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社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第4章 「水の都と隠された血筋」
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第0話 揺らぐ正体

4章スタートです!

第0話 揺らぐ正体


水の上を、静かに進んでいく。


魚の背に揺られながら、波を切る音だけが続いていた。


風は弱く、空気は穏やかだ。


戦いの余韻だけが、まだ身体に残っている。




「ねえ」


エルナが、ふと口を開いた。


軽い調子だった。


何気ない会話のように。


リリアが視線を向ける。


「……はい?」


エルナは前を見たまま言う。


「リリアって、どこ出身?」


自然な問いだった。


リリアは少し考えてから答える。


「……ルミナ村です」


迷いはない。


「そこで育ちましたし」


「……ふーん」


エルナは小さく返す。


一拍、間が空く。


「ルミナ村で育ったのは本当だと思う」


  でも


「それは“育った場所”でしょ」




空気が、わずかに止まる。


波の音だけが続く。


リリアがゆっくりと振り返る。


「……どういう意味ですか?」


戸惑いが混じった声だった。


エルナは肩をすくめる。


「そのままの意味だよ」


そして、少しだけ視線を向ける。


「出身っていうのはさ、生まれた側の話」


「育った場所とは、別」



リリアの表情が、わずかに揺れる。


「……でも、私は――」


言葉が止まる。


自分の中で“当然”だったはずのものが、

ほんの少しだけ形を失う。



エルナは続ける。


「音で分かるんだよね」


さらりと言う。


「あなた、人間の音じゃない」



レオが驚いたように声を出す。


「え……?」


「音でそんなことまで分かるんですか?」


エルナは軽くうなずく。


「分かる人は分かる」


そして、はっきりと告げた。


「あなた、妖精族でしょ」


断定だった。


迷いがない。


リリアは言葉を失う。


「……違います」


少し遅れて、そう言う。


「私は……普通の……」


続かない。


言い切れない。


胸の奥に、小さな違和感が残る。


でも、それを説明する言葉がない。


ユウトは何も言わない。


ただ静かに、リリアを見る。





エルナはそれ以上追及しなかった。


「まあ、今はいいけど」


軽く言う。


「そのうち分かるよ」


リリアは前を向く。


何も言わない。


だが――


さっきまでと同じではいられなかった。


「ぴよ」


ヒヨコが小さく鳴く。


その音が、わずかに空気を緩める。


魚は進み続ける。


静かに。


リリアは、何も言わない。


だがその胸の奥に残った違和感は――


消えることはなかった。


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