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社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第5章 「存在しないはずの魔法領域」
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第6話 過去を越える者(ユウト修行)

第6話 過去を越える者


蛍光灯の白い光が、無機質に空間を照らしている。


机が並ぶ。


整然とした配置。


だが、その整然さが逆に息苦しい。


「……は……」


ユウトの喉から、浅い呼吸が漏れる。


目の前には、見慣れた光景。


パソコンの画面。


終わらない資料。


数字、文字、修正指示。


「……なんで」


思わず口に出る。


「ここ……」


理解している。


理解したくないだけで。


「……戻ってきたのかよ」



カツ、カツ、と足音。


背後から近づいてくる。


嫌な音。


忘れられるはずのない音。


「佐藤」


その声を聞いた瞬間――


背筋が凍る。


ゆっくり振り返る。


そこにいたのは、上司だった。


無表情。


冷たい目。


人を人として見ていない視線。


「資料、まだ?」



ああ、これだ。


この空気。


この圧。


逃げられない感覚。



ユウトの手が震える。


気づかないふりをしていた感情が、浮き上がってくる。


「今日中って言ったよね?」


静かな声。


だが、逃げ道はない。


「……」


言葉が出ない。


喉が詰まる。



「明日の朝までに直して」


その一言で、すべてが決まる。


拒否は許されない。


やるしかない。



「……無理だろ」


小さく呟く。


だが――


その言葉は、空気に吸い込まれる。


届かない。


何も変わらない。



気づけば、座っている。


パソコンの前。


手は勝手に動く。


キーボードを叩く。


止められない。



「……なんで」


自分の声が、遠く感じる。


「なんで、またこれやってんだよ」



目の前の画面が揺れる。


文字が歪む。


数字が崩れる。



「分かってるだろ」


上司の声が、変わる。


低く、重く。


「お前は、こういう人間だ」



ユウトの心臓が強く打つ。


ドクン、ドクン、と音が響く。


「何も変わってない」


「逃げただけだ」



「違う……」


否定したい。


でも――


言葉が弱い。


自分でも分かっている。



「結局、お前は何もできない」


「誰も救えない」



その言葉に、映像が重なる。


アリス。


手を伸ばしたのに届かなかった。


ピリム。


連れ去られた。


アラン。


消えていった。



「……っ」


歯を食いしばる。


視界が揺れる。



「また同じだな」


「今回も守れなかった」



ユウトの拳が震える。


逃げたい。


崩れそうになる。


心が、引きずり込まれる。



「……違う」


絞り出すように、声を出す。



「あの時は……そうだった」


認める。


逃げた。


壊れた。


立ち上がれなかった。



「でも」


顔を上げる。


ゆっくりと。


確実に。


「今は違う」



空気が変わる。


上司の顔が歪む。


崩れる。



「何が違う」


低い声が響く。


「結局、お前は同じだ」



ユウトは、静かに息を吐く。


そして――


はっきりと言う。


「一人じゃない」



リリアの姿が浮かぶ。


隣で戦ってきた。


何度も助けられた。



アリスの顔が浮かぶ。


小さくて、でも強くて。


守りたかった存在。



レオの声が浮かぶ。


まだ未熟でも、前を向く姿。



「……俺は、もう」


一歩、踏み出す。


「一人で戦ってるわけじゃない」



その瞬間。


世界が砕ける。


ガラスのように。


音もなく。


崩壊する。



そこに現れる。


歪んだ存在。


黒く、形を持たない。


感情の塊のようなもの。



「……お前か」


ユウトが双剣を抜く。


カチ、と音が鳴る。


手に馴染む。


確かな現実。



存在が動く。


空間ごと歪めながら迫る。


速い。


だが――


ユウトの目は、追えている。



踏み込む。


一閃。


さらに二撃。


流れるような連撃。



だが、手応えが薄い。


すぐに再生する。


「……再生型か」


舌打ちする。



攻撃が来る。


空間が歪む。


避ける。


滑るように。



間合いを詰める。


連撃。


止めない。


止まれば、押される。



「過去は消えない」


斬りながら、言う。


「でも――」


さらに踏み込む。



「それに縛られる理由もない」



双剣が光る。


同時に振るう。


交差する軌跡。



深く、深く――斬る。



存在が揺らぐ。


崩れる。


形を保てなくなる。



ユウトは止まらない。


最後の一歩。


踏み込む。


「終わりだ」



一撃。


すべてを断ち切る。



静寂。


存在は、完全に消えた。



ユウトは、しばらく動かない。


呼吸を整える。


ゆっくりと。


確かめるように。



「……戻るか」


小さく呟く。



足元に光が現れる。


円。


帰還の合図。



ユウトは、その光を見つめる。


そして、静かに言う。


「待ってろ」



アリス。


必ず。



光が強くなる。


包み込む。



そして――


ユウトは現実へ戻る。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回はユウトの試練ということで、これまであまり触れてこなかった“過去”に向き合う回になりました。

戦いというより、自分自身との対峙――そんなイメージで書いています。


あの頃の弱さも、逃げたことも、全部含めて今のユウトがいる。

だからこそ、前に進む理由がある。


そんな一歩を描けていれば嬉しいです。


次は他のメンバーの試練へ。

それぞれが何と向き合うのか、ぜひ見届けてください。


引き続き応援やコメントもお待ちしております!

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