第4話 王の前に立つ者
第4話 王の前に立つ者
重たい扉が、ゆっくりと開いた。
一歩、足を踏み入れた瞬間――空気が変わる。
静けさの質が違う。
重い。
見えない何かが、全身にまとわりつく。
レオが小さく息を止める。
「……これは」
リリアもわずかに表情を引き締める。
「強いですね……」
エルナが肩をすくめる。
「想像以上だね」
ユウトは止まらない。
そのまま進む。
視線は前へ。
奥に、一人。
動かない。
だが、その存在だけで空間が成り立っている。
リーフが一歩前に出る。
「……連れてきた」
短く、それだけ告げる。
沈黙。
見られている。
全員が同時に。
逃げ場はない。
「……ほう」
低く、響く声。
「外から来た者か」
ユウトは止まる。
そして答える。
「そうだ」
王の視線がわずかに鋭くなる。
「恐れはないのか」
ユウトは少しだけ考える。
そして――
「ある」
空気が、わずかに揺れる。
「……それでも来たか」
視線が移る。
リリア。
エルナ。
レオ。
そして――ヒヨコ。
ほんの一瞬だけ、空気が歪む。
だが王は何も言わない。
⸻
「目的は」
ユウトが答える。
「仲間を探してる」
リリアが続ける。
「連れ去られました」
エルナが言う。
「黒いローブの連中に」
その言葉に――
王の眉がわずかに動いた。
「……ローブだと?」
静かな声。
だが、確かな違和感があった。
「聞いたことがないな」
ユウトの目が細くなる。
「知らないのか」
王は首を横に振る。
「少なくとも、この地には存在しない」
⸻
王はゆっくりと手を伸ばす。
懐から、一枚の紙を取り出した。
それを、ユウトへ差し出す。
「……これを見ろ」
ユウトが受け取る。
描かれているのは、一人の少女。
少し幼い顔立ち。
だが――
見間違えるはずがない。
「……ピリム」
小さく、名前がこぼれる。
リリアが息を呑む。
「やはり……」
エルナも視線を寄せる。
⸻
王の目が、わずかに細くなる。
「知っているのか」
ユウトは答える。
「仲間だ」
短く。
だが、強く。
⸻
王は一瞬だけ目を閉じる。
そして――静かに開く。
「……その少女は」
少しだけ、間を置く。
「かつての友人の娘だ」
空気が変わる。
重さが、別の質になる。
ユウトが問う。
「……友人?」
王は小さく頷く。
「もう、この世にはいない」
その言葉は、淡々としていた。
だが――
確かに、何かが残っている。
「だからこそ……放ってはおけん」
リリアが静かに目を伏せる。
レオも何も言わない。
エルナも、軽口を挟まない。
⸻
ユウトが言う。
「連れ去られた」
王の視線が上がる。
「……確かなのか」
「間違いない」
ユウトは答える。
「目の前でやられた」
王はわずかに眉を寄せる。
「……ならば、その“ローブの者たち”が関係しているのか」
ユウトが頷く。
「ああ」
⸻
沈黙。
だが、理解は早かった。
王はゆっくりと立ち上がる。
その瞬間――空気が変わる。
圧が増す。
存在が前に出る。
レオがわずかに踏ん張る。
リリアの指先に力が入る。
エルナも目を細める。
だが――
ユウトは動かない。
真正面から見据える。
王が言う。
「奥に行くつもりだな」
ユウトは頷く。
「ああ」
「ならば試練を受けろ」
⸻
「ここから先は、“選ばれた者”しか進めない」
リリアが静かに息を整える。
レオが言う。
「……避けられない、か」
エルナが肩をすくめる。
「まあ、そうだよね」
ユウトは答える。
「受ける」
迷いはない。
⸻
王が一歩、近づく。
「では、試す」
次の瞬間。
空気が弾ける。
見えない圧が押し寄せる。
レオが一歩下がる。
リリアも踏ん張る。
エルナが息を吐く。
だが――
ユウトは動かない。
真正面で受け止める。
数秒。
やがて、圧が消える。
⸻
王が言う。
「……通れ」
リリアが目を見開く。
レオが静かに息を吐く。
エルナが笑う。
ユウトは紙を握る。
「……連れ戻す」
その言葉に、王はわずかに頷いた。
「任せた、とは言わん」
一瞬の間。
「だが――進め」
⸻
リーフが前に出る。
「……案内する」
王はそれを止めない。
ただ一言。
「その先で、答えを見つけろ」
⸻
扉の外へ。
空気が軽くなる。
ユウトは紙を見る。
「……ピリム」
その名を、もう一度。
そして顔を上げる。
「行くぞ」
試練へ。
その先へ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は王との対面、そしてピリムに関する新たな繋がりが明かされました。
ただの捜索ではなく、それぞれの想いが重なり始めた重要な回になっています。
黒いローブの存在、そして王の過去――
まだ明かされていない部分も多く、物語はさらに深くなっていきます。
そしていよいよ次は試練へ。
ここから一気に動き出しますので、ぜひ引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
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