第5話 分かたれる試練
第5話 分かたれる試練
リーフの後を追い、ユウトたちは集落の奥へと進んでいた。
空気が違う。
静かだが、重い。
一歩進むごとに、何かに見られているような感覚が強くなる。
「……さっきより来ますね」
レオが低く呟く。
落ち着いた声のまま、周囲に視線を巡らせる。
リリアも小さく頷く。
「はい……かなり強いです」
エルナが軽く息を吐く。
「ここが“入り口”って感じだね」
ユウトは何も言わない。
ただ前を見る。
リーフの背中は、迷いなく進んでいた。
⸻
やがて、開けた場所に出る。
木々が不自然に避けるように並び、その中心だけが空いている。
地面には、淡く光る紋様。
円形に刻まれたそれは、魔法陣のようにも見えた。
空気が揺れている。
見えない何かが、そこにある。
「……ここか」
ユウトが言う。
リーフが足を止める。
「ここから先が試練」
静かに告げた。
⸻
レオが一歩前に出る。
「全員で行くの?」
その問いに、リーフは首を横に振る。
「……違う」
短く。
「一人ずつ」
空気が止まる。
リリアが目を細める。
「……一人で、ですか」
リーフは頷く。
「ここは“個”を見る場所」
「一緒には行けない」
エルナが肩をすくめる。
「やっぱりそうなるか」
レオは静かに息を吐く。
「……そういう試練か」
ユウトは変わらない。
「順番は?」
「誰からでもいい」
リーフは答える。
そして――
「戻れる保証はない」
⸻
その一言で、空気がさらに重くなる。
レオが小さく息を吐く。
「……分かりやすいな」
リリアは静かに言う。
「覚悟はできています」
エルナが軽く笑う。
「ここまで来てやめる理由もないしね」
ユウトが一歩前に出る。
「俺から行く」
迷いはない。
リーフが頷く。
「……いい」
⸻
その時――
リリアが声をかける。
「ユウトさん」
ユウトが振り返る。
リリアは、ほんの少しだけ微笑む。
「お気をつけて」
短い言葉。
だが、それで十分だった。
レオも静かに言う。
「無理はしないで」
エルナが軽く手を振る。
「ちゃんと戻ってきてよ」
ユウトは小さく息を吐く。
「大丈夫だ」
それだけ言って、前を向く。
⸻
円の中心へ。
一歩、踏み入れる。
その瞬間――
光が走る。
視界が白に染まる。
音が消える。
感覚が、切れる。
⸻
気づいた時には――
そこは、別の場所だった。
地面はある。
だが、空がない。
空間が歪んでいる。
どこまでも広がっているのに、閉じているような感覚。
「……来たか」
ユウトが小さく呟く。
一人。
完全に。
背後に、仲間の気配はない。
⸻
前方の空間が揺れる。
歪みが広がる。
そして――
“何か”が現れる。
人のようにも見える。
獣のようにも見える。
だが、どちらでもない。
形が定まらない。
存在が、曖昧。
ユウトは双剣を構える。
呼吸を整える。
逃げ場はない。
援護もない。
「……いい」
小さく言う。
「やるだけだ」
⸻
その瞬間――
視界が揺れた。
ほんの一瞬の違和感。
だが、次の瞬間。
景色が変わる。
⸻
無機質な光。
整然と並ぶ机。
聞き覚えのある静けさ。
見覚えのある空気。
ユウトの目が、わずかに見開かれる。
「……ここは」
自然と、言葉が漏れる。
そして――
「……転生前の世界」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ついに試練が始まりました。
そしてユウトが踏み込んだ先に現れたのは――まさかの“転生前の世界”。
ここからは単なる戦闘ではなく、ユウト自身との戦いになっていきます。
過去とどう向き合うのか、どんな答えを出すのか。
少し重たい展開になりますが、物語の大事な部分なので、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
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