表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第3章 「響きの森と導きの旋律」
84/104

第16話 残された結晶と導きの音

第16話 残された結晶と導きの音


静寂が残る。


さっきまで確かにそこにあった気配は、もうどこにもない。


水面は穏やかに揺れている。


まるで、最初から何もなかったかのように。


「……終わりましたね」


リリアが小さく言う。


ユウトは水面を見たまま、短く答える。


「ああ」


その視線は、ただの水ではなく――


その奥を見ていた。


「……何か落ちてる」



水際へと近づく。


足元に気をつけながら、ゆっくりと進む。


波の間に、淡い光が揺れている。


「……あれですね」


リリアも気づく。


レオが少し前に出る。


「近づいても大丈夫ですか?」


ユウトは周囲を一瞥する。


気配はない。


完全に静かだ。


「……問題ない」


そう言って、水面へ手を伸ばす。



触れた瞬間、冷たい感触。


水ではない。


固い。


だが――


どこか、生きているような気配。


ゆっくりと持ち上げる。


それは、透き通る結晶だった。


内部で、淡い光が揺れている。


まるで呼吸しているかのように。


「……綺麗ですね」


リリアが呟く。


レオも目を細める。


「これ……ただの素材じゃないですね」


エルナが覗き込む。


ほんの少しだけ表情を変える。


「……うん」


それ以上は言わない。



「ぴよ」


肩の上。


ヒヨコが鳴く。


その視線は、結晶に向いていた。


じっと見ている。


わずかに、羽が揺れる。


ユウトはそれに気づく。


だが、何も言わない。


「……持っていく」


短く言う。


意識を向ける。


無限収納。


次の瞬間。


結晶は音もなく消える。


カバンの中へ。



リリアが小さく頷く。


「回収できましたね」


レオも少し安心したように言う。


「後でちゃんと確認したいですね」


エルナは静かに水面を見る。


「……うん」


その声には、わずかな含みがあった。



ユウトは水面から視線を外す。


「……で」


前を見る。


その先に広がる、水。


広い。


深い。


向こう岸は見えるが、距離がある。


「どうやって行く」


リリアも同じ方向を見る。


「橋はありませんね」


レオも首を振る。


「泳ぐのは厳しいです」


流れもある。


深さも分からない。


簡単には渡れない。



その時。


「大丈夫」


エルナが言った。


ユウトが視線を向ける。


「……何かあるのか」


エルナは軽く頷く。


「問題ない」


そう言って、笛を取り出す。


そして――


静かに、吹いた。



音が広がる。


柔らかく、遠くまで届く音。


水面が揺れる。


波紋が広がる。


「……来るよ」


エルナが小さく言う。


次の瞬間。


水が動く。


内側から、盛り上がる。


一つじゃない。


いくつも。


影が浮かび上がる。


「……魚?」


レオが驚く。


だが、その大きさは普通じゃない。


人が乗れるほどのサイズ。


ゆっくりと、水面に現れる。


リリアが息を呑む。


「……すごいですね」


魚たちはエルナの周りに集まる。


まるで従うように。


エルナは軽く振り返る。


「乗れるよ」


ユウトは少しだけ間を置く。


そして言う。


「……便利だな」


エルナは少し笑う。


「でしょ」



魚が並ぶ。


水の上に、道のように。


ユウトは一歩踏み出す。


足を乗せる。


沈まない。


しっかり支えられている。


「……行けるな」


リリアも続く。


慎重に足を乗せる。


レオもバランスを取りながら乗る。



「ぴよ」


ヒヨコが小さく鳴く。


その瞬間。


魚たちがわずかに反応する。


だがすぐに落ち着く。


誰も気づかない。


エレナだけが、一瞬だけ目を細める。



エルナが先頭に立つ。


「じゃ、行こっか」


その一言で、魚が動く。


ゆっくりと。


だが確実に。


水の上を進み始める。



波を切る音。


静かに進む感覚。


森が遠ざかっていく。


そして――


視界の先に広がる。


水の向こう側。


そこにある影。


魚人族の街。



ユウトは前を見る。


何も言わない。


だが、その足は止まらない。


次へ。


その先へ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


戦いを越えたあとの静かな時間と、新しい場所へ進む準備の回でした。

そして今回は、エルナの力が戦闘以外でも活きる形を描いています。


音が“戦うためのもの”だけではない、というのもこの先のポイントになっていきます。


少しずつですが、物語の舞台も広がってきました。

次はいよいよ魚人族の街へ入っていきます。


引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

感想やコメントもお待ちしています。


いつも本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ