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 ギルド開業ました ~初めての依頼を受けよう~

 異世界に転移する時、一時的に外界世界を経由しそこから更に転移する事に為る。

 とはいえ転移させるのはどうも精神のみらしく、これは他の世界に余計な異分子を持ち込まない為の安全処置であった。外界世界からの干渉で世界が崩壊するのだから、当然負荷は少ないに越した事は無い。

 一つの世界は強固に見えて、実はシャボン玉のように脆いのである。

 優樹が転移する時、彼は土曜日の深夜の時間帯で転移し、かの地での深夜に【セラ・トレント】の肉体に宿る事に為る。これは時差を調節し精神の負担を軽減しているのだ。

 要するに時差ボケしないための処置で、別にそんな事をしなくてもあまり影響はないのだが、優樹にとっては気分的にこの手順を取っていた。

 そして現在、優樹の精神はその外界世界に来ていた。

 そこには無限世界を管理する目に隈のある美しい女性と、東洋の竜を思わせる漆黒と深紅の外殻を持つ

最強の竜種が何やら会話をしていた。


『ぬううう・・・これは難しいのう・・モノにするには骨が折れる・・・』

『術式で変質させるのだから相当無茶な魔術よねぇ、片方に安定すると楽なんだけど』

『其処まで行くのが難しいのじゃ、もう少し楽に出来ないものかのう?』

『そうするとあたしが干渉した事に為っちゃうからダメ、ヴェルさんが自力で制御しないと意味が無いのよ』

『しかしのう・・・失敗する確率が高すぎるのじゃ。もう少し簡単にはいかぬモノか・・・・』

『今日初めて覚える魔術なんだからしょうがないわよ、一度成功すれば後は楽よ?』

『それでも二十回に三度しか成功せぬ、難易度が高いのじゃぁ~~』


 何やらヴェルさんが苦戦しているよなのだが、何をしているかが分からない。

 優樹は首を傾げながらも二人(?)に近づいて行った。


「こんにちは~~~? こんばんは? どっちだか分からないけど、なにしてるんです?」

「にょおぉつ!? 優樹、お主いつからソコにっ!?」

「今だけど、何してるの?」

「秘密じゃ、驚きは後々の方が楽しいのじゃ!」

「碌でも無い事? だったらその前に潰すけど?」

「失礼なのじゃっ!! 我はこ奴ほど傍迷惑では無いぞっ!!」

「悪かったわねっ、どうせ傍迷惑で無責任で適当なちゃらんぽらんですよ私はっ!!」

「「うん、分かっているならいいんだよ」」

「あれ~~ここは否定するところじゃない?」


 世界を崩壊させるような【神】をどう擁護しろと云うのであろうか?

 少なくとも優樹とヴェルさんはその積りは無いようだ。


「で? 何しているんです?」

「ちょっとした実験よ、でもヴェルさんには少し難しかったみたいねぇ~~~」

「ぬううう・・・必ずモノにしてみせる、じっちゃんの名に懸けてっ!!」

「・・・・見てるんだぁ~~、けど、この空間でどうやってテレビとか見てるのさ?」

「うふふふ・・・ひ・み・つ! 知りたければ後でおネェさんが教えて、あ・げ・る♡」

「無貌の神に教えて貰うくらいなら知らない方が良いよ」

「あたしは邪神じゃなぁああああああああいっ!!」

「十分に邪神じゃろう、その姿とて偽りじゃろに・・・・」


 暇つぶしの就職先で押し付けられた仕事を、他の世界で代用しようとして世界崩壊へと導いたこの神が如何して邪神などでは無いといえようか。

 優樹達の白い視線を浴び、【神】はスゴスゴ引き下がる。

 何と言うべきか、こんな腰の低い奴に世界を任せておいても良いのだろうかと、二人は真剣に神殺しを考え始めていた。

 目を離すと事象改変を平気でやらかすのだ、これ程質の悪い存在などいないであろう。

 もしかしたら崩壊した世界がいくつもあるのかも知れない。


「取り敢えずまた行くけど、何もしないでよ? これ以上被害が拡大したら拙いんでしょ?」

「やらないわようぅ~・・・あたしってそんなに信用無い?」

「「あると思ってんのか? 世界を崩壊させようとしたくせに」」

「ですよねぇ~~~冷たい視線がちくちく刺さるぅ~~でもそれが段々気持ちよく・・・・」


 変な扉を開いてしまったようだ。

 もうこれ以上此処に居たくはない優樹であった。

 取り敢えず、分かりやすくこの外界世界に設置された扉に移動する。

 何の変哲もない玄関ドアだが、これがあの世界への入り口と為っていた。

 元々は無限にある世界を優樹が見付けるのが困難なために、【神】が判りやすく視覚化させた物なのだが、出来れば見た目をどうにかして欲しかった。

 どこぞのステンレスメーカーが怒鳴り込んできそうなほどこの世界には不自然であり、もう少しファンタジー色を出してもいいのではとも思う。

 変な所は全力投球なのに、こう云った所はいい加減な【神】であった。


「それじゃ行って来るけど、本当に何もしないでよ?」

「疑り深いなぁ~~分かってますよぉう・・・これ以上変な歪みなんて作りたくないしぃ~~」


 こんな所が信用が置けないのだが、今更それを言っても仕方が無い。

 溜息を吐きつつ優樹は扉のノブに手を掛ける。


「優樹よ、我は少々用事が有るので一緒には行けぬ、先に行ってくれぬか?」

「ん? 分かった。それで、どんな用事なの?」

「ひ・み・つ・じゃ!!」

「まぁ、良いけどね・・・じゃぁ先に行ってるよ」

「うむ、我が故郷で会おうぞ」

「行ってきまぁ~~~す」


 軽く挨拶を済ませ、優樹は扉を潜って行った。


「・・・・・よし、では気を取り直して練習じゃ!!」

「頑張ってねぇ~~~、あたしは次のシナリオの魔獣の生体観察をしてるから」

「ぬう・・・・一人は少し寂しいのじゃ・・・・・」


 意外に寂しがり屋のヴェルさんだった・・・・・






 ギルドの本拠地が急ピッチで建築が進む中、ロカス村の冒険者達は直ぐ傍に臨時的に建てられた依頼受付所の前で涙を流していた。

 つい数週間前までは彼等の依頼は商人達から言伝で受けており、他の村や町からの依頼は辺境であるこの村に廻って来る事は無かった。しかし本日この村の冒険者達は、初めて他からの依頼を受けられるようになり、立ち上げたギルドの初仕事の日と為ったのだ。

 彼等は歓喜の涙を流しながらも、掲示板に張り付けられた依頼書を見ては、どの依頼を受けるのかを悩みながら眺めている。

 この村はようやく軌道に乗り始め、これからの未来に胸を躍らせているのである。

 たった一つの大事件から始まった幸運は、彼等の村を愛する心とやる気を激しく燃え上がらせるのに十分なのだった。


「やべぇ・・・泣けてきたよ・・・こんな日が来るなんて・・・・・」

「まったくだ・・・この日をどれだけ待ち望んでいた事か・・・」

「俺っ・・・もう死んでも良いかも知れない・・・・」

「馬鹿言ってんじゃねぇぞ、ガキども・・・・これからじゃねぇか・・・・・くうっ・・」


 年配の冒険者すら感無量に打ち震える横で、セラ達上位クラスは依頼書を吟味している。

 レイル達は出来る限り高額魔獣の討伐依頼を狙い、セラ達は駆け出し二人を鍛えるために丁度良い魔獣討伐の依頼を探しているのだ。

 仮にも師匠と為ったのだから錬金術以外の事も教えたい、然し無茶な真似は出来ない上に安全も確保せねばならず意外に手古摺っていた。

 元々短期殲滅が可能なチートに張り出されている依頼書はどれも同じに見え、村の冒険者達が『これは駄目だろう』と匙を投げるものですら『これ簡単過ぎね?』等とほざく始末。

 しかし人様の子を鍛えるとあっては慎重に為らざるを得ず、慎重に下位ランクの手配書を真剣ににらみつけていた。どうやら常識をまだ失ってはいないようである。


「出来れば近場が良いなぁ・・・フィオちゃん達には出来るだけ経験を積んで欲しいし、けど簡単過ぎるのもなぁ・・・・」

「俺は少し手強い奴と殺りてぇな、強い相手はそれだけで鍛錬にもなる」

「数件ハシゴするんですか? レイルさん」

「ああ、流石に資金繰りがきつくなってるからな、出来るだけ高額狙いだ。お前の御蔭で回復薬は余裕なんだが・・・・宿代がなぁ・・・・・」

「出来れば広いフィールドを動き回るのが望ましいんですが・・・・採取したり採掘したり、その合間に獲物を弱らせたり、罠に嵌めたり雑魚を殲滅したり・・・・・」

「物騒だな・・・・・生態系は崩すなよ? 後々面倒に為るからな」


 冒険者は所詮何でも屋、だがそれでも守るべき暗黙の了解と云うモノが有る。

 其れが生態系を守るための乱獲防止策である。

 食用の肉を確保するために乱獲すると、他の群れが異常に増えたり、また必要な魔獣が移動してしまったり、最悪手に負えない様な魔獣が出現したりと色々問題が出る。

 心無い冒険者が無作為に狩りをしたため、せっかく開拓した村が滅んだ場所も無数にあるのだ、迂闊な真似は出来ないのである。

 あくまで各村や町が冒険者達にお願いしている事で、法律で決められたことでは無い。

 守る必要性は無いのだが、良識ある者達は慎重にこのバランスを制御している。

 自然との共存はこれで中々に難しいのだった。


「僕は今日の所は慎重に考えようかと思いますけど、レイルさんはどうしますか?」

「依頼を三件ばかり受けるわ。言ったろ、資金繰りが厳しいって」

「成程・・・・」 


 幾日も宿で寝泊まりをしているのだから、当然宿代もかさむだろう。

 ここ数週間は仕事などあまりせず、迷宮探索と錬金術を覚える事に費やしていたので腕が鈍っていると感じているのかも知れない。

 冒険者の最高位に辿り着く事を夢見るレイルにとって、実戦の勘を取り戻したいのだろう。

 彼の目は今迄に無いくらいやる気に満ち溢れていた。


「ところで・・・・結局二人と結婚するんですか? リア充路線を走り抜けるんですか?」

「うっ!?」

「決断は早い方が良いですよ? お二人をその・・・ごにょな事してしまっているんですから」

「しかしなぁ・・・俺が家庭を持つなんて想像がつかねぇんだよ・・・幸せに出来るとも思えんし・・」

「一応考えてはいるんですね? 後は腹を括るだけです。間違っても首を括らないでくださいよ? 後始末が面倒ですから・・・・」

「括るかっ!! 大体、後始末って何する気だ」

「葬儀に決まってるじゃないですか、何を当たり前の事を・・・・・」

「死なねぇよ!! 其れこそ二人に申し分けねぇだろっ!!」

「分かっていればいいんです。葬儀は色々お金がかかりますから・・・・・・」

「そっちの心配かよっ!!」


 こんなやり取りもこの村では当たり前に為っていた。

 一部の男達は嫉妬に燃え、後は依頼書に夢中で見ている。

 彼等は漸く冒険者としての一歩を踏み出したのだ。


 因みに迷宮の入り口は現在塞がれ鍵がかけられている。

 レイル達であるなら問題は無いが、今のこの村の冒険者達には荷が重いと判明したからである。

 この迷宮は非常に不安定であり、セラ達が探索中に上階層でとんでもなく強い魔物が出た事も頻繁にあり、本部の建設が終わるまで一時封鎖する事を余儀なくされた。

 しかし彼等は意外にしたたかで外部の冒険者達を引き入れ収入を増やす為と、探索を外部の冒険者達に丸投げするために敢てその情報を秘密とし、ついでに外注依頼が入ると知っていたから迷宮探索を中断し、危険を冒してまで迷宮に潜る必要性が無くなったのである。

 何より明日の生活費を稼がねばならないのだから、いつまでも迷宮だけにかまけている訳には行かなくなり、ついでにギルドとしての営業がようやく始まった。

 彼等が本腰を上げて村を改革する第一段階の始まりである。


「レイルさんの結婚云々は兎も角、如何しようかなぁ・・・僕の基準だと【怪鳥種クラウパの討伐】かな? 初心者の第一関門だよね」

「お前が話を振って置きながら流すのか、まぁ良いけどよ・・・・クラウパは駆け出しの時によく倒したなぁ~、比較的簡単に狩れるが、奴を探している時に絡んで来る小型魔獣が鬱陶しいんだよなぁ」

「こいつ雑食性だから畑を荒らして困っているらしいですねぇ、場所は・・・ミール村? 何処だろここは、知らないなぁ? 連続狩猟も出てるみたいだけど、こっちは中級者向けですね」

「この村から北東に約三日の所に在る村だな、森の中に在るから魔獣被害が頻繁に出されている。初心者が良く来ている村で結構繁盛してるぞ、街道から小道が続いてるから分かりやすい」

「う~~~ん・・・・フィオちゃんとマイアちゃんに聞いてみようかなぁ・・・ヴェイポスよりは楽だろうし・・・・・」

「ヴェイポスの方が楽じゃないか? あいつ飛ばねぇし・・・」

「えっ?」「んっ?」


 二人の意見が食違った。

 互いに思考を巡らせ困惑する。

 

「ちょっと待ってください・・・ヴェイポスは縄張りが広くて森中走りまわされますし、ヴェイグラプターが周りを固めているので狩るのには可成り面倒ですよ?」

「クラウパは直ぐに逃げ出しやがるし、森の小型魔獣が鬱陶しいのは何時もの事だろ? フィールドを駆けずり回るのも変わらねぇだろうし、頻繁に飛んで逃げるクラウパの方がメンドクねぇか?」

「ホワッツ!?」「ホワッツ!?」


 どうやら苦手と思う魔獣が違うと判った。

 セラは森中を走り回り直ぐに見失うヴェイポスが面倒と思い、レイルは飛んですぐ逃げるクラウパが面倒だと思っている。同じ冒険者でも互いの苦手としている魔獣が異なるのは仕方が無いのだが、お互いが信じられない様な目で互いを見ている。


「クラウパが飛ぶときに目暗ましをかまして叩き落とせば比較的に楽ですよ? 後は皆でフルボッコにすればいいんですし、後は逃げられないようにシビレさせれば楽に狩れます」

「それならヴェイポスも同じだろ? 罠に掛けたり状態異常を引き起こす攻撃を加えりゃいちころだろ? どう違うんだ? 寧ろ飛んで逃げないぶん比較的に樂だろ」

「あれっ?」「おやっ?」


 狩りの仕方が同じ様なモノなのに、なぜ個人でこうも食違うのかが分からない。

 結局は主観の問題なのだが、お互いがその事に気付かないでいた。


「ま、まぁ、この話は置いておきましょう。やる事は変わらない訳ですし・・・・」

「だな、どう狩るにしても重量級の武器で一撃必殺に限るのは変わらんし・・・」

「同感です」

「「おおっ!!」」


 初めて意見が合った。

 互いに重量級武器を使い熟す上に、武器その物に拘りを持っている。

 こう云った所では意見が合う様であった。


「んじゃ、とっとと契約してくっか! 先を越されちゃかなわんからな」

「中級と上級依頼なんてレイルさんと僕にしか出来ませんよ、誰も取りはしませんて」

「俺はまだ中級なんだがな・・・」

「見た所上級入口くらいの腕ですよ? ファイさんとミシェルさんは中級の中間て所でしょうか?」

「良く見てんだな・・・・上に行けそうか?」

「ファイさんは機動力と魔法を交えた攪乱を重視した方が良いですね、ミシェルさんは思い切って壁役も出来れば安定するのでしょうが・・・無茶ですかねぇ?」

「ミシェルを壁役っ!? 無茶だろ、どう考えても!」

「う~~~ん・・・イケると思うんですけどねぇ・・・・・」


 セラは何も根拠の無い事を言っている訳では無い。

 迷宮探査の折に、ミシェルは重量級武器を振り回していた。

 武器をメイスなどの鈍器に変え、大型の盾を持たせ魔術で身体を強化すれば大概の攻撃は受け止められると判断していたのだ。

 しかし普段のミシェルは戦闘には向かない穏やかな性格なので、前衛での戦闘は無茶にも思える。

 だがキレた時の彼女であれば前衛でも十分活躍できる。

 才能を生かせない悩ましい問題であった。


「・・・・確かに・・・だがやっぱり無茶だろ・・・」

「・・・・・惜しい人材ですね・・・・勿体無い・・・・」


 レイルに説明しつつもセラは首を傾げ悩んでいた。

 レイルはレイルで納得は出来てもやろうとは思わない。

 何だかんだでミシェルの事は大事にしているし、キレた彼女が前衛にいるのは正直怖い。

 セラの暴走並みにミシェルがキレる事に恐怖を感じていた。


「それじゃ僕はフィオちゃん達の所に行きますね、この依頼を受けるか相談したいし」

「あ・・あぁ、俺は手続きを済ませて来るわ・・・・ミシェルの前衛かぁ・・・・」


 何とも思いつめた表情を浮かべながら受付に行くレイルを送り、セラはフィオの家に戻るのであった。





「クラウパですか?・・・姉さん」

「おっきな鳥さんなんですよね?」

「うん、二人の実力なら狩れると思うんだけど・・・・どう?」


 家に戻ったセラは早速依頼の内容を二人に話していた。

 ついでに同じ村からの依頼で、クラウパの連続狩猟が出ているのでセラはそれを受ける気でいた。

 これなら同じフィールドに居ても二人を補佐する事も可能であり、ついでに素材も大量に受け取る事が出来る。

 フィオの装備は中級者の【ヴェイグシリーズ改】、だがマイアに至っては迷宮から拾ってきた装備であり、防御に関しては申し分が無いが、比較的動き辛い武具であった。

 ここいらで魔獣素材の装備を作っても構わないだろうと思い、素材集めを優先したのである。

 因みに下級冒険者の依頼料は3000ゴルダで、セラの受ける連続狩猟は倒した魔獣の数で変動する。

 倒せば倒した数だけ資金が上乗せされるが、最低でも二羽は狩らねばならないのである。

 だが所詮は中級依頼、セラはここいらで資金を稼ぐことを決めていた。

 マイアの装備の為に。


「フィオちゃん達が狩るのは縄張り争いから脱落した比較的弱いクラウパ、僕が狩るのは縄張り争いで勝った方を殲・・・もとい五・六羽ほど倒そうかと思います」

「・・・姉さん、今殲滅って言おうとしませんでしたか?」

「セラさん・・・狩り過ぎは駄目ですよ?」

「・・・・・分かってるよぅ・・・僕だって絶滅させたい訳じゃ無いし・・・・」


 生態系を崩す前に釘を指されてしまった。

 フィオは意外な事にこう言った知識に詳しい。

 冒険者でもある母親に話を聞いていたのかも知れない。


「それでどうする? 依頼受けてみる?」

「私は構いませんけど、フィオは?」

「やりますっ!! やらせてくださいっ!!」


 拳を握りやる気に満ちたフィオは凄く意気込んでいる。

 対するマイアも即とした後思考にふける。

 恐らく狩りの手順をシミュレートしているのであろう、何かを呟きながら真剣に狩る手法を計算している。中々に頼もしいが、狩りに絶対は無く失敗した時の対処まで口にしていた。

 二人でコンビを組み狩りに出るのはこれが初めてであり、彼女達がどういった結果を出すのか楽しみでもあった。


「決まりだね、じゃあ明日手続きをしよう。そろそろ大物を狙っても良い頃だし、狩りの注意点とかは依頼した村に着く間にレクチャーするよ。今日は準備を整えると良いよ」

「準備といいましても回復アイテムはかなり持っていますし、用意する物は特に無いですねぇ」

「うん、姉さんと錬金術で結構作りましたし、魔術も覚えましたから」

「・・・・・少し楽にしすぎかな?・・・いやいや無理は禁物、いざと為れば僕も出張るからいいか!」


 こうしてセラ達は村から出て初めての依頼を受ける事と為った。

 後にロカス村ギルドは冒険者の最高峰組織、【ローカスト・ギルド】と名を変える事と為る。

 他のギルドを取り込み、冒険者達の管理と依頼を一手に引き受け組織的な運営をするようになるのにはまだ先の話である。

 これはそんな組織が誕生する先駆けの話であり、始まりでもあった。

 数十年後ロカス村はこう呼ばれる事に為る、【迷宮都市ローカスト】と・・・・  

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