第13話 水底に潜むもの
第13話 水底に潜むもの
森の奥へ進むほど、空気が変わっていく。
湿り気がさらに濃くなる。
足元は柔らかく、踏みしめるたびに水を含んだ音が返ってくる。
「……水の気配、強いですね」
リリアが周囲を警戒しながら言う。
ユウトは頷く。
「ああ」
短く返す。
言葉は少ない。
だが、意識は研ぎ澄まされている。
レオも無言でついてくる。
周囲を見ながら、わずかな異変も見逃さないように。
エルナは少し前を歩いている。
その足取りは軽いが、迷いはない。
「もうすぐ」
それだけ言った。
⸻
木々が途切れる。
視界が開ける。
そこにあったのは――
水。
静かな水面。
広く、深く、底の見えない場所。
風はない。
なのに、水面がわずかに揺れている。
「……ここか」
ユウトが呟く。
エルナが頷く。
「うん」
「ここにいる」
その瞬間。
――すぅ……
また、あの音。
前よりもはっきりと。
耳の奥に、直接触れてくるような感覚。
レオが顔をしかめる。
「……強い」
リリアも一瞬だけ呼吸が乱れる。
「これ……前より……」
ユウトは一歩前へ出る。
「構えろ」
短く言う。
⸻
水面が、揺れる。
波紋が広がる。
ゆっくりと。
何かが、下から上がってくる。
気配。
重い。
今までとは違う。
「……来る」
リリアが言う。
エルナは笛を握る。
だが、まだ吹かない。
タイミングを見ている。
ユウトは双剣を構える。
視線は水面。
一点に集中している。
⸻
ボコッ……
水が盛り上がる。
ゆっくりと。
だが確実に。
影が浮かび上がる。
人の形。
だが、歪んでいる。
水で構成されたような輪郭。
長く揺れる“髪”のような流れ。
そして――
目。
暗く、底の見えない視線。
「……あれが」
レオが呟く。
エルナが小さく答える。
「そう」
「本体」
その瞬間。
空気が変わる。
重くなる。
圧が、かかる。
音が――
鳴る。
今までとは比べ物にならない。
直接、意識に触れてくる。
「……っ!」
リリアが一歩下がる。
レオも歯を食いしばる。
ユウトは動かない。
ただ、前を見る。
その存在を。
真正面から。
そして――
小さく息を吐いた。
「……見つけた」
それだけ言う。
双剣を握る手に、力が入る。
次の瞬間。
水面が大きく揺れた。
“それ”が完全に姿を現す。
逃げ場はない。
距離もない。
ここが――
戦場になる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ついに本体が姿を現しました。
これまでの“影”とは明らかに違う存在感と圧を感じてもらえたら嬉しいです。
次はいよいよ本格的な戦いになります。
どこまで通用するのか、ぜひ見届けてください。
よろしければ感想やコメントもお待ちしています。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。




