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039-聖剣の力

 だいぶ体も温まってきたので模擬戦を終了する。

 あの後はアリアークが一本を取り、結局二本対一本で俺が負けた。かなり悔しい。




「やっぱ弱いな俺」


「今更なの?」




 やはり姫や魔術の力に頼らないと、ろくに戦えもしない。ローズベクトで炭坑の中に取り残された時はがむしゃらに剣を振るっていたから偶然助かっただけだ。この前のレイクフェアリィ湖に押し寄せてきた鬼の数はあの時のなんて比べものにならない程多かった。正直アリアークが来てくれなければやられていた所だ。


 この模擬戦で改めて自分の弱さを知る。こちらがいくら高速で走り回って素早く剣を振り回してもそのほとんどが受け止められ、流された。そして後半は全く俺の攻撃が当たらなくなった。力の差が圧倒的だ。




「もっと修行しなきゃな・・・・」




 俺の呟きを聞いたらしく、アリアークが大きなため息をつく。彼女の方を見ると、両手を腰に当てて呆れたような表情をしていた。




「熱心なのは結構だけど、あんまり根を詰めすぎると体に悪いわよ」


「ああ、分かってる。だけど、これから先は嫌でも戦わなくちゃならない時があるはずだ。その時のためにも体を鍛えとかないと」




 すると、アリアークがさらに大きなため息をついた。俺は何かおかしなことを言っただろうか。




「まあいいわ。それよりも、そろそろ行きましょ」




 僅かに立ち込めていた朝靄が消え、太陽の恵みが大地に降り注がれている。


 簡易用練習剣を仕舞い旅の準備をする。薄い毛布や食料が入ったバッグを飛竜の鞍に積み直し、模擬戦するために外した腰のポーチなどをベルトにつけ直す。いつの間にかいつもの凛々しい鎧ドレス姿になったアリアークがやって来て、防具を装着するのを手伝ってくれる。




「さて、忘れ物は無いな」




 一晩と少し使用した野原を見回す。アリアークが魔術で吹き飛ばして無残に倒れた木々を除けば何もない。


 飛竜達に再びステルス飛行をさせて、俺達はゆっくりと徒歩で先へ進む。





















   ◆◇◆◇◆





















「ぜ、はっ!・・・・くそっ!」


「ったく、しっかりしなさいよ」




 俺達は今森の中を爆走中である。野原を出発した跡、再びジャングルのような森に入って行ったのだが、運悪く、暗闇や人が来ない場所を好む鬼の集団と遭遇してしまった。なるべく戦闘は避けたいので俺達はこうして逃げているというわけだ。


 上からぶら下がる奇妙なツルや地面から突き出した木の根っこが邪魔で思うように走れない。俺の横を走っているアリアークはそれらの障害物を軽く避けてみせる。俺に対する軽い嫌みだ。


 鬼が鋭い牙と金の大きな瞳を煌めかせて襲いかかってくる。



げるるるるるっるるるるr

があああうあががうううううう



「畜生っ!しつこいな!」


「結局戦うわけ?」


「いや、可能な限り逃げる」


「ったく、しょうがないわね」




 戦う気満々なアリアーク。こんな足場の悪い場所で戦うのはどうかやめてほしい。アリアークは問題ないだろうが、俺は振るう刀が木やツルに引っかかって思うように戦えない。せめてもっと広い場所なら戦ってもいいが。


 ふと、俺の腰に挿している聖剣がぱあっと光り出した。すると、さっきまで進路を塞いでいた木々や植物が一斉に左右に分かれて行く。そして一瞬にして平らな道が完成する。一体どういうことだ?




「は?!」


「何これ?」




 さっきまで地面から突き出ていたきの根っこが全て地面に引っ込んでしまった。さっきまですぐそこに生えていた植物が、いつの間にかあっちの方に生えている。植物が移動したぞ。




「聖剣の力、なのか?」


「さあね。まあとにかく走りやすくなったわよ」




 すると、いきなりアリアークの身体が光り出し、尾が二本生えた狐の姿に変わる。




(ほら、乗りなさい)


「お、おお」




 アリアークは出来あがった平らな道の上を、俺を乗せて一気に加速する。脚をほとんど地面に付けず、飛んでいるに等しい。凄まじいスピードで進みながら後ろを見ると、追いつけなくなった鬼がどんどんと遠ざかって行くのが見える。


 アリアークは走る脚を段々と緩め、少し開けた場所で停まった。




「逃げ切ったか」




鬼から逃げ切ったことで少しばかり気が緩む。思わずアリアークの背中にもたれかかる。


 鬼から逃げ切れたのはいいが、さっきのは何だったんだ?突然植物が動いた。

 俺は聖剣を抜いてその刀身を見る。恐ろしいほど白く眩しく輝いているそれは今でもまだ小さく発光している。




「さっきのがこいつの力だとすると」




 俺は一旦アリアークから下りて、適当に聖剣を横薙ぎに振ってみる。すると




ズザザザサササササササササ




 さっきまで密集していた木々や植物が俺から離れて行く。そしてあっと間に俺を中心とした円形の野原が出来上がった。さっきまで頭上を覆っていた太陽の光を遮っていた木々が遠くの方に移動したおかげで、眩しい太陽の光が降り注ぐ。眩しくて思わず眼をつむる。


 間違いない。聖剣は木々や植物を動かす力を持っている。




「・・・・・・・」


(まあ、なんていうか。すごいわね)




 俺達はしばらく絶句した。植物を動かせるなんて凄過ぎだろう。これならどんなに迷いやすい森に入ったとしても絶対に出てこられないなんてことにはならないぞ。聖剣を使って道を作ればいいからな。


 自然と共にある精霊種の宝である聖剣カリヴヌスを手に入れること。それはつまり、自然を意のままに操ることができるということか。


 まだ俺が知らない力があるのかもしれないが、改めて聖剣の凄さを見る。





「まあとりあえず、行くか」


(ええ、飛ばすからしっかり摑まってなさいよ)




 服に着いた土や汚れをはたき落とし、アリアークは俺を乗せて再び走り出す。進路を妨害する植物達を退けるために聖剣は抜いたままだ。




「そういや目的地ってどこだっけ」


(二千年前、かつての王都が存在した場所よ)




 かつてこのレグザリア大陸が一人の王によって納められていた二千年前の王都。ファイから渡された書類の中にある程度のことは記載されていたが、今どのような形で残っているのかはわからない。










読んでいただきありがとうございます。



なんだかんだいって全然進んでいません。


他の仕事がいろいろと忙しくて書くペースが上げられません。


なにとぞご容赦を。



作中での誤字脱字の指摘、感想、意見などなど何でもかまいません。

何かあれば書き込みをお願いします。


これからも私の作品をよろしくお願いします。

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