「これで装備が作れるな…結構苦労したぜ……マジで…」


 以前手に入れたアムナグアの素材で装備を作る為であった。

 資金を蓄える前に素材を集める心算だったのだろう。


「正直、嘗めてたぜ……平原より過酷な場所が在るとは……」

「そうね………でもそれが今日で終わりかと思うと………あれ…何で涙が……?」

「帰りましょう……あの温かい平原へ……うぅ……ぐすっ…………」  


 ………どうやら相当酷い目に会ったようだ。

 レイル達の顔には見て分かるほど疲労の色が色濃く出ている。

 地球で言うならハワイでの現地人との共同生活から、行き成り極寒の北極でサバイバル生活をするような物であろう。

 急激な環境の変化に耐えられず、大抵は命を落としそうなものだが、彼等は生き延びる事が出来た様である。

 目的を果たした以上この地には用は無く、後は速やかに帰還するだけであった。

 


 彼等は荷物を纏め、この永久凍土からロカス村を目指す長旅をする事に為る。

 だが目的を果たした以上は長居をする気は無いようで、足早に洞窟の入り口を目指した。

 滑る足場を慎重に進み、群がる小型の魔物を蹴散らし素材だけをはぎ取り、彼等は何とか洞窟を出る事に成功した。


 目の前に広がる凍土の平原。

 辛く苦しい場所でもあったが、ここでの生活は三人の絆をより一層強める事に為った。

 生きるのに厳しい場所ではあるが、いざ去るとなると名残惜しい物が胸に過る。


「もう……来る事は無いと思うけど……こうして見ると綺麗な所ね」

「……ファイ…そうですね、自然とは厳しい世界と同時に多くの命が懸命に生きる、美しいモノなのかも知れませんね………」

「だな……残念なのが、氷竜と呼ばれる【アクトボス】とやらと戦ってみたかったぜ」

「変な事言わないでよ、アタシは嫌よ!! 龍種となんか戦いたくないわ!!」

「私もです……レイル…もし本当に出てきたらどうするんですか…」


 頬を膨らませ抗議するミシェルを、一瞬レイルは〝可愛い〟と思ってしまった。

 その芽生えた心を振り払い話を続ける。


「今まで出なかったんだから大丈夫だろ? それよりも、早く帰ろうぜ」

「むぅ~~~ぅ、レイル…誤魔化しましたね?」

「本当にこの馬鹿は……竜種が相手じゃ今の私達じゃ勝てないわ。さっさと帰るわよっ!!」


 三人は凍土の平原を歩き出す。

 だがしかし、神がレイルの願いを聞いたか、はたまた運命の悪戯か、三人はどこかで聞き覚えのある音を聞いた。


 ――――――バサッ…バサッ!!


 三人は嫌な予感を憶え、静かに後ろを振り向いた。

 其処には白い氷の様な鎧を身に纏った、蒼い飛竜が空から舞い降りて来る所であった。

 平原に降り立つと翼を畳み、まるで巨大な腕の様にして凍土に鋭い爪を突き立てる。

 翼を広げている時とは違う、この環境に適応した姿は三人の心に不吉な物を過らせた。


「……あの姿………セラの言っていた奴に酷似しているんだが………?」

「…竜種よね?……アレ……」

「…まさか……こんな時に?………逃げましょう…」


 彼等は気付かれないように移動を開始する。

 しかし、世の中はそんなに甘くは無かった。

 過酷な環境であれば、大概の生物はその環境に応じて進化するのである。

 その進化が最も作用する場所は五感。

 取分け視覚と聴覚、そして嗅覚が発達しやすいのだ。

 レイル達は直ぐに発見され、アクトボスは凄まじい速度で急速接近して来る。

 

「れ、レイのバカァ――――――――――――――――――ッ!! 何でフラグを立てるのよっ!!」

「お、俺の所為かっ!? 俺が悪いのかぁ!?」

「そんな事はいいですから逃げましょう!! 此の侭では追い付かれてしまいますっ!!」


 こうして竜種からの激しい逃走劇は開始された。


 ――――――GYUGOOOOOOOOOOOOU


 雪原に響く龍の咆哮。

 時折聞こえる激しい爆発音がその惨状を物語っている。

 弱肉強食は自然の摂理、それは魔獣も人間も変わりはないのである。

 まして食料すら儘為らぬこの極寒の地獄であれば、尚更食料を確保する事は生きとし生ける者にとっては重要であり、どんな小さな獲物でも逃す事は出来ないのだ。

 無論それは最強の生物の代名詞とも云える竜種も同様であり、当然ながらレイル達を見逃すほど優しくは無かった。

 彼等も生きるのに必死なのは同じなのだ。

 その後彼等がどうなったかと云うと……

 ・

 ・

 ・

 ロカスの村の朝は早い。

 この村の住人は何かしらの仕事に従事している故に、その仕事にも常に命を賭けて働いている。

 大袈裟とも思われる言い方だが、辺境で生きるのには常に街とは異なる問題が山積みされている。

 一見平穏に見える日々であっても、職柄別にしても問題は常に存在し、その一つでもある人員不足は奴隷と為った人達を買う事で解消しつつある。

 手に職を持っていた者は期間を置いて様子を見、使える人材と判断されれば奴隷から解放されるのだ。

 奴隷達にとってもこの村は天国のように見え、彼等は一刻も早く奴隷から解放される為に真剣に仕事に専念をする。

 奴隷達にも家族が居り、幸せになる為には努力欲しまないのだ。

 そんな奴隷の一人が早朝、人気の少ない村道を職場に向かうために歩いていた。


「お? 早いな、今から仕事か?」

「昨日終わらせるはずの物が中途半端でな、朝からやらんと納期に間に合わないんだ」

「焦る事はねぇぜ? 多少遅くとも確実に仕事を熟せりゃいいんだからな?」

「まだ新参者なんで、少しでも腕を上げる為には仕事を熟さんと…早く息子達も奴隷から解放させたいしな」

「ははは、大丈夫だって、俺達は別に奴隷扱いするためにアンタ等を買った訳じゃねぇし、仕事を熟してくれりゃいいだけだからな」

「分かってはいるんだが、この首輪はどうもな…早く外してぇ……」

「真面目に仕事してりゃ直ぐに外してくれるさ、ロクデナシには制裁がヒデェがな……」


 奴隷達から見てもこの村は明らかに異常であった。

 仲間意識が強く団結力も有るのはそこら辺の村でも変わりはない。

 しかし、村や其処に住む住人に不利益を齎す者には容赦がないのだ。

 彼を運んで来た奴隷商は犯罪紛いの事を平気でやる下種であった。

 だが、この村の連中はその奴隷商の所業を知っているかの様に監視し、気づかれない様に囲い込んだ挙句、行動を起こした瞬間に一斉に逃げ場を塞ぎフルボッコにしたのだ。

 

 重傷を負えば回復薬で無理矢理回復させ、更に叩きのめす。

 泣こうが喚こうが一切の容赦も無く、徹底的に完膚なきまでに心を圧し折り、それでも尚苛烈に無慈悲に制裁を加えて行った。

 リンチとか拷問と云う言葉が生易しく思えるその制裁は、奴隷商が無表情になり独り言を繰り返す様になるまで続けられたのである。

 あまりにも恐ろしい光景であった。


「……アレは酷かったなぁ……マジで……」

「なぁに、アンタもじきに此方側に来るさっ! 意外と楽しいもんだぜ?」

「なりたくねぇよっ!? 人として何か大事なモノを捨ててんじゃん!!」

「郷に入れば郷に従え、朱に交われば赤くなる。じきに慣れて仲間入り確実さ」

「怖ろしい事言わんでくれっ!! 何人も廃人作ってんじゃん、情け容赦なく!!」

「大丈夫、怖くない、怖くないさ……其れに生きて憲兵に突き出したんだから問題ねぇし☆」

「逆に言えば、命以外は徹底的に粉砕してんだろっ!! 悪魔かっ!!」

「目には目を歯には歯を……悪党には殲滅を……」

「おかしいだろっ!? 死人が出たらどうすんだっ!!」

「この村の連中は其処までやわじゃねぇよ? 死人は悪党共しかでんだろ、死んだら後腐れ無く始末してくれる奴等が森に幾らでも居るし……」

「魔獣に死体を始末させる気かっ!?  予想以上にブラックだった!?」

「なぁに、じきに慣れるさ…じきにな!………クククク・……」

「……ヤベェ所に来ちまった…残念だけど俺、奴隷なのよね………」


 彼に選択肢は無かった。

 奴隷として買われた以上はこの村の掟に従わねばならない。

 奴隷から解放はされたいが、自分が解放された時、今のままの自分でいられるかと言われれば自信が無かった。

 この村の連中はそれ程までに他者から見ても何かおかしかった……


「ん? ありゃ、何だ?」

「……え?」


 村の男の声で、麻雀で有り金をすられ煤けた雀士の様な表情の彼が首を上げると、村の北門の辺りに何やら襤褸の様なモノが転がっていた。

 不審に思い、彼等が近づくと、如何やら人の様である。


「……何だ? 行き倒れか? 珍しいな…」

「それよりも生きているか調べるのが先決だろっ!? なに珍しがってんだっ!!」

「いや、こんな辺境を目指す冒険者なんて珍しくてな? どれ……て、レイル達じゃねぇかっ!!」

「知り合いか?」

「この村の上位冒険者の一人だっ!! こうしちゃいられん、直ぐに何人か呼んで来てくれっ!!」

「分かったっ!!」


 こうしてレイル達はロカス村に帰還した。

 何が在ったか聞いてみたが、未開の土地まで足を運んだまでは聞き出せたが、それ以外の事は頑なまでに口を閉ざした。

 疲労と衰弱から数日は宿で安静にして、しばらく休養を余儀なくされたのである。






「……で、【オルクニケ・エテルネム】まで行ったんですか? 無謀な真似をしますね、下手すれば死んでましたよ?」

「冒険者は冒険をしてなんぼだ……と、思ってたんだが、嘗めてた……」

「今の装備では無茶だと理解しているから教えた積もりなんですが……危うく三人一緒に天国への階段を転がり落ちる所でしたよ?」

「そこは階段を登る所だろっ!? 地獄行きかよっ!?」

「どっちでもいいですよ、意味は似た様なもんですし……良く生きて帰れましたね?」

「……聞くな………思い出したくも無い…アレは地獄だ…」


 相当トラウマが残る様な酷い目に会ったのだろう。

 流石にセラもそこまでは聞く事が出来す、そっとして置く事にする。

 因みにファイとミシェルはと云うと……


「……美味しい………美味しいです…………うぅぅ・・……」

「…何気ないスープがこんなに美味しいと思えるなんて………生きてるって素晴らしいわ…」

「まだたくさんありますから、少しずつ食べてくださいね」

「ありがと……フィオ……生きてる………アタシ…生きてるんだ…・…」

「もう…ダメかと思ってました………」


 消化に良い野菜のスープを涙をためて味わっていた。

 余程酷い食生活であったのだろう事が窺われる。

 何故かこちらまで涙が出そうなくらい酷い有様である。


「姉さん、【オルクニケ・エテルネム】て、そんなに危険な所なんですか?」

「永久凍土で、全てが氷に覆われている場所でね、食料になりそうな物が殆どないんだ……ついでに魔獣は上位者が数人がかりで倒せるのがやっとな奴ばかりだし、更に竜種まで居る

 普通なら行こうとは思わない場所だよ?」

「姉さんは行ったんですよね? 其れでも無事で此処に居るんですから……」

「目的が一緒な連中と何人かでね、途中からみんなバラバラに行動してたけど……」

「お前を含めてどんな猛者だよっ!! あんな地獄に行ける奴等なんて聞いた事ねぇぞ?」

「みんな趣味の人達だったから……名声よりも自己満足の方が強いんだよ」

「「「納得できてしまうのは何故なんだろうか?」」」


 セラの言っているのは勿論オンライン・ゲームでの話である。

 だが、それを知らない彼等はセラの様なイカレタ冒険者の影が脳裏をよぎる。

 目の前に非常識な存在がいる以上、其の知り合いとやらも更に輪を掛けて非常識と判断していた。


「どんな人達だったんですか?」

「んーー? ヴォルフは強い奴と戦うのが好きな武闘派だったし、セトナは弓だけでどこまで戦えるかを探求するチャレンジャーだったね。アンノーンはまだ観た事も無い薬を作るのが趣味だったような……トシは幼馴染で、世界地図を正確に創ると言ってたねぇ~ゴーランは変な武器や防具を作ってたよ?」

「そんでお前はコレクターかよ……しかもあの地獄から平然と帰還する猛者…お前の知り合いは化け物か?」

「みんなでヴェルさんを何度も袋叩きにしたなぁ~またやりたいなぁ~ここで……」

「倒したんだろ? ヴェルグガゼル……死んだ魔獣をどうやって倒すんだよ」

「ヴェルさん? いるよ? 其処に……」


 セラの指を刺す方向を三人が一斉に振り返ると、其処にメイドの様な装備を着た幼女がミシェルの荷物を漁っていた。

 手にしたブツを感嘆したように高々と掲げ、『これはでかいのぉ~想像以上じゃ♡ しかし黒はちょっと気負い過ぎではないか?』等と言っている。

 因みにヴェルさんの手にしているのは……ミシェルのブラジャーであった……


「なにしてるのかな? このエセ幼女……海に沈められたいのかな? いや、肥溜めの方が良いか…」

「にょぉおぉおっ!? そんな酷い所に沈められるのは嫌じゃ!! せめてピラミッドに埋葬して欲しいのじゃ!! いたたたたたたたっ、われるぅ~頭が割れるぅ~~」


 ヴェルさんの頭を鷲掴みにするセラ。

 ミシミシと何やら不穏な音が聞こえていたりする。


「ピラミッド? 何処までも図々しい……ヴェルさんは兵馬俑の代わりに埋められるのがお似合いだよ? 今直ぐにね……」

「生き埋め確定っ!? やめるのじゃ、我が悪かった!!」

「「「……………だれ…?…」」」


 彼等が疑問に思うのも無理は無い。

 声だけで話はした事があるが、実施に会った事など無いのだから……

 そんなわけでセラは三人にヴェルさんを改めて紹介する事にした。


 ついでにヴェルさんは勘違いしている様だが、古代エジプトでは王族の遺体をミイラにした後、王家の墓に埋葬されるのが常識であり、ピラミッドは王族の権威を表す宗教的な施設であったと云うのが今の定説である。現に王家の墓からは、クフ王やツタンカーメン王のミイラが発見されている事からこれは事実である。

 某教授がピラミッドの傍から木造製の船を発見した事から、墓と云うのは間違いであると云うのが最近の調査で明らかであり見解でもある。

 

「え~…コレが噂のヴェルさん事、チチスキー・パフリマスさんです。世間に出すのも恥ずかしい程の乳好きで、乳を見たら揉まずにいられないド変態です……」

「何じゃ、その紹介は!? 我は聖魔竜と呼ばれた偉大な龍王じゃぞ? そんな適当な扱いが在るかっ!!」

「聖魔竜か……所詮は過去の栄光だよ? 今のヴェルさんにそんな威厳があるとでも?」

「有るっ!!」

「その自信が何処から来るのかは知らないけど、僕から見ればただの変態合法ロリのチチスキーさんだよ?」

「名前をチチスキーにされそうじゃ、何でこうなったっ!?」

「日頃の行いだね、それと……頭の被ってるミシェルさんのブラと、手で広げてるファイさんの下着を返しなさい……」

「ハッ……なぜ…? ち、違うのじゃ…これはアレじゃ…そ、そう、タイム〇カンのユニフォームじゃっ!!」

「もう、戻れないんだね……悲しいなぁ~~実に悲しい……こんな悲劇は無い、そう思わないかね?」

「お主、何でそんなに嬉しそうなのじゃ!? それに、そのスコップは……」


 ――――――ゴキャッ!!


 響いてはいけない様な音が部屋の中に響いた。

 ぐったりしたヴェルさんを無言で袋に詰め、口を堅く縛った挙句に接着剤で固定し、それを肩に担ぐ。

 何事も無く扉へ向かいセラはふと足を止め振り返ると……


「それじゃ、僕は生ゴミを埋めて来ますね♡」


 ……そう言い残し出て行った。

 目の前で繰り広げられた惨劇を、レイル達は呆然と見ているしか出来なかった。


「……しばらく留守にしている間に、凄まじく斜め方向に突き進んだみたいだな……」

「………龍王て…殺しても死なないの?」

「それよりもいいんでしょうか……セラさんのアレは殺人では?」

「「大丈夫だろ……だってセラだし……」」


 変な方向で理解のあるレイル達……

 彼等もすっかりこの村の色に染まったようである。


 そんな彼等は何事も無かったように、失った体力を取り戻すべく食事を続けるのであった。

 朱に交われば赤くなる…黒に交わればドス黒くなる……

 彼等もすでに手遅れなのかも知れない。




「久しぶりだなロック……中々盛況らしいじゃないか」

「忙し過ぎて手が廻らねぇ…来てくれて嬉しいぜ! アイゼン」


 アイゼンはロックの知り合いで、同じ鍛冶師を目指した親友でありライバルでもあった。

 彼等は互いに意識し、鍛冶師としての腕を競い合った同士でもある。

 今のロカス村はとてもロック一人だけで鍛冶師としての仕事を続けるのが困難を極め、知人の大工に言伝を頼み、至急に頼んだ援軍が彼である。


「今は何を作っているんだ? 詰まらんものじゃ無いだろうな?」

「まぁ、見てくれや。意外に難物でな……」

「ほぅ……お前がそう言うのであれば、中々腕の振るい甲斐が在るって事だな」

「それは保証すんぜ……まぁ、入ってくれ」


 ロックはアイゼンを工場へと案内する。

 そこに在る作りかけの装備の数々に、アイゼンの目が鋭い光を宿す。


「良い装備だが、これは平均的な装備だな……お前が手古摺るとは思えん」

「そっちはいい……問題はコレだ…」


 作業台に置かれた装備と素材…しかし、アイゼンはその装備を見た事が無い。


「これは? 素材はアーブガフの様だが……こんな装備は初めてだ…」

「迷宮で発見された防具らしい、それをアーブガフの素材で強化する…触媒はデア・ミスリルだ」

「これはこれで芸術と言っても良い、それを更に強化だと!? 迷宮も在るのかっ!?」

「迷宮は最近になって発見された、今は誰も入れない様にしているが……この意味は分かるな?」

「ククク……いい現場じゃないか…滾りが抑えられん」


 迷宮と狩場、この二つが存在する村は発展を約束されたような物であった。

 現に三か所ほど似た様な村が在ったが、いずれも巨大な都市へと発展を遂げている。

 つまり、このロカス村は最高の当たりであった。


「それともう一つ……こいつがとんでもねぇ……」

「まだあるのかっ!?」

「あぁ、レジェンド級だ……初めて見た時は震えが止まらなかったぜ……」

「何だとっ!? 見たい、ぜひ見せてくれっ!!」

「見せるさ……お前じゃなきゃ、こいつの存在を教えたりしなかっただろうがな……」


 箱から取り出したのはセラの装備、【ヴェルグガゼル・レジェンド】であった。

 流石に装備ともなると調整が必要になり、入念な点検をロックに頼んでいた。

 無論この栄誉をロックが断るはずも無く、寧ろ無料で調整を施す程である。


「う、美しい…・…誰の作だ!? ヴォ―ド卿か? いや、それよりも確かな腕だ……至高の名品とも云える」

「ジルと云う俺も知らねぇドワーフの偏屈ジジィだとよ……だが、神懸かりの技量だ……思わず見惚れちまう」

「ジル? 知らぬ名だ……しかし、この使われている素材……まさか龍王かっ!?」

「そのまさかだ……この世界じゃ、まだ俺達の知らねぇスゲェ奴等が動いてやがるみてぇだな」

「龍王を倒せる奴など名声もほしいままだろ、何でこんな所で燻ってやがる!?」

「そんなモンに興味はねぇんだとさ、どうだ? ぞくぞくして来るだろ?」

「名も無き名工の装備に、無名の最強冒険者か……いいな……創作意欲が湧いて来る」

「分かってくれると思ったぜ、だからお前を呼んだんだ…どいつもこいつも名声、名声…レジェンド級を作れるドワーフの三大工も同じだ!!」


 ロックには拘りがある。

 武器と防具は使い手の身を守るための道具であり、決して見せびらかすだけの飾りでは無い。

 鍛冶師は使い手の要望に応え相応しい道具を作り、使い手はその技量で道具を使い熟す。

 それこそが鍛冶師の本分であると考えているのだ。

 ましてや、セラから聞いた鍛冶師ジルの存在は、ロックに熱い滾りを再燃させる起爆剤となった。

 無論ジル等という鍛冶師は存在しないが、それは彼の知らない事だ。

 無名の鍛冶師が他者を信じず、ただ一人最高の武具を作り続けたという話が彼の情熱を加速させたのである。

 

「ジルって鍛冶師は何者だ? ドワーフなら大凡知らない事は無いんだが……」

「人間嫌いで、同族も毛嫌いしてる偏屈だとよ。まぁ、無理もねぇ…これほどのモノを作れるんだ、余程の熱意が無けりゃ無理だろ」

「鍛冶師としての誇りか……名声に拘る奴は毛嫌いされても仕方が無いな」

「一族が全てそんな傾向になりつつある……愛想をつかしても仕方がねぇ……」

「古き鍛冶師の信念の篭った武具……素晴らしいな…王族なんぞには勿体無い作品だ」

「それだけじゃねぇ、自分は誰にも知られず消えて行き……残された武具のみが伝説となる…最高じゃねぇか」

「死して尚残る最高の装備……熱いな……滾る話じゃないか!!」


 彼等の熱き職人魂は劫火の如く燃え盛る。

 彼等は自分の胸の中に、滾らんばかりの熱意が残っている事を再確認した。


「師匠の下で修業した時を思い出すな、あの頃は鍛冶師としての情熱に燃えていたもんだ」

「だな、だが今もその情熱は消えちゃいねぇ、俺達はまだ上を目指せる」

「超えて見せよう、偉大なる無名の鍛冶師を!!」

「おうっ!! 俺達なら出来る、この熱い滾りが在る限りなっ!!」


 二人の熱き職人は、互いの友情と信念を固く誓う。

 この日より、2人の鍛冶師は最高の装備を作るべく槌を振るい続ける事に為る。

 熱き鍛冶師達の挑戦が今始まったのだった。




 ロックはアイゼンを自宅に案内していた。

 幾ら鍛冶師としての情熱が在ろうとも、長旅で疲れた友を直ぐに仕事に使うなど出来ない。

 今日はゆっくりと休み、明日からが創作漬けの日々と為る。

 積もる話を、酒でも酌み交わしながら語り合うのであろう。


「ん? セラの奴、何やってんだ?」

「半神族の娘か? いる所には居るものだな」

「何言ってやがる、あいつがレジェンド級の持ち主だ。アムナグアとサシで殺り合ったんだぜっ!」

「なにっ!? 半神族だぞ? そんな事が……」

「半神族は一定の強さになると爆発的に能力が向上するそうだ。それを【覚醒】と呼んでるらしい」

「まさか…ではあの娘が……」

「完全覚醒した半神族……馬鹿げた強さを持つ最強の冒険者なんだが……あいつ何してんだ?」


 二人の鍛冶師が見ているその先で、セラは如何やら穴を掘っていたようだ。

 そして今は、無造作に置かれた革袋の横でセメントを捏ねている。

 

 ヴェルさんは明日の太陽が見れるのであろうか?

 

 堕ちた聖魔竜の未来は暗い……… 

 

 某狩りゲームのモンスターはカッコいい。

 けど、残念な事に3DS持ってないんですよねぇ~

 ア〇ルーがちょこちょこついて来るのはいいんですが、時に捕獲しようとした獲物に止めを刺します。

 君達、何で仕留めるかなぁ……フィールドの同族には攻撃しまくるし…

 樽爆弾持って接近して来るんですよ?

 目の前に獲物がいるのに……この世界の自分は嫌われているのかとかと想像してました。

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