第1話 水の都の入口
第1話 水の都の入口
水の流れが、少しずつ速くなっていた。
魚は迷いなく進む。
まるで道を知っているかのように、水路を選び、滑るように進んでいく。
空気が変わる。
湿気が増し、肌にまとわりつくような重さがあった。
「……近いですね」
リリアが小さく言う。
ユウトは軽く頷く。
「そうだな」
それ以上は何も言わない。
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やがて、水路が大きく開ける。
目の前に広がったのは、整えられた水の通りだった。
自然ではない。
削られた岩。
均等に流れる水。
「……もう街の中みたいですね」
レオが呟く。
エルナが軽く頷く。
「もう入口だよ」
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魚がゆっくりと減速する。
岸のような場所に近づいていく。
その先――
水の上に立つ、影。
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「……止まれ」
低い声が響いた。
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魚人族。
全身は人型だが、肌は湿り、わずかに光を反射している。
鋭い目でこちらを見ていた。
明らかに門番だった。
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ユウトは動かない。
レオも止まる。
リリアは静かに様子を見る。
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「ここから先は――」
言葉が止まる。
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門番の視線がエルナに向く。
数秒の沈黙。
「……お前か」
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エルナは軽く手を上げた。
「久しぶり」
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門番は小さく息を吐く。
「また面倒を持ち込む気か」
「今回は違うよ」
エルナは肩をすくめる。
「ただの案内」
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門番の視線がユウトたちへ移る。
一人ずつ、確かめるように見る。
「……人間か」
低く呟く。
「珍しいな」
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ユウトは短く言う。
「通る」
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門番は少しだけ目を細める。
だが、すぐに視線を戻す。
「……お前が連れているなら問題ない」
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一歩、横に退く。
「通れ」
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魚が再び動き出す。
ゆっくりと、その横を通り過ぎる。
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しばらく進んだあと。
ユウトが言う。
「……顔が利くんだな」
エルナは軽く笑う。
「まあね」
「この辺じゃ、それなりにね」
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水の流れが、さらに広がる。
視界の先に、建物が見え始める。
水の上に建てられた街。
今まで見てきたものとは、まったく違う景色だった。
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レオが小さく息を吐く。
「……すごいですね」
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ユウトは何も言わない。
ただ、前を見る。
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水の都。
その中へ――
三人は、静かに足を踏み入れていく。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第4章が本格的にスタートしました。
今回は水の都への入口、そして魚人族との最初の接触を描いています。
戦いではなく、静かな緊張感を意識した回にしました。
新しい場所に入る時の空気感も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ここから少しずつ、この街の“違和感”や物語の核心に近づいていきます。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。
感想やコメントもお待ちしております。




