第40話
交代要員に見張りを引継ぎ、ぼくたちは重い足を引きずってキララの様子を見に行った。
彼女は静かに眠り続けていた。周りの喧騒を少しも気にしていなかった。彼女は仰向けになって、寝返りも打たずに規則正しく寝息を立てる。そうしているとまるで人間には見えなかった。精巧に造られた人形のような、ひとつの完成された美があった。
世話をしてくれている女性に聞くと、キララ以外の子も一向に目を覚まさないそうだ。頭上の黒点と連動して何らかの変化があるのでは、と睨んでいたぼくは肩透かしだった。
食事も水も摂らずに眠り続ける子供たち。彼らに何が起こっているのかはわからないけれど、この<街>を死守しないと彼らも殺されてしまうだろう。<絆教>は子供であっても、「回帰」の例外とはしないのだ。
キララを守るのだと思うと、身体の底から力が湧いてくる気がした。空っぽになっていたぼくの中を、熱い血潮が巡っていく感覚がした。どうにか戦いを続けることができそうだった。
世話役の女性たちは後方要員なので、戦況がよくわかっていないようだった。「敵はどうなってるんですか?」と訊ねてくる彼女たちに、ぼくは「最初の攻撃は防げたよ」と当たり障りない情報を与えた。
あの地獄みたいな惨状を彼女たちは知りたいわけではないだろう。ならば結果だけで構わないはずだ。
敵の第一波をやり過ごした直後というだけあって、この場に訪れる者はいない。殆どが食事をかき込んですぐに寝落ちする。体力的にも精神的にも困憊した住人たちが、通路の至る所でいびきを立てていた。
ぼくとナズナはそれらを避けながら進んだ。グラウンドに入ってすぐの場所で炊き出しが行われており、蒸かし芋と味噌汁が振舞われていた。その中にはミヤコの姿があった。
ぼくたちは自分のぶんを受け取って黙々と食事をした。空腹感はなかったけれど、一度口に入れるとあっという間に食べ尽くしてしまった。感じていなかっただけで、実際のところ、身体は非常に空腹であったのかもしれない。
いい具合に腹が満たされ、ナズナとふたりで夢の船を漕いでいると、ミヤコが傍にやってきた。彼女は住人たちに話がもれないよう周囲を確認する。あまり聞かれたくない話をするようだ。
「疲れてるところ悪いわね。少しいいかしら」と彼女は言った。
「構わないよ」とぼくは答えた。「疲れてるのはみんな一緒だろ? 戦いの後に炊き出しを手伝うなんて、君もよくやるよ、本当に」
「わたしの場合は途中で交代して貰ったから……。正直、最後まであの場にいたら参ってたと思うわ」
ぼくは神妙に頷いた。ぼくとナズナはずっとぶっ続けで戦っていたわけではあるが、後のことを考えてみると、この選択はあまり賢いものではなかった。まだ戦闘は続くだろうから、ここで行動不能になるのはいただけない。うまくローテーションを組んで、長く動けるのが好ましかった。
籠城戦は初めてのことなので、そこら辺のさじ加減が今ひとつだった。いくら精力的に働いても、自分の身体の管理ができない者は結果的に失格だろう。自分どころか、他人にまで迷惑をかけてしまうこともあり得るのだ。
「これは、みんなに食事を配ってて感じたことなんだけど」とミヤコは前置きした。「かなり士気が落ち込んでるようなのよ。あんな目にあったのだから仕方のないことなんでしょうけど、まずくないかしら?」
「確かに、それはまずい」とぼくは言った。
こちらの損害は肉体的なものよりも精神的なものに集中している。我々は自らの意志でないにしろ、殺戮の引き金を引いたようなものだ。人間の顔面に向かって石を投げつけ、殺した。それは大きなショックだったはずだ。
もうあんなことはしたくない。戦いたくはないと考えても不思議ではなかった。
「こちらの人的被害はどうなってるの?」
「移動中や戦闘中に怪我をした者を抜かせば、車の体当たりの時に落下した5名ね」
5人の命か、とぼくは顔も知らない犠牲者のことを考えた。その犠牲が多いと考えるか少ないと考えるか。我々が<絆教>に与えた損害に比べれば、遥かに少ないのだろうが。
言い方は悪いかもしれないけれど、このくらいならば微々たる損害だった。戦闘継続に支障はないはずだ。それゆえに住人の中には再度の防衛をサボタージュする者が出ても不思議ではなかった。
状況に余裕がある場合、「自分くらいは……」と考える人間が出てくる。そういう者がひとり現れれば、後はなし崩し的に同調するのが日本人である。
元々住人たちは、はっきりとした危機感をもって望んでいるわけではない。そこに衝撃的な経験をすれば、ぽっきりと心が折れてしまうのも無理はなかった。
「何かしら対策を練らないといけないんじゃないか」
「具体的には?」
「例えば、亡くなった5名の犠牲者を強調して、弔い合戦だと戦意の向上をはかるとか。今はみんなくたくたで戦意はガタ落ちだ。そういう時にこそリーダーが前面に出てみんなを鼓舞しなきゃならない。それはイオリと君の役目だ」
精神というのは天候にも左右される。現在は太陽が異常をきたし、常に薄暗くなっている。こんな環境では不安もいっそう募るだろう。
「場内放送を使うというのはどうかな? それなら、わざわざ一箇所に集める必要もない」
「でも、それじゃあ、相手にも聞こえちゃうんじゃない?」
「聞こえるかもしれないけど、別に悪いことにはならないはずだよ。こちらの戦意が健在であることを示せば示威にもなる。しんと静まって疲れ切った空気を漂わせていれば、そこれこそ好機だと見られかねない」
「確かに、そうかもしれないわね」
ミヤコは腕を組んで今の案を検討していた。現在は小康状態が続いているものの、昨日と同じならば夕方までには侵攻が再会されるはずだ。その前にひとつ演説でもして貰うべきだった。
彼女は「よし」と納得した様子で、後でイオリに演説の件を提案すると言った。もう少ししたら彼も休憩に入るから、その時にでも内容を詰めるという。ぼくも協力を要請されたので、手伝うことになった。
その後、イオリを交えて演説内容を考えた。
まず犠牲になった5名のことを告げ、彼らの死を無駄にしないためにも抵抗を続けなければならないこと。敵の侵攻はこれからいっそう激しさを増すであろうこと。我々の抵抗は自衛のためのやむを得ない行為であること。それらを何度も強調した。
そして信者たちを人間扱いしない「同志」を槍玉に上げ、彼は決して許されないと戦意を煽った。明確な敵がいた方が効果的だからだ。
これらの内容を含んだ演説はイオリによって場内放送された。住人たちはそれを真摯に聞いていた。聴き終わった後、仲間内で「殺されるわけにはいかないよな」と確かめ合っている姿が見受けられた。イオリの演説はある程度の効果があったようだった。
一応の成果が見られたので、我々は一息ついて仮眠を取ることにした。これから夜通しで防衛しなければならないことを考えると、今のうちにできるだけ寝ておく必要があった。
後方要員が見張りに付き、目を皿にして警戒している間、我々は束の間の安息を貪った。いくら寝ても寝足りないのはわかっていてけれど、意識の闇に落ち込んでいる間だけは辛い現実から離れられる。ある種の逃避とも言えなくはなかった。
我々を眠りから引き上げたのはけたたましいサイレンの音だった。その音に飛び起きた我々は、続いて腹の底から響く爆発音を聞いた。暗闇が一瞬でオレンジに色づいた。黒々とした煙が立ち上り、嫌な臭いが漂ってきた。
右往左往する住人たちを押しのけ、持ち場へ急ぐぼくとナズナの目の前で、再び爆音が轟いた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
後方要員で固められていたせいで、現場にいた人間に事情を訊いてもまともに答えられる者がいない。混乱し、錯乱している者が殆どであり、何人もの人間にあたってようやく事情がわかった。
最初、相手は僅かな人数で現れたために、その場の責任者は偵察だと思ったらしい。松明を手に、間に合わせで造ったと思われる盾を携えていた。威嚇のために石を投げつけると、相手は盾を用いてそれを防いだそうだ。
しばらくこちらをうかがう行動を続け、後方には人影がなかったので、敵襲サイレンは鳴らさなかった。
何度かそういう小競り合いが行われ、そのまま帰るかと思われたのだが、一瞬の隙を狙われて接近を許してしまった。するとその相手は、あろうことか放置されていた自動車に火を付けたのだそうだ。
それがあの爆発である。規模がかなり大きいので、元々可燃物を積み込んでいた可能性がある。
3台の自動車は次々に爆破された。現在の火事はそのせいだった。
門は爆発の影響で歪んでいた。破壊されることはなかったようだが、上部に向かって変形のために隙間ができてしまっていた。ただちにそこから侵入されることはないとしても、放置するのは望ましくない。
爆発で何人も落下したと叫んでいる者がいる。しかしながら、確認しようにも火の手が大き過ぎて、下を覗き込むことができなかった。門に沿うように炎の柱が立ち上っており、我々の位置にまで火の粉が飛んできている。
昼間のように明るくなった現場が火の手の大きさを物語っていた。
イオリたちは消火を検討しているようだったが、そうしようにも手段がなかった。放水すると貴重な水が失くなり、籠城そのものが瓦解してしまう。飲料水や生活用水を極限まで切り詰めている現在、水の消費は許可できるものではなかった。
大量の土砂を被せる方法も考えられたが、ここまで運ぶのにかなりの手間がかかる上、グラウンドは固められているので掘り起こす必要もある。重機がなければとてもではないが実現できそうにもない。
結局、球場内の消化器を集めて鎮火する案に落ち着いた。
イオリは叫ぶように指示を出した。「怪我人の救助は女性たちに、前衛で防衛する者以外は場内を走り回って消火器を探してくるんだ! 残りは落下した者の援護と防衛に専念する!」
3度の爆発によって落下してしまった者の生き残りが助けを求めていた。昨日と異なり、コンクリートの地面は死体で覆い尽くされている。それがクッションになって一命を取り留めた者がいたのだ。最初に火を付けた信者は爆発に巻き込まれて死亡しており、彼らの近くには敵はいないものの、闇の向こうからは不気味な足音が近づいてきていた。
門の上部から援護しようとすると、自然と身を乗り出す形になる。けれども、立ち昇る炎のせいでそれができなくなっていた。炎が途切れるのは門中央からかなり寄った部分だった。そこからでは満足に援護ができない。
ひとつ、ふたつ、と消火器が届けられる。イオリたちはそれらを炎に向かって放射するが、距離が開き過ぎていることや火の手が大き過ぎることもあって効果は薄い。大量の消化器を一斉放射しなければ鎮火するのは不可能だった。
そうして手間取っているうちに<絆教>が目の前まで迫っていた。
助けを待っていた者たちが間近に迫った敵に錯乱し、逃げ出していく。信者たちはそれらの者を執拗に追い立て殺していった。仲間を助けることができず、イオリたちは悔しげに歯を噛み締める。
昨日の一戦に学んだのか、今回は盾を装備している信者が多い。ひとり用のものから、トタン屋根を改造した大型のものまである。それらを掲げ、ゆっくりと敵はにじり寄ってくる。
我々は仲間を殺られた恨みもあって石を投げ続けるが、相手の歩みを止めることはできても盾を突き破れる威力はない。弓を扱うぼくを含めた数名だけが有効に相手を倒していった。
だがどうするつもりだ、とぼくは思った。強烈な炎のせいで門に近づけないのは相手も同じであるはず。まさか集団焼身自殺にきたわけでもあるまいし、何を企んでいるのだろう。
矢を放ち続けながら相手を観察していると、やつらは盾で落下してくる石や矢を防ぎ、何やら作業を始めた。最初、我々は何をしているのかわからなかった。炎の隙間に目を凝らすと、彼らは辺りに散乱している仲間の死体を運ぼうとしているのが目に入った。
……死体の回収にきたのか?
彼らにも仲間の死体を放置することへの罪悪感があったのだろうかと思った。だがそれは大きな勘違いだった。彼らは仲間の死体を数人がかりで持ち上げると、あろうことか炎の中に投げ入れたのだ。
「何だ!? やつら、何をしてるんだ!」
イオリたちの方からは見えないらしく、彼が大声で訊ねてくる。上部から見下ろしただけでは、わらわらと蠢く安っぽい盾しか見えない。だがその下では、見るもおぞましい光景が広がっていた。
「あいつら、仲間の死体を積み上げてるんだ!」とぼくは怒鳴った。「炎に紛れて、死体の足場を造ろうとしてるんだよ!」
それを聞いたイオリたちが言葉を失った。信じられないという表情で炎を見つめている。
人間を人間と思わぬ所業だった。我々が炎に妨害され対処できないうちに、彼らは内部へ進行するための足がかりを造り上げようとしていた。かつての仲間を建材として利用することによって。
炎の質が変わった。黒々とした煙に混ざって、油が跳ねる音がする。言われるまでもなく、それは死体の脂が火に炙られることによる音だと理解できた。豚肉や牛肉を焼いた時と異なる、どこか甘ったるく粘ついた臭いが漂ってきた。服や髪の毛などの臭いが入り交じって、堪えきれない異臭を放っていた。
風下にいた住人たちが嘔吐していた。ぼくは喉元まですっぱい液体がせり上がってきていたけれど、気力で押し戻した。ここで吐いたりすると体力を著しく奪われてしまう。
ナズナも何とか青い顔で堪えていた。「大丈夫?」と訊ねると、「ぎ、ぎりぎり……」という答えが返ってきた。
ぼくとナズナはとにかく体を動かして気を紛らわそうと、盾からはみ出した者を狙って矢を放つ。下半身を負傷した者はその場で脱落する。他の者の邪魔にもなるので、放置していても効果的だった。
昼のように明るいので狙いは付けやすかった。サポート役からハンカチを貰って顔の半分を覆う。そうすることによって多少はましになった。息がしづらくなるが、そのまま異臭を吸い込むよりはずっといい。
バケツリレーの要領で死体を積み重ねていく信者たち。我々は懸命にそれを妨害しようと試みるも、いたずらに矢の針山を築くばかりで決定打がなかった。
「どうする……このままじゃジリ貧だ。どうにかしてやつらを追い払えないだろうか」
「ガスボンベを投げ込んだらどうですか? 爆弾で攻撃するとか……」
ナズナの意見にぼくは首を振った。
「そうするとこちらまで被害が拡大する。ただでさえ3度の爆発で門が歪んだんだ。これ以上の損傷はまずい」
「じゃあ、消火するんじゃなくて、もっと燃え広がらせてみるとか」
「そんなことしたら……いや、まてよ。消火できない以上、この火事を利用するべきか。それに、周囲の壁を超えて燃え広がる恐れはないんだ。ナズナの意見は使えるかもしれない」
<絆教>信者たちは炎の周りに集まっている。袋に油を詰めて投げ落とすだけでも火は信者たちに燃え移るだろう。そうなれば密集隊形が仇となる。一気に殲滅できるかもしれなかった。
それは昨日にも増した虐殺行為なのかもしれなかったけれど、このまま侵入されるのを許すわけにはないかないだろう。
ぼくはイオリたちに火計の案を提案してみた。彼らはやはり乗り気ではなかったものの、このままでは門を乗り越えられてしまうと考えたのだろう、最終的には同意してくれた。
急遽、油や灯油を詰めた袋を作る。中身が漏れないよう気をつけながら、門の上部に運んでいく。正面上部から投げ落とすだけで事足りるので、急激な燃焼に巻き込まれないよう気を付けるだけでよかった。
敵に気取られないために上部からの投石などの攻撃を続ける。その隙に後方要員が総出で準備にあたった。
やがて用意が完了した。火の手はやや静まってきているが、それでもまだ炎は燃え盛っていた。
門の上部に並んだ我々は、可燃物の満載された袋を手に合図を待った。
「投下したらすぐに後方へ逃れること。炎に巻き込まれるなよ!」とイオリは大声で忠告をした。「投下5秒前、4、3、2、1、落とせ!」
ぼくは身を乗り出して袋を投下した後、急いで後ろに飛び退いた。数秒後、袋が信者たちに当たって水っぽい音がした。直後、空気が薄くなるような感覚がして目の前を炎の壁が遮った。
下の方からは叫び声が聞こえてくる。耳を覆いたくなるような悲鳴だった。悶え苦しむ様々な声は、悪夢になって何度も繰り返し現れそうだった。
我々は炎に巻かれないよう門から離れた位置で勢いが収まるのを待った。聞こえていた悲鳴が小さくなり、やがて聞こえなくなる。
風上であり、門の端に位置するぼくが代表して眼下を覗き込んだ。
いまだ残る余熱に顔を顰めつつ、手で熱風を防ぐ。その隙間から見た光景は凄惨なものだった。数えきれないくらいの信者たちが焼け死んでいた。元から死んでいた者と見分けが付かない。死体も生きていた者も、一緒くたに焼かれていた。
熱によって身体が縮こまり、赤ん坊のような体勢の焼死体で溢れていた。辛うじて逃れた生き残りが呆然としていた。彼らは目の前の光景をペンギンみたいに棒立ちになって眺めていた。
それ以上見ていられなくなったぼくは後方に戻った。隣までやってきて「どうだった?」と険しい表情のイオリにぼくは無言を返す。それだけで彼はぼくの言いたいことがわかったようだった。
攻撃部隊の大半を失った<絆教>は撤退していった。彼らは一度に全ての信者を投入することはなく、ある程度小出しにしているようだった。後方には本隊が残っており、いまだ多くの信者が残っているはずだ。
「同志」と白沢リンネは姿を見せなかった。あの本隊で指揮を取っているのだろうか。戦法を変えてくるのは、指揮官がいる証拠なのだろうが、それにしても信者を消耗品のように扱う戦法ばかりなのは理解しがたかった。
幾人もの人間を松明として炎は燃え続けていた。勢いは時間と共に弱まっていったけれど、その炎はしぶとく残り続けた。まるで怨嗟の声を途切れさせてたまるかとでも言うように。
門前で発生した嫌な臭いは、<街>の内部まで流れ込んだ。「変な臭いだね」と不思議がる後方の人たちには、我々はあえて口を噤んだ。自動車が燃えているんだと言ってはぐらかしたのだった。
中には勘の鋭い人間がいて、大方の事情を察していた者もいたが、彼らも進んで話題にすることはなかった。交代して戻ってきた我々の表情を見れば、それがいかに耐えがたいものであったかは一目瞭然だったからだ。
今日という日を生き残ることができた。戦えない人々を守ることができた。大切な人を傷つけずに済んだ。それは喜ばれるべきことだった。
けれども、それを手放しで受け入れられる程、我々は人間として完成されてはいなかった。
言い様のない泥のような感情が、少しずつ胸の底に淀み始めているのを我々は感じていた。




