ダンジョンへ行こう ~裁きと決意と暴走と~
何か今回ノリが悪かったです。
説明文ばかりになり困惑しています。
ストックがやばいかも・・・・
フィオの師匠となったセラは、取り敢えずダンジョンで基礎を鍛え様と考える。
フィオは確かに筋が良く、もの覚えも早いが、まだ幼い少女である。
無理して魔獣に挑んでも、返り討ちに為るのは目に見えていた。
少しずつ戦い方を覚え、資金を稼ぎながらを覚えて行くのがベストである。
そこはゲームと変わらない、だがダンジョンも決して安全な場所ではないのだ。
弱い魔物が出現するところに、行き成りとんでもなく強い敵が現れる事が有るからだ。
幸いフィオの装備は中級クラス、【ガジェット・ロット】も強力になり、早々手傷を負う事は無い。
身の熟しや、間合いの感覚を覚えるのには最適なのだ。
それにアイテムの素材が簡単に手に入る。
これを利用しない手は無い。
そんな訳で、セラとフィオはダンジョンに潜る準備を整えていた。
「フィオちゃん、準備は出来た?」
「はい、【ポーション】も持ちましたし、【傷薬】【マナポーション】も有ります準備完了しました!」
『張り切っておるのう。じゃがくれぐれも気をつける事じゃ、何が起こるか分からぬからのう」
「はい、ありがとうございます。ヴェルさん! 私、頑張ります!!」
弟子入りを果たし、フィオは今充実した気分であった。
まだ始ってすらいないのに、やる気に満ち溢れている。
これが只一緒に採取や狩りに行くだけなら楽なのだが、フィオを強くしなければ為らないのだ。
その重みがセラの肩に重く圧し掛かる。
とは言え、遣ると決めた以上は持てる知識をフル動員して、事に当たらなければ為らない。
これは、フィオの頼みなのだから。
「それじゃあ、行きましょうセラさん! Lts、ダンジョン!!です」
「・・・・・その言い方・・・どこで覚えたの・・?」
『我が教えた、楽しい時にはこう言うのだとのう』
「・・・・・何故だろう・・・ヴェルさんが、フィオちゃんに間違った常識を教えるのではと思うのわ」
『失礼なのじゃああっ!!』
ヴェルさんの御蔭で少し力が抜けたセラであった。
ヴェルさんは意外に癒し系なのかもしれない。
「んじゃ、行きますか! ダンジョンの魔物を倒しまくりツアーに!!」
セラ達はこうしてダンジョンへと向かう。
取り敢えず実戦であった。
「ふひっ、む、無茶を言わないで、ほ、欲しいんだな、ふひぃ!」
「何が無茶だ!! お前道具屋だろ、【ポーション】を有りっ丈だせっつってんだよ!!」
「ダンジョンが出たのよ、ここで行かないで何が冒険者よ!!」
「・・・ふ、どうやらお前もこの魔剣の餌食になりたいようだな・・」
「おっ? ロイスいたのか、お前もダンジョン狙いか?」
「・・・・・宿敵が・・俺とこの魔剣を呼んでいる・・・」
「何が魔剣よ、只の【ガジェット・ロット】じゃない・・・」
「んな事より、【ポーション】と【マナポーション】だ!! 売るのか!!売らねぇのか!!」
「ふひぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
セラがダンジョンを発見し、俄然やる気を出した村の若者達は、回復薬を求めてブッチの店に押しかけた。
彼等の狙いは、ダンジョン内部のお宝である。
彼等は集団で挑み、未知なるお宝をその手で掴もうと、命綱でもある回復薬を買いに来たのである。
しかしブッチは売るのを渋り、それにキレた彼等はブッチに掴み掛ったのだ。
既に狂戦士と化した彼らに、ブッチ最後の切り札を使う。
「ふ、ふひぃ、これ以上、ぶ、無礼な真似をしたら、【ポーション】売ってあげないんだな、み、皆困ればいいんだな、ふひぃ!」
「あぁん! 如何やら死ぬ覚悟が出来たようだな!!」
「【ポーション】貰って、死体はどこかに埋めましょうよ!!」
「くくく・・・愚かな選択をしたな、我が魔剣は貴様の血を欲している・・・・」
「どうせなら、他の回復薬を強制的に作らせて、それから始末すれば?」
『『『『『『それだあぁっ!!』』』』』』
「ふひいいいいいいいいいっ!?」
セラの時とは別の意味で効果が無かった。
嘗て同じ事をセラにも言った事が有るのだが、その時セラが錬金術師だとは知らなかった為、自ら墓穴を掘ったのだ、しかし今回は暴力にて窮地に立たされた。
彼等の眼は本気である。
このままでは自分は本気で殺される。
散々こき使われた挙句に、無残に殺されて埋められる。
「ふひいいいいいいっ! そ、そんなに【ポーション】が欲しければ、ぎ、銀色悪魔から、か、買えばいいんだな、ふひぃ!」
「銀色悪魔だあぁ? あぁ、先生の事か! 売ってくれっかな?」
「難しいな、冒険者には厳しいからな、けど買えるかも知れんが・・・・」
「【ポーション】のレシピ買った奴いたわね、そいつらからレシピ借りる?」
「そう言えば作ってたわよね、【ポーション】」
「俺達もレシピ買うか? 何か便利そうだ、節約にもなりそうだし」
「・・ふっ・・・時には、自らの手で何かを生み出さねば為らない事もある」
矛先を逸らす事が出来たと、ブッチは安堵の息を吐く。
だが・・・・・
「けど俺達が錬金術覚えたら、こいつどうなんだ?」
「お役御免だな、元々大した事が出来ない奴だし、先生に比べたらカスだよカス!」
「聞いた話じゃ、フィオちゃんに嫌がらせして喜んでいたらしいわよ? こ・い・つ」
「・・・・外道・・・死すべし・・・覚悟は出来たか・・・」
「最低ね、人の風上にも風下にも置けない奴、殺して埋めたらその土地死ぬんじゃない?」
「さっさと錬金術覚えて、こいつ追い出そうぜ! こいつ要らねぇ!」
『『『『『『異議なし!!』』』』』』
「その前に、作れる物は作って貰おうぜぇ! 埋めるのは後からでも出来る!!」
『『『『『『異議なし!!』』』』』』
「ふひいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
切り札は逆効果のようだった。
セラの威光は凄まじく、ブッチの浅はかな企み等、鼻で笑って一蹴する程の影響力を持っていた。
余りにも格が違い過ぎ、返って窮地に立たされてしまう。
ブッチは元々道具屋としての仕事にあまり熱意を持っておらず、普段から回復薬の売買をネタに高圧的に脅迫していたのだ。この村の若い衆は、それでも命綱的回復薬を作れるのが彼しか居ないと知っていたために、これまで我慢を続けていた。
だが其処に格上の錬金術師が現れればどうなるか。
縛り付けるモノの無くなった彼等に遠慮の文字はもうない。
如何やらセラに出会ってしまった事が、ロカス村の変態に引導を渡す結果と為りそうである。
最強と言われる存在は、そこに居るだけで多大な影響を与える様だ。
この変態の未来は暗い。
『さあ、働けこのゲス野郎、てめぇは最低の糞虫だ!! もし、そうで無いと言うなら、てめぇの足りない根性で俺達の欲望を満足させてみろ!! この、蛆にも劣る糞にたかるヘナチンの童貞野郎が・・』
「ふぅひいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
『『『『『『逃がす訳ねぇだろ、この糞野郎がああああああぁぁぁぁっ!!』』』』』』
道具屋の中から聞くに堪えない下品な、罵詈雑言が響き渡る。
ブッチには最早後は無かった。
商売は信用第一、そう言ったセラの言葉は真実であったのだ。
信用など要らないと言ったこの愚か者は、そのツケを払う事となる。
セラと云う規格外の存在は、まともに仕事をしない屑に断罪の剣となって降りかかるのであった。
変態の断末魔の声は、ロカス村に聞きたくも無いのに響いた。
『たっ、助けてなんだな! ふ、ふひいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!』
誰も助ける者等いなかった・・・・・
「よう、遅かったな、待っていたぜ!」
気楽に声を掛けて来たレイルは、何やら機嫌が良さそうだった。
「如何したんですかレイルさん、もしかしてダンジョンに潜るんですか?」
「そうなんだけどな、何分俺達は初めてなんでな、お前に色々と教えて貰おうと思ってな」
「それって、ダンジョンのパーティ戦ですか? 僕も人に教えるのは初めてなんですけど・・・」
「アンタ、まさか一人でダンジョンを攻略した何て言うんじゃないわよね、正直遣りそうだけど」
「有りますよ? 流石に手古摺りましたけど、遣ってやれない事は無かったですね」
「・・・ハァ・・私は諦めました、セラさんはこう云う方だと思った方が心の負担は少なくて済みます」
「・・・同感、何がこの子を此処までさせるのよ・・・・」
無論アイテム収集だが、そんな事知る由も無いファイとミシェルは、セラの非常識振りを考えないようにしたようだ。
何か有る度に一々驚いていたら身が持たないと悟ったのだろう、それは途ても無難な選択に思える。
彼女達も色々と染まって来たのだ、非常識に・・・・・
「早速行こうぜ! いやぁ、ダンジョン楽しみだぜ!」
『五人パーティであるか、一人レベルが低いが先ず先ずの編制じゃのう』
「一応フィオちゃんの訓練なんだけど、パーティ戦の方が効率も良いか!」
『じゃが、それ程下の階層に降りれぬぞ? 精々十階層が良い所じゃろ』
「良いんだよ、訓練なんだから」
「・・・・この声誰なんだよ!?」
そう云えば、レイルはヴェルさんの事を知らなかったと、今さら気付くセラであった。
【アムナグア】の解体は急ピッチで進められていた。
その横で数両の馬車が軒を連ね、【アムナグア】の素材や肉を積み込んでいる。
彼等は是からロカの街まで行き、商家にこの商品を売りに行くのである。
肉や素材はすでに売値の予想金額を出しており、かつてのように阿漕な手口でボッタクられる心配も無い。この【アムナグア】は、この村の救済をしてくれた恩人でもあった。
セラの話ではこの魔獣は知性を持ち、最後まで誇り高く死んで逝ったという。
村人達はこの魔獣に、返し切れないほどの感謝の念を感じていた。
この魔獣の前を通り過ぎる度に、誰もが手を合わせ冥福を祈ったのである。
「積み込みの準備はまだ終わらねぇのか! 早くしろ、昼前まではこいつをコルカにまで届けなきゃなんねぇんだ!! ちんたらしてやがったら埋めるぞ、お前らっ!!」
「もう少し待てっ!! 鋼殻が重すぎんだよ、しかもこの量だぞ、とてもじゃないが馬車が足りん!!」
「他にも馬車が在んだろ!! 全部持ってきやがれ、速度優先だ!! 出来るだけ多く街まで運ぶんだよぉ!! これから、もっと忙しくなんだからな!!」
「肉は残しとけよ? あの味は忘れられん、この機を逃したらもう御目に掛かる機会なんて無いんだからな」
「既に手は廻してある! 後は他の加工部の仕事だ、長期保存が可能なレシピも貰ったからな」
「早いわねぇ、流石ボイルだよう。あと十年若ければねぇ」
超大物魔獣の出荷はこれが初めてであった。
彼等は緊張と期待に身を震わせながらも、この最大級の恩恵に肖るのである。
見積もりでは途轍もない金額に為る、しかも借金や負債が一気に片付くだけでなく、村の整備にも資金を廻せる様に為るのだから、嫌が追うにも力が篭る。
今の彼等は幸運に恵まれていた。
「アンタ、少し落ち着いたら? 今からそんな調子じゃ持たないわよ?」
「そうは言うがな、どうしても力が入っちまうんだよ! 何分初めての事ばかりだからな」
「気持ちは分かるけど、是から長い街道を走り続けんのよ? 途中でばてたら如何すんのよ、何度も往復しなければならないのよ?」
「分かっちゃいるけど是ばかりはな、興奮してどうしようもねぇ!」
イーネはボイルの気持ちが良く分かっていた。
今までこの村を良くしようと、汗水流して働いてきたのだ。
その苦労がいまようやく報われようとしている。
セラと云う冒険者が訪れた幸運、【アムナグア】が襲撃して来た不運、その魔獣から与えられた恵みの好運、この数日で村の置かれた状況は一転した。
漸くこの村は軌道に乗り始めたのだ、しかも今度はダンジョンだ。
この村は信じられない勢いで成長しようとしていた。
「そういや、ロイスのバカは如何してんだ? 今朝は見掛けたんだが・・・・・」
「ダンジョンに潜る気みたいよ・・・・あの子も変な行動さえなければねぇ・・・」
ロイスはフィオの幼馴染であり、ボイルとイーネ二人の間に生まれた子供である。
しかし最近彼はおかしな本の影響で、その登場人物になり切ってしまった。
その奇行は余りにも痛く、この豪快な夫婦ですら頭を痛める程になっていた。
世間体を考えると恥じ以外の何物でもなく、他人の目から見ても恥ずかしい。
俗に云う、中二病であった。
「あいつ、将来部屋で転がり捲るぞ絶対に・・・・恥ずかしくて・・・」
「・・・いい加減に、目を覚まして欲しいわね・・・フィオちゃんですら引いてるのに・・・・」
「・・・そいつは不憫だなロイスの奴が・・・あいつフィオの事・・・・」
「知ってるわよ、まる分かりじゃない。けど、ドン引きされてるって知ったら・・・」
「恥ずかしくて表を歩けないな・・・・死んだなアイツ・・・」
「「・・・ハァ・・・」」
村の問題以上に、子供の教育の方が問題だった。
色々な問題を抱えている夫婦である。
「えい!!」
「せりゃぁ!!」
ダンジョン内部二階で、フィオとミシェルは其々芋虫の様なものを倒した。
倒された芋虫は砂となって消え、ドロップアイテムが残される。
一粒の結晶な物と蝶の羽である。
「【マナ結晶(小)】と【胡蝶の羽(左)】ですね、調合アイテムと素材アイテムです。【胡蝶の羽】はブローチを作ると少しだけ素早く動けるようになります」
「飾り職人が居ないと意味が無いわね、まぁ、売れるけど」
「しっかし、この魔物本当に生物じゃ無いのか? 何処から見ても生きているように見えるんだが」
レイルの疑問も頷ける。
この魔物とは言わば疑似生物、ロボットのようなものである。
生物と植物、更には鉱物などが組み合わさり生まれた、迷宮防衛システムの一つなのだ。
地脈から流れてくる魔力で動き、生物や植物の遺伝子情報より構築され、鉱物等で攻撃力や防御力が強化改良される事により、オリジナルである有機物生命を遥かに上回る能力を保持している。
また自己再生機構を保持し、元の情報を保存している核から情報を読み取り、破損個所を再構築するのである。その核がオリジナルを元に同じ形で再構築されたのが、ドロップアイテムとなって残るのである。偶に採取される【魔力結晶体】はそもそも異なる情報で無理に構築された魔物の中に、僅かに出来た歪に魔力が凝縮して、【魔力結晶体】が生成される。
これを求めて冒険差たちは迷宮へと足を踏み入れる。
再構築されたものが薬草を基盤としたものであるなら、当然に薬効成分を保有しており、純粋な魔力と手の付けられなくなった魔術式の影響により、何故か再構築された薬草は市販の薬草より効能が高ったりする。また獣の情報により構築された核は、他の情報と結合変質し、存在事態有り得ない生物の情報へと姿を変えたりする。武器や魔法薬などに加工が可能であり、専門の職業に持ち込めばかなり良い価格で取引されるのだ。
それが防衛魔道式が改良したものか、それとも只の偶然なのかは今だに解明されていない。
どちらにしても商人や冒険者、並びに錬金術師にはうれしい副作用に思われる。
しかしながらこの魔物、核が一つとは限らないのだ。
厄介な事に様々な能力を持つ魔物は、その分多くの核によって構成されその分強くなる。
さらに防衛プログラムが攻撃魔術式などを組み込み、魔法を使う個体も複数存在する。
レベルで管理されるゲームと違い、行き成り強力な魔物と出くわす事ものだある。
現実とゲームの違いは正にそこで、ハイレベルなほど難易度が高く、ムリゲーともクソゲーとも言える程の悪辣さであった。
お宝を狙うにはリスクが高過ぎる為、余程の訳ありかゴロツキの多くが冒険者を目指すのも頷ける。
正に命懸けなのである。
このダンジョンに関して多くの学者たちは可成りの議論を交わし、研究しているが未だに解明されていない。
ダンジョンの真実を解き明かすのは、もう少し後の時代からである。
無論セラも知らない、セラにとってダンジョンはアイテムの宝庫であり、早朝潜った時には知らないアイテムや装飾品などが多数手に入れている。
セラが浮れていたのはその為だ。
副職業【探検家】の能力で鑑定眼が在る為、それがどんな効能でどんなアイテムなのかが分かり、中途半端にゲームの能力が残っている事に首を傾げていた。
ヴェルさんの意見は、『どうせ、あの【暇神】が何か仕込んだのじゃろう。気にするでない、気にしたら所で理解など出来ぬ』との有り難いお言葉をいただいた。
尤も、知らないアイテムを手に入れ直ぐに忘れるあたり、セラも中々にイカレていた。
「魔獣は生物、魔物は疑似生物と考えていた方が良いですよ? どうせ理解など出来ないのですから、考えるだけ無駄です! そうヴェルさんは仰っていました」
「ヴェルさんなぁ、最強の魔獣が何でこんな事になってんだ? それこそ不思議なもんだぜ?」
『知らぬ、どうでも良い事じゃ。それよりも今楽しめるかが重要じゃ』
「前向き過ぎんだろ、まぁ賛成意見ではあるな。うじうじした処で如何にも為らんし」
『うむ、分かれば良いのじゃ』
レイルも最初は驚いた様だが、直ぐにヴェルさんを受け入れる辺り結構いい性格をしている。
順応が早い事は、それだけ状況の変化に強いという事だ。
此処まで迷宮を進みながらも、自分なりに対策を導き出している。
それだけ優れた冒険者なのだ、レイルパーティは。
「階層も特定のエリアから魔物が変わりますね、まるで別の部屋に入ったみたいにですが」
「そうだよなぁ、ブロックごとに異なる魔物、しかも強さが極端に違う」
「厄介よねぇ、うかつに違うエリアに入ったら、突然強い奴に出会う事になりそう」
「今の所は簡単に倒せるのが良いですね、でも凄く危ない気がします」
中堅と駆け出しの冒険者は、それぞれ思った事を言い合いながら、ダンジョンの構造を理解しようとしていた。
レイル達は以前にダンジョンに降りた事のある冒険者から、予め情報を得ていた為に、ダンジョンマップを作成しながら進んでいる。フィオもセラに言われてマップの作製をしているが、レイル達は出会った魔物の情報まで書き綴っていた事に驚き、真剣に彼等の技術を学ぼうと取り組んでいた。
「こうなると、突然魔法攻撃を受ける事も在りそうね」
「二十五階辺りで、行き成り魔法の集中砲火を受けましたねぇ。僕も焦りましたよ」
『アレは凄かったのう、中々の威力であった! まぁ、魔物は雑魚じゃったが』
『『『『行き成り集中砲火ぁ!?《ですか!?》』』』』
どうやら本当にそう云う事が有ると、彼等は真剣な表情になりに心を引き締める。
たった一つの油断から命を落とした冒険者を、レイルは何度も目にしている。
自分達もそうなる可能性があるのだ。
ましてやこの迷宮は、階層がしたに行くに吊れ脱出が困難になる。
集団規模での方が効率は良いが、大人数だと動きが制限され少人数だと孤立し易くなる。
悩み所の多いかなりの戦略が必要になるのだ、セラは例外であるが・・・・
「ダンジョンて侮れないんですねぇ、私だけでは無理ですよ」
「フィオはまだ駆け出しでしょ? 是から学んで行けばいいのよ」
「そうですよフィオさん、私達も最初は同じでしたから」
「それより食事にしませんか? もうお昼過ぎてると思うんですが」
『うむ、そうじゃのう。腹が減っては何とやらじゃ!』
「飯は何処で食うんだ? 喰い乍ら歩く分けにもいかんだろ」
「この先に魔物が出ない安全地帯が有ります。そこで良いんじゃないでしょうか」
『よく覚えているのう、そうと分かれば直ぐ行くのじゃ!』
「よっしゃあ!! 飯だ、飯!!」
「・・・・・あんたら・・・」
迷宮第二階層をマッピングしつつも彼等は食事をするべく、セーフティエリアらしき場所へと移動を開始する。
何故その様な場所が存在するのかは分からないが、彼等には有り難い事であった。
漸く荷物を積み込み終えたボイル達は、馬車に乗り込みゆっくりとした速度で移動を開始した。
可成りの量と重さを持つ為速度を上げる事が出来ず、ボイルは少し不満そうであった。
この分では帰りは日が暮れそうだと思いつつ、口に煙草をくわえ徐に火をつけた。
外面だけ見れば渋いダンディズム漂う漢なのだが、この村きってのスピード狂である。
村人全員がボイルの病気が出ない事を固唾を呑んで見守る。
「俺だって、何時も暴走している訳じゃねえぞ、何でそんなに信用しねぇんだよ」
「アンタが何時も暴走するからでしょ! そんなだから皆心配しているんでしょ!」
「ひでぇ、俺だってやるときゃ遣るんだよ!」
「そう言って、こないだも暴走してたじゃないさ! それをどうして信用されると?」
「うっ!?」
普段のボイルは兎も角、馬車に乗った彼は全く信用できない。
イーネがボイルを責める度、村人達は強く頷いていた。
ましてや今回の商品は、今回を逃せばあと百年は出回らない最大級の物である。
馬車一台でもその価値は計り知れない。
今ボイルにへまを遣らかされるのは非常に拙いのだ。
「分かってるって、俺だってこの大事な時に怪我何てしたかぁねぇ! 今日は安全運転だ」
「・・・アンタ・・今日は、てことは他の日は暴走するって事よね?・・・」
「大丈夫だって! 俺だってそんなにバカじゃねぇ! 多少の時間ぐらい我慢できらぁ」
「・・・ほんとだね? 破ったら殺すわよ?」
「おっ・・・・おう・・・」
イーネの剣幕に、念どころか釘まで刺され、流石のボイルもたじろいだ。
どこか怯えたように御者台に上がると手綱を握り、深呼吸をして村の仲間たちを見渡す。
「それじゃ行って来る、一生に一度の大仕事だ馬鹿な真似はしねぇよ」
「本当だね? 絶対だね? 信じているわよ・・・アンタ」
「おう、信用しろ! んじゃ行って来る!」
力強い声に、村の者達は全員頷く。
ボイルはゆっくりと馬車を走らせ、村の入り口と言える門へと進んでゆく。
やがて馬車は次第に速度を上げていき、門を潜る時には砂塵を巻き上げる暴走状態へと突入する。
『ヒィヤッ~~~ッハァッ!! こんな重さが何ぼのモンだぁっ!! 邪魔する奴はひき殺すぞっ!! イヤァ~~ッハァッ!!』
『『『『『『何が信用しろだ!! 馬鹿野郎おおおおおおおおおおおおっ!!』』』』』』
ボイルは筋金入りのバカだった。
馬車を動かした瞬間からハイテンションに突入し、約束すら忘れ去り風になった。
やがて先に出発した仲間すらぶち抜き、誰よりも早くロカの街に着いたのである。
この日、村に帰って来たボイルは、全員にフクロにされたのだった。
どこまで続く石積みの壁、同じ風景ばかりだと正直気が滅入るだろう。
だがそこを行く冒険者達は、笑合い軽る口を叩きながら前進し、群がる魔物を殲滅していた。
この階層の魔物は然程強くなく、次第に彼等のマップは埋め尽くされてゆく。
現在第三階層、短時間で探索を終える彼らの実力は、この階層の魔物程度では相手にならなかった。
レイルとセラは、魔物の群れに切り込むと瞬きする間もなく中央を分断し、打ち漏らした魔物は中衛のフィオとファイが倒して行く。その後ろからミシェルが援護する事により、目の前の魔物は次第に数を減らして行った。
彼等の実力からすればこの程度の魔物など楽勝なのだが、フィオの経験を積ませるという理由から、急遽この連携訓練が開始されたのだ。フィオは常に単独で行動するのが多かったのだが、このチームプレイはとても新鮮で真剣に取り組んではメモを取り、分からなければセラやレイル達に聞いて勉強する。
単独戦と集団戦ではその用途や柔軟性、効率性等の戦略の幅が広がり、フィオはしきりに感心している。
こう云った戦闘のノウハウは、口で言うよりも体に覚えさせた方が良く、フィオもその戦い方を真似ては自分の戦い方を見付けようとしていた。レイル達もフィオの筋の良さに感心し、二つ返事で引き受けてくれる辺り、中々人が良いと言えよう。
まぁ、レイル達にとっても連携の訓練目的もあるのだが、こう云った貴重な経験を重ねる事が出来るのは、セラにとっても有りがたかった。
冒険者の戦い方は人其々であり、自分に合ったスタイルを確立するには経験を重ねる事でしか学べず、セラとフィオだけでは如何しても偏りが出来てしまう。
多くの冒険者から学び、その上で自分に在った間合いやタイミングの取り方などを覚えて行かねばならない。今のフィオはとても貴重な経験を積んでいた。
「・・・・まぁ、そんな訳でダンジョン攻略に必要なのは、体力と魔力の自己管理が出来るか否かなんだよ! その他にも回復アイテムの管理や仲間の体調管理なども必要だね、今言った事は基本的な事だから覚えておくといいよ、他にもマップ管理等も有るけどコレは仲間を増やして分担すれば効率化できる。
今は少人数だから自己管理に集中した方が良いかな? 何か質問は?」
「階層が下に行くほど脱出が困難になるんだろ? アイテムの管理だけじゃ追いつかない場合はどうすんだ? 例えば回復系アイテムが底をついた時とか・・・」
「そうならない様にギルドを作るんですよ! 一定の各階層に其々部隊を配置してアイテムの供給を絶やさない、そう云った組織的行動をとる事により被害を最小限に抑える事が出来ます」
現在ダンジョン攻略に於けるセラの講義が行われていた、セ-フティゾーンで休憩をしつつその合間に必要事項なども話し合っていたのだが、レイル達からの質問につい熱が入り現在に至る。
現在第五階層、殆どのマップを埋め後少しで攻略できる状況であった。
「ギルドって奴を作るか、考えた事も無かったな、確かにそれなら効率的だし被害も少ない」
「ですが、それには人材の確保が最優先ですね。勝手な行動をする人たちが居たら瓦解するかもしれません、それに実力に合わせた編成が必要です」
「そうねぇ、実力が有り人格も真面、中々いないわよ? そんな人・・・」
「村の人達を鍛えれば良いんじゃないでしょうか? 其れなりの実力が有りますし、装備以外はどうにかなるでしょう」
「分け前はどうするんだ? 上の連中ばかり美味しい思いをしていたら、其れこそ瓦解するぞ?」
「自分の装備以外の装備、装飾品ですが是はギルドその物が管理して、必要に応じて貸し与えるしかないですね。終わったら返してもらい、お金の分配はランクに合わせた金額を払います」
「最前線で戦うのが最も高くなりそうね、降りる階層が低いほど給料も高くなる。競争を促す訳ね!」
「他にも村や町などの依頼を受けて、資金稼ぎをすればいいんです! 要らないアイテムを売って」
『『『なるほど!!』』』
レイル達は、今迄自分たちの力だけで上り詰めた腕利きの冒険者である。
気の合う仲間を増やそうと考えていたが、組織を作ると云う考えには至らなかった。
セラの考え方は、まさに目から鱗の話である。
「他に必要な事は無いの? 重要な事とか必要な人材の条件とか」
「僕はフリーでしたから其処までは、でも専属の職人がいると助かりますよね、装飾とか衣類とか装備とかの専門職がいると捗りますよ?」
「特殊な力を持つ装飾や衣類ですか、それに装備・・・鍛冶職人遣り様によっては村も活性化しますよね、素晴らしい提案です!」
「ついでにダンジョンも管理運営すれば、もっと稼げますよ?」
「迷宮を独り占めするのか? 流石にそいつは拙いだろ」
「違いますよ、ギルド以外の冒険者から迷宮を利用するたび一人十ゴルタ頂ます。千人集まればいくらになるでしょう? 冒険者の命は自己責任です、そのため死亡しても責任を被らないように契約書を作成して」
レイル達は顔を見合わせ、セラの話がとんでもなく魅力的な話に思えた。
迷宮に入る為に契約書と入場料を取り、更には自分達でも稼ぐことでこの村の経済効果を跳ね上げる。 村も潤い、ギルドも潤い、村の住人も潤う。
可成り画期的な商売の構成図であった。
「いっそ、この村其の物をギルドにしてしまえば、凄く楽なんですよね。手間が省けるし」
「それは良い考えよね! 村の住民全員が恩恵にあずかれるわ!!」
「僕の意見としては、村の人達はギルドの役職について貰わないといけないと思います」
「そらまた何でだ?」
「働かない人にもお金を廻す気ですか? 特にあのゲスデブ!! 奴が何もしないでのうのうと生きているなど、許せるものじゃ無いですよ!!」
「「ああ! なるほど!!」」
ブッチもまさかダンジョンの階層で、自分を追い詰める悪だくみが計画されているなど、夢にも思わないだろう。
こうして彼の包囲網が、次第に形作られていった。
「そろそろ引き上げた方が良いですね、フィオさんの限界が近いですから」
『そうじゃのう、それに、お主達も野営の準備などしてはおるまいて』
「そうだね、今日はこの辺にして撤収しますか!」
「まぁ、フィオも俺達も迷宮は初めてだしな、この辺にしといて明日からじっくりと探索するか」
「おなかも空いて来た事だし、地上に上がる頃には暗くなっているわよ?」
「すみません、まだ皆さんみたいに体力が無くて・・・」
「違うよフィオちゃん、冒険者も休めるときには休んで措かないと、無理してもいい結果は出ないからね」
恐縮するフィオを宥めつつ、一行は地上へと戻る道を行く。
ダンジョン探索はまだ始まったばかり、焦る必要などないのだ。
彼等は明日の予定を話し合いながら、魔物を蹴散らし返ってゆくのだった。
アイテムを拾う事も忘れずに・・・・・
「生意気なんだよこの貧弱が!! 魔獣を倒せねぇ奴が粋がってんじゃねぇ!!」
男に蹴り飛ばされ、フード付きのコートを被った少女は酒場から叩き出された。
先程までこの少女は、この男達とパーティで魔獣退治をしていた。
だが、魔獣退治も終わりいざ依頼金の分け前を分け合う時になって、この男たちはそれを拒否してきたのだ。
少女にとってはいつもの事だった。
この男達は最初から利用する積もりで、自分に声を掛けて来たのだ。
少女が誇れるのは人並み外れた魔力しかない。
そして彼女はそれに磨きをかけ、更に強い魔力を手に入れたのである。
彼女に出来る事と言えば、魔法で援護する事だけである。
その為彼女は、【マジック・スクロール】を自分の稼ぎで買える物だけ買い漁り続けた。
実力で言えば援護能力では他の種族を超えるものと為ったのだが、体力面では如何しても遥かに劣ってしまう。その結果、援護能力では他を圧倒する強さを持ちながら、なぜこの様な事になっていると言えば、少女には前線で戦う力が無い為、どうしても軽くみられる。
冒険者は未だに力重視の世界なのである。
人より体力面で劣る彼女は、どうしてもこの様な事態に為り易い、亭の良い便利屋扱いになっていた。
それでも冒険者続けているのは、彼女には何も無いからである。
両親にでさえ捨てられた彼女は孤児院で育ち、そこを抜け出しこの世界に足を踏み入れた。
それから誰も信じずに今まで生きて来たのである。
彼女にとって周りは敵ばかりなのだ。
そう、この日までは・・・・・
「援護しか出来ねぇ屑が生意気に金を欲しがんじゃねぇよ! クソガキが!!」
「おい、おい、ガキとは言え女だぜぇ? あと数年もすれば良い女に為るぜぇ是はぁ!」
「そん時は、たぷり可愛がってやるさ! だが今はションベンくせぇ、只の餓鬼だ!」
「ヒィヒッ! 違いねぇ、ガキには興味ねぇなっ!!」
『うっせぇぞっ、ゴロツキが!! 折角の美味い酒が拙くなる、他所でやれ!!』
突然横から喧嘩腰の鋭いヤジが飛ぶ。
「ああっ、誰だ他人の問題に口出しする奴は!! 俺達を誰だと思ってんだ?」
「知らねぇよ、んなもん! 只のゴロツキじゃねぇか、それとも只の酔っ払いか?」
「んだとコラ!! やんのかぁコラッ!!」
冒険者の三人が立ち上がると、ヤジを飛ばした男とその仲間が起ち上がる。
数の上では冒険者達が負けているが、ヤジを飛ばした方の男達は全員一般人のように思える。
しかし彼等の腰には、【ガジェット・ロット】が吊り下げられていた。
明らかに只者ではない。
剣呑とした空気が酒場を漂い始め、誰もが固唾を呑んで見守る。
この緊迫した場面で、ヤジを飛ばした男が切り出す・・・・・
「お前ら・・・・一ついいか・・・・・」
「・・・何だ・・・命乞いなら早くいいな! 聞いて遣っからよ・・・」
「んじゃ、遠慮なく・・・頭長げえええぇっ!! 顎が長げえええぇっ!! ケツでけえええぇっ!!」
『『『『『『良くぞ、言ってくれましたああああああっ!!』』』』』』
男の声に、酒場にいたゴロツキ達は声を上げて賛同する。
三人の冒険者達は、確かにとんでもなく頭や顎が長く、尻もデカかったのだ。
躰は普通なのに、一部だけが人として不自然極るぐらいに。
『『『『『『ブハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』』』』』』
「無理だ・・ぶふっ・・・シリアス無理・・・・ブハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
「・・・・なんだよ・・ぐふっ・・・あれ本当に・・・人間か!?・・・・くははははははははつ!!」
「ひひっ・・ダメだ・・死ぬ・・・笑い死ぬ・・・・・げははははははははははははははっ!!」
誰もがテーブルを叩き、三人の冒険者を笑い飛ばす。
三人は身を震わせながら赤面していた。
如何やらコンプレックスを持っていたようで、殆ど涙目である。
酒場の連中も笑いを堪えていたのだろう、我慢していたものが一気に堰を切る様に大爆笑である。
三人は身を縮めるように退散してゆく。
『『『『『『ぎゃはははははははははははははははははははははははははははっ!!!!』』』』』』
彼等が出て行った後も、この爆笑はやむ気配が無かった。
事の成り行きを見ていた少女は、ただ茫然としていた。
「嬢ちゃん、怪我は無かったかい? 手酷く蹴られたようだが」
「ないわ、どうせいつもの事だし・・・」
「何時もあんなかよ!? そいつはつれぇな」
「別に、もう慣れたわよ。あんな連中の相手は」
野次を飛ばした男は顎に手を当てしばし考える。
そして何か名案でも浮かんだかのように手を叩き、少女に話しかけた。
「おめぇ、冒険者だろ? 何なら俺達の村に来るか?」
「何でそんな事言うのよ、何か企んでる?」
「実はな、今朝方面白いものが見つかってな、冒険者の手が足りねぇんだよ」
「・・・・・面白いもの?」
少女は訝しげにも興味をひかれた。
「まだ内緒だがな、ダンジョンだ」
「だ、ダンジョン!?」
「声が大きい、まだ村は多くの者を受け入れる状態じゃねぇ、だが腕利きなら数人いても構わんだろ」
「上前はどうするの? 村で山分け? あたしには貰えるの?」
「今は調査段階なんだが、最強の冒険者が来ているからな、そいつの話を聞いてからだな」
「最強の冒険者?」
段々と胡散臭くなって来る。
ダンジョンが在るのなら真っ先に宣伝するべきだと思う。
そうすれば多くの人と金がその村に舞い込むのだ、それを躊躇するなんておかしい。
少女はそう考えた。
「悪いけど、他を当たって」
「あっ、おい、ちょっと待てって!」
男の手がコートに触れる。
「触らないで!!」
素早く避けた積もりだが、男の手に引っ掛かりフードが外れてしまう。
少女の銀色の髪が窓から零れる光で輝いた。
男が息を呑む。
「・・・【半神族】・・・」
「・・・・だから何よ・・・・・」
「ぷっ・・・・くははははははははははははははっ!! こいつは良い、セラの奴どんな顔すっかな!」
突然笑い出す男に、少女は困惑する。
しきりに笑い続けた男は、楽しそうに少女に話しかける。
「おめぇ、まだ覚醒していねぇだろ?」
「覚醒?」
「【半神族】は一定の強さに成長すると、突然莫迦みたいに強くなるらしぜ?」
「そ、そんな話聞いた事も無いわ! どうゆう事よ!!」
「俺も話を又聞きしただけで良くは知らん、本人に聞けばいいじゃねぇか」
『本人に聞けばいい』、言葉の意味が分からない。
だが、この男は自分が強くなる方法を知っている。
そして、又聞きしたと言ったのだ、その言葉の意味するところは・・・・・
「アンタの村にいるのね、【覚醒】した【半神族】が!!」
「ああ、いるぜ。最強の冒険者がな! おめぇ、会いたくねぇか?」
「な、何でそいつが最強何て言えるのよ、調べた訳でも無いのに!」
男の話を鵜呑みにする訳には行かなかった。
いつもそれで騙されてきたのだ、慎重に行かねばならない。
少女は警戒を解かない。
男は頭を掻きながら、呆れるように話す。
「そいつが、【アムナグア】を倒したんだよ、一対一で、中堅の冒険者が足止めすら出来なかったのにな」
「なあっ!? 信じられるわけないでしょ、災害指定級の魔獣じゃない!!」
「やっぱそう思うよなぁ、見ていた俺らも正直信じられなかった・・・」
「あんな魔獣を、どうやったら倒せるっていうのよ!!」
「普通に戦っていたぜ? 最後は【ディストラクション・バースト】と【エアバースト・ブレス】とのガチンコ勝負で、競り勝ちやがった」
「ディスト・・・・【砲剣】使いなの? そいつ」
「ああ、そいつがダンジョンを見付けやがって、人手が足りねぇんだ」
驚愕物の話だった。
だがその話が本当だとすれば、自分はもっと強くなれる。
少女の目が真剣なモノへと変わった。
「いくわ、あんたの村に、そして同族に会う」
「決まりだな、馬車がこの先に止めてある、乗って行きな! そう云や、おめぇの名前聞いてなかったな?」
「マイアよ、あんたは?」
「ボイルだ、宜しくな嬢ちゃん」
少女は足を進める。
例えそれが悪魔の誘いでも、地獄への道でも構わなかった。
自分には最初から何もない、ならどこに行った所で何も変わらない。
強くなるという決意を胸にマイアは進む道を選んだ。
「うわあああああああああん!! とめてええええええええええええええっ!!」
「イヤァ~~ッハァッ!! ワリィな嬢ちゃん、早く帰らねぇと女房に殺されんだ!! ヒャッハァッ!!」
「うえええええええええええええええええん!! いっそ、殺してえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
爆走する馬車の中でマイアは泣き叫んでいた。
ボイルのこの病気を知らなかったとはいえ、余にも酷い試練。
・・・・・少女の選んだ道は地獄だった。
折り返し地点を過ぎた所で、燃え尽きそうです。
話をつながりを考えると、どれも今一な気が・・・
疲れているのだろうか。
この回を読んでくれた方 並びにお気にいり登録をされた方
誠にありがとうございます。
とても感謝しております。
どうも最近、話が今一になりかけているみたいで、困惑気味の毎日。
如何にか面白くならないかと、頭をひねりながら書いています。
何とかひと波乱興したい。




