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 無自覚リア充に制裁を ~良い素材ゲットしました~  

「・・・・・これは凄い物ね・・・・」


 手にした物を見たイーネは、驚愕と興奮で言葉が出ない。


「とんでもねぇのが出て来たな・・・こいつはセラ達のモンだろ?」

「魔獣の心臓は、倒した者だけが独占できる。それがルールだ、冒険者、ましてや生粋の狩人だよセラちゃんは、これはあたし達には如何こうする権利なんかないよっ!!」

「【ソウル・ジェム】は丁度四つだな、デカいのはセラか・・・残り三つはレイル達か?」

「だろうな、しかし美味そうな心臓だな・・・俺も喰いてぇ・・・・」

「それは諦めな・・・あたしだって食べてみたいよっ!!」

「しかし・・・・良く倒せたよなこんな巨大魔獣・・・・」

「瀕死と聞いていたんだけどねぇ・・・本当にとんでもない子だねぇ・・・・」


【アムナグア】の解体は急ピッチで進み、漸く内臓などの臓器にまで手が回る様になった。

 毎日少しずつではあるが、村人達もこの最高の御馳走に有り付いている。

 美味なるその肉をかみ締める度に、彼等はこの魔獣を産み育てた大自然に感謝の祈りを捧げていた。

 それはほぼ毎日の様に・・・・・・




 迷宮から抜けると、そこは建築現場であった。

 精神的に多大なダメージを負ったセラ一行は、夕日で赤く染まる工事現場を見て呆然とした。

 粗方基礎工事が終わり、そこには足場が組まれ、建築資材も運び込まれている。

 異常なまでの迅速な対応に、セラも驚愕したのである。

 たった半日で何が有ったのだろうか?


「・・・・・何で既に基礎工事が此処まで進んでるんだろ・・・・」

「魔法を利用して石や岩なんかを加工するからじゃないですか? 石は【ロック・プレス】で造れますし、基礎工事も【アースグラインド】の応用で手早く済みますよ? 姉さん」


【ロック・プレス】は岩を生み出し上から落とす土属性の攻撃魔法である。

 主に煉瓦や石積み用の岩を作るのに使用される事が多い

 同じく【アースグラインド】は一定範囲の大地を揺らしたり、応用する事により地面を操作する事が可能であり、建築関係でも重宝されている。

 この世界は様々な分野で魔法が使用されていた。

 

「何故にマイアちゃんは、工事内容をそんなに詳しく知っているのさ・・・・・・」

「・・・・・・飯場でアルバイトをしてたから・・・・・基礎工事も少々・・・・」

「現場で働いてたのぉ!? て言うか、現場の戦力じゃん!!」

「・・・・・『うちに来ないかっ!』といい笑顔で組に勧誘されました・・・・」

「WA HOOU!! 予想に反してガテン系っ!?」

「肌を仕事焼けに曝す訳には行かないので断りましたが・・・・」

「・・・・女の子だもんねぇ、当然だね!!」

「通常の三倍の給料を出すとも言われましたけど・・・・」

「どんたけ腕がいいのさっ!? 基礎工事は建築の最初のカナメだよっ!!」

「ストライキで現場の職人が暴動起こして、人が少なくて困っていたとか・・・・」

「悪質な建築会社!? 就職しなくて正解だよっ、なにしたの!?」

「貴族の方が建築費用を未払いで、職人に給料を渡せない状態だったとか・・・・そのツケを町の住人に押し付けたとかで、貴族の屋敷に殴り込みに出向いたそうです」

「税金を湯水のように使っちゃ駄目じゃん!!」

「その貴族の方たちを捕らえて、断頭台送りにしたとか・・・怖いですね」

「・・・・・何か・・・どこか聞いたような・・・・・・」

「貴族の方は『我輩の辞書に納金の文字は無い!!』と言っていたとか、皆怒りますよね」

「そう来たか・・・何処かの国の革命みたいだなぁ・・・・・・お金は支払わないとねっ!!」

「死ぬ間際に『アイ・シャル・リターン・アイル・ビー・バック』と断末魔の声を上げたらしいですよ?」

「何処から帰って来る気なのさっ!! 怖いよ、マジでっ!!」

「夜な夜な、首の無い貴族の方が街を徘徊しているとか・・・・」

「マジで帰ってきちゃった!?」

「ロクデナシのお兄さんと、優秀な弟の兄弟が成敗したそうで、今は出ません」

「す~ぱ~なちゅらるっ!?」

「一部始終を街角の物陰から見ていました・・・メイド服で・・・・・」

「家政婦さんは見ちゃっていました!! マイアちゃんのメイド、みてぇ~~~~っ!!」

「ねっ、姉さんがお望みなら私は・・・・」

「OK、今直ぐ即行マッハで、GO HOME!! 僕らの常識、非常識!!」

「・・・・・元気だな・・・お前ら・・・」


 セラとマイアの漫才を見て、レイルも苦笑いをしていた。

 精神的な意味合いでの疲労を抱えていた筈が、ここに来てようやく回復してきたようだ、しかしダメージが抜けきらず彼等の足取りは重かった。

 どうでも良い事だがマイアも色々と苦労していたようだが、何故メイド服を着て街角に居たかは定かでは無い。一体何をしていたのやら・・・・・・


「まだ明るいですよねぇ、少し暇になっちゃいましたよ?」

「だな、宿に戻ればプロテインを強要されそうだしなぁ・・・」

「あの方も、あの行動が無ければよい人なのですが・・・・」

「ガチムチ、いやぁ~~~~~っ!!」


 早い時間に戻る事に為れば、それこそ筋肉至上説の餌食に為りかねない。

 其れだけは流石に避けたい所である。

 なにより精神的ダメージを再び味わう事は避けねばならなかった。


「解体小屋まで行きますか? 少しは時間がつぶれると思うけど・・・・」

「・・・・そう云えば、【アムナグア】の素材は貰ったが、【ソウル・ジェム】は貰ってなかったな」

「そう云えばそうでした。まぁ、アレだけの巨体ですから解体するのも難儀な事でしょう。素材は直ぐにでも剥ぎ取れますけど、心臓はねぇ・・・」

「体のど真ん中だしな、ところで【アムナグア】の装備を作るには幾ら掛かるんだ?」

「大体、六千四百七十万八千三百八十七ゴルダですけど? 無改造の場合ですけどね」

「・・・・・無茶苦茶大金じゃねぇか・・・オリハルコンでも売らねぇと採算取れねぇぞ?」

「改造費込みですと三倍近い値が付きますよ? レジェンド級に近い性能ですから」

「成程な・・・・どうやって稼ぐかねぇ・・・・」


 如何やら本気で【アムナグア】の装備【聖騎守護闘士の鎧 アムナルクシュナス・グランガード】を作る心算ようである。

 セラは所持しているが制作には素材が足りず、どうしても必要な【高純度天然ヱリクシル結晶】が手に入らないのだ。

 エステリア山脈火山地帯【アルテェム・ルクサイ】(古代神聖文字では神の憎悪の滾る山)と呼ばれ、その奥地の鉱脈でしか採掘する事が出来ず、しかも採掘する確率が極端に低い。

 採掘する事が出来れば奇跡とまで言われるほどなのだ、只出向いて採取するには危険が多く、また桁外れに強い魔獣が棲息している。

 余程の腕を持つ者でしか侵入する事すら許されず、入山する事が出来ても命の保証はどこにもない。

 其処まで行くためには【半魔族】の街【セロン】まで行かねばならず、ここから一月以上掛かるのである。今のレイルには荷が重い場所であった。


「フラク山脈地帯でも【オリハルコン】は採取できますよ? 【オルクニケ・エテルネム】まで行ければですけどね」

「・・・・・マジか?」

「永久凍土の大地ですけどね、ここからなら約二週間、【高純度天然ヱリクシル結晶】も手に入れる事が可能ですよ? 運が味方すればですけど・・・・魔獣も火山地帯よりはマシですしね」

「マジでか!?」

「装備を充実させないと死にますよ? 寒さを無効化する必要がありますし、何より町や村が無いんです、準備はしっかり揃えてひと月分が目安ですね・・・・あそこにはヤバい奴が棲息してますから」

「ヤバい奴? どんな奴なんだ?」

「【氷竜種 アクトボス】です」

「寄りにも寄って竜種かよ、強さはどれくらいだ?」

「レイルさんクラスが三十人で何とか・・・僕は一人で倒しましたけど、正直お薦めはしません」

「・・・・だろうな、そんな馬鹿お前だけで充分だ・・・・」

「ひどっ!? しょうがないじゃ無いですか・・それだけの人数だと分け前も平等にしなきゃいけませんし、ましてやそれで揉める様な事に為ったら最悪ですよ?」

「確かにな・・・・・」


 竜種とは他の魔獣とは一線の異なる格上の獣の総称である。

 圧倒的な体力と攻撃力を備え、魔法抵抗力も強く、また知能も高いうえに魔法も使う魔獣である。

 その究極の存在が五大龍王であり、【ヴェルグガゼル】はその頂点に君臨する無敵の存在であったりした。今はその見る影すらないが、全属性に耐性があり、その一撃はレギオンを組んだ冒険者達を悉く蹴散らして来た。正にチートの中のチートである。

 あまりに桁外れの強さ故に倒せた者も限られ、その装備もレアどころの騒ぎでは無い。

 そんな【龍王】よりも格は劣るが、竜種は一般の冒険者如きでは倒すのは不可能に近い。

 中級上位から最上級の冒険者でなければ歯が立たない程に手強い存在でる。

 誰もが一度は倒す事を夢見て、いざ対決すれば挫折を刻み込む恐るべき獣達であった。

 無論レイルも倒す事を目標としているのだが、未だ討伐依頼は出ていない。

 そもそもこの村にギルドが無い為依頼が来る事は無かった。

 だが、【アムナグア】の強襲から状況は一変し、近いうちに依頼が舞い込むように手配はしているのだ。レイルもその依頼の中に竜種討伐が有る事を期待していたりする。

 因みに【アムナグア】も陸竜種で立派な竜種の仲間であったりする。


「竜種ですか・・・正直に言えば戦いたくありませんね・・・私やファイには荷が重すぎます」

「・・・正直あたしもりたくないわよ、命が惜しいし・・・・」

「最弱の竜種もいますよ? この辺にも出没するかもしれません」

「マジか? どんな奴だ?」

「極楽鳥竜【ティルクパ】です! ぶっさいくな竜種ですけどね・・・・・」

「アレって怪鳥種じゃ無かったか?」

「怪鳥種が竜種に近い仲間なんですよ、寧ろ親戚? レイルさん達のレベルだと依頼は受けられます」

「装備はカッコいいんだけど、たちが悪いのよね・・・・あの鳥・・・・」

「ファイは観た事あんのか?」

「里の近くに良く出るのよ・・・昔襲われた事が有って、里の総力を挙げて倒したのよ・・・」

「大量繁殖しますからねぇ、アレ♪」

「・・・セラさん・・・なぜ楽しそうなのですか?」


 資金稼ぎには丁度良い等とはセラは口に出来なかった。

【ティルクパ】は弱くはあるが限りなく竜種に近い仲間である、見た目より獰猛で肉食でありエルフの里も襲われているのだ。

 意外な事に魔法抵抗力が強く、エルフにとっては厄介極まりない魔獣なのだ。

 当然ながら食われた犠牲者もいる訳であり、迂闊に無責任な事は言えない。

 時々妙に気を使う事を忘れないセラであった・・・・・

 もっとも口にしないだけで態度で分かるのだが、連続狩猟が大好きなセラである。


「アレに幾度も近くの村が襲われたわ、一頭くらいなら私でも倒せるけど、あそこまで数が増えると手に負えないのよ・・・本当・・・」

「そんで里も襲われたか・・・繁殖地なのかエルフの領地は?」

「実はそうなんです!! 他の種族を受け入れないから戦力が低いですし、何より魔法至上主義ですからねエルフは、だから体力が無いのに魔力がエルフを凌駕する【半神族】が目の敵にされるんです。

 その所為で自分達の住処が繁殖地に為っているんですから皮肉ですよねぇ、間引くにも奴等は魔法の抵抗力が強いですし、オマケに数が増える一方、その内エルフは絶滅するかもしれませんよ?」

「古代種族の血が濃いだけでは無いのですか? 他にも原因が有るなんて・・・」

「体力無いのに魔力は上、変にプライドが高いから迫害して溜飲を下げているんです。ついでに政治的不満の解消にもね、其処に覚醒なんて情報が入ればどうなるでしょうねぇ・・・・」


 傲慢な民族体質のエルフにとって、見下している相手が優れた能力を持っている事に激しい嫌悪感を持っていた。

 少しでも勝れたモノが有れば徹底的に迫害し潰す、そんな悪質な体勢が横行しているのだ。


「随分他人事のように言うな、オマエ・・・・・相談ぐらい乗ってやる気は無いのか?」

「セラにとってはエルフの事情は他人事なのよ、レイも言っていたでしょ? 本当に・・・

 あたしには頭が痛い問題だけど・・・・」

「ファイ・・・セラさん、何とかできないモノでしょうか?・・・・」

「僕が乗り込んで、長老衆をフルボッコにすれば目が覚めるんじゃない?」

「・・・・・【タイガー・マッスル】の様な犠牲者がエルフ族にも増える気がするのは俺の気のせいか? 血反吐を吐き、年寄り連中の首が変な方向に・・・・・・・」

「レイ、やめてぇえええええええっ!! 考えたくなぁ~いっ!!」

「ファイさん、やっちまいますかっ?」

「アンタは何でそんなに嬉しそうに言うのよっ!! お願いだから何もしないで・・・・・」

「・・・・・・・チッ!」

「今舌打ちしたわよねぇ、本気で殺る気だったのっ!?」

「敵には廻したくないですね、本当に・・・セラさんは恐ろし過ぎます・・・」


 今日の一幕でセラの非常識さがさらに浮き彫りに為った。

 桁外れの身体能力に格闘技能、死人が続出するのは目に見えている。

 迂闊にエルフの内情に加担させればどうなるか、想像するだに怖ろしい現実であり、そんな悪辣な手段だけは選択したくない。

 其処には悪夢しか見えてこないのだ。

 この問題は力尽くで収めてはならないとファイは考えていた。




「あっ、イーネさんだっ! イーネさ~~ん、只今帰りましたぁ」

「おや? フィオちゃん、今日は早いじゃないか、何か在ったのかい?」

「いえ、これと云って何も、迷宮の魔物さんが姿を変え始めていると言うだけです」

「それは其れで問題の様な気がするわね・・・時間つぶしって所か」

「凄い、何で判ったんですか?」

「ジョブはアレだし、セラちゃんは貞操の危機みたいだからねぇ、消去法で答えが出るのよ」

「ていそう? 何だかわかりませんけど凄いです!!」

「・・・・ホント天使ねフィオちゃん・・・」

「はぃい?」


 知らない事は幸せと言う事をイーネはこれほど羨ましく思った事は無い。

 ジョブの所為で筋肉至上主義に目覚めた外部の冒険者達、百合の集団に狙われているセラ、よくよく見れば非常識が満載の状態。

 無知なほど幸せな事は無いであろう、純粋な程世界に愛されていると思うであろう。

 この村の連中は明らかに何処かが非常識なのである、人間的に壊れている者もいる。

 レイルを見た瞬間に殺気を放つ連中も大勢いるのだから・・・・・

 イーネはため息を吐いた。


「まぁ、丁度良かったわ。セラちゃん達に渡したいものが有るからね」

「「「「「「渡したいモノ?」」」」」」

「そっ、じゃぁちょっと待ってて、今持ってくるから」


 イーネは其の儘解体小屋に姿を消した。


「何なのでしょうね、渡したい物って・・・」

「もしかして、【ソウル・ジェム】じゃねぇのか?」

「あっ、そうかも・・・・」

「ふむ・・・・そうなると改造できる訳か・・・・」

「「????」」


 フィオとマイアは彼等が何を言っているのかが分からない。

 冒険者としては重要かつ基本的な事が抜け落ちていたからだが、これ程濃いメンツが揃っているのだから基礎的なモノを忘れてしまっても仕方が無い。

 何せ毎日が馬鹿騒ぎの連続である、多少物忘れをしても仕方が有るまい。

 簡単に説明すれば【ソウル・ジェム】は、武器の基礎形態である【ガジェット・ロッド】を強化するために必要な素材である。【ガジェト・ロッド】はその名の通り杖の形をしているのだが、採掘した金属や魔獣の素材で強化する事により、強力な武器へと姿を変える基盤とも云うべき道具なのである。

【ガジェット・ロット】を金属で強化すれば攻撃力や耐久値が上がるのだが、保有魔力量を上げる為には【ソウル・ジェム】を組み込み、その【ソウル・ジェム】の持ち主(魔獣)の心臓を生で食べ血肉にしなければならない。何故心臓を食べるかは学者の間でも議論が続けられ今だに不明だが、魔獣が出現するようになってから今迄繰り返されてきた慣習なので誰も疑問には思わない。

 しかも心臓を食べなければ【ガジェット・ロット】に組み込まれた【ソウル・ジェム】が発動せず、せっかく強化しても魔力保有値が上がる事は無い。

 ついでに若干魔力が上がるのだから誠に不可思議な現象である。



「・・・・・とまぁ、そんな訳だよ。フィオちゃんもマイアちゃんもその内経験する事だよ」

「・・・・な、お料理して食べるんじゃないんですか? セラさん」

「生で食べるのですよ、な・ま・で」

「お腹壊したりしないんでしょうか? 姉さん」

「大丈夫なんじゃない? 今も凍結魔法を頻繁に掛け捲っているし」


 そう言い乍らセラは背後を振り返る。


 セラ達の背後には巨大な魔獣が横たわり、多くの人達が解体作業に勤しんでいた。

 ようやく半分くらいまで解体できたが、その作業はなかなか捗らず今も職人が集められている最中である。肉をブロックごとに切り分けて、重さを測り凍結魔法で凍らせて箱詰めし、記録してから各商家の馬車に乗せ、漸く出荷するのである。

 大概の魔獣であれば二~三日で解体し終えるが、如何せん今回は物が違い過ぎたのである。

 正直に言えば一生に有るかどうか分からない大仕事であった。

 更にギルド本部の建築に職人も押しかけているため、この村は混沌の坩堝とかしているのである。

 この村の冒険者達は治安維持に駆り出され、日を追うごとに大金が舞い込んで来る。

 この馬鹿騒ぎはあと数日は続くと思われ、ボイル達も商談に掛けずり回っているのだった。

 その背後では、あの薬が頻繁に使われる事に為るのだが、それは些細な問題である。

 時には犠牲を出してでも進まなければ為らない事も在るのだから・・・・・



「おまたせ、これが【ソウル・ジェム】と【アムナグア】の心臓よ」

「「「「「「でかっ!!」」」」」」


 大人一人分はある巨大な心臓に、水晶玉を連想させる様なひときわ大きな【ソウル・ジェム】が一つと握り拳大のサイズが三個、ついでに鋼殻や鱗などの素材が山盛り、開いた口が塞がらない。

 

「・・・・・心臓と【ソウル・ジェム】は良いとして、何で素材が? 量が多くないっすか?」

「う~~ん、もしかしてこの辺りの素材の価格が暴落しているとか? 【エルグラード皇国】に売るには量が多すぎて価値が下がるとか・・・・」

「セラちゃん、正解!! この分だと余りそうだから引き取ってくれると助かるのよねぇ」

「てことは、あたし達も装備を作れるって事ねっ!!」

「そうなりますね、皆でお揃いと云うのも良いかもしれません」

「・・・ちょっと照れるわね・・」

「ふふっ、そうですね」


『『『『『『死に腐れっ、リア充っ!! 爆ぜろっ!!』』』』』』


 セラを含むその場に居た男衆全員がレイルに向かって叫んだ。


「何でだよっ、俺が何をしたっ!!」

『『『『『『異端者に語る言葉は無いっ!! 制裁を受けろっ!!』』』』』』


 男衆達は黒い布製のマントを頭から被り、手にした巨大な鎌を構える。

 並々ならぬ殺意を放ち、レイルを包囲するように不気味に動き出した。

 全員が彼女いない歴が長く、独身も多い。

 そんな彼等は嫉妬に狂い、滔々実力行使へと発展したのだ。

 身の危険を察知したレイルは逃げようとするが・・・・・


「何処へ行くですか? レイルさん・・・・これから楽しい祭りですよ?」

「せ、セラ・・・お前もか・・・」


 天使の如く微笑みながら、地獄へ誘う最悪の魔王がそこに居た。


「皆の衆っ!! 異端審問じゃああああああああああっぁつ!!」

『『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!』』』』』

「何でだぁ――――――――――――――つ!!」


 彼らに理屈は通じない。

 ただ嫉妬に狂い、異端者に制裁を加える邪教徒と化していた。

 各々が手にした武器を振りかざし、本気でレイルを始末する気なのだ。

 その中心に居るのがセラなのだから始末に負えない。

 レイルの悪夢はこれから始まる。


『『『『『死にやがれっ、リア充っ!! 後の事は俺らに任せろっ!!』』』』』

「何の話だぁあああああああああああっ!!」


 異端審問は両者が疲れは果て、倒れるまで続いたという。

 セラは少し追いかけた後、ちゃっかり戻ってくるあたり悪質な先導者であった。

 カルト集団を作りながら、教祖はいつの間にか逃げて捕まらない、そんな悪辣さである。

 

 暫く嫉妬に狂った男達のレイル追走劇が暴徒と化し、巻き込まれた者達(主にカップル)は多大な迷惑をを被った。

彼等の狂気は止まらない。


 

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